『雨の下の僕ら@』 ... ジャンル:未分類
作者:空羅                

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最初に目にしたときに思ったのは

   とても綺麗だな。

最後に目にしたときに思ったのは

   何て醜いんだろう。

昔の事の筈なのに今も僕を苦しめる。

今でも夢に出てきては笑いかけてくれる

人間に一番近く、一番遠い存在の彼女






 「なぁー。あっちの方の屋敷って誰か住んでんのか?」

まだ中学校1年の時友達の1人がその様な事を言いだした。

 「あー…建ってるんだから誰かいるんじゃない?」

さほど興味の無い僕は適当に答えを返す。

確かに僕達の住んでる町で一番目立っていたその屋敷は

誰が住んでいるか知っている者はいないし

海も傍にあり、他の家とは全然ちがう洋館の様な造りだった。

僕も最初は気になったが、やがて気にしなくなった。

だって皆、その屋敷など最初から無かったように見てみぬ振りをしているんだ。

何故だかは僕もわからないけれど…。

 「気にならないのか?陸は」

友人が僕に問いかける

 「別に…。てゆうかお前は何で気になってんの?」

 「いやぁ〜。噂で聞いたんだけどさ、あの屋敷に出るらしいぜ! 幽霊!」

けらけら笑いながら言う友人に僕は呆れたように言い放った。

 「居るわけ無いだろ。なんでそんな事思うんだか」

 「そんな事わかんねえだろー!じゃあ確かめに行ってみようぜ!」

 「馬鹿馬鹿しい。そんなの行く気はないね」

 「何だ陸、怖いのか?」

莫迦にしたような友人の態度に僕は少しカチンときた。

 「いいよ、確かめてやるよ!どうせ居ないんだろうしな」

自信満々にそう言った僕

想えばそれが全ての始まりだったのかもしれない。




 「近くで見るとまたでかいなぁー。」

屋敷の前で友人が楽しそうに言った。

 「言っておくけど僕は確かめたらすぐに帰…」

言い終わる前に近くで物音がした。

 《ガサッ…!!》

 「何だ? 今の音」

そう言いながら友人は伸び茂った草むらを掻き分けて行く。

僕は懐中電灯を適当に付けたり消したりして暇を持て余していた。

虫か何かだろうと思っていたからだ。

 「ぎ…ぎゃああああああっっ!!」

《ビクッ!》

いきなり悲鳴を上げた友人に驚き、急いで僕は彼に駆け寄った。

 「な…何だよ!」

友人は血相を変えて来た道へと逃げていった。

 「おいっ!…なんなんだよ。」

僕はさっきまで友人が見ていた場所へ視線を移してみる。

そこには

女の子が倒れていた。

血だらけで顔は髪で隠れていて髪は多分…長いんだろう。

ちょっと僕も驚いたが、すぐに冷静を取り戻し彼女の肩を揺すってみた。

 「大丈夫ですかー!返事してください。」

彼女はピクリともしなかったしその肩はとても冷たかった。

 (どうしよう…。警察とかに連絡した方がいいのかな)

どれくらい考えていただろう。

彼女が突然目を開けた。

 「う…。」

僕はハッとして彼女に話し掛けた。

 「あっ! 大丈夫? すぐに救急車呼ぶから…!」

そう言いながら携帯電話を取り出すと彼女は僕の腕を掴んだ。

 「な…何?」

 「駄目。」

そう言ったとたん、 僕から携帯を奪って海の方へ投げた。

 《ジャポン…!》

水の音がする。

 「なんて事するんだよ!!!」

僕はそう言って急いで海の方へ走った。

 「あの電話買ったばっかりなのに!!」

探していると雨が降り出した。

 《サァァァァァ……》

 「あ〜!! くそっ! うわぁっっ!」

何かに滑って僕は勢いよく海に潜ってしまった。

 「うぇ…。しょっぱい」

 「フ…フフ…。」

さっきの女の子が僕を見て笑っていた。

雨でさっきの血は綺麗に流れていた。

というより、傷口さえ見当たらなかった。

腰にたどり着くほどの長い髪 前髪は眉に少しかかるくらいの長さ

瞳はとても大きい灰色の瞳をしていた。

 (なんて綺麗なんだろう…。)

ただ、そう思い見とれていた。

 「あ…何で笑うんだよ!!」

すぐに我に返りそう問いかけた。

 「だって…変なの。誰も投げたなんて言ってないのに。」

クスクスと笑いながら彼女は僕の携帯を見せてきた。

 「あっ! 僕の携帯! 君ふざけないでよ!」

 「ここに何の用?」

僕の問いかけを無視して彼女は逆に質問をしてきた。

 「え…。君は此処の娘さんなの?」

問いかけると彼女は曖昧な笑みを浮かべた。

そう、この夜が全部の始まりだったんだ。







続く












 




 
 







2005/05/04(Wed)23:11:21 公開 / 空羅
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