『妖霊小学校(最終回)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:liz                

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ここは、とある田舎町。

夕暮れともなると、人の気配がだんだんと薄れていく。

なぜだろう。

夜ともなると、この町全体にポカーンと穴が開いたように全てが闇に包まれてうやむやになっていく。

この町に、一人の男が降り立った。

「お客さん、降りてください。」

いそいそとタクシー運転手はお金をひったくりその場から走り去ろうとした。降りてすぐにタクシーを見ようとしたその男は、突然の出来事に目を見開いて驚愕した。

タクシーは、跡形もなく消えていた。


男は道をてくてくと歩いていく。背筋を通っていく寒気、嫌な予感を振り切りたいのだが、彼には無理のようだ。ますます、恐怖が色濃く頭の中を右往左往している。

しばらく歩いて、ようやく彼は目的地へと足を踏み入れた。



「妖霊小学校」



「ここかぁ。」

彼は、満面の笑みで校舎へと足を踏み入れる。彼の名前は、薄幸楽天。23歳。独身。もちろん彼は、名前どおりの人生を歩んできた。彼女は23年間1人もできなかった。両親は、気が狂っていたため、幼少の頃お互いをナイフで幾度も刺し同時に死んでしまった。もちろん、彼は目撃者だ。取調べ中の刑事に、「お父さんとお母さん、すっごい楽しそうだったよ!だってね、泣きながら声を震わせて愛してる!て言ってた。それに、僕には2人ともあんまりまともな食事をくれなかったんだけど、僕を殺さなかったでしょ。やっぱり僕のこと好きでいてくれたんだって思ったら、もう幸せなんだ、僕。血がね、いっぱい出てたんだけどね、真っ赤でトマトジュースがいっぱい出てきたって思うようにしてたから全然怖くなかった。」と言った。刑事が取り調べの後、号泣したのは言うまでもない。その後、彼は施設に預けられた。理由。親戚みな、生きていくのも必死だったから。親戚全員が生活保護を受けている薄幸一族には、とうてい楽天を育てる余裕などなかったのだ。施設で、薄幸という苗字を変えたほうがいいということになったのだが、楽天は、「僕の両親の形見だから、これだけは変えたくない!」と粘り、結局変えずじまい。その後、施設で虐待を受けつつも全て持ち前の明るさで乗り越えることができた。18の春、彼は念願の四流大学に入学し、どうにか卒業することができた。一流大学に入れるほど頭が良かったのだが、「四流ていう言葉が好きなんです。惨めじゃないですか?そこが一番この大学に入って良かったって思うんですよねー。」と、大学の後輩に熱く語るほどこの四流大学が好きだったらしく、在学中は、無遅刻無欠席、1番の成績で卒業。だが、就職先は、名前が災いし、運命が彼の進路を阻むかのようになかなか決めることができなかった。彼は、インターネットで、「妖霊学校」という名の学校の職員募集を見つけた。すごく惹かれた彼は、必要事項を見た。「1、生身の人間。2、どこでもいいから大学を出ていること。3、彼女が今まで1人もいない男性。4、死んでもいい。逆に嬉しい。5、魂を学校に捧げられる。6、身寄りがない。 以上6点を満たされる方は、ぜひ、学校のほうへいらしてください。即採用です。」彼は、就職先が見つかって大喜びした。そして、今、その学校へと足を踏み入れたばかりだ。

「誰かいませんか。職員になりたいものです。」

明かりのない暗闇のなか、彼は校舎の1階の廊下をゆっくりと歩いている。人影は見えない。

突然、足に生暖かいものが絡んだ。
「いらっしゃいv」
彼は、恐る恐る下を見ると、裸の女性が彼の足に絡みついてきた。
「うふ。童貞君v待ってたわよv」

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」



その廊下で何が起こったかは、次回告げることにしよう。



ふと、気がつくと、薄幸楽天は、保健室のベットの四隅にに包帯で手足を縛られていた。
「なんだか、スースーするな。」
それも、そのはず、彼は生まれたままの姿だった。今、季節は夏。それがせめてもの救いだろう。彼は、優秀な頭脳をもってしても今、どうしてこうなってしまったのか理解できなかった。
「うふ。せんせーい。目覚めた?」
目の前に、廊下で出会った裸の女性がいた。
「先生、これからお仕事ですぅー。」
「え?」
「保健体育。」
「は?」
彼は、なかなか理解できなかった。保健体育の保健の授業でなぜ自分が裸にならないといけないのだろう。
「今、男性の体について勉強しないといけなくて。」
「で、でも、ここは小学校・・。」
「だって、妖霊小学校は、妖霊学園小中高一貫教育の私立の小学校なんです。だから、先生は高校の先生でもあるんですよ。12年学ぶんだけど、うちらの学校は性教育に重点を置いててぇ。」
「…。」


先ほど、廊下で何があったのか。実は、彼は男性器を力いっぱいつねられてしまったのだ。それで、彼は気を失ってしまった。そのすきに、裸の女性は彼をひっぱって保健室のベッドに包帯で固定した。実は、彼女、妖霊中学校の教師だという。彼の悲鳴のわけは、男性にしか分からないだろう。彼女は知る由もない。

「ぼ、僕は、じ、実験台ですか??」
「うん。まあ、1日はその状態でいてくれない?何しろ、全校生徒小学校1年生から高校1年生までの女子生徒が来るから。」


彼は、恐怖に震えだした。なぜかというと、いくら楽天的な彼でも登校初日にこんなことをさせられるなんて思わなかったからだ。
「みんなこういうふうにしないといけないんですか?」
彼は、教師全員がこういう目に合ってるのか聞いた。
「ええ。新米教師は、登校初日に全裸で性教育指導をしなければならないの。女性教師も同じだから。つまり・・あたしもした、ていうこと。」
彼は、女性教師を見つめた。
「お名前は?」
「花子。」
「は、花子さん。苗字は?」
「山田。」
「彼氏は?」
「太郎。ていうか、私もう彼と結婚してんだよね。残念でした。あは。彼、結構男前でさ。彼の兄弟も美男子ぞろいvま、彼が一番かなー。」
「あの、お洋服は・・。」
「えー。裸見られるの好きなのあたしv生徒が欲情する一番の格好ジャンか。」
「はあ。」
「いつ襲われてもいいようにコンドームは必需品よ。」
「はあ。」
「だって…。」


「ここの教師は、全員裸でないといけないんだから。」


生ぬるい恐怖が彼の背筋をとおりぬけていった。


しばらくして、授業が始まった。
「まずは、小学校1、2年生」

「先生、こんにちは!」
小さな子供たちが興味しんしんでやってくる。
「あー。大きい。お父さんとおんなじだ。」
「本当だね。でも、私のお父さんのより小さいよ」
薄幸楽天は、かなり意気消沈していた。なぜ、小さな子供にこんな醜態を見せないといけないのだろうか・・。

「雪子ちゃん、これはね、まだ大きくなってないからなのよ。はい、問題です。どうすれば大きくなるのでしょうか。」
「はいはいはーい!」
「じゃあ、大きなお返事の三城ちゃん。」
「私がお手本見せてもいいですか?」
「いいよ。」

薄幸楽天は、驚愕した。しょ、小学生に。いくら彼でも楽天的になれなかった。
「花子さん!」
「はーい。どうしたの?」
「これは、あまりにもおかしすぎます。」
「給料貰う身が、ごじゃごじゃ言わないの!この子達の親からかなりの額を出資していただいてるのよ、うちの学校。分かった?」
逆セクハラだー!という思いを飲み込みつつ、彼は結局持ち前の楽天的な心で乗り切ろうとした。
「く…。」
彼女いない歴23年にはつらすぎる快感だった。
「わーい。出た出た!」
「三城ちゃん、よくできました。じゃあ、この精液を顕微鏡で見てみようか?」
「うん。」

もう、どうにでもなれ。楽天は、ため息とともに涙をのんだ。



それから、1日中、彼は保健体育の授業をし続ける結果となった。体力をかなり消耗した彼に、花子は、告げた。
「今年高校を卒業する女の子には、個人指導しないといけないの。これから個人指導するんだから、その前に質問。」
「はあ。」
「彼女今までいない童貞君」
「はあ。」
「お姉さんが男にしてあげる。その後、個人指導よろしく。」
「え?」


花子さんから男にしてもらったあと、彼は個人指導室に向かわなくてはならなかった。

就職って、本当に大変なことだな。彼は、つくづく感じていた。でも、社会人の一員として頑張らないと。彼は、個人指導室へと急いだ。

そして、彼は、見た。個人指導室前に並んでいる女生徒30人。


「そーんなー!!!!!!!!」

彼の悲鳴は、3日3晩学校中に響き渡った。







「お疲れ様でした。」
ようやく彼の保健体育の授業が終わった。彼は、自分を褒めたい気持ちで一杯だった。よくぞここまで僕は頑張った!と。涙ぐむ彼に、花子さんは告げた。
「次。国語の授業ですから。」
花子さんの言葉で、彼はびっくりした。え?休憩は?
「先生に休息なんていりませんよ。」


彼は、今度こそ普通の授業であることを祈った。だが、花子さんが言うには、国語のほうが保健体育よりも大変らしい。恐怖の国語の授業の実態とは?

次回へ続く。


薄幸楽天は、花子さんの後をついていった。この学校は昼夜逆転しているらしく、夜の8時から朝の6時までが学校の1日だという。薄幸楽天は、3,4年共同教室へとついた。
「ここがあなたの担当のクラスよ。」
「え、僕、もう受け持たせてもらえるんですか?」
「ええ。」
「ヤッター!」
彼は、満面の笑みを浮かべた。
「うちの学校は、1日中1教科の勉強をしてもらいますから。」
「ということは?」
薄幸は、小首をかしげた。
「チャイムが鳴ってからチャイムが鳴り終わるまで、生徒との真剣勝負なの。特にね、国語はあなたにとって難題だと思うの。」
「え?」
「まあ、自分の生徒と向き合ってみれば分かるわ。普通の人間が勤める学校より命がけよ、本当の意味でね。じゃあ、これ教科書だから。」
薄幸は、教科書を見た…。うーむ。これって教科書。
「化け国語…。」
彼は、ちらっとページをめくってみた。


「あなたを殺すよあいうえお
 命がおしけりゃ自殺しろ
 馬乗りになって殺してやろう人間どもを
 鉛筆でも喉をかっきれるぜ
 お前なんか死んじまえ

 題 幽霊 心の叫びあいうえお 作 雪山 雪夫(1025〜現在)(古典名作100選)」

薄幸楽天は、見ないことにした。僕は、かわいらしい小学生の授業を受け持つんだ!楽天は意気揚々と教室の扉を開けた。
「こんばんは!」

「おはようだろ!何ふざけたこと言ってやがるんだーボケ!!!」

薄幸はぎょっと目を見開いた。目の前には1人の生徒しかいなかった。だが、これは小学生なのだろうか?身長155センチ程度。とても綺麗な女の子なのだが、なんと…。SMの女王の格好をしていたのだ。
赤と黒のどぎつい衣装にど派手なメイクをほどこしている彼女。彼女の手には黒い皮のムチ。銀色のいかつい棘がこれでもかとついている。

ビシっと音がして彼は咄嗟に目をつむった。
「何、怖がってんだ?えー?お前、先生だろう。授業するんだろうが、な?な、どうするつもりかよ。今日のこーくーごーの授業!新米なんだろう。女王が教えてやるよ。」
「え?でも、僕はそのー。」
「はい、て言えないのか?女王様に逆らう気か?いい度胸してんな。分かったよ。家来にしてかわいがってやるよ。」

薄幸楽天23歳。彼は知らない間に小学校3年生か4年生か分からないが小学生からあれよあれよという間に首輪に繋がれてしまった。
「この詩を読んでみろ!」
「は、はい・・。」
「返事が遅い!私に逆らう気か?」
「い、いいえ。うぎゃ!」
薄幸の体に何度もムチが食い込む。
「読めよ!」
「屍の!彩り生めかし墓場の夏!」
「声が小さい!」
「ヒー!」


この後、朝6時まで、彼はムチで打たれ続けるはめになった。


(僕って、マゾかな?)


そう思い始めた頃、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。と、同時に目の前の女王様が、かわいらしい女の子の姿へと戻り、彼についていたはずの首輪も消えて無くなってしまった。

「あやのちゃーん。」
急に教室の扉が開いて、彼の目の前に綺麗な格好の女性が現れた。
「ママー!」
ママ?この子が、ママなんてしおらしく言うか?
「先生、お疲れ様です。うちの子、大丈夫でしたでしょうか。」
薄幸楽天は、言葉を詰まらせそうになったが、
「素敵なお子さんですね。授業態度もよろしかったですよ。」
「では、また明日この子を連れてきますので。」
先生、さよーなら!満面の笑みを浮かべてあやのが去っていった。ふと、彼女の表情を見た。女王の顔に戻っていた。

「こ、こえー。」
小学生でも、女は怖いということを、薄幸はこのとき初めて悟った。


授業が終わり、疲れきった楽天のもとに、花子さんが男の人を一人連れてやってきた。
「楽天君!これね、うちのダーリン!」
「こんにちは。」
薄幸の言葉に、太郎さんは微笑んだ。
「うちの家内がお世話になりまして。」
「いえいえ。僕のほうこそ…。」
「これから、あなたの寝室にご案内します。」
薄幸楽天は、彼らに連れられて校舎を出た。しばらく行ったところに、マンションがあった。3人で2階までエレベーターで上がった。そして、マンションの1室に足を踏み入れた。そこは、とても綺麗な部屋だった。
「食材はもう、冷蔵庫に入ってるからね。」
花子さんが買い揃えてくれていたそうだ。
「明日は、夜の7時に学校の職員室に出勤してね。どこか分からないと思うから、私、迎えに行くからね!」

じゃーねーまたね!と、花子さんたちが去っていった。彼は、あまりにも疲れていたので、すぐに眠ることにした。

だんだんと昼が更けていく。


さーて、明日の授業はどんなものなのだろうか?

次回へ続く。


薄幸楽天23歳。彼は、夕方の6時30分に目が覚めた。かなりぐっすり眠っていたようだ。

「うー、洋服が着たいよ…。」

そう、彼は、これから学校へ向かわなければならないのだが、洋服を着れないのだ。彼の勤め先の妖霊小学校は、教師の洋服着用が禁止されているらしい。だから、裸である人が先生なので、一目で先生と生徒が見分けられる。彼は、ここ数日間の勤務で、少しこの学校のことを理解できるようになったのだった。彼は、冷蔵庫からりんごとバナナとコンフレークと牛乳を取り出した。ボールに刻んだりんご、バナナ、コンフレークを入れて、牛乳を流し込んだ。仕上げに、砂糖入りのココアをまぶす。とてもおいしい薄幸楽天スペシャルコンフレークが完成した。彼は、黙々とボールいっぱいに作られたスペシャルコンフレークを平らげた。久しぶりにまともなものを口に入れることができた。実に4日ぶり…。

しばらくして、彼は、裸のまま登校した。恥ずかしいが仕方のないことだと自分に言い聞かせながら。

ここ、妖霊小学校の校舎について説明しておこう。この校舎は3階建て。各階に男女別々にトイレがある。1階には1,2年生の教室、2階には3,4年生の教室、3階には5,6年生の教室。職員室、保健室、個人指導室が1階に、音楽室、美術室が2階に、化学実験室が3階にある。ちなみに、体育館は小、中、高共同だ。

「あーあ。早くついちゃったな。」
薄幸楽天は、学校に30分早く着いてしまった。しばらく職員室でぼーっとしていようと思い、職員室へ足を踏み入れた。
「あー、楽天君だー!」
目の前に、16歳くらいの少女が立っている。
「あたしだよ、あたし!」
彼女は楽天を知っている人物のようだ。
「え、あの、どなたでしょうか?」
「私だよ!ほら、高校時代に飛び降り自殺した。」
「…。」
彼は、飛び降り自殺したという彼女のことを思い起こしてみることにした。そうだ、彼が高校2年の春のことだ。いつもいじめられていた彼女は、佐々木さんという名前だった。彼のクラスメートで、楽天とは、意外に打ち解けている人だった。楽天に一言、「私、疲れちゃった。先に行っちゃうね。また、会う日まで!美加」というメモを残して、彼女はこの世を去ったはずだった。だが、今楽天の目の前にいるのは、まぎれもなく姿を消したはずだった彼女だった。
「久しぶり。」
「覚えててくれたんだ!わーい、嬉しいな。」
美加は、はにかみながら、微笑んだ。
「どうしてここに?」
「私も職員なの。ここの。ここに勤めて7年経つ。早いなー。」
彼女は、楽天にここの学校のことを話してくれた。
「生身の人間がここの職員になるのは結構大変なんだよ。あたしはそりゃ霊だからいいんだけどー。初めてなんだよ、ここで生身の人間が採用されたのって。だから、もうここの世界では大騒ぎ。どうやってこっちの世界にまぎれこんだんだろう、てさ。」
「でも、インターネットに載ってて。」
「だから、そのサイト見るのなんて普通は不可能なのよ。だけど、あなたはここに就職してしまった。校長メチャクチャびっくりしててさ。」
「へえ。」
「でもね、大丈夫。皆歓迎してるから。安心して。私なんて、めちゃくちゃ嬉しい。」
美加の話は続いた。
「給料は、初任給だから、1ヶ月で3000魂強。」
「へ?ここ、日本だよね。円でしょ、お金の単位。」
「はは!何言ってんの?お金って魂を強くするんだからね、こっちでは。1ヶ月で100000魂強になったら、人間に生まれ変われるの。それまでに100000魂強にならなかったら…。」
「ならなかったら?」
楽天は、ごくりと息を呑んだ。
「神様が決めるんだって。人間以外のどれかの生き物に生まれ変わらせるか。」

楽天は、悟った。これは、大変なところに来てしまったと。彼は、早く人間に戻れるように努力しなければならない。必死に働かねば…。


彼は、気付いていないのだろうか?彼、生身の人間で初の職員に採用されたはずだ。しかし、楽天は、自分が人間であることを、なんと忘れてしまったようだ。

自分が人間であることを忘れてしまった薄幸楽天。彼はいったいこれからどうやって100000魂強を稼ぐのだろうか。

もうすぐ職員会議の時間になろうとしていた。席には20人の先生方が着いた。全員臆面もなく裸。ちなみに、机はなく、窓もない。蛍光灯の電気は消され、目の前に1つだけろうそくが灯された。職員室には、教頭の手により鍵が掛けられた。呆然としている薄幸楽天の頭からは冷や汗が流れている。さあ、これから一体どのような職員会議が始まるというのだろう・・。

次回に続く。

暗闇の中にろうそく一本。その光はあまりにも儚くて皆の顔が分からない。

「これから職員会議をひらく…。」
消え入りそうな不気味なか細い声に、楽天は、背筋が凍る思いだった。
「みなさーん。校長の白み・消え入り先生は、とうとう消えてしまわれました。ということで、私、教頭の赤く・ただれが校長に就任しました。ちなみに、校長先生は、人間界に行かれたらしいのですが…。いづれもどっていらっしゃると再三おっしゃってましたがしばらくは無理ですね・・。」
教頭の赤く先生の声に、薄幸楽天はくらーくなった。
「今日はそれだけです。では、各自教室に戻ってください。」
「ああ、あ、あのう。」
「どなたでしょうか?」
「新人教師の薄幸楽天です。」
薄幸楽天が教頭に質問をぶつけようとしていた。
「何でしょう。」
「なぜろうそく一本なんですか?だって、ちゃんと顔が見えたほうが会議しやすいじゃないですか!」

彼の言葉に、その場はしーんと静まり返った。と、しばらくして楽天の背後に生暖かい手のひらを感じた。

「見えないほうがいいってこともあるんですよー。」
教頭の生暖かい吐息が薄幸楽天の首筋をかすめた。とてつもない恐怖に薄幸楽天の体がこわばりはじめた。
「では、今日はこのへんで…。」
教頭の合図とともに、その場が明るくなった。ところが、ほんの3,4人しか先生方の姿が見えない。
「美加さん、これってどういう?」
「聞かないで。私が答えられることじゃないわ。授業行きましょう!」
美加の表情はこわばっていた。薄幸楽天は、早くここを出よう!元の世界に戻ろう!そう強く思った。

今日の授業は算数らしい。花子さんから数学の教科書を渡された。
「化け算数?」
彼は、小首をかしげながら、教室に入った。そこには、あやのがいた。あの、女王様だ。だが、今日は大人しくピンクのかわいらしいワンピースを着ている。
「せ・ん・せ・い!」
といっても、そのワンピースはすっけすけだ。ベビードールと呼べばいいのだろうか。
「今日は算数でしょう!な、なんでそ、そーんなかっこうしてるの?」
「だって、化け算数だから。」
彼は、教科書のページをめくった。
すると、そこには…。な、なーんと・・。女性の全裸の写真が…。これは、さんすうではなーい!薄幸楽天は目を疑った。なぜなら、問題がものすごいことになっていたのだ。彼は、声に出して読んでみた。
「全裸の女性が息もたえだえに横たわっています。○○から××までの間を何往復すれば、女性は○×するのでしょうか?また、それは1回につき何秒かかりますか?先生方は女子生徒を実験台にして、答えを導き出してください。」

無言の薄幸楽天。彼は、どうしてこの学校はいつもこうなんだとあきらめかけている。
「先生、早く!!!予習してたの。でも、先生が早く答えださないと、あたし…。おかしくなっちゃう!」
薄幸楽天は、たった一人の受け持ちの生徒に対して、授業するしかなかった。
彼は、チャイムが鳴るまで、とてつもなく変な問題をこなさないといけなかった。しかも、時間が長いので、かなり大変だった。もちろん、あやのしか生徒がいないから、男子生徒の変わりは、もちろん薄幸楽天。チャイムが鳴ると、薄幸楽天は急いで家に戻り眠りについた。
彼は、明日絶対にここから逃げ出してやる!と思った。
「もう、さんざんだ!」
彼は独り言をつぶやいた。そして、彼は深い眠りについたのだが、なんととても変な夢を見たのだ。

それは、彼のとるべき行動を指図する予知夢のようだ。

果たして、彼はこの学校から逃げられるのだろうか?そして何の夢を見たのだろう。

次回に続く!

薄幸楽天は、夢の中で透明人間になっていた。彼は、一生懸命に周りの人に駆け寄って走っている。しかし、彼に気付く人は誰もいない。彼は一生懸命に叫んでいる。それは、何か呪文のような訳の分からない文章だ。それを3回唱えると、彼は人間に戻ってしまった。
「これだ!」
薄幸楽天は飛び起きた。ところが一生懸命に呪文を思い出そうとするが、思い出せそうにない。
「くそ!」
途方に暮れた彼は、結局学校に行くことにした。
「今日の授業は社会よ!」
化け社会…。今度こそは大丈夫だと自分に言い聞かせながら、彼は教室を開けた。そこには、誰もいない。今日は欠席かな?そう思いつつ彼は、教科書に目を通した。
「西暦100年に化け教育委員会設立。率先して人間を脅かそうをスローガンに、子供たちの教育に力を入れる。さまざまな教科を設立。化け教育委員会は、化け社会安定をたたえられ第4649回化け化け化け平和賞を受賞。化け社会192カ国を代表して化け日本王国は讃えられることとなった。」
他にも、
「赤くただれ氏、第6449回化け化け化け化学賞受賞。しかし、実験の失敗により全身が赤くただれてしまい、透明になることを自ら望み透明な姿へとなる。」
ということが載っていた。薄幸楽天は少し悲しくなった。赤くただれ先生は素晴らしい化学者だったのに…・・。彼は、少し自分のほうがまだ幸せなんだからここでもう少し頑張ろうという気になった。

チャイムが鳴り、彼は再び家路へとついた。

化け社会の教科書は、この社会に起こった悲しい出来事を全てこと細かにかいてあった。彼は、そっとベッドに腰掛けると今まであったことを思い起こしていた。彼は、不幸な自分の人生を思い起こした。だが、果たしてそれは全て不幸だったのだろうか?彼は、自分で全て決めて歩んできた。そこに他人からの妨害が加わったが全て思うとおりに生きてきた。だが、化け社会の教科書に載っている全ての出来事は思いどおりにできなかったつらいできごとをも記していた。彼は、自分が薄幸だ、不幸だと思っていた。だけど、自分は思い通りに生きてきたんだ。


「僕は不幸じゃない…。僕は幸せだ。幸せだ。幸せだ。」










「多幸さん、起きてください!多幸さん!」
ふと、気がついてみると僕は病院のベッドで横たわっていた。
そう、僕の名前は多幸善行。僕は、4人家族の長男だ。家族の期待があまりにも大きすぎて、僕は道路に飛び出して自殺を図った。妹が目を覚ました僕を見て泣いている。両親の肩が小刻みに震えている。
医者は奇跡だという。僕は生死をさまよっていたのだそうだ。僕は、先ほどまで自分の人生だと思っていた薄幸楽天の人生を思い返してみた。あれはあれで今の僕には考えられないような刺激的な生活だったと思う。だけど、僕は、夢の中の僕のような人生を望まない。僕の人生は彼よりもずっとずっと多幸だから。夢の中で出会った美加。彼女は僕に生きろと伝えてくれたのだろうか。花子さんも太郎さんもすごく優しい人達だった。最初はびっくりしたけれど。しかし彼らは僕に怖いと思っている人でも意外と優しい人であることを教えてくれた気がする。ちなみに、2人はトイレに住んでいるらしい。意外と楽しいんだよと言っていた。西洋トイレもなかなかいけると言っていたっけ。赤くただれ先生は特に僕が目に見えるものしか信じられなくなっていることに警告してくれた。

僕は、化け社会に感謝した。そして、今、こうやって生きていることに。


素敵な夢をありがとう。

僕は神様に感謝した。隣で白み・消え入り先生が僕の様子を見届け、ほっと胸をなでおろしているとも知らずに。

2005/02/17(Thu)08:32:40 公開 / liz
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