どこまでも続く砂漠。 その先にある地平線から、眩しい程の日の光りが顔を出した。その日の光りは、砂漠中に広がっていく。 そして砂漠の中にある兵士達のキャンプにも、光はやって来る。 望む、望ざるには干渉せず。 「グッモーニングソルジャー」 日の光りは、キャンプの入口から一メートル足らずまでしか入ることができなかった。その先には、僅かな光りのみしか存在しない薄暗い世界が広がっている。 テント内は極力光りが漏れないように、光源がつけられてはいなかった。 「サー! 少将殿! グッモーニング! サー!!」 その薄暗い中では男達が、綺麗に整列して、一人の男に最敬礼をしていた。 六名八チームが二つ。総勢九十六名。 アメリカ海兵隊特殊部隊SEALと陸軍特殊部隊レンジャー達だった。 その彼等のいるキャンプの中は、相変わらず雑然としている。 輸送されてきたボックス、コップ、食器、歯ブラシ、聖書、トランプ、煙草……その、いつも通りの情景の中で唯一、不自然にポッカリと空いている空間があった。 何かを縦に立て掛ける為に設置されているその空間には、赤い文字で注意書きがしてあった。 『Please multiply the safety device and maintain all magazines in my bulletproof jacket. Please maintain it before it puts it away to shoot it soon in the emergency. Please do after it looks up at the superior officer's instruction when using it …… However when the duty begins this section is omitted …….(安全装置を掛け、全ての弾倉を自分の防弾チョッキの中に保持していて下さい。緊急時にはすぐ撃てるように、しまう前に整備を行って下さい。使用時には、上官の指示を仰いでからにして下さい……ただし任務開始時にはこのセクションを省略して……)』 兵士達の手には、普段は立てかけなければいけない、それが握られている。 殺す、それに特化した存在。 黒光りする、銃を。 「私から君達へと伝えることはほとんどない。君達には今まで訓練してきた事を発揮し、任務を遂行して、生きて帰ってきてもらいたい」 僅かに白い髭を生やし、サングラスをかけたた少将はそれだけ言うと黙り込む。 彼はしばらくかける言葉を探す様に、兵士達の顔を見渡した。 そしてサングラスをゆっくりとはずし、ノドの奥に何かが詰まるっているかのような口調で話した。 「君達の幸運を祈る。生きてここまで帰る事を頭の中にしっかり入れておいてくれ……フーアー!」 「フーアー!」 兵士達が掛け声を返すと、少将はきびすを返して、異変が悟られないように故意的に暗くしたキャンプの奥へと去っていった。 「部隊長は作戦企画テントへ! 他の者はミッションの準備にとりかかれ!」 現場指揮をヘリからとるという大尉が叫ぶようにして号令をかけると、整然と整列していた兵士達は、素早い動きでそれぞれの場所へと向かって行く。 「ツイてないな」 その中に混ざっていたエバンスは、キャンプ入口から、向かって東側にある作戦企画テントへ向かう為に入口へと向かいながら呟いた。 「え?」 一方集合場所とも使用されるキャンプの入口から向かって西側にある、ただっ広い訓練場に向かう為に同じように入口へと向かうフィリップは、その言葉に疑問付を浮かべた。 「いや、何?……少将があんなふうにつまるのなんて見たことなかったからな…」 エバンスは「あ〜あ」と残念そうに息を吐いた。 その表情には変化はないが、口調は随分沈んでいる。 「……どういうことですか!?」 キャンプの入口を出て、別れる直前で気になったフィリップは声を張り上げて聞いてみた。 あぁん?とエバンスは答えた。 「ジンクスだよ」 頭をガシガシとかきながら振り返った。 「生きるか死ぬか、あの少将にかけてんだよ」 「…………」 エバンスとフィリップは同じチームに所属することが昨日の内に決まっていた。 それを幸に思ったのは間違いだったのだろうか。