『クリスタルの男』 ... ジャンル:ファンタジー ファンタジー
作者:菜塩                

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       序章;1クリスタルの男

中央大陸トータス地方山中の暗い洞窟の中を一人の少女が歩いていた。
年の頃は14、15、腰まで伸ばしたライトブラウンの髪、一見して魔導士とわかる姿、なぜこのような場所に年端も行かぬ少女がいるのか?。
「500年……いやそれ以上前の物ね」
少女はなにやら調べながら洞窟を進んでいく。しかし行き止まりにあたってしまった。行き止まりの壁面に描かれた不可思議な文字を調べる少女。
「古代ルーン文字と魔方陣の封印……でも、解くのはそれほど難しくない…」。
そうつぶやくと同時に両腕を前方に突き出し呪文を唱える。
「古の秘法により封印されし扉よ開きたまえ!」
呪文を唱え終わると同時に、目の前の壁が観音開きに開き、これまでとは明らかに違う新たな道が姿を現した。
少女は無言のまま足を進める、この先にいったいなにがあるのか期待と不安を入り混じらせながら…。
 数分間歩くと巨大な岩盤をくりぬいたような広いホールがあり、その中心には巨大なクリスタルが謎めいた輝きを放っていた。
「これがこの洞窟に封印されし物...それにしても大掛かりな封印の割りにこんなたいしたことない物がなぜ」。
疑問に思いつつもクリスタルに近寄る少女、品定めしようとクリスタルを覗き込むと…
「きゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」
叫び声を上げる少女、クリスタルの中には目を瞑り微動だにしない男がいた。
「はぁ〜はぁ〜あーびっくりしたな〜もう、まさか人間が封印されているなんて……それにしても何で封印なんかされてるのかしら?…………不老不死を求めた結果自らクリスタルに封印されたか愚か者か、………それともトンデモない悪人か」
そういうとニヤリと笑う少女…
「本人に聞いてみれば分かるってか〜、大地の精霊の名において命ずる封印よ退きたまえ〜〜〜!」。
呪文を唱え終わると同時にクリスタルは粉々に砕けちり、謎の男は床に転がり落ち、男に向かって少女が駆け寄り不安そうに見守る…しかし男は床に伏せたまま微動だにしなかった。少女は男の胸元に耳を付けると…
「だめだわ、封印が解けても肉体が目覚めていない。生き返らせるには生命エネルギーを送り込めばいいだけだけれど…」
そこまでいうと顔を赤らめる少女。
「だ〜〜わたしはどうすればいいのよ。この男の正体も知りたいし〜けどこの術は使いたくない けどけどもしかしたらお宝のありかとか知ってたりして、いやけどまてよ?まさか…」
独り言を言いながら悩む少女。しかし、どうやら好奇心には勝てないようで一人決心する。
「いくわよ…。」
少女は男のあごを持ち上げ静かに眼を閉じ、呪文を唱えだした。
「親愛なる愛の精霊の名の元にこのものに再び命の力を与えたまえ…」。
呪文を唱え終わると同時に少女は男の唇にそっと自らの唇を重ねる…暖かい光に包まれる男、するといままで動いていなかった男の心臓が動き出しそのまぶたを開き始めた。
「ぅ、う〜んここは?」。
男の初めての言葉に対して少女は。
「ここは、中央大陸トータス地方山中のあなたが封印されていた洞窟よ」。
そこまでいうと男が何かしゃべろうとする。そこにすかさず上から声を重ねる。
「今はマテリア暦2012年神魔戦争から2012年、魔道大戦からだいたい400年ぐらいたってて、そ.れ.で.あなたは封印されていてクリスタルの中に封じ込められてたの、それを私が封印を解いてあげたからあんたがここにいるの わかったわね。次はあたしの質問に答えなさいいいわね?」
男はなにか言いたそうに少女を見上げるがその上から少女が質問を投げつける。
「いろいろ聞きたい事あるんだけど、そうねとりあえず何でここに封印されてたのか教えて頂戴!」。
相手になめられない為かそれとも「す」なのか?威圧的な態度で質問をする少女。
「ふ、なぜ封印されてたか?」
「そう、なぜ封印されてたか答えて頂戴」
「わ、わからない」
「そ、そう(なによそれ〜信じらんな〜い)なら、あなたが封印されたのはいつごろ?」
「わ、わからない」
「え、それじゃあ、あなたなんか心あたりない?悪い事したり、なにか宝の手がかりをしってたりとか」
「わ、わからない」
「…自分の名前…わかる?」
「わ、わからない…自分が誰なのか…何でここにいるのかすら…」。
(なによそれ〜わたしはこんな記憶喪失の男の為にファ、ファ、)
そこまで考えると少女は力なく地面に座り込んでしまった。
「あ、あの〜俺はいったい…」。
男が困り果てた顔で少女に助けを求める。
「んなのしらないわよ〜〜〜〜」ここで、男を恨めしそうな顔で見ると少女の顔がとたんに真っ赤に変わる。顔を背けながら自分の着ていたマントを差し出し
「それ…隠して…」。


「それにしてもほーんとうにな〜んも覚えてないわけ?」
「まったく覚えてない!」
「だ〜なんの為にあたしはこんな山奥まできてお宝の代わりに記憶喪失のおとこGETしなきゃなんないのよ」
「んなこといわれても…」
「言い訳無用!これもそれもこんなとこに封印されてるあんたが悪いんだからね!」
「申し訳ない…」
「あやまんな〜〜〜〜」
「俺はこれからどうすれば……」
「そんなのしるか〜〜………でも封印をといた私にも責任あるしな〜まあいいわ、とりあえずここから二日ぐらい歩いた場所に村があるからそこで山賊に身ぐるみはがされておまけに記憶喪失になったていえば人がいいだけがとりえの田舎の村人がなんとかしてくれるでしょ」
「ちょうど素っ裸だしな」
「ったく、そういえばあんた名前もわかんないんだよね?」
「そうだけど」
「ならわたしが名前つけてあげようか!」
「ホントか?じゃあ頼むわ」
「わたしにも責任あるみたいだしね…どんな名前がいいかな〜〜う〜〜ん」
「…………………」
「決ぃめぇたぁ〜〜〜ななしのごんべいさん、あなたの名前はいまから【ロン】よ!」
「ロンか〜〜いい名前じゃん。けど何でロンにしたんだ?」
「実家で飼ってる犬の名前がロンだから〜〜〜テヘ」
「ふっざけんな〜〜〜お前は俺に犬の名前つけようとしたんか」
「いやならいいわよほかの人に付けてもらうか自分でかんがえるなりすればいいんだから」
「かっ考えとく……そういえばお嬢ちゃん名前なんてゆうんだ?」
「そのお嬢ちゃんてのやめてよ!そういえば言ってなかったわね私の名前は【レナ=ミルガズア】一応天才魔導師って呼ばれているのよ!すごいっしょ?」
「そいつぁ〜すげーや」
「なによその言い方」
「お嬢ちゃん、もう魔法使いごっこする年じゃないだろ」
「なにいってんのよ私は本物の…」
「お!出口だぜ!お嬢ちゃん」
話をしているうちに洞窟の出口についた二人。久しぶりの太陽それも男にとっては数百年ぶりの太陽の光だった。
しばらくまぶしさに眼をくらませていた二人だったが精度を取り戻した目に飛びこんできたのは10数人の武装した山賊風の男達だった。
「……レナ…知り合いか……」
すると一見親玉風の男が高笑いとともに話し出した。
「レナ=ミルガズア2日前の恨み晴らしてやるぜぇ〜〜」
あっけにとられた顔でロンがぼやく。
「友達じゃあないみたいだな」
ロンと同じくあっけにとられていたレナもウンザリした顔で答える。
「あいつらは2日前に私のこと襲ってきて逆に返り討ちにされたあげく有り金全部取られた3流盗賊団よ!」
レナはわざと相手に聞こえるように大きな声でロンに説明をした。
盗賊はというと反論できずにこちらをみつめてる。
「あんた達、ほっんと学習能力ないみたいね。また私にボコボコにされたあげく身ぐるみ剥がされにくるなんて。」
しかしレナの宣言に対して怯えるどころか微笑を浮かべる山賊たち
「そうはいかねい。前回と違い今回は強力な助っ人を呼んである。先生こっちです。」
すると茂みから一人の剣士がでてきた。漆黒の甲冑に身を包み禍禍しい飾りの付いた大剣を腰に携えた男はかなり腕が立つのが容易に予測できた。
「自分達じゃかなわないからって女の子相手に10数人がかりでしかも傭兵まで雇うんだ〜」
少しも怯えた様子も見せずレナが言い放つ。
まけじと山賊も、言い返す。
「うるせぇ〜〜ようは勝ちゃあいいんだよ」
「じゃあ……そろそろはじめ……」
その時ロンがレナの腰にささったロングソードを抜き去った。
「ちょっと、ロ、ロン、な、なにしてんのよ」
「レナ、そういえばまだ礼をいってなかったな。代わりこいつらの始末俺にまかせろよ。」
「なに言ってんのよ雑魚はともかくあいつは腕の立つ本物よロンに勝ち目はないわよ」
さり気無く酷い事を言うレナにロンは声を潜めてレナに話しかける。
「あいつらなんかかんちがいしてんだろ、俺が時間稼ぐか……」
そこまで話したところで黒い剣士に言葉をさえぎられる。
「なんてことだ……」
黒い剣士は話を続ける。
「強物と名高い最強最悪残虐非道無敵の魔導士レナ=ミルガズアと合間見れるとおもいはるばる来てみればそこにいるのは、男と洞窟で卑猥な行為を楽しむただのさかりの付いたコムスメでわないか!」
「ちょっとまて〜〜〜なんか間違ってるぞコラ〜〜〜」
レナはまた顔を真っ赤にして黒い剣士に抗議をする。
そのレナの抗議を軽く無視して黒い剣士が話を続ける。
「まあいいまず最初にこの男を血祭りにしてやる!」
残酷な笑みを浮かべて黒い剣士が叫ぶ
「わが名はハサウェイ=ノヴァ、剣に人生を委ねし者なり、しねぇーー」
剣士は剣を抜きロンに切りかかる。
(接近戦はまずい…)
しかしレナの思惑とは裏腹にロンは引くどころか剣士に向かって剣を突き出した。
(バカ、なにやってんのよ。これじゃ魔法が使えないじゃない。)

  ガギャ
       キィン
   カッ

双方の放つ斬撃が火花を散らす。
しかし、腰にマントを巻いた素っ裸の男と漆黒の甲冑に身を包んだ男との戦いの勝敗は誰の眼にも明らかだった。
腰にマントを巻いた男も周りの予想をはるかに上回る善戦を見せたが黒い剣士の豪剣を前に少しずつ追い詰められていった。

「貴様なかなかやるではないか!」

「…………………………」

「いましばらく貴様との剣舞に講じたいとこだが、これで最期だぁ〜〜奥義滅殺怒豪げぇ〜…きょぇー」」
その時、ロンの放った横薙が黒い剣士の剣に当たった。
「いくさの最中しゃべると舌噛むぜ!」
そういい放つとロングソードを脇構えに構え一瞬の踏み込みで黒い剣士の懐を狙い横薙を放った。

「ぐっ…ぅっ」

黒い剣士は剣を垂直に立てロンの放ったよこなぎをかわす。
すかさずロンは密着した状態で黒い剣士のわき腹に強烈な回し蹴りを喰らわす。
「がっ…はっ…」
黒い剣士は2、3歩後ろに後ずさりする。
そこにロン間髪いれずに連撃を打ち込む。
回し蹴りをした状態から逆なぎ、左肩を入れ、左斜め上方に切り上げ、打ち下ろし。一瞬ロンの肩がガラ空きになる。歴戦の戦士はその隙を見逃さずロンの右肩を狙って剣を振り下ろす、しかしロンは右手を剣から離し左に半身をずらしながら右手の甲で相手の剣を受け流す。地面に当たり土飛沫を上げる黒い剣士の剣、間髪入れずにロンのパンチが黒い剣士の顔面に突き刺さる、反撃しようと黒い剣士が剣を切り上げようとするしかし剣が動かない
「なぜだ!」
そう叫び己の剣を見ると男の腰に巻いてあるマントに自らの剣を絡めとられていた。そして目の前にいる素っ裸の男と首筋に剣を当てられている自分がいた。
その光景を10数人の武装した山賊と自称天才魔導士が信じられないという眼で見ている。

「まっ…まいった……」

黒い剣士は素っ裸の男に降参した。だが、ロンの口からでた言葉はこの場にいあわせた全員予想を上回るものだった。
「あんた、剣に人生を委ねし者のなんだろ……だったら……」
「ちょっと!なにも殺す事はないわよ!」
ロンの言葉を遮ったのはレナだった。
「レナがそういうなら……」
ロンがぶつぶつ言いながら、なぜか突然黒い剣士の腕をヘシ折った。

   ボォギィィ

「ぐああぁあぁぁあああぁぁぁ」

黒い剣士の絶叫が当たりに響く。
「ちょっとぉ……なにもそこまでしなくても……」
レナの抗議にロンは黒い剣士の折れた腕を無言で顎で指し示す、その手にはいつのまにか取り出したナイフが握られていた。
「この程度で済ましてやったんだけどな〜」
この時にはレナに対して頭の上がらないロンの顔に戻っていた。
「あなた…いったい何者なの……」
「さあ〜俺にもわかんない」
「そりゃそうよね、………それにしても、きぃ〜み達どぉ〜こいくのかしぃらぁ〜ん」

「ギィ〜クゥ!」

ちゃっかりその場からずらかろうしてた山賊に対してレナが問いかける。
「ちょっと……トイレにいこーかなーなんて………ダメ?…」
「もちろんダメに決まってんでしょ〜〜〜(すべての力の源よこの手に集いて力となれぇ」

「どひぃ〜〜〜〜〜」

「おたすけぇ〜〜〜〜」

「やめてくれ〜〜〜」

「……ヤダ……ファイアーボール」

「ぐわぁ〜〜〜〜〜」

レナの無慈悲な攻撃で山賊はあわれ宙を舞う。
「どうよロン、私の力を」
ど〜だ〜といわんばかりにロンを見るレナ。
そのロンはレナを見てガタガタふるえていた。

「おぉ…お前……ほょ…ほょんとょ〜〜にぃ…まぁ…魔女だったのかゃ」

一方レナはロンの話など聞かずに……
「あんた、なに見せてんのよ、はやく隠しなさいこの露出狂、変態、ばぁ〜〜〜かぁ〜〜〜……」


「おいレナ〜ほんとにいいのかぁ〜」
不安そうにレナを見つめるロン。
「いいの、いいの、犯罪者に人権ないんだから」
そう力説するリナは盗賊の懐を探りめぼしい物をあさってる。
「けどよぉ〜そこまでしなくても〜〜〜」
さすがに気の毒に思うのかさらに食い下がるロン。
「なにいってんのよ!あんたの鎧ももらい物じゃないの」
たしかに俺の今着ている甲冑と剣は黒い剣士からいただいた物だ、しかし、こいつ……盗品と言わずもらい物といいやがった、なんてやつだ……俺はとんでもないの奴と旅をするのかもしれん……
そんなことをロンが考えているとき…
「こいつら人様のもんかっぱらって生計たててんのよ!だから、わたしがこいつらから金品巻き上げてもいいの!わかるぅ〜〜」
いや、わからん、だがこいつの言うことにも一理あるかも……いや、こいつは自己中心的なだけだ。
「じゃっ取るもんとったし、出発するか!」
俺はこの世界のことを何も知らない……俺がだれなのかもわからない……あの魔法とかゆうのはなんなんだ……今はこの自称天才魔導士についていくしかないのだ……そうたとえ犬の名前を付けられても……ロン……簡単すぎる……いくらなんでもこれは……んっ!
「あんた、名前なんだっけ?」
突然ロンが、元黒い剣士、現黒ブリーフおとこに声をかける。(ちなみに折れた腕はレナが不思議な光を出して直してあげたらしい)
「ハサウェイ=ノヴァだが……」
なにやら考える動作をするロン
「……ハサウェイ……よし決めた。おいレナ〜〜今から俺【ロン=ハサウェイ】て名前、なのっていいか〜〜?」
盗賊が呆然と見ている。
「……あいつ……名前盗みやがった……」
さすがのレナもあきれた顔でを見上げてる……さすがに名前盗むのはまずかったかっ!
だがレナは今日一番の笑顔で俺に語りかけてきた。
「……よろしく……ロン=ハサウェイ!」
「よろしくな、ちっちゃな魔導士ちゃん」 

2005/03/15(Tue)16:54:48 公開 / 菜塩
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