『魔法の星』 ... ジャンル:ファンタジー ファンタジー
作者:ソード                

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 「このままでは…」
 燃える城を見る少年と兵士が丘の上で立ち尽くしている。
 「う、うわぁぁぁぁぁーーー」
 少年は叫んだ。少年はただ叫ぶことしかできなかった。大声を出すと少年は気を失って倒れてしまった。
 「ど、どうされました!?」
 兵士はその少年をおぶって、城とは逆の方向に歩いた。燃える城から一番近い村がその方向にあるのだ。

 「…ここは?」
 少年は目が覚めると辺りを見回した。
 「よかった、目が覚められたのですね。ここは、リク村ですよ。」
 ベッドの横のいすに座ったいる兵士が言った。
 「リク…村?」
 「お城が大変なことになったのはわれわれも存じております。ですが、良くぞ無事でおられた。」
 村の村長らしきらしき老人があらたまったように言った。
 「城が…大変?何のこと?」
 「!!」
 「どうやら、記憶を閉じ込めているようですな。」
 兵士の後ろにいる医者が言った。
 「記憶喪失…そんな。」
 兵士はひどく落ち込んだ顔になった。
 「しかし、どの程度の記憶喪失なのか…」
 「お名前は覚えておられますか?」
 兵士は少年に名前を聞いてみた。
 「僕は、セイヴァー。」
 「では、あなたの父上と母上の名前は何ともうしますか?」
 医者が続けて聞いた。
 「父さんはラーグナー、母さんはヒルダ。」
 「父上と母上の名前も知っているとなると、昔の記憶はあるということです。しかし、昨夜の城のことを忘れているということは、その記憶だけとんでしまっているということです。」
 医者は少年の記憶喪失について説明した。
 「昨日のことだけ…」
 「人というものは、酷なことがあるとその記憶を閉じ込めようとするものです。王子にとって昨夜のことは特に酷過ぎることだったのでしょう。」
 村長は言った。
 「王子、私の名前は覚えておられますか?」
 兵士はセイヴァーに聞いてみた。
 「あなたは…誰だっけ?」
 兵士は、そういえば自分の名前はセイヴァーに教えたことがないことを思い出した。


 『旅の始まり』

 「兵士のカイロさんたちは部屋の外の廊下で僕のことを話しているようだ。閉められたドアからかすかに聞こえるその声からは内容は良く分からないが、僕の名前が良く出てくる。彼らはいったい何を話しているのだろう?気の後が大変だったとか言ってたけど何のことなのか分からない。何度か思い出そうとしてみたけど、そのつど頭に痛みを覚える。いったい何が起こったというのだろう?」
 
 しばらくして、カイロたちはセイヴァーがいる部屋に入ってきた。ベッドの上にいるセイヴァーは毛布を下半身だけに掛けて座っていた。ベッドの横にある窓から入ってくるかすかな風はセイヴァーの首まで伸びるやや長い後ろ髪と眉をかくす程度の前髪を揺らしていた。
 「冬ですな。寒くなれば住みづらくもなりますか。」
 カイロは憂鬱そうな顔を浮かべているセイヴァーに話しかけた。
 「え?」
 「ここはそろそろ雪が降って寒くなるので、そうなる前に暖かいところに行ったほうがよいでしょう。王子はもう歩くことも大丈夫のようですが、病み上がりでいきなり寒くなってはお体も壊すでしょう。」
 カイロはこんな理由をつけて遠まわしに旅をすると言っているようだ。
 「そうですね。ここから南にいけば暖かくなってきます。村もたくさんあるので、とりあえず南を進むのがよろしいでしょう。」
 村長もカイロに続いて話した。
 (なんか怪しい気もするけど…)
 「まぁ、そういうことなら…」
 セイヴァーは3人のことを少し疑うような顔をしながらも旅をすることにした。
 明朝に出るということなのでその日は村長の家に泊まることにした。セイヴァーはとりあえずすぐ寝ることにしたが、なかなか寝付けなかった。
 「昨日のことはまったく思い出せない。旅をするというのはそのことと関係があるのだろうか。父さんと母さんは僕がここにいることを知っているのだろうか。ここは城から近いからカイロさんが伝達してると思うけど。明日まず父さんと母さんに会って出かければいいのにカイロさんはあわてて、すぐ南を目指したほうがいいと言ってた。ちょっと気になるな。」
 セイヴァーはいろいろと考えながら夜中になってようやく寝ることができた。
 朝になると窓から日がさして外からは鳥の鳴き声が聞こえてきた。その声によってセイヴァーは目を覚ました。ちょうどそのとき、部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえた。
 「王子、お目覚めですかな。」
 ドアを開けたのはカイロだった。
 「今日は早めに出ますので朝食はここで食べられません。そのかわり、村長殿がお弁当を用意してくれましたよ。途中で食べましょう。」
 
 「ありがとうございます、わざわざ見送りに来ていただいて。」
 「いえ、このくらいのことはさせてください。」
 カイロと村長はひととおりの挨拶を済ませた。
 「ここから南に行けば暖かくなるでしょう。村もたくさんあります。まぁ一番近い村はちょっと遠いのですが、安全な道ですのですぐに着くでしょう。」
 村長は目的地について簡単に説明をした。
 「それでは参りましょうか、王子。」
 「うん。」
 旅の理由は引っかかることが多いすぎるが、セイヴァーにとってこれは初めての旅である。32歳のカイロにとってはたいしたことではないが、セイヴァーの14歳という若年が、彼の胸にたかなりを覚えさせていた。
 

2005/03/08(Tue)16:52:32 公開 / ソード
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ソードです。いろいろと直すところを考えて続きを書いてみたのですが、まだまだということが多い気もします。

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