『流れ星の夜に・…  完』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ニラ                

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流れ星…それは、全ての者の夢の掛け橋のような物だと思う。

気まぐれに現れ、すぐに顔を引っ込める恥かしがりやみたいだ。

でも、もしもその時に、たった一つの願いを言えば、

恥かしがりやの流れ星も力をかしてくれるはず。

夢に向かう者や、こうであって欲しいと願う者・・・・
 
≪流れ星は皆の味方だから・…≫


第一夜「流れ星」

 ある静かな町の外れにある大きな草原・…鮮やかな緑は暗闇によって鈍い色を放っている。空は雲一つ無い空で、様々な星が顔を出している。
 そこに、大き目の望遠鏡を立てて、レンズから覗いている少年がいる。彼は「大空彼方」と言い、町でも大の星好きで名がとおっている。その少年は、首にマフラーを巻き、暖かそうなジャンパーを身に付けて、近くに置いてあるノートを手に取ると、すぐさまにペンを走らせる。そしてノート一枚の真っ白な空白が、今の夜空の一部を切り取ったように綺麗に写生される。
「えぇと、今日は、結構星が鮮やかだなぁ…」
 少し高く、良く伸びる声で彼方はそう言う。ノートを書き終えた後でも、まだ帰ろうという気配は全く感じられない。
 望遠鏡を覗いていたときに、何かが光った気がした。そして、真っ黒に染まった夜空に光の線が引かれる。
「あっ、流れ星・…」
 気づいた時にはもう遅く、光は消え去っていた。しかし、彼方は手を合わせてぶつぶつと何かを言いつづける。願い事だろうか、それにしては長く手を合わせて、目をつぶっている。全く見えなくなったのにもかかわらず、彼方は願い事を言いつづけているようであった。
「何…しているんですか?」
 後ろから声がした。透き通った綺麗な声である。彼方はその声を耳で聞き取り、願い事を言うのを中断し、後ろに振り向く。
 月の光で反射して、綺麗でさらりとしたロングヘアーに、少し子供のように思える顔立ち。しかし、彼方の腰の辺りに頭があった。それもそのはず、そこにいる彼女は車椅子に乗っていた。少しやつれた感じのほっそりとした足が丈の長いスカートから顔を覗かせている。
「君は、誰?」
「私ですか? 私は、『夜月かなた』です・…」
「え? 俺と一緒の名前だ…俺は『大空彼方』だよ」
 偶然は突然来るもんなんだなぁ、などと言いながら彼女に微笑みかける。彼女は彼方の微笑む顔を見て、笑みを返した。きれいだった。彼方の答えはそれだけだった。どんな言葉でも表せないような、そんな感じの気持ちになる。丁度、星を見つづけたいと思うときのような感じだった。
「で、かなたちゃんは何でここに?」
 ちゃん付けはなれなれしいかなと思いつつ、そう尋ねて見る。すると、かなたは少し明るい顔を見せて、そして彼方に言った。
「星が綺麗だなぁと思ったんです」
「綺麗だよ!! 今日は特にね…」
 少し興奮しそうになったが、それをギリギリで押し留めて、夜空を見上げながら彼女に言った。かなたはこちらを見て、星好きなんですか? と聞いて来た。もちろん頷いた。そして、車椅子の彼女を後ろから引き、望遠鏡の前で止める。
「見てみると良いよ…、ここから望遠鏡で見るのがベストなんだ」
 彼女は覗く。一面の夜空に輝く星は、例えて見ればダイヤモンドのように高価な物に見えた。星達がまるでオーケストラでもやっているかのように集まって光り輝いている。かなたはびっくりした。それと同時に感動した。こんな物がこの世界の外にあると言う事が悔しく思えた。出来れば、近くで見てみたい。少しでも良い、近くで…
 ガタンッ
 かなたは力無く倒れた。車椅子から立ちあがった瞬間、痛みが走ったのであった。
「大丈夫!? かなたちゃん」
「大丈夫です・…少し、手伝ってもらって良いですか?」
 彼方に助けをもらい、痛みを堪えながら車椅子にやっとの事で座った。その時、ジリリリンと何処かから音がする。かなたの車椅子の後ろにかかっていた時計だった。時間は十二時を指している。
「いけない、もう帰らなくちゃ」
「そうなの? 分かった。じゃあ、また今度会おうね。かなたちゃん」
「はい、色々と話をできました。楽しかったです。さようなら!!」
 車椅子のタイヤを自分で転がし、草原を抜けていく。それを見送った後、ノートを閉じて、望遠鏡をかたづけ始める。
「かなたちゃん…か、また会いたいな」
 誰も聞いていないが、そう静かに呟いた。冬の風が今日は珍しく心地よかった。

第二夜「再開」

 気がつけばあの日から一週間経っていた。彼女にはもう会っていなかった。何度行っても、彼女があの草原に来る事は無かったからだ。
 冬もだんだんと本格的になり始め、車椅子だと不便なのだろうと勝手に考え、あまり彼女の事は考えなくなっていた。しかし、会いたいと言う事は変わっていなかった。
 雪と冷たい風が容赦無く飛んでくる中を、彼方はマフラーとコートでやり過ごしつつ、学校へと向かっていた。良く長々と世間話をしているおばさんや、冬なのに半そで短パンの小学生たちも姿を見せていない。寒さが半端でないので、皆コタツの中で丸くなっているだろうと彼方は思う。
 あまり人会わないので、話し掛けられる事も無く、静かに時間が進んでいく。寒さは普通ではなく、身も震えるような風が体を通り、コートを着ているのにもかかわらず、体の芯まで冷やしていく。
「さむ〜〜〜…、家で俺も暖まりたいよ」
 手を前で組み、擦りながら歩く。走ればすぐに学校に行けて、暖かい教室に入れるだろう。しかし、その為に寒い風の中を走り、風に当たりつづける事なんて言うリスクは彼方は背負えなかった。
 寒さで凍り付きそうになっているまぶたをこじ開けると、目の前に一つの車椅子の姿が見える。彼方の頭の何処かからふいに一週間前の記憶がフラッシュバックされる。
――長い髪に・・・車椅子・・・
 彼女だと、期待の混じる声が頭に響く。寒い中を遂に彼方は走り出す。何も付けていない無防備な顔と手は冷たい風の直撃を受け、体を通っていく。吐く息はだんだんとハッキリとした白い息に変わっていく。滑りそうな雪の上を注意しつつ、それでも走りつづけた。目の前にいる車椅子。間違い無く…・「かなたちゃん」だ!!
 車椅子は思ったより遅かった。腕で押すので、手袋をつけていると滑りやすいからなのか、真っ白な手の指先は赤くなり、時々痒そうに動く。方向は学校だった。彼女も高校生なのか? と気になり始める。そして…
「こんにちわ!!」
 彼女――ひなた――は振り向き、そして驚いた。目の前に一度だけあった少年が居るのだから。彼女にとって、一度会っただけなのに憶えていてもらえるのは嬉しい事だった。そして、自然に笑顔を彼方に向けた。
「かなたちゃんも、この学校なの?」
 少し古びた感じの大きな高校を指差す。かなたはゆっくりと頭をしたに動かす。
「でも嬉しいです。私の名前を覚えていて貰えるなんて…」
「いやぁ、会ったのが結構印象強かったから…」
 二人の間に暖かい笑顔が浮かんだ。そして、雪に苦戦していた彼女の車椅子を、後ろからしっかりと、それでいて力強く押す。彼女に触れているわけではない。しかし、なぜかそこには温もりがあった。そのかすかな温もりは、体の芯まで冷えていた彼方を暖めていく。


「夜月!! 大空!!! 何を遅刻している!?」
 しまった…。彼方は確実にそう思った。学校で一番とっつきにくい先生「西潟教諭」が門番だった。いつもは、遅刻しても成績の良さで何とかごまかしてもらえたけれど、この先生は違った。遅刻をする者は誰一人として許さなかった。遅刻をした者は誰であっても西潟は校庭を体育着で走らせる。それも二十週近くである。それは、彼方の考えからすると、彼女も…と言う事になる。頭で必死に考える。そして、結局考え付いたのはこれだった。
「お前ら二人とも!! 五十だ!! 走って来い」
 かなたは車椅子である。なので、走れないと言う思いで下を向く。彼女にとって、「走りたくない」とかを考えていたのではなく、「はしれない」と言うことを気にしていたようだ。
「先生!! 俺、かなたちゃんの分も走ります」
「ハァ!? 夜月もだ」
「だって、かなたちゃん、走れないんで、しかも、俺が『一緒に行こう』って呼びとめたせいなんで」
 確実に分かる嘘だ。でも、必死で考えた結果、そこそこ頭が良い彼方は、何故か、それだけが精一杯だった。
 西潟は納得したらしく、荷物を預かると、『走ってこい!!』と叱咤を飛ばす。かなたにアイコンタクトをした時、何かが起こった。彼方は急に倒れた。一瞬の出来事だった。彼女――かなた――は呼び止めようと力を込めて立ったらしかった。しかし、力が入らずに、前に倒れこんだ。それを彼方は無理な方向転換でギリギリ受け止めた。危なかった。もう少しで彼女の頭が割れていた可能性もあった。受け止めた彼方の後ろにあるのは尖った柵だった。
「大丈夫!? かなたちゃん!!」
 自分の足にも痛みを感じたが、気にしなかった。彼女は受け止められた彼方の腕の中で、静かに涙を流していた。
 極度に冷えたらしく、結局、彼女は家に帰ることになってしまった。そしてまた、彼方の腕に残った涙の跡が、彼方の心に引っかかったままになってしまった。
――走り…たかったのかな?…・
 彼方は静かに、星の無い空を見上げながら、そう思った。 


第三夜「流れ星に願う」

「おい彼方、お前さ、気になるんならいって見たらどうだ?」
 校庭を走り終えた彼方に栗毛色の少年―中村壱紙―は心配げに声をかける。彼方は息を何度も吸ったりはいたりしながらペースを整える。もともと体力はある方なので、百週はまあ走るのは簡単だった。
「…、大丈夫」
「大丈夫じゃないよ!! 走っているときもだけど、顔暗いよ?」
 うつむいている彼方の顔を覗きこむ様にして壱紙は言う。言葉も少し暗い雰囲気を漂わせている。
 たった二人の校庭は、やけに静かであった。しかも、すでに授業は始まっていて、壱紙は一時元目をサボっていた。体操服だけで、汗を大量にかいた彼方は身を震わせる。今日は半端じゃない寒さなのだ。半そでと短パンなら寒くなるのは当たり前である。その点、壱紙はぬくぬくと暖かそうにマフラーを巻き、彼方に見せ付けるように幸せそうな顔をしている。
「とりあえず、放課後にするよ・…」
「あ、その点は大丈夫。サボっても平気だよ」
「?」
「あの先生流石に今日の寒さじゃあ、風邪引いて倒れるかもしれない…ってうわごと言ってたから」
 何処からそんな事を聞いたのか。それは凄く聞きたいことだが、そんな事を考えるのを止め、すぐに校庭を後にして昇降口へと向かう。
 昇降口は暖かかった。いや、あの寒さの中を風邪を簡単に引きそうな状態でいたのだから、暖かいと感じても仕方が無いと思える。昇降口の脇に置かれている制服を手に取ると、一つ一つゆっくりと着替え始める。その時、背中に寒気と悪寒を感じる。
「ひゃうっ」
 あまりの冷たさに彼方は甲高い声を上げた。後ろを見てみると、手を彼方の背中につけて、温まっている壱紙がいた。
「壱紙ぃ〜〜…、お前なぁ」
 ニシシ、と悪戯をしたことに悪気が無いように思える声を出し、そして、昇降口を再び開ける。冷たい風が彼方の体に突き刺さるように攻撃してくる。半端じゃない。しかし、何とか制服のおかげで、体に直撃は免れた。
「彼方、行ってこいよ!! 俺が何とかしとくからさ…」
「…」
「まかせろって!!」
 壱紙は自身満万に胸をドンとうち、強すぎたためにむせこんでいる。その様子をみながら、ふう、と微笑みながら溜め息をつくと、昇降口へ向かっていく。そして、壱紙に手で「サンキュ」と合図を送り、昇降口を出て、大きな校門を後にする。


 大きな白い建物。そして、その頂上の辺りには、キリスト教の聖印十字があった。たぶん、神を信じたり、裕福だったりする者が入る所だろうと、呆気にとられながら考える。そして、強い風に吹かれて我に戻り、すぐさまに冷気からにげるように病院へと入っていく。かなたの場所は先生が言っていた。それは、彼方が放課後に言って謝ってこいという意味なのだろう。しかし、彼方は放課後まで待てるはずも無かった。胸につっかかりがあるまま授業を受けたりしたら、確実に頭が爆発するはずだ。そう思っていた。
「すみません」
 彼方は入ってすぐの受付にいる女性に声をかける。女性はピンクの色で染められたナース服姿である。その女性は、「なんでしょうか?」とにっこり笑いかけながら彼方に聞く。まっすぐと前を見据え、かなたの居場所を聞いてみる。すると、女性は少し頭をかしげて、すぐに受付の机に置かれているパソコンに手をつける。
「申し訳ありません、苗字をお願いします」
「あ…えっと…、確か夜月だったと…」
「夜月…と…、あった。四階の一番置くの部屋です」
 女性はにこりと笑い、そして、そう言うと受付席に座りなおした。彼方はお礼をすると、階段に向かって走っていく。途中、足の骨の折れた人などにぶつかりかけたが、なんとかすり抜けて四階へ向かう。すべりそうなほど磨き上げられた廊下を走り、遂に四階の奥の部屋へと到着する。よかった、と彼方は内心安心する「面会謝絶」などと書かれていたら、胸の引っかかりが重くなっていた所だっただろう。
 コンコン
 裏拳で静かに扉を叩き、そしてガチャリと開く。そこには、一つの大き目のベッドと、それに隠れるようにして寝ているかなた、そして、かなたの父母と思われる人たちがいた。
「あら? どちら様で?」
「いいえ、そんなに深い仲ではないのですが、お見舞いをと思い…」
 深い仲と言う意味の分からない事を言い、父母の二人にくすりと笑われる。そして、その声に反応して、布団に潜っているようにして入っていたかなたが顔を出す。
「お母さん? お父さん? どうしたの」
「かなた、貴方のお友達という方がきてますよ」
 彼方はさっきから数時間も経っていないのに、眠そうに目を指で擦り、そして、パッチリと開ける。そして、寝起きの顔が一瞬にして笑顔に変わる。
「彼方さん!! どうしてここに?」
「いや、大丈夫かきになって…」
 父と母は「時間だ」と言って、二人ともかなたの部屋を出ようとする。そして、かなたに笑顔で「いってくるね」と言うと、ドアが閉められた。
 静かな沈黙が少しの間流れるが、かなたが話を突然切り出した。
「彼方さん…走るって、良いですよね」
「まあねぇ、疲れるけど嫌いじゃないよ」
「私、もうすぐ手術なんです」
 急にかなたは言った。会って間も無い少年に、こんな事を話す事は無いだろうと思う。しかし、彼方は不意に頭に言葉が浮かんだ。

――かなたくん、ひっこししても、ともだちでいてね?…
――もちろん!! いつまでもともだちだ!!

 それは、何か大事な記憶だったような気がした。しかし、そこまで思い出したのに相手が思い出せない。かなたちゃんではないと思う。では、一体誰なのだろう?
「大丈夫ですか? 彼方さん」
 聞こえてきた言葉ではっとして、かなたのほうに向く。どうやら怖いくらい暗い顔をしていたらしく、少しかなたの顔から恐怖が浮かんでいる。テレビがついていて、そこからは数々の情報が流れている。たぶん、彼女が知らない間につけたのだろう。
「聞いてる聞いてる!!」
「そうですか・・」
「だから、実は私…、手術を受けるのが怖いんです」
「どうして!? …あ」
 聞いていなかったことがかなたは分かったようだった。しかし、彼方は暗い顔で話を続ける。その時、テレビから緊急速報がなれた。
――先ほど発見されたのですが、明日七時から、謎の流星群が見られるということが分かりました。大量の流れ星がこの日見れるのです。
 流れた瞬間、彼方はにこりと笑う。そして、かなたの方へ向き直り、言った。
「かなたちゃん、流れ星は知ってるよね?」
 かなたは疑問のある顔をする。しかし、彼方は続ける。
「流れ星に三回願いを言うと、願いが必ず叶う…」
「え!?」
 思ってもいない事を彼方は口にした。流石に、神頼みを口に出したのはびっくりだッた。
彼方は親指を出し、そして、かなたに笑いかけながら、病院を出ていったのだった。
「・…」
 かなたは見送り、そして、ベッドに仰向けになる。ゆっくりと目をつぶり、静かにこう言った。
――私に…希望を…ありがとう…
 そして、かなたは大空へと旅立っていった。

 最終夜「流れる星を見上げ…」

――なんで、こんな結末で…終わるんだよ…
 雲で埋まった空の下で、黒い服を着た者達が静かに室内へ入っていく。お経を和尚は読んでいる。そして、その前にある白黒の写真は、「夜月かなた」の写真である。見間違えも全く無い。たった数日間…、しかし彼にとってはかけがえの無い数日間であったはずである。その中にいた彼女が、目の前にいる。昨日、約束をしたばかりだった。必ず、星に願いを言うと言う、約束を…。
 周りは大人ばかりであった。学校に全くといっていほど来てないので、友達はおろか、覚えている者も全く居なかった。
 清潔感のある白い部屋に、埋め尽くされる黒い色。その中には彼方もいた。唇をかみ締めながら、目の前の風景に絶句していた。外は真っ暗である。本来ならば今日は流星群が見られる日であった。そして、彼方の約束の日でもあった。しかし、その約束の前に立ちはだかるようにして、厚い雲がある。
「ごめん…、かなたちゃん…俺、約束守れなかった…」
 あふれ出てくる涙と共にこぼれた小さな声。それは、震えるような声であった。お経が終わると共に、皆は立って静かに出ていく。何もかも全て終わった状態の彼方の頭の中のように、部屋は真っ白に戻っていく。彼方は、ただただ俯いているだけであった。
 

 ふいに、空になった頭に声が響いてくる。聞いたことのある声である。
――彼方さん…ごめんなさい…
 しかし、その声に反応はしない。彼方は絶望の闇で静かに己の無力さに打ちひしがれていた。
――聞こえている事を願います。そして、私は貴方に言いたい事があります…
 目に光が戻ってくる。ガラスだまのように黒光りしていた彼方の目が、動き始めた。そして、目をつぶり、その言葉に耳を傾ける。
――ありがとうございます。今まで、私には友達が居ませんでした。それは、私にとって、苦痛でした。でも…、
 聞こえてきた言葉が途切れる。それと共に、外からのざわめきが聞こえてくる。目を開け、後ろを向き、夜だというのにざわめかしい外に向かって歩いていく。
 

 驚きだった。外は眩いほどの光で満たされ、そして見るものの視線を釘付けにした。
 夜空に輝くように、どんどんと放たれていく光の矢。それは、彼方が待っていた「流星群」だった。星がちりばめられた夜空は、一瞬にして光の線で覆い尽くされ、そして、一つの絵を描いた。それは、彼方にしかわからないようであった。
『貴方に会えた。それが私にとっての一つの希望でした…』
 かなたは力無く地面にはいつくばる。そして、力いっぱい泣き叫ぶ。さっきまで溜められていたような大きな声は、流れ星の飛ぶ夜空に大きく響いていった。
――さようなら…いつでも親友で居てください…
 彼方は泣き叫びながら、ゆっくりと頷き、そして目をふき、空をもういちどしっかりと見上げた。そして…
「誓うよ!! 君と僕は親友だ!!」
 彼方はそう言って、流れ星をいつまでもみつづけていた。
 彼には、もう「悲しみ」と言う言葉は消え、そして、新たな道を探すために、流れ星のように走っていった。


2004/12/27(Mon)12:59:49 公開 / ニラ
■この作品の著作権はニラさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
完結でした。かなりと言って良いほど短く、そして全く進歩がありませんでした。でも、この作品のダメだった所を考え、そして反省して、次はもっといい物を作りたいです!!
最終は、呆気ないものになってしまったので、すみません!!でも、次回作は、もっといい物に仕上げるので、その時は暇なときでも良いので読んでもらって、アドバイス(きつくても良いので)などを下されば、嬉しいです。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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