『エンジェル 1、2、3』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:朔羅                

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第1話
「やめて!母さん!」
「私は構わないで!早く紅李(あかり)を連れて逃げなさい!」
「…ぐわぁぁぁ!」
「父さん!」
「逃げなさいって言ってるでしょ氷狩(ひかり)!父さんみたいになりたくないでしょ!?」

「…はぁっ!」
僕は思わず息を吐き出した。何故か見てしまう夢。少年は少女を抱いて、母親は少年をかばっている。見たくもない夢。心が痛くなる、息苦しくなる。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
ひょいっ、と女の子が顔を覗かせた。吃驚して、ベッドから転げ落ちた。物が落ちたような鈍い音、尻から来るじわじわとした痛み。夢のあとの辛さが、吹っ飛んでしまった。

僕は白河氷狩。さっきの子は、僕の妹の紅李。

僕らは「癒しの一族」と言われている。医学に優れているからだ。僕らも子供の頃から叩き込まれた。しかも、白河の医学に沿っていれば、何でも完治するって言われてるらしい。嘘っぽいけど。そして、何よりも特別視されるのが嫌だった。特に病院や保健室の中。怪我人の収容所だからである。

「お兄ちゃん、仕事は?」
革靴を履きながら、紅李が眠たそうに言う。
「もう直ぐ行くって。」
僕はちょっと苛立った。紅李が玄関占領してて、前に進めないの分かってるのか、って思ったから。
「それよりさ、あの事根に持ってるの?」
僕は黙りこくった。あの夢の事だ。思い出しただけで、色々な辛さが蘇る。目頭が熱くなった。

8時頃、紅李は高校へ、僕は勤務先の中学校へ行った。

1m進んだ所の家から、女の子が出てきた。赤くて光沢のあるネクタイ、黒のブレザー、赤地にチェックの入ったスカート。多分中学生だろう。容姿はというと、茶髪のセミロングに、紫の目をしていた。
「初めまして。」
何気なく挨拶を交わす。女の子は驚いたように
「どうも。」
と言った。中性的な声だった。
「君って、中学生?」
「ええ。私立だけど、最低の中学よ。白雪中学って。」
怒りを含んだ声。白雪中学というのは、僕の勤務先だ。本当に最低なのだろうか。不安が渦巻く。

道は一緒なので、一緒に行く事にした。

僕らは学校の玄関で別れた。
「君のクラスって、今日英語ある?」
「ある…けど?」
何か軽快してるようだ。
「いや…、その時会えるかな…って。」
すると、女の子の目が強張った。会ってすぐ軽快してるみたい。まぁ、そんな僕も軽々しいけど。

彼女の言うとおりだった。この中学荒れてる。授業中に紙飛行機飛ばすわ、弁当食うわ、生徒はピアスしてるわ、髪染めてるわ、女子はメイクしてるわで、校則というより常識さえ守ってなかった。しかも、先生は注意してなかった。

先生は、後ろの椅子で黙ってみてるだけだった。僕は担当の相田先生に尋ねてみた。
「相田先生、生徒に何で注意しないんですか?」
「聞きませんよ、誰が言ったって。」
諦めていた。教育放置してるし、この学校。

3時頃が1日の最終授業。これが終われば、やっと帰れる…。クラスは1−Aだ。入ってくるなり、皆僕に注目を集めてきた。
「この先公って…、白河の生き残りじゃん!」
後ろの生徒が、立ち上がって叫んだ。逆立った金髪が、よく目立つ。教室はざわめき、僕の話題で持ちきりとなった。気分が悪い。

「それじゃあ、英語で自己紹介してもらいます…。」
ぼそっとした呟きが聞こえたのか、生徒達は口々に言ってきた。しかも
「My name is…」
しか聞こえてこない。だけど、そんな中に紛れ込んでいた。大人しい少女が。茶髪の女の子。出席簿の半分より上の辺りに、彼女の名前はあった。
「黒澤さん、お願いします。」
何気ない一言が、全員を硬直させた。黒澤という女の子は、立ち上がった。
「I’m Sakuya Kurosawa.I’m thirteen years old.」
名前と年を言った後、座った。またざわめいて、授業が終わった。

帰り際、相田先生に怒鳴られた。
「あの茶髪の女を指すとは何事だ!!」
鼓膜が破れそうだ、耳塞ぎたい。
「あの子が1番まともですよ…。」
口をとんがらせて、僕が呟いたら、先生の耳まで赤くなった。
「もういい!好きにしろ!その代わりお前が最低だと言わせておくからな!」
職員室のドアをバタンと閉め、沈黙が続いたというのは、言うまでもない。

川の橋の所で、あの子に出会った。
「黒澤朔夜だっけ…。」
また近づいて、声をかけた。すると、僕を睨んできた。だけど、僕は構わなかった。
「君は…、黒澤の末裔でしょ?」
朔夜は目を強張らせて、僕の胸を強く押した。13歳とは思えない力で、僕を4,5mは吹っ飛ばした。


「近寄らないで!!」


息を大きく吸い込んで、そのまま吐き出したようだった。紫の瞳に、赤みがかかってる。

朔夜は僕を振り切って、早歩きしだした。

家に帰って、突如異変が起こった。頭が痛くなったんだ。僕はしゃがみこんで、膝を付いて倒れた。脳みそがもみくちゃにされているみたい…。
「く…っ、くはぁ!」
息苦しい。首を締め付けられてる感じがする…。目の前が、様々な色のセロファンを貼り付けたように、色が変わっていった。



僕の記憶は、そこで途切れた。



目を開けたら、見慣れた顔があった。しかも、ドアの前じゃなくて玄関に敷いてあるカーペットの上だった。
「お兄ちゃん大丈夫?ドア空けた拍子に、お兄ちゃんが仰向けになって倒れてきたんだけど…。」
「じゃあ、紅李が運んできたのか。」
一寸落ち着きを取り戻した。

ずっと此の侭でいる訳にもいかないので、自分の部屋に行った。

入るなり、ベッドの上に倒れた。まだ頭が重い。呼吸が乱れている。まだ玄関で落ち着いていたほうが、よかったかもしれない。

ベッドから離れて、窓から景色を見ようとした。
「あ…。」
僕は小さく声を漏らした。隣の家が朔夜の家だったからだ。下手すると犯罪なので、直ぐに窓に背中を向けた。

彼女の家から、外人アーティストの曲が聞こえてきた。

第2話
肌寒さで、ベッドから抜け出した。ベッドの縁に座って、暫く考えていた。黒澤朔夜の事を…。僕を軽々と突き飛ばした事、あの紫の瞳の事、教師からでさえ嫌われている事、そして…

「近寄らないで!!」

こう怒鳴った事。黒澤という苗字が、頭に引っ掛かる。

「黒澤」という苗字が恐れられている理由は、この一族も僕ら「白河」同様に、有名だったから。でも悪い意味でなのだ。「殺人一族」とも呼ばれている。由来は勿論、男はおろか、女子供も容赦せず殺していったからだ。

だけど、白河のように詳しい事については不明。明かされているのは、殺人一族である事と、今生きている黒澤の血を継ぐ者が、朔夜という事だけだった。

朔夜を見た周囲の反応や、教師達からの恐れが脳にこびり付いたまま、紺色のスーツと青いネクタイと白いYシャツを持っていって、食パンを焼いて食べた。

因みに、一緒に外へ出かける紅李は、8時5分前くらいに起きて来て、よくドラマで遅刻しそうな子がトースト口に銜えたたまま走って、高校に行った。下にいても、紅李の部屋の目覚ましの音が聞こえてきたんですが…。

昨日の一件で、僕は全員の教師に睨まれた。
「お…、おはようございます。」
と挨拶をすると、小さな声で「おはようございます。」と飛んできた。時間割を見ると、あの1−Aも入っている。責められそうだ。

そして、僕を苛立たせたのは、あの会議だった。校長先生が、こう言ったのだ。
「皆さんの中に、あの殺人一族の生き残りを普通に扱ったという情報が、入り込んできました。彼女は何時我々を殺すか、分かったもんじゃありません。今後、彼女を相手にする事は、一切しないでください。」
僕の体がぴくっと震えた。その直後、真向かいにいる相田先生を見た。得意げに、自慢するように笑っている。顔がでかい割には小さい目が、得意気に綻んでいる。

職員室を出た後、ドアの真向かいの壁に思いっきりパンチを食らわせた。

トップバッターが1−A。かなり嫌な予感が立ち込めてる。あの相田先生がこう言った。
「校長先生のお言葉を、尊重してくださいよ…。」
気取った声をしていた。まるで、「こっちの意見を聞かないと、殺すぞ。」というような脅しの目付きだった。頭の中の何かが、ぷつんと切れた。

苛付いた状況の中、教室に入ると、皆大人しくしていた。
「…始めます。」
学級委員らしき女子が、号令をかけた。彼女は茶髪だが、思いっきりプリン頭になっていた。座った後、朔夜の後ろの男子が、手を上げた。名前は…、
「永原君?何ですか?」
ぱっと手を下ろし、立って朔夜の頭を小突いた。
「先生、この女ウザいんですけど。何で平気なんすか?」
それを言われた朔夜の頬に、青筋が5本くらい入った。
「彼女は君達と同じです。」
僕はさらりと答えた。
「何それ!!黒澤は殺し屋なのに?!放っといたら、私達まで殺されちゃうだろーが!!」
少し膨れた眉毛のない女子が、大声でブーイングした。そんな討論が続いて、結局それで授業は終わってしまった。

「あなたは子供ですか?」
相田先生の声だ。後ろでキレたように、声を発している。職員室まで、朔夜がは危険だとか、黒澤がどんなものかという、そんなのばかり言われた。苛立ちはどんどん大きくなるばかり。
「全く、何と言う先生でしょうね。」
職員室のドアを開けて入るなり、そう言われた。僕は相田先生のほうに、顔を向けた。
「じゃあ生徒の教育確りやってください。」
早口でそう言った。また耳まで熱さが膨張していた。

そして、今日受け持った全てのクラスが、朔夜の一件の事で質問され、授業にならなかった。

家へ帰る間際に、1年の女子にこう言われた。
「黒澤先生♪」
無視した。もうあの事なんて忘れてしまいたい。朔夜は人間なのに、ここまで避けられるとは。そして、それが僕にも広がってきたなんて…。振り切って、その女子を素通りしようとした、その時
「無視してんじゃねーよ、ゴルァ!!!」
ぱっと足を止めた。吃驚したんじゃない、キレたのだ。
「てめぇ白河の癖に、黒澤相手にしてんじゃねーよ。あ、てめぇは自己再生できんだっけな♪白河のお坊ちゃま♪」
次の瞬間、僕は教師として有るまじき行為をした。右手で首を掴み、どんどん力を入れていった。
「白河が何だ?黒澤が何だ?特別視されて心地いい奴じゃねぇんだよ、僕は。今後一切、僕の家系に触れるな!」
力を緩めて、首をそのまま投げ捨てるように、女子の体を振り払った。

その後、僕は川の橋の所で、泣いた。彼女のためにも何もしてあげられなかった、生徒の首を絞めてしまった…。何もかもを後悔していた、時
「お手柄だったわ。」
という、聞き慣れた声がした。振り返ると、朔夜がいた。
「黒澤さん…。」
「朔夜でいいわ。」
苗字を言いかけたとき、朔夜に速攻で寸止めさせられた。冷たいけれど、少し温かみのある微笑が、僕を和ませた。
「私を人間視してくれたのは、貴方だけよ。感謝するわ。」
僕は、1−Aで言った事を、もう1度リピートしてみた。


『彼女は君達と同じです。』


これか…、と僕は思った。
「僕も同じ目に合ってたんだ。大学では神だのどうだの言われてさ。」
僕はまだ川を見ながら、話していた。
「確か貴方は…、白河だったわね。」
朔夜は僕の隣に回りこんだ。

「でもね、私貴方に文句があるの。」
え?と疑問が浮かんだ。確かに彼女にしてあげられる事は、しなかったけど、その事かな…と思ったら、
「あいつらとは違うわ、私にも言える。あんな好き放題やらかさないわ!!」
僕はちょっと声を出して、笑った。確かに、朔夜は他のクラスメート、いや、白雪中の全生徒にも共通しない、「ちゃんとした道」を持っているからだ。

朔夜とは、ここで別れた。春にしては、かなり冷たい風が、僕の頬を掠めた。

第3話
帰宅後、リビングにいた紅李が「お帰り」の代わりにこんな事を言ってきた。
「ねぇ、隣の子って黒澤でしょ?」
何故知ってるのだろうか。あの家、表札が何故か無かったけど…。
「あの目、如何考えても黒澤だよ。ほら、あたし達だって日本人なのに青い目でしょ?」

紅李が言ったように、僕ら白河は青い目をしていた。日本人の目は、かなり濃い茶色のはずだ。だが、僕らはまるで外人のようだった。黒澤も、日本人には無い目をしている。しかも、外人でもいない、紫の目だった。

「別に隣の子は殺しも何もしてないって。まだ中学生だし。」
紅李を宥める様に言う。すると、紅李は溜息をつき、首を横に振った。
「甘いわね〜お兄ちゃん。最近は物騒なのよ?何せ小学生の犯罪も、増えてるんだから!」
…確かに。何も言い返せない。だが、
「ま、あの子の表情どこか純情そうだったからね。信じてやりますか。」
と、伸びをしながら言った。やりますか…って、いやいやしますって聞こえたけど…。

次の日、憂鬱な日が始まる。早く夜になって欲しいと、朝起きてから思うようになった。紅李はどんな生活送ってるか知らないけど、兎に角青い目の事で言われてるのだろうか。

職員室に入って来た所で、朔夜がいた。相田先生に、ネチネチ言われてる。
「もう職員室に入って、殺人未遂を起こさないように!」
そして、僕をチラッと見て、素早くドアを閉めた。朔夜は出席簿を廊下に投げつけた。
「何が言いたいのよ、あの意味分かんないボコられ教師!」
朔夜の顔色は、目と同様に紫色っぽくなってた。相当怒りが溜まってるのだろう、教師にもクラスにも、全てにも。

その時、昨日吹っ飛ばした女子と、その子の友人らしき女子がいた。名前は覚えてない。1人は2つ結びで、色が白く、もう1人は色黒で、茶髪のだ。そして、前者は僕が吹っ飛ばした生徒だ。
「黒澤、それは先生の必要な物だよ?物にまでやるなんて、最低〜。」
大声を上げて笑い出した。朔夜は小さい声で、
「常識知らず。」
と言い放った。そして、向かいの柱に向かって、蹴った。見ると、何と少しひびが入っていた。黒澤の血筋なのだろうか、もはや並の人間ではない。朔夜は靴を履いて、教室へ向かっていった(因みに、一旦外に出ないと教室に行けない)。

職員室に入るなり、体育の中原先生に呼び出された。
「白河先生、伊藤の御両親から苦情の電話がきましたよ。あなたが殴ったって。」
僕は、自分の腹がひくついたのが分かった。昨日、朔夜の事を侮辱して、僕にまでも喧嘩を売ってきた、色白で2つ結びの女子の事だろう。
「彼女は生徒を侮辱したんですよ?しかも、この学校の生徒達は言っても聞かないじゃないですか。」
中原先生は、僕をキッと睨んだ。何時もチクチクと浴びさせられる、僕への攻撃。日常茶飯事で、もう慣れていた。
「その生徒とは…、黒澤朔夜の事ですか?」
ゆっくりと、掠れた声で僕に聞かせた。速攻で首を縦に振ると、相手は目玉が飛び出すほど目をでかくした。

「あれはうちの生徒ではない!あの切り裂き魔が、人間ではない!」

他人を物扱いした彼の態度に、目じりがひくつく。朔夜は如何見ても人間だ。確かに家は黒澤だが、彼女は無実。殺しをしたという証拠は、何処にもない。中原先生は、そのまま机自分の机に戻っていった。朝から怒りが溜まって、どうにもならない。僕は、また職員室向かいの壁に行き、右手で何度も壁を殴った。4本の指の第2関節から、血が滲み出てる。構わず殴った。壁が血に染まろうが、僕の指から骨が見えようが、構わなかった。だが、体力なんてなく、壁に両手をついて顔を下に向けた。

「畜生…、やってられっかよ…。」

今日は5時間だったが、最後に学活があったのが、嫌だった。人の話し何も聞かない奴らに、何言っても通じない。苛立ちが徐々に増えていくだけだった。調べ物をするという事になったが、「面倒臭えー!」が聞こえてくるだけだった。普通なら、人の話し聞けって言うだろう。だが、この学校は普通じゃない、悪い意味で。

1番まともな朔夜は、頬杖を付き、退屈そうにしていた。紫の目は、凄く寂しそうにしていた。僕はこのどんちゃん騒ぎに紛れて、朔夜の元へ行った。
「大丈夫?朔…、じゃなくて黒澤さん。」
朔夜は小さく溜息をついた。
「全然。いい高校にも入りたくて、此処に来たのに。はぁ、皆幸せね。身寄りがいるし。」
一瞬朔夜の目が潤んだ気がした。寂しさがぐっと増す。僕の身寄りは、妹である紅李くらいだ。
「貴方の瞳は綺麗ね。何も穢れてないわ…。」
朔夜は僕の目尻を、冷たい指でなぞった。僕の顔の体温で、彼女の氷のような指は、温かみを増していった。違う、僕は幸せなんて知らない。両親なんて…、育てられた覚えなんて…。


「黒澤!!」


相田先生の大きな声が飛び交ってきた。どかどかと走ってきて、生徒の机を蹴散らした。そして、朔夜の顔を見るなり窓ガラスに押し付けて、首を絞めた。
「があぁぁぁぁぁ…。」
苦しそうな朔夜の声が聞こえる。目を瞑り、苦しみに耐えている。相田先生の手は青筋が多かった。クラスはというと、口笛を吹いたり先生を応援したりしていた。このままだと、朔夜は死ぬ…。

僕は相田先生の手を取り離そうとした。指に手を入れて、緩めた。簡単に外れ、朔夜は壁を伝って、落ちた。床に倒れた朔夜の肌は、青白くて死人同然だった。朔夜の体を横にして、背中を叩いたり、手を抓ったり、声をかけたりした。でも、無反応だった。僕は朔夜の胸に手を当て、ぐっと何度も押した。だが、体が反動によってぴくぴく動くだけで、目は開かなかった。そして、朔夜の鼻を摘み、手で少し口を開けさせた。そのまま僕は、口をつけた。息を大きく吹き込み、2回くらいで息を吸う。それを何度も繰り返した。10分くらい経った時、

「ゴホッ」

朔夜の口から、咳が出た。荒い息と共に、目を覚ました。僕の体の力は抜けていった、が、
「黒澤ー!先生とな〜にやったんだ〜?」
冷やかしの声が聞こえる。相田先生も、いやらしくて気持ち悪い笑みを浮かべていた。平気でやった人工呼吸のだ。僕は下を向いて、顔を赤くした。その時、


「人工呼吸の何処が変なのよ。応急処置の1つでしょ?」


朔夜の声は冷たかった。その温度を察知したのか、皆黙りこくった。僕は朔夜に微笑みかけた。
「ありがとう。」
朔夜は冷たいけどさっきの声よりは暖かい笑顔を、僕に見せてくれた。

「勇敢だったねぇ。」
この話には、紅李は嫌な反応を見せなかった。
「人を助けるには手段を選ばないのが、原則だと思うんだけどなー。」
僕は夕飯のエビフライを口に運びながら、悩むように言った。紅李は大きく頷いた。
「そういう時に白河の力を発揮するのが、いいってわけだね。」
箸を僕に向けながら笑顔で紅李は言った。僕もちょっと笑って、箸で掴んでたエビフライを齧った。

2005/01/16(Sun)14:06:54 公開 / 朔羅
■この作品の著作権は朔羅さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、13歳の朔羅と申します。
シリアス系好きですが、なってませんね(死)。これは結構前に考え出したものです。
朔夜って名前、有り得ないです(ヲイ)。氷狩と紅李は漢字が変です。てか勝手に作りました(最低)。
一応続編あります(嫌)。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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