『君の賛歌』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:龍ヶ崎智也                

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君は僕と暮らしていた。
君は目が覚めると、とりあえず隣に寝てる僕を起こす。
ゆすったり、たたいたり、大声を出す。
やっと僕が目を覚ましたら、君はコーヒーをくれと言う。
コーヒーメーカーで2人分のコーヒーを落とす。
ガラスのティーカップに注いであげると、
君は台所からチョコシロップを持ってきてコーヒーに入れて飲む。
僕はブラック派。君はチョコ派だった。
君の髪型はロングヘアーで前髪は眉の上できっかり揃って切られてた。
そして右半分は金色、左半分は緑色だった。
君はブラックのカラーコンタクトをしてた。
目が大きく見えるんだ、と君は言っていた。
君の着てる服は毎日違った。でも毎日派手だった。
お気に入りは孔雀の羽で作られたコートだった。
あれはホワホワしてて僕も好きだった。
君はパチンコが好きだった。
君がパチンコで負けるところは一度も見たことがなかった。
そしていつも帰ってくるときは両手いっぱいにウサギのぬいぐるみを持って帰ってきた。
君は葉巻を吸っていた。一本300円とかのだ。
君は家事が好きだった。特に料理と掃除はプロ級だった。
君はお菓子作りが好きだった。
バレンタインデーには1ヶ月でも食べきれない量のチョコをくれて、
君が半分以上自分で食べていた。
君には親がいなかった。
だから親のいない僕に心を開いてくれた。
君は強かった。
泣いたり弱音を吐くことなどほとんどなかった。
でも一度、僕が君にプロポーズしたときは、
街の真ん中で大声をあげて泣き喚いた。
君は妊娠した。
とても喜んだ。名前は絶対に「時雨之介」がいいと言った。
君は流産した。
その時君は涙も流して生まれてこれなかった子に謝っていた。
君はしゃべらなくなった。
いつも外ばかり眺めるようになった。
何ヶ月も、何ヶ月も僕らは会話をしなかった。
君は死んだ。
朝起きたら風呂場で手首を切っていた。
君は燃えた。
骨だけを残して全部燃えた。
君の書いた手紙を見つけた。
「あなたに出会えた事を、あなたが私を愛してくれたことを、
永遠に忘れない。」
と、英語で書いてあった。
君は最後まで君だった。
君の一生はいつでも君らしかった。


5年後、君にそっくりな男の子を見た。
行動がまるでうりふたつだった。


名前は「時雨之介」



時雨之介は君なのかい?
僕は時雨之介に会うためにいつも公園に行っている。


僕は思う。
終わった恋を一生ひきずり続ける人生だって悪くないじゃない。
君もきっとそういう。



2005/01/09(Sun)05:32:51 公開 / 龍ヶ崎智也
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