『夏空と海のアリア』 ... ジャンル:ファンタジー
作者:ゅぇ
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【第一話:くろねこ亭のありあ】
くろねこ亭に休みはない。だから今日もありあは、そのほっそりとした身体で朝から晩までくるくると忙しく働く。
空は抜けるように碧い。紺碧の空、というのはこういう空色をいうのだろうか、と曖昧に心中で呟いてみる。
石畳にバスケットを置いて、ありあは肉屋の主人に声をかけた。
「おじさん、上等の挽肉を5包みちょうだい」
「おっ、ありあか。今日のメインはハンバーグかな?」
「そうよ」
街の人とは、幼い頃から見知った仲である。両親が亡くなったときも、皆温かくありあの面倒を見てくれた。父親とは旧知の仲であった肉屋の主人が手早く挽肉を包んでいく。
「ぶたのしっぽ、おまけしといてやるよ」
「ホント? ありがとう」
ずっしりと重い挽肉の包みをバスケットに丁寧に入れる。焼くと美味しいぶたのしっぽが、包みからちょろりと顔を覗かせていた。
そして昼下がりの街中で、ありあは次々と買い物を済ませていく。白いワンピースに白いつば広の帽子が、陽光に眩い。
すれ違うたびに、人々が明るくありあに声をかけてゆく。街のはずれの森中でくろねこ亭を営むありあ。彼女を知らない人間は、この街にはいないのではないだろうかと思われる。
万人受けする爽やかな笑顔と、可愛らしい美貌。街の人間は、皆ありあのことが大好きだ。
紅茶と珈琲の上等なのを3缶ずつ。香りが混じらないように、丁寧に包み分けてもらう。
それからフランスパンを2本、焼きたてのものを包んでもらってバスケットの中へ。
肉料理のために、と切らしていた胡椒を1包み買った。
(あとは……あの人の好物だから)
桃の缶詰をひとつ。
あとは今朝搾ったばかりのミルクを配達屋さんに少しばかり分けてもらって。
今日の買い出しは、それで終わりだった。買い出しが済むと、ありあは石畳をとんとんと踏みしめながら帰途につく。清々とした白い靴が、軽やかなリズムを奏でた。
「おう、ありあ!」
「こんにちは」
誰にでも笑顔で挨拶を返す。若い男は皆ありあが好きだったし、あまりの毒気のない性格と笑顔に、女の子たちでさえもありあに敵意を抱く者はいなかった。
「明日くろねこ亭に行くわね」
「今度も海老のリゾットを作っておくれ」
そんな声が、たびたび歩くありあに掛けられる。
街には学校がひとつ、教会がひとつある。街の子どもは皆学校に通うが、ありあは一度も学校へ行ったことがない。簡単な読み書きしかできなかったけれど、誰ひとりとしてありあを見下す人間はいなかった。
石畳の街道、煉瓦造りの家々。街を西にまっすぐ通り抜けると、王宮へ続く北への道と、森へ続く西への小道に分かれている。
左手、つまり西への小道をありあはまっすぐに歩いていくのだった。しばらく歩くと小道の右手に教会と墓地が見えてくる。そして左手には小高い丘――海を越えてはるか遠くを見晴るかせる丘があり、そこからまたしばらく歩いてようやく森の入り口に辿り着く。ひっそりとした森の中には、静謐と水をたたえる大きな泉とくろねこ亭しか存在しない。ずっとずっと昔は道すらなかったはずの森には、くろねこ亭にやって来る人々の足によって、自然と道が出来上がっている。
(今日はハンバーグと……)
夏の風が、さらさらと音を立てて木々を揺らしてゆく。暑い夏真っ盛りだったが、一歩森へ足を踏み入れると空気は冷ややかだった。日差しに照らされた頬を、清爽とした風がすうっと撫でる。
(おじさんたちにはぶたのしっぽを焼いてあげて……)
ぶたのしっぽは、油が抜けるまで焼くとかりかりになる。香ばしいそれは、仕事帰りの男たちの、良いビールのつまみになるのだった。
王宮付きの庭師や工人も、くろねこ亭のよき客人である。
彼らのほとんどが、仕事が終わるとくろねこ亭に夕食を求めてやってくるのだった。
(それからスープはグリーンピースで)
森の中を西にずっと歩いていくと、少しひらけた小さな泉の横に木造の家が建っている。
2階建ての小奇麗な家で、それがつまりありあの暮らす場所。くろねこ亭であった。
1階がちょうど店と厨房になっており、2階がありあの生活空間になっている。厨房はカウンターと対面式になっていた。
両親が若い頃にはじめたくろねこ亭――両親が亡くなってからは、ありあがすべて1人で切り盛りしている。
住み慣れた、ありあの楽園でもあった。
すっかり重くなったバスケットを椅子の上におろし、ひとつ伸びをしてから準備に入る。
とても穏やかな、ありあの毎日。こんな日常を、ありあは誰よりも愛している。
夕暮れが辺りを包むころ、ありあは店の扉脇に掲げてある素朴なカンテラに灯を入れる。硝子細工のランプに、ぽっと小さな音をたてて暖かな灯がともった。森の中にたったひとつ浮かび上がる、暖かな目印。
くろねこ亭、と素朴な味わいでもって描かれた看板を掲げ、ありあは満足げにそれを見上げた。
「ありあ」
室内に戻ろうとしたありあに、声がかけられた。
「ぁ。トキ」
明るいありあの双眸が、一層嬉しそうに輝く。
黒いタンクトップに少し古びたジーンズ。黒いバンダナで頭を覆い、後ろできゅっと括っている。
男らしい凛然とした顔立ちが、以前よりも日焼けしていて逞しい。
――トキ。西隣国の生まれの彼は、毎夕他のどの客よりも早く来店する。彼の来店が、くろねこ亭を開ける合図でもあった。
「今日のおすすめは?」
「いいお肉とパスタが入ったの。今日はハンバーグよ」
鍋の中で揺れるグリーンピースの冷製スープを混ぜながら、ありあは澄んだ双眸を彼に向けた。
「パスタは何に?」
「前菜でミニグラタンを作ろうと思って。どう?」
「いいね。美味そう」
桃の缶詰もあるからね、とありあは微笑んだ。冷えた桃は、トキの大好きなデザートでもある。
小柄な身体でめまぐるしいほどに忙しく立ち動くありあを、トキはいつでも楽しそうに見つめている。
もともと東の隣国の内偵として働いていたのが、いつの間にかこの国に居ついてしまっていた。
ともかく様々な仕事に手をつける性質の男で、今は海で商人の真似事をしているらしい。真似事、とはいえ何をやらせても巧みにやってのける人間である。
若く見目も良い。人懐っこい朗らかな性格も加わってか、このトキという男も皆に好かれている。
からんからん、と音を立てて数人の男が店内に入ってきた。
「おう、ありあ」
「おかえんなさい。ビールでいいですか」
「黒ビールでな」
どかどかと汗まみれで入ってくる男たちに、ひとりひとり声をかけてありあは椅子を引いてやる。
「おう、トキ」
店が開く時間にトキがここにいるのはいつものことで、男たちももう何も言わない。軽く声をかけるだけで、トキもまたそれに笑顔で応えるだけである。
次々にそこらのテーブルにつく汗まみれの男たちにタオルを渡し、綺麗に洗って冷やしておいたグラスになみなみと黒ビールを注いで差し出した。
そんなありあの姿を、トキはやはり微笑みながら見つめている。
「今日はぶたのしっぽを焼いてあげるわ」
「そりゃ良い」
丸いテーブルを囲んで、大の男たちが乾杯してビールを流し込む。さりげなく空いたグラスにビールを注いで、ありあはぶたのしっぽを細い串に突き刺してオーブンに入れた。 油が滴って弾ける音を聞きながら、トキに向き直り、スープ皿を差し出す。
トキと、6人の男たち以外にまだ客はない。もう少し暗くなってから、客はどんどん増えてくるだろう。
さきほど貰ってきた牛乳でアイスクリームを作り、桃缶を冷えた氷室の中に放り込む。
「どう?」
スープを口に含んだトキを、ありあはそっと見つめた。
「美味いよ」
いつもなら美味しそうに料理を平らげてしまうトキだったが、何故か今日は時折スプーンを持つ手を止める。
まずいわけではないだろう。おそらく街中でありあが一番の料理上手だし、トキはまずければまずいとはっきり言う性格だ。
どうしたのかしら、とありあは片眉を顰めて彼の顔を覗き込む。
「トキ? どうしたの?」
「…………ん?」
「口に合わなかったら他のスープを作ろうか」
「違うよ、美味しい。大丈夫だ」
そしてふたくちほどスープを飲んでから、何かを決心したかのように彼は厨房に立つありあに声をかけた。
「ありあ、旅に出たくないか?」
思いがけない誘いだった。
【第二話:旅に出ないか。】
「はい、どうぞ」
空が青い。
眩い太陽が燦々と輝いていて、南に見晴るかせる壮大な海の水面もまたきらきらと光っている。
傍に座るトキと、そしてもう1人の青年に、ありあは綺麗な焼き目のついたサンドイッチを差し出す。卵を焼いたものと、肉汁がたっぷり溢れるソーセージをレタスと一緒に挟んであるものだ。
冷やしてあった紅茶を透明の小さなグラスに2人分注いでから、ありあは水筒の蓋をぱちんと閉めた。
結局昨夜のトキの唐突な誘い。あれから店内が客で混み合ってきたせいで、彼の誘いについてしっかりと話を聞くことができなかったのである。
そこで一夜明けた今日の昼に、この小高い丘で――そんな約束をしていたのだった。
「やっぱりありあが作るものは美味しいね」
トキの横に胡坐をかく青年が微笑んだ。
トキよりも幾分優雅で線の細い印象を受ける。響、というトキの盟友であった。トキと同じく隣接する西国の生まれである。
ありあは微笑んで、サンドイッチを頬張る精悍な青年2人を見守った。
「うん、美味い」
響の言葉に、トキも頷いて笑顔を見せる。ほっそりとした肢体のありあを、トキと響が優しく包み込んでいるような――傍目にはそんな印象でもあった。
彼らの眼がひどく優しい。
「それで、旅がどうしたっていうの?」
話を切り出したのは、ありあだった。
この昼食の目的は、例の旅の話だったはずである。
トキも響も食べることに夢中になっていて、思わずありあの言葉に眼を見開いた。
口内に残っていたサンドイッチの欠片を紅茶で流し込み、トキがようやく人心地ついた表情で事の次第を話しはじめる。
「依頼が来たのさ」
「…………依頼?」
「数百年前の名画を、東国の都に暮らす貴族に届けて欲しいんだと」
「名画…………」
美術には、まるで興味のないありあである。
「500万ケルもする名画なんだって。だからトキ1人で運ぶにも少々危険でね。それに場所が場所だろ? 俺がついていくにしても、男2人じゃちょっとね」
響が付け加える。
「ごひゃ、……500万……!?」
それだけあれば、きっと何年も遊んで暮らせるに違いない。ありあほどの質素な暮らしをしている人間ならば、眼をまんまるにするような金額である。たった1枚の絵画のためにそれだけの金額を出すとは、物好きもいたものだ。
そしてありあは、トキのグラスが空になっているのを見て新たに紅茶を注ぐ。
こぽぽぽ、という綺麗な音が3人の間を駆け抜けた。
「それであたしを誘ったの?」
「うん」
でも、とありあは言葉を繋ぐ。
「男2人に女1人っていうのも……怪しくない?」
「だからありあ、俺と駆け落ちしよう」
トキの強い双眸が、炯々と輝いている。
彼の眼には力がある、といつもありあは感心しながら見つめるのだった。
昨夜と違って今日はバンダナをしておらず、茶色の明るい髪がふわりと風に揺れている。
色素の薄い髪が陽光に透けて、仄かに眩しくありあの眼を奪った。
「少し遅れて俺がついていくから」
響が付け加えた。
「やっぱり嫌か?」
「嫌っていうか……あたし旅をするのに何にも持っていないけど……」
「それで構わないよ。必要な路銀も準備も、すべて俺たちでするから」
旅に出ないか、と言われればありあの胸も弾む。ほとんどこの国から出たこともなく、旅という旅もしたことがない。
トキと響が同行するのだと考えれば、それも非常に楽しそうな旅であるように思われた。
しかし、ありあにはくろねこ亭がある。仕事を終えた男たちの憩いの場が。
どうしようか、と迷うありあにトキが優しく声をかけた。
「くろねこ亭のことを心配してる?」
微笑みながら、ありあは頷く。
「大丈夫だよ、常連客には俺たちが説明して休ませてもらえるようにする」
およそ1年前。
この国にクーデターが起こったとき、非常に深く関わりあった3人である。
トキにとっても響にとっても、おそらくありあが一番誘いやすかったのであろう。
「力を貸してくれないか?」
空っぽになったバスケットを一瞥して、それからこちらを覗きこむ綺麗な青年2人を見上げる。
長い付き合いの彼らに頼まれて、ありあが断れるはずもない。それにいまだ見たことのない外の世界を経験する機会でもあった。断るには、それ相応の勇気が必要だった。
しかもくろねこ亭のことは、トキたちが何とかしてくれるという。乗っても良さそうな提案だった。
「ホントにトキたちについて行くだけでいいの?」
「ああ、いいよ」
白いワンピースの裾についた、小さな草葉を払ってありあは立ち上がった。それに合わせて、トキと響がまめまめしくグラスをバスケットに戻す。
2人とも上背があるために、前後を挟まれるとありあの姿はすっぽりと隠れてしまう。 強い夏風に煽られたありあの身体を、トキがいつものように優しく抱きとめた。
芽生えた愛情はとどまるところを知らず、この精悍かつ美しい青年トキは全身でありあを愛している。トキとありあが愛し合うようになってから、そろそろ1年が過ぎようとしていた。
夏が来ると思い出す。初めてキスをしたときの、あの青い空を――――。
「じゃ、断る理由もないよね。駆け落ちしよっか」
トキに向けてウインクをしてみせる。ありあの一言ですべて決まって、響も嬉しそうに笑ってみせた。
不思議な絆で結ばれている――不思議な三角関係。
もっと心の深いところで、響もまたありあを愛していることを彼女自身は知らない。
――――――――――――――――――――
くろねこ亭の休暇は、少々長くなりそうだ。
しばらくお休みします、と看板を出して、今は灯の入っていないランタンを店内に入れる。
無駄にならないように残っていた肉でパイを幾つか作って、デザートとともに王宮付きの庭師たちに差し入れた。
「さて、と……」
少しがらりとした店内を見渡す。
今夜眠れば、明日の朝早くにここを出るだけであった。トキが迎えに来てくれる。今回の旅に、不安がないというわけではない。
向かう場所は東国であり、その東国とこの国との関係は良いとはいえなかった。過去の大戦で、ありあの国が東国で虐殺を働いたという記録が残っている。虐殺した側は忘れても、虐殺された側は決して忘れない。
その積年の怨みが、最近になって再び噴出し始めているのである。
そんな場所にトキがありあを連れていくのには、やはり理由があった。ただひとつ、ひどく単純な理由が。
――――信頼である。抱き締めれば壊れてしまいそうなありあ。
しかしそのありあを誰よりもトキが高く評価しているのだった。
器量、価値観、心支える芯。何もかもトキが驚くほどのものを、ありあはその小さな身体に秘めている。
(何だかどきどきするわ……)
そう思いながら、ありあは階段をとんとんと踏みしめて自室へ上がる。
質素で小さなベッドとも、しばらくお別れかと思うとほんの少しだけ寂しかった。
それでもいつだって未来はひらけている。
空は抜けるように青く、木々も深緑を輝かせて街々を見守っているから。
そして海もまたきらきらと広がっていて――旅をして見たことのないものを見るのもいい。
知らないことを知るのもいい。
そうして人は成長していくから。
【第三話:見晴るかす海原へ】
――衆愚よ、目を覚ませ。
「国境までどれくらいかかるの」
ありあの暮らす王宮の都では、建物は全て煉瓦造りである。それが4日ほど時を重ねて東へゆき、都から離れるにつれて家々は白壁の眩しい造りのものへと変わっていった。
直線距離にしてそれほど遠いわけでもなかったが、しかし多かれ少なかれ気候は異なるらしい。
「あと3日ほどだね」
彼にしては驚くほど遅々とした行程に違いなかった。
東国との国境まで、都から延べ7日もかかるのか。やはり自分が知る世界はちっぽけなものなのだと痛感しながら、都とはまるで異なる風景を興味深げに眺め歩く。
「腹減ったな……パンでも買おうか」
陽射しを見れば、すでに昼時を過ぎていた。頷いてありあはパン屋の店先に立つ。
食文化が違うだけなのか――それとも穀物が不作なのか。都から遠ざかれば遠ざかるほど、パン屋に並ぶパンの種類もめっきり減った。
ふかふかの柔らかなパンも、ここでは見られない。
くろねこ亭を切り盛りする身のありあとしては、その品揃えの悪さが幾分不満でもあり、かと言って柔らかいパンを出せと凄むこともできずに固いパンを3つ買う。
肉屋ではほとんど生同然の薄切り肉を無愛想に渡され、トキがぶつぶつと文句を言った。
東国国境に近いここらの食事情は、不作に喘ぐ東国の煽りを受けてかどうやら良いとはいえないようである。
トキが愚痴を言うなかで、ありあは肉の包みを彼の手からそっと奪った。
「ね、トキ。火をつくって」
海辺なら場所が取れるでしょ、とありあはトキに微笑みかける。生で食べられないなら焼けばいいのよ、と思わず笑えるほど当たり前のことをありあは言った。
半刻ほど歩いて海辺まで出ると、国土を防護するかのように人の背丈ほどの壁が築かれている。漁師たちが出入り口にしているのだろうと思われる築地の崩れから、ふたりは続いて砂浜に出る。
きらきらと水面が陽光に煌めいた。規則的な波音が耳をうち、踏みしめる砂が小さく足元で鳴く。
適当な場所を見つけて屈みこむと、トキは腰に結びつけた袋から細々とした道具を取り出して火をつくり始めた。
――それにしたって最近東から逃げてくる奴が多いなぁ。
早めに一日の生業を終えて帰ってきたらしい漁師たちの言葉が、何か不思議な重みをもってありあの耳に入ってくる。
人の噂は下賎とはいえ、しかしそれがどれほどの威力をもつか。人の集うくろねこ亭で日々を過ごしてきたありあには、よく分かっていた。
トキの耳にもそれは聞こえていただろうが、彼の手は止まらない。
ぽっ、という微かな音とともに、小さな火が掻き集めた枝の中から光を放った。
――粛清がひどいらしいじゃないか。可哀想に…………。
包みから肉を取り出して、トキに手渡す。細い木串に通して、彼は薄切り肉をそっと火で炙りはじめた。油が落ちる心地よい音が、そろそろ夕暮れに向かおうかという海辺に静かに響く。
綺麗に焼けた肉を、一緒に温めたパンの間に挟みこむのはありあの役目である。
噂話をしながら歩いていた漁師たちは、すでに街中のほうへ戻っていった。
再び波音だけになった砂浜の端っこで、ありあは作ったサンドイッチをトキに差し出す。
受け取ってそれを頬張るトキの仕草が男らしくて、しかしそれでも下品ではなくて、ありあは微笑んだ。
「東に入ったら、俺から離れるなよ」
それから東の現状を目の当たりにしても、決してそれに対する苦情は口にするなと。
「いいな?」
ありあは神妙に頷く。事態がどう転んだとしても、心から信頼するこの男に逆らうつもりはなかった。
彼が大丈夫だというなら大丈夫なのだろう。
彼がそうしろというのなら――その通りにしていればいいのだろう。
東がいったいどのような国家なのか、ほとんど祖国から出たことのないありあには分からない。情報源はトキだけである。そしてあとは己の耳と眼。
うん、と頷いたありあを見て安堵したのか、トキは足で火を踏みにじり消した。
「あと少し歩いてから宿を取ろうか」
ありあも立ち上がる。
一刻ほど遅れて2人に追随して来ているであろう響を気遣うように振り返りながら、ありあは歩き出したトキを追いかけた。
名画はおそらくトキの荷の中に――ありあはトキの腕の中に。2人はのんびりと歩を進める。
――――――――――――――――――
国境にいよいよ近づいた夜、トキとありあは国境に程近い森はずれに宿をとった。明日は国境を越え、東に入ることになる。
今夜は響も追いつき、同じ宿に泊まる予定になっていた。もしも名画を奪おうとする輩がいれば、おそらく今夜――国境を越える前に何か仕掛けてくる可能性が高いと。
そうトキはありあに言い含めた。
「お嬢さん」
食堂で温かいスープを飲んでいる背後から突然声がかけられる。ありあは思わず嬉々としてふりむいた。懐かしい声だった。
響である。
「お久しぶり」
白いバンダナをきりりと締めた長身は、トキよりも幾分優しい空気を纏っている。食堂の片隅を、ぱたたた、と軽い足音を立てて何かの獣が走っていった。
「たぬきだ」
動体視力の優れたトキが微笑む。客が無造作に食事をするごとに、パンの欠片や肉の切れ端がぼろぼろと床に落ちていく。
おそらくそれが目当てなのだろう。
「どうだ、尾けられてるか」
「尾けられてるには尾けられてるんだけどね。今夜来るかどうかは微妙だな」
夕食時の喧騒の中では、トキと響の声も掻き消される。自分が口を挟むときではない、とありあは黙ってスープを口に運び続ける。
トキの表情はいつも通り飄々としていたし、響もまた常通り朗らかで優しい顔をしていた。
話している内容が少なからず深刻なものであっても、誰にも分からないに違いない。
「あたし、足手まといにならないかしら?」
少し不安になって、ありあは思わずトキを見上げる。温かいローストビーフを口に放り込んでから、トキはしかし心配するなというように微笑みを返してきた。
大丈夫だよ、と小首を傾げる。
「おまえはいつも通りでいいんだよ。旅を楽しんでいてくれればそれでいい」
「俺たちは顔を知られていないから平気さ。ありあがカモフラージュになってくれればそれだけで助かるんだよ」
そんなものかしら、とありあはパンで頬を膨らませた。どうやら名画を狙う者たちの眼を、分散させることさえできれば良いらしい。
500万ケルもする名画がどんなものかと思って訊いてみれば、ひどく小さなものであるという。
トキが持っているのか、と訊くとそれは内緒だとはぐらかされた。
(……それでも)
まあこうして旅をするだけで彼らの手助けになるのであれば、それもいいか。
そんなことを思いながら夕食時は過ぎていく。
――――不意に。
窓硝子が割れる音が響いて、室内の灯が消えた。
【第四話:そして東へ】
突然あたりを包んだ暗闇は、ありあの視力を奪う。混乱したふうな客の声が交錯するなかで、彼らはどれほど眼が見えているのだろうか。
――伏せてな。
トキが低い囁きとともにありあの頭を床に押し付ける。じっとしていれば良いのだろう、と判断して息をひそめた。
すぐ近くに、トキの温かい胸があった。
頬が彼の素肌に触れていて、そこから確かな鼓動が聴こえてくる。強い腕がしっかりとありあの身体を捉えて放さなかった。
床に飛び散ったのであろうスープの匂いが、窓から入ってくる夜風に揺られて漂う。
鼻が利かないことを厭うように、トキが小さく鼻をくんと鳴らす気配が分かった。
暗闇に眼が慣れない。
がしゃん、がしゃんと卓子やら椅子やらが壊れるような騒音だけが耳をつき、男たちの太い罵声が響く。料理が好きなだけの少女には幾分緊張を強いられる時間。
――いくばくかの時間の後に、ようやく騒ぎが静まった。
静まり返った食堂の中を、次々と小さな灯りが照らし出し始める。響が点けたものらしかった。
落ち着き払った彼の表情と、そして傍らでありあを支えるトキの横顔――それから殴打され蹴り倒された、盗人と思われるいでたちの男が数人。部屋の隅で事の顛末を見極めようと目をまんまるにしている客が数人。
真っ暗闇だった視界に、ようやく様々なものが飛び込んでくる。
「大丈夫?」
トキが傍にいるなら大丈夫だろう、と分かっているはずだ。分かっているはずだったが、それでも響はありあに優しく問いかけた。
こういう男なのである。微笑んでありあは頷いた。
「大丈夫。響は?」
平気だよ、とウインクを寄越す。トキもまた静かに笑って、ありあをそっと起こした。
「平穏な夕食はなかなか望めないらしいね。とにかくもう今夜は休もう」
響がわずかに乱れた前髪をかきあげる。その仕草はトキのそれよりも幾分優雅で、やはり育ちが良いことを窺わせた。彼が先に立って、部屋の奥の階段へ向かう。
「――……きゃ!?」
そしてトキとありあが並んで彼に従おうとしたとき、足を引っ張られて思わずありあは悲鳴をあげた。
倒れた男の太い手が、必死の様相を呈しているというふうに青筋を走らせながらありあの足首を掴んでいる――トキの眼が厳しく光った。
「た……」
「話があるなら聞いてやるよ、とにかくその手を放せ」
トキの足が、男の手を蹴り払う。そうして邪険に蹴り払われた手をそのままに、男が呻いた。
人の苦しむ声に敏感なありあが、思わずしゃがみこむ。
「た、頼む……少しでいいんだ、金を分けてくれ」
困惑したありあは、傍らに立つトキと響の凛然とした美貌を見上げた。ありあは旅にくっついて来ただけで、路銀も行程も何もかも彼ら任せなのである。
困窮した汚い男の小さな助けになってやりたくとも、彼女独りの力ではどうにもできなかった。
「俺たちも道楽で旅をしてるんじゃないんでね」
こういうときの響の声は、驚くほど冷たい。
「おまえ、東の人間か」
「……あぁ……頼む、少しでいいんだ」
ひとまわり以上も年下と思われるトキを相手に、どうしても勝てないことをすでに悟ったのか盗人たちは神妙な面持ちである。
少しでいいんだ、と呟く表情はひどく切羽つまっており――それは決して芝居には見えなかった。
「何をそんなに困ってる」
トキが訊く。訊きながらもさりげなく彼の手は、ありあを庇うように彼女の腰にあった。
金を求める男の傍らで、意識を取り戻した若い少年が不貞腐れたように憮然として座り込んでいる。そのほかの数人は、今もまだ意識を手放して倒れこんだままであった。
「女房が……」
子どももいるんだ、年老いた両親もいるんだ。なのに生まれが悪いから中央政府に取り立ててもらえないんだ、と男は生気を失くした顔で言う。
トキと響の顔が驚くほど真剣で、ありあは少しばかり不安な思いを抱きながら盗人の話を聞いた。少しでも国政への不満を洩らせば、密告されて即刻処刑されるという。中央政府は豪華絢爛な生活を享受しているが、しかし王城下の街から少し離れればそこは荒野。 農民たちが息も絶え絶えの蟲のような生活をしているらしい。
「俺が少しでも何か持って帰ってやらねぇと」
病気がちの母親も栄養失調で死んじまう、という。
「仕方ねぇんだよ、別に盗人になりたくてなったわけじゃない」
「まあ、それも最もだね」
響は小さく鼻で嗤った。
優雅で人好きのする好青年だったが、どこか人情のない冷たさを隠している。
こんな話にはすぐに哀しくなり、またいたたまれなくなってしまうありあ。彼女にとっては響のような性質が不思議なものに見える。しかしこれも生い立ちや生業の違いであろう。
同じ大地に立っていても、生きる世界は微妙なところで異なっている。
トキのことも響のことも大好きなありあだったが、その事実もしっかり認識していた。
「自分の肉親のためなら――他人は殺してもいいっていうのがあんたたちの考えかい」
「……響」
少し棘を含んだ響の揶揄を、トキが何故か止めた。
「まあ、俺も自分の大切な者のためなら人殺しくらい厭わないけれどね」
あの朗らかで優しい双眸の奥に、彼はいったい何を秘めているのだろう。思いがけないところで、思いがけない裏の姿を見たような気がした。
思いながらも、おとなしくありあは黙って成り行きを見つめる。これは男たちの世界だ、と無意識のうちに思っているらしい。そんな自分が少し滑稽で、苦笑が洩れた。
――――――――――――――――――――
ほんの僅かの路銀を投げ捨てるように与えたトキと、それを涙さえも流して有難そうに受け取った盗人。
まだ眼裏に蘇るその光景を、ぼんやりと思い出しながらありあはベッドの薄い毛布にくるまった。
――東はそんな国だ。聞いてたろ。
急峻が美しい東国。そこで何が行われているのか、民がどのような暮らしをしているのか。ありあは考えたこともなかった。
自分たちの暮らしを考えて、そして生きていくだけで精一杯だった。それがたった一度の旅路で、つと眼を向ける方向が異なってくる。
そこは独裁的な中央集権国家。大自然に恵まれた国柄でありながら、人心はひどく荒んでいるという。
ありあの国でも以前――先の皇太子時代にはそのような独裁政治が行われていたが、トキや響の話を聞けばそれよりもさらにひどい、と。
――少しでも不満を洩らせば。
隣人が密告することも往々にしてあると。そしてひどい時には己の家族でさえも密告を厭わないという。密告者にはそれ相応の地位と暮らしが約束されているのだ、とトキは淡々と教えてくれた。
その東国へ行く。
――大人しくしていれば大丈夫だよ。
――外面だけは神経質なほどによく見せようと躍起になっているから、旅行者は安全さ。
図らずも不安そうな顔をしたありあに、トキも響も微笑んでみせたものである。彼らが言うのならば大丈夫だ、と信じることができた。
だが、そんな国の現状を見て楽しく旅ができるはずもない。
『それにしたって最近東から逃げてくる奴が多いなぁ』
夕暮れ時に海辺で聞いた、漁師の言葉も思い出す。粛清がひどいらしい、という言葉も耳にした。あまり気が進まない、そう思いながらも読み書きができないありあは考える。
(仕方ないわ)
ここまでやってきたことは、きっとすでに定められていたことだから。
だからとにかく眼に入るもの全てを、身体全部で受け止めるしかない。読み書きもできない身であるから、自分の眼と耳と身体だけが頼りだった。
(くろねこ亭に、たくさんお土産話を持って帰ってあげなきゃあ……)
それでもこのときは呑気だったわ、と。
ありあは――後になって苦笑する。
【第五話:大地慟哭】
美しく整えられた石畳の街道は、見られなかった。空だけはひどく明朗な輝きでもって碧く広がっていたが、国境付近の山を越えてから点在している村々は妙に寒々としている。すべての富と財産は、王宮とその付近に集中しているのだろう。
なるほど――こうして見てみると、確かに己の国は恵まれている。ありあは国という枠の相違によって国民の顔がこれほどにも変わるものかと、半ば驚愕の思いで足を進め続けた。
響は再び一刻ほど後ろに退き、ありあの横には淡々とした表情のトキだけが歩いている。
きっとありあにとって新鮮なものでも、彼にとってはすでに見慣れたものに違いない。それが頼もしくもあり、少しばかり哀しくもある。トキはいったい、何を見て新鮮だと感じるのだろう。
ぱぁん、という鋭い音がしてありあは我に返った。考え事をしながら歩く彼女を気遣ってかトキも無言のまま足を運んでいたが、その音にありあのほうへすっと腕を伸ばす。
ありあの細い身体を、彼が庇う格好になった。
(――……?)
自分を庇うトキの腕が、ちょうど視線のあたりにある。様子を窺うこともできずに、ありあはついと背伸びをした。
「トキ?」
どうしたの、と問いかけようとして思わず口を噤む。
「見るな」
トキが静かに言った。
見るな、と言われれば尚更見たくなるのが人間というものだったが、ありあはそれに従った。
信じているのである――トキが見るなというのならば、それは見てはならないものか見ないほうが良いものなのだろう。
「何なの? 見ないから教えて」
「……公開処刑さ」
ぱぁん、と再び音が聞こえた。
ありあたちの歩く砂利道を、左手にしばらく行った小川土手でそれは行われているらしかった。
見晴らしの良い道で、おそらく気付こうと思えばその公開処刑に気付くことができたのであろうが、考え事をしながら歩いていたためにどうやら何も眼に入らなかったようだ。
「公開処刑……」
ありあの国では、もう最近まるで耳にしなくなった言葉である。1年前クーデターが起こるまでは、頻繁に行われていたがしかし、クーデター後はぱたりと止んだ。
「この国ではこれが当たり前なんだ。民ももう諦めている」
トキの声は穏やかで、特に憤るふうでもない。いろいろなことを知りすぎているからかもしれなかった。
ぱぁん、という音だけが響くだけで、人の声は聞こえない。ざわめくでもなく、泣き叫ぶでもなく、銃声だけが規則正しく旅人の耳をうつ。
先ほどまで右側を歩いていたトキが、今はありあの左手に場所を移していた。トキの強靭で美しい肢体を壁にして、ありあは視線を心持ち右手に向けながら歩く。
人が死ぬところを見るのは、嫌だった。
「あれを見たがる奴もいる」
トキが呟く。
公開処刑が見られなくなった国の若者の中には、人が死ぬところを一度見てみたいと公言して憚らない者がいることを、ありあもよく知っていた。
くろねこ亭にやってきた少年に何故と問うと、自分で殺すと罪になるから、と笑顔で言った。
「………………」
人間は、人間としての道を踏み外してはならないとありあは思うのである。
どんな理由があるにせよ、生命あるものを殺すことは人として生きる道を手放すことに他ならないと。
当然のように買い入れる肉の包み――あれひとつをとってみても、結局のところ間違いなく命を殺めているのだと、ありあは時々いたたまれなくなる。何がしかの命を奪って、自分は多数の人々に食事を提供しているのだ。
だからそれだけに無駄遣いもしたくなかったし、自分の出来うる限り命は尊重していたかった。
喧嘩の中で、死ねと簡単に口にする子どもたちを見るたびに複雑な思いに駆られる。
――死ぬって、そんな簡単なことじゃないわ。
人間一度しか死ねないのだから、そんな簡単に死なないのが人間。
けれど必ず一度は死ぬ。思ったよりも簡単に死んでしまう――それも人間。
「ありあ? 平気か」
銃声は後方へ遠ざかっていた。あの場所で、殺す者は何を思っているのだろう。殺される者は何を思っているのだろう。
もしも殺す側の人間に感情があるならば、それは慟哭であってほしいとありあは切なく思った。
この手で何かを殺める悲哀と慟哭を知れば、自然命奪うことの恐怖も感じるだろうに――しかしきっと殺すことに慣れたものが聞けば、おそらくそれはただの綺麗ごとに過ぎないか。
「ありあ」
「大丈夫よ、大丈夫。心配しないで」
傍らのトキに微笑みかけて、その瞬間背後に気配を感じて振り返ったありあの眼に、7つか8つほどに見える痩せた子供が駆けてくるのが映った。
「……ちっ」
トキが舌打ちをした理由が分からないまま、ありあは必死の形相で駆けてくる子を見つめる。
「寄るな」
「ト……!?」
ありあは茫然と成り行きを見つめる。
トキが駆け寄ってきた子を突き放したのである。故国の街中でも、幼い男の子たちを相手に遊んでやっているトキであった。
彼の思いがけない行動に、ありあは眼を見張る。
「……っぉ、母さんが」
全力で駆けてきたのだろう、息が弾んでいた。
「こ、ろされる助けて、ください……っ」
「困る。戻れ――今戻れば、まだおまえは助かる」
彼の声色はあくまで穏やかで、取り乱したふうはない。驚いた様子もない。子供に向けて迷惑げな顔を向けることもなく、ただ淡々と少年を促す。
「トキ!」
「おまえは黙ってて」
「でも……」
何か理由があるのだろう。決して子供嫌いではないトキが、こんな行動を起こすこと。 トキを信じている。トキを愛している。トキの言うことには従おうと――思っていた。
「ありあ!」
道の向こうからばたばたと足音をたてて走ってくる、役人らしき男たちの姿。それが棍棒のようなものをふりかざしているのを認めた。
「旅人か、その餓鬼を渡せ」
トキが静かに子供の袖を掴もうとして、そしてありあがその手を止める。
「盗みを働いたのさ」
何故、というありあの非難じみた視線に気付いたのか役人のひとりが取り繕うように言った。
「この子の母親は?」
これ以上ありあを行動に走らせまいと、トキが静かに彼女の問いを奪う。
「躾がなっとらん。盗みをしたら、その家族皆共犯だ」
「じゃあこの子もこの子のお母さんも処刑するつもりなの!?」
思わずありあが叫んだ。悲痛な面持ちの少年を、力の限り抱き寄せる。
庇うつもりか、と官吏が眼を吊り上げて彼女を見下ろした。
「王殿下のご命令だ、仕方なかろう」
ありあの紅い唇が、への字に歪む。それを見て、トキが子供を突き放し、無理やりありあの身体を自分のほうに引き寄せた。あのとき彼が舌打ちしたのは、こうなることを予測していたからかもしれない。彼の双眸が厳しかった。
「ほら、来い!」
少年の眼は静かである。
先ほど命乞いをしてきた必死の眼はこの短い間に消え失せ、そこには明らかな諦念が見えた。
死をすぐ間近に見つめている視線だった。ぞっとする。俯き顔で引きずられる少年の、彼の未来がもうそこで終わろうとしている。
トキの言うことには従おうと――思っていた。
「……っゃ……やめて! はなして!」
従おうと思っていたら、勝手に口が怒鳴って勝手に身体が動いていた。
2005/05/25(Wed)16:52:22 公開 /
ゅぇ
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■作者からのメッセージ
何か重みがない!! 何か納得いかないけどこんなふうに動いたから仕方ない、そうなるべき運命だったんだ!! と作者にあるまじき言い訳をしながらの更新です。玉響シリーズ、始めていいですか。駄目ですか。やっぱりこれ終えないと始めちゃ駄目ですか。【俺たちは英雄だ】はオマケみたいなものなので置いといて、玉響シリーズ手つけちゃだめですか。アリアばっかりだと行き詰るんですけど、とぐちぐちぐちぐち呟きながら(笑
何でしょうねぇ、あれです。今までそんな雰囲気じゃなかったのに、東国にはすでに銃なんかあるの? と思った方、申し訳ありません。でも音でありあたちが公開処刑に気付くようにしたかったので、もう仕方ありません。何でもアリのファンタジーです(笑。どうかどうかお気になさらず。
ええもう今日はとにかく腹のたつことがありまして、もうもうもうもう怒りのやりばがないゅぇでございます。ともすればそこらにあるものを破壊してまわりたいくらいに。あ、ちなみに実習サボって書いてるわけではありませんッ、今日は休みなのでふ(´∀`)笑 皆様に応援いただいて、ゅぇはとってもとっても嬉しいです。頑張ってますよぉ〜(≧∀≦)
バニラダヌキさん、教科は国語ですっ♪古典の授業よりも現代文の授業のほうが多くて、不満です(笑)あたしはともかく古典がやりたいんですぅぅぅ!!
――――と、色々書き連ねたところで、そろそろ神業三作品同時進行に手をつけようか迷い気味のゅぇでした。だって書くの楽しいんだもん……
◎微修正&ジャンルFTにしました◎
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