『イノセントワールド』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:立夏                

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いつもアナタは突然で


【1】Any


7月の朝。
もう、ベットの横からは光が差し込んでいた。
目覚まし時計はかけているがいつも母の声で起こされる。
今日もそうだった。
上半身を起こすと、長く伸びた髪がパジャマに入って少しくすぐったかった。
しばらく、ベットの中でボーっとしているとまた母の声が聞こえた。
私はしぶしぶベットから降り階段を降りた。
洗面所で顔を洗い、制服に着替ていると、先ほど見た夢を思い出そうとする。
だが、いつも覚えて等いない。
見ていたハズなのに、思い出す事は出来ない。
もしかすると見ていないかもしれない。
そんなことを考えながら、着替えは済んだ。
リビングに行くと母がテレビに釘付けになっていた。

「父さんは?」
「もう、仕事いったわよ」

私は「そう」と言って、洗面台に向かった。

「昨日、塾のテストどうだった?」
「別に…」
「別にって!!」

私はリビングから聞こえる母の声を無視して歯を磨いた。

「いってきまーす」

いまだに一人で喋っている母をほっておいて私はそそくさと家を出た。
自転車に乗っていつもの道を走る。
田舎の中の田舎。
田んぼ、その横にある用水路。
私の目に入るのはいつもの風景。
この風景を私は何度見ただろうか。
この道は何年たっても変らない。
この町さえも。
そして、この私もその一つだ私はどうすればいい?

学校につくと行き成り先生に呼ばれた。

「外村、後で職員室に来い」
「えっ!私なにかしましたか?」
「何かしたかどうかは知らんが、お前にお客様だ。

そういって先生はあたふたする私をほっておいて階段を上っていった。
私に客なんて、誰だろう。
私は疑問を抱き職員室に向かった。

「失礼します」

私が職員室に入ると中にいた先生たちは私を一斉に見た。
それもその目つきはとても鋭かった。
私は少し不安を覚えていると校長先生がイスから立ち上がった。

「外村さん、待ってたよ」
「は、はい」
「君にお客さんだ」

そういって校長先生は職員室から出て応接室に向かった。
本当になんだろう。
私なにかしたのかな。

そんなこと、ぶつぶつ考えながら私は応接室に向かった。
私はふうッと一息つくとどきどきしながらドアを開いた。

「しつれいしまーーーーーーーーーーー」

部屋には男の人がいた。
茶色の髪で。
深い青色のサングラス。
白いカッターシャツに、黒い色のネクタイ。
そしてネクタイと同じ色のパンツ。

私は目を見開いた。
息を吸うのが早くなるのが分かる。

「ツカサ先輩?」

彼が私の名前を呼んだ。
昔と同じ声で。
涙があふれた。

「ツカサ先輩でしょ?」

涙は止まらなかった。

「トーヤ」

彼が名前に反応するのが分かる。

「トーヤ、トーヤ、トーヤ」

繰り返し名前を読んだ。
床に涙が落ち、口にも入った。
そんなことを知ってか知らないか、トーヤはにこっと笑い歩いてきた。
私の方に歩いてくる彼は私の知らない彼だった。
確かに彼なのに、違って見えた。
彼はちゃんと時間を過ごしている。
でも、私は過ごしていない。
彼は私を抱きしめた。
もう、大人になってしまった彼は子供の私をどうして受け入れてくれるのだろう。

「ゴメン」

一言彼はそういった。
私はこらえていた声が収まりきれなくなり声を上げた。
そうすると彼は私の体を強く抱きしめる。
何度も謝りながら私を優しさで包み込む。

トーヤ、謝るのは私のほう。
未だに私はこの止まった世界の中。
ねぇトーヤ
私はどうすればいい?

2005/04/11(Mon)22:36:59 公開 / 立夏
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■作者からのメッセージ
初めまして、立夏と申します。
この度は、【イノセントワールド】を読んでいただき有難うございます。
これから長く続くと思いますが宜しくお願いします!
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