『夕方』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:捨て猫                

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◆twilight












 ――日が沈みかけてくる時間――


 ――空が暗くなり、よい子は帰る時間――


 ――大人はよく見逃す時間――


 ――世界の色が変わる時間――


 ――暖かくもあり、寂しくもある、時間――


 これは、そんな曖昧な時間、夕暮れ時をひとつの話としたものです。つまらないかも知れませんが読んでいただけると幸いです。それでは、始まり始まり……。パチパチ。







 1,

 季節は秋の中程、木の葉もほとんど紅葉してしまい、木々はどことなく寂しい雰囲気を持ち始めていた。
 俺の名前は笈川 結城(おいかわ ゆうき)。私立高校の三年だ。受験のこともあり、毎日が憂鬱だった。学校から下校するとき必ず出遭う夕方。その時間は少し気分が晴れた。少しの時間だが、夕陽でオレンジ色に染まった世界を見ることが好きだった。本当にその時間は短いものだと思う。しかし、この時はとても長く感じた。
 それはいつもと変わらない帰り道だった。学校から家まではバスで行けばすぐだが、歩くと四十分くらいかかる朝は慌てているためバスを利用するが、帰りはお金がもったいないから歩き、というのはいいわけで、本当は夕暮れの町を歩くことがすきだったから歩いている。
 いつもと同じように学校をあとにして、いつもと同じように夕暮れの町を歩いていた。そして俺は町から少し離れていて、坂を上がったところにある自宅を目指した。その坂の途中に町を一望できる場所がある。俺は必ずと言っていいほどそこに寄っていた。その場所にはベンチがあり、座って夕暮れの町を眺めるには最適な場所だった。しかし、町から離れているためか、人はほとんどいなかった。俺はいつもそこに夕方が終わるまでいた。だから、この日もそこに足を運んだ……。しかし、そこにはいつもと違うものがいた。同じ学校の女子生徒だった。よくみれば、幼馴染の小泉 薫(こいずみ かおる)だ。けど、帰り道はこっちじゃないはずだが……。薫とは腐れ縁で、幼稚園から一緒だ。
幼稚園のころはよく一緒に遊んだもんだなぁなどと考えながら声をかける。
「よぅ! なに黄昏てんだよ、辛気臭いな」
 俺はいつも自分がやっている行動だということを棚に上げて言う。
「…………」
返事なしっと……、これはなんかあったなと心の中で思う。薫はいつもなにか気にくわないことがあると俺に愚痴りにきた。そういえば、高校に入ってからはこれが初めてだった。
「帰るかな」
 俺はいつもと同じように話を持っていくために白々しくこの科白を言う。
「美女が悲しそうな顔してんのに、その科白はなんだぁぁぁ!!」
 といつもなら来るのだが……、こないな。これは珍しい。そして、困った。いつもなら、ここで明るくなって、一気に愚痴を言い始めるのだが、今回はそれがない。やけに夕方が長く感じる……。もう空気は夕焼けの寂しい色と同じように冷たくなってきていた。
そして、結構な時間が過ぎたような気がする、薫が口を開いた。
「帰らんないの?」
 少し声がかすれていた気がしたが、それより、かなり腹がたった。まぁ、なんでもいつもと同じようにいくと信じていた俺が悪いのだが……、そして、また予想外の科白が聞こえた。
「帰らないなら少し話し聞いてよ……」
 俺はかなり間抜けな顔をしたと思う。正直彼女からこんな科白が聞けようとは夢にも思わなかった……。そして、明らかにいつもと雰囲気が違うので俺もふざけるのをやめた。
「ああ……いいぜ、なにかあったのか?」
「…………」
 さすがにお釈迦様といわれている、寛大な心をもつ俺でも少し腹がたってきた。話しかけたら無視(まぁ反応はしたけど)話聞いて、と言ったかと思えばまた沈黙、はっきり言って俺は、こんなよくわからない嫌な雰囲気を過ごすなら一日ぐらい夕方を逃してもいいかなとか考え始めていた。けど、なぜか帰ることをためらった俺は、ベンチに腰掛けることにした。よいしょっと……、わざとらしく声を出すが、無反応。夕方はまだ始まったばかりで、さっきからここの空間だけ時間が止まってしまっているんじゃないかと思うくらい、ここに長い時間いた気がする。夕陽がやけに眩しい。彼女は町が見えるところにたって、町のほうを見ている。眩しくて顔をよくみることはできなかった。
 風が吹いた、もう季節は秋だ、結構冷たい風だ。そして、ようやく彼女は再び口を開いた。
「隣に座っていいかな……」
「おう」
 俺はこの時、きっと今日はゆっくり一人で夕陽を見れないのだろうななどと考えていた。再び静寂が訪れた。夕方はまだ終わらない。
「ねぇ、私変わったかな?」
「ああ」
 俺は即答した、しばらく見ない間に随分と辛気臭くなったもんだ……。と付け加えた。彼女はこの時初めて笑った。まぁ笑ったと言ってもほんの僅かに、注意して見ていないと見逃すほど微かに、けど確かに笑った。俺は少し満足感を得た。しかし、またすぐに沈んだ顔になってしまった。
 俺はもう覚悟を決めていた。彼女が話してくるまで待つ、と……。そして、かなり長い時間がたった、ような気がする。彼女はようやく話し始めた。
「実はね、結君に話があるの」
「なんだ?」
 それはさっき聞いたよ、などと答えたりはさすがの俺でもしない。彼女は少し躊躇ったようにしていたが、
「好きなの」
 と言った。これには正直かなり驚いた。一瞬なにを言われたのかわからなかった。
 俺は口をパクパクさせていた。しばらくして、ようやく何を言われたのか理解し始めたころにまた彼女は口を開いた。
「驚いたでしょ? 私自信もおどろいてるの」
 おかしいでしょ? と彼女はクスクスと笑っているが、こっちは笑えない。
「それは……」
 俺はなんとかそれだけを口にしたが、後が続かない。彼女はまだ下を向いて肩を揺らしている。もう頭の中が真っ白だった。まさか、こいつから告白されるとは夢にも思わなかったからだ。今日は自分の予想が裏切られてばっかだ……、とようやく冗談を思えるくらいにはできた余裕。夕方はまだ終わりそうもない。彼女は頑張って自分の気持ちを打ち明けたのだ。俺も答えなくてはならない、などと頭では考えているのだが言葉がでてこない。そして、ようやく言葉が言えるようになった。
「俺も……、薫のこ」
「ぷっ、」
 へ?
「あはははは!」
 突然彼女は笑い出した。俺はしばらく呆気に取られていたがすぐに理解した。
     ――ハメラレタ!――
 俺は恥ずかしくて死にたい気分だった。もうなにがなんだかわからなくなった。
「ごめん、ごめん」
 彼女はまだ笑っている。俺は返事をする気力も使い果たしていた……。
「はぁ、まさかこんな手に引っかかるとはなぁ……」
 俺は恥ずかしさを抑えるために、自分で自分のことを笑う。
「ったく、驚かせやがって……」
 俺は悪態をつく。その科白に彼女は一瞬きょとんとして、再び笑い出した。
「違う違う、嘘じゃないんだよ。まさかそっちも、なんて科白がきたもんだから……つい」
 なにが嘘じゃないんだか……、もうだまされねーぞ、と再び悪態をついた。しかし、彼女はそれを無視して自分の話を始めた。
「いや、好きなのは本当、けどそっちが私のこと好きなら、私はあなたを好きじゃない」
 意味のわからないことを、まだ騙し足りないのかなどと思っていると、
「引っ越すの、明後日だと思う」
 ……また嘘だろうと言おうと思ったが、雰囲気がまた戻っているので信じそうになって言えなくなってしまった。しかし、今度は簡単には信じないことにした、それは騙されただけだからではなく……、
「随分急だな、おい」
「黙ってたの、なんだか高校に入ってから話さなくなっちゃったでしょ?」
 それで言いにくくて、と言ってきた。ありえそうな話だ。しかし、だったらなんであんな嘘を?それがわからなかった。しかも、俺が好きなら、そっちは嫌いって……。
「引っ越す前にせめて思いだけでも伝えたかったの……」
 俺は一人で納得した。もう会えないかも知れないから思いは伝えるが付き合うなどの交際はしない、と。そんなところだろう。
「俺は嘘であんな科白言わないからな」
 俺はもう開き直っていた。実際嘘ではなかった。この年まで好きな女の子というものができなくてなぜだろう?とよく考えていて、この時やっと答えがでたのだ。彼女は目を丸くしていた。そして
「うれしい」
 それだけを言った。そして、俺たちはそのあと何も話さず、帰ることにした。夕方はそろそろ終わろうとしていた。
「あっ!一番星!」
 彼女はいつもと同じに戻っていた。もう、さっきまでの会話はなかったことになったのだろうか……。いくらまだ夕方だとは言え、一人で帰らせるのも不安だったので、送っていくことにした。彼女の家は坂を下った町の中にある。二人とも無言で坂を下る。送りながら、どこに引っ越すんだ?と聞いたが返事はなかった。もう、会えないのか、などと一人考えて空を見上げる。半分夕方、半分夜と夕方以上にひどく曖昧な時間だと思った。そして、前にはもう彼女の家が見えてきていた。とくに挨拶もなしで分かれた、と思って下を向くと突然唇にやわらかいものが触れた。
「――――っ!」
 …………。そして、じゃあね、と言って彼女は帰ってしまった。まだ、唇に感触が残っている。おいしかった……じゃなくて! もう、特に何も考えることもできない状態で、家に帰った。家につくころにはもう夕方は終わっていた。たまにはこんな夕方もいいかな、などと思いつつ……。
 俺は彼女が引っ越すまで夕方を楽しむのをやめていた。さすがにすぐには気持ちの整理がつかないものだった。そして、それから数日が過ぎた。今日は日曜日で学校も休み。なにもすることがなく、家でごろごろとして時間をつぶしていた。

      ――ピンポーン――
 
 今にも寝そうなところにドアのチャイムがなる。まぁ、きっとセールスかなにかだろうと無視することにした。両親は二人でドライブに行くと言っていたから今は家に俺だけだ。だから、こうして寝ていれば本当に留守のように見せれるだろう。

      ――ピンポーン――

 しつこいなぁ……、などと心の中で悪態をつく。まぁ、すぐに諦めて帰るだろう。
……。ふぅ、やっと静かに……、
 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!
「あー!!もうっ!誰だよっ!うっさいな……あ?」
 ドアを開けるとそこには薫がいた。あまりに驚いたため、素っ頓狂な声が出てしまった。
「え? どうして?」
 かなり間抜けな顔をしていたと思う。彼女は笑っていた。そして、このときも予想外の科白を言った。
「お隣に引っ越してきた、小泉です。よろしくお願いします」
と言って彼女はお辞儀をした。そして、いきなり飛び掛ってきた、猛獣のごとく……。





 それから、俺は夕方を一人でのんびり見ることはなくなった。だけど今は、冬だというのに、どこか暖かい、そんな気分を味わえる夕方を二人で見ている。







                




            fin

2005/04/14(Thu)01:05:11 公開 / 捨て猫
■この作品の著作権は捨て猫さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 こんばんわ〜!>< SSです!どうでしたか?え?話ができすぎてる?気にしないのです!Happy end は読んだ後幸せな気分になれるからいいのです!ただ……表現力がないため、なんか素直に感動はできませんけどね(泣)もっとうまく小説がかきたいよおおおおおおおお!!!!!(殴
すいません、少し乱れました(ぉ
そんなわけで、感想、アドバイス、いろいろお願いします!
 今回は、こんなつまらない作品を読んでいただきまことにありがとうございます。少しでも心がオレンジ色に染まってくれるといいなぁと願う今日この頃です。

 また、いつもアドバイスをくれている方、ありがとうございます。まだS未熟ものですが、見捨てないでいただけるとうれしいです。
 長々とすいません!簡易感想でも喜ぶ作者でした。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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