『世界が選びし者−野心家の章−序章』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:大きな小鳥                

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―――目の前に広がる大地
―――見渡す限りの草原
―――険しく勇ましい山
―――美しく静かに流れる河
―――太陽の日差し
―――月の眼差し
―――星のボタン
―――夜空のカーテン
―――そして洞窟、町、村、城、魔境……

そんな世界を愛し、守りたいと願う者――――
――――そんな世界に野心を滾らせ、手に入れたいと想う者

それぞれの思いの道は一直線に血塗られた決闘へと続いている―――



序章:トンリア村のゼシカ嬢



ここは小さな山の中の村、『トンリア』。自然に恵まれた美しい村。
そんな田舎には似合わないような豪邸が、村の中央に建っていた。
「ゼシカ!何処に行くつもり!?」
「母さんには関係ないでしょっ!放っておいて!」
いつも村に響くこの会話は、村一、いや、大陸一の大金持ちの家から聞こえている。この『アルバート一家』は、魔法に優れた賢者の子孫で、昔から、世界の危機を救うなどをして、人々から崇められてきた。


「母さんったら……いつも家訓がどーのこーの言って……私のことを考えたことなんて………」
ぶつぶつを漏らしながら歩いてくる少女の名は『ゼシカ』。良家に生まれ、勉強に追われ、自由を束縛された宿命を恨み、日々、自由を夢見ている少女だ。
「あら、おはようございますゼシカ様。朝早くからどちらへ?」
村一のお人よし、『クリン・バッケル』に声を掛けられ、ゼシカは少し憂鬱を混じらせた笑顔で答えた。
「少し、近くの泉までピクニックよ。
 それと、いつも言ってるけど『ゼシカ様』って言わないで。『ゼシカ』でいいわよ。」
「そうはいきませんゼシカ様。あなた方『アルバート一族』には、言葉に出来ないほどの恩義がありますから……」
「だから……そんなのは気にしないで……
 ……もう、いいわ。好きに呼んでくれて……」
「では、行ってらっしゃいませ。ゼシカ様。」



――トンリア近くの泉

「ふう……やっぱり、ここは落ち着くわね。
 ………嫌な事も、一時だけ忘れる事が出来るわ……」
ゼシカは、ゆっくりと伸びをすると、泉に手を少し入れた。そして、手を重ね、水をすくうと、そっと口へ運んだ。
「う〜ん、おいしいっ!」
ゼシカが口のまわりの水を拭いながら振り向くと、大勢の旅人が馬車を引き連れて泉へ向かってきているのが目に入った。
「………旅人……
 連れて行って……くれるかな……私を……」
ゼシカは立ち上がって暫く旅人たちをみつめていたが、ハッと気付いた顔をし、急いで草むらに身を隠した。
旅人たちは、馬車に数々の宝を乗せ、全員剣を腰に提げ、常に臨戦態勢に入れるよう、常に気を配っていた。

「も、もしかして……と、盗賊……!?」
ゼシカは、小刻みに震えながら、少し草陰から顔を覗かせた。目の前には、数人の少年と、大勢の大人、そして数台の馬車と、山積みに去れた宝があった。
「この辺りには、あと1つ村があるだろ?」
と、黒髪に目の鋭い少年が言う。
「ああ。おまけに、塔や洞窟。宝の匂いがぷんぷんしやがるぜ。」
「わかった。じゃ、今日の夜、その村で宴会といくか。」
少年は、鞘から剣を出すと、荷物の仲から道具を出し、剣の手入れをし始めた。



つづく

2004/12/09(Thu)22:24:21 公開 / 大きな小鳥
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