『Another Morning       』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:パクパク                

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  目覚めは何時も唐突だ。自分の意思とは関系無くそれは起きる。人間なんてそんなものだ。いい例を出して見ると、もし君がテストの点で悪い点を取ってしまったとしよう。君は必死になってそれを隠そうとするだろう。だけど、その悪い点のテストを君は無くしてしまい何所を探してもそれは見つからない。君は失望と激しい喪失感に打ちひしがれるだろう。しかし、なぜか君の母親が悪い点のテストを見つけてしまう。君は言い訳をする暇も無く母親に怒鳴られるだろう。つまり、僕が言いたいのは探している時は出てこないのに何でこう都合が悪い時に出てくるのだろうか。だが、それは物とは限らないのだ。僕はその事を改めて痛感した。
 覚めなければ良かったのに。
 まだ、ぼやけている頭をコツコツと叩くとゴンゴンと音が鳴った。視界がぼやけて辺りが薄暗く見えた。いや、僕の目がおかしいのではなくて僕がいるこの世界が薄暗いのだ。手を伸ばしてみると何かに触れた。ひんやりしてジャリジャリとした感触が掌に伝わった。それは壁であった。この世界のすべてがその壁にはあった。僕が今、わかる全てであった。四方八方に手を触れてみた。僕の周りは壁で囲まれていた。閉塞された世界に僕はいた。瞼を擦ると幾分、視界がマシになった。壁の表面にはパズルのように繋ぎ目が張り巡らされていた。僕は試しに拳で壁を叩いてみた。よく漫画で超人が壁に拳を叩くと「ガン!」、「ゴン!」やら「ドゴーン!」とか音が鳴って壁が木っ端微塵になるが現実はそうはいかない訳だ。「ガン!」、「ゴン!」ましてや「ドゴーン!」と音がなるはずも無く、「グニャリ」と嫌な音が鳴って、拳はまるでコンニャクのように跳ね返り僕の所に戻ってきた。
さて、どうしたものか。
 まず、何で僕がこの壁で囲まれた閉塞された世界にいるのか考えてみることにした。その前に僕は誰なのだ? まったく思い出せない。自分の姿がぼやけてハッキリしない。自分の名前さえもわからない。この世界が何なのか考える前に自分は誰かという事を考えてみた。僕は記憶のパズルを必死でかき集めようと思ったが僕には記憶という自体が無かった。僕は一体誰なのだ? 誰かに問いかける。僕の頭の中に広がる虚無の中を探したがそこにはもちろん何も無い。僕は無駄なことと知りその行為を止めた。元から無い記憶を探したって何も出てこないことがわかったからだ。
 それにしてもこの世界は窮屈で息苦しかった。さっきからずっと体育座りをしていたので尻が痛かった。体を動かそうとしても壁と壁にサンドイッチ状態になっているので動こうと思っても動けない。僕は何でここにいるのか? 何で記憶が無いのか? そんな事はどうでも良かった。早くこの体育座りを止めたかった。もう、この世界から抜け出せなくてもいいから座る姿勢をどうにかしたかった。しかし、僕にはどうにも出来なかった。そう、僕は鳥籠に縛り付けられた小鳥なのだ。自由も奪われた哀れな小鳥。この壁で囲まれた閉塞された空間が鳥かごで僕を束縛している事に苛立った。ふつふつと怒りが沸いてきたのでそれを抑えようと思い僕は眠ることにした。
 そう、再び夢の中に戻るのだ。そうすれば痛みも感情もいちいち感じなくてすむ。そうだ、元はと言えば誰かが僕を起こしたのが悪いんじゃないか。気持ちよく眠っていたのに叩き起こして。そう考えると無性に腹が立って怒りがまた、ふつふつと沸きがってきた。もう、眠ろう。そんな事を考えるのも苛立ってきたので僕は瞼を閉じた。この壁に囲まれた静寂した閉塞された世界と一体化するように何も考えず僕はその運命に身を任せた。


 あの時、僕を永い眠りから目覚めさせた人は誰だったのだろう。未だに僕はあの閉塞した世界で永久に続く夢を見ている。
  

2005/03/24(Thu)05:28:43 公開 / パクパク
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