『People In The Belly』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:筑紫 唯                

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「2094年 世界人口10億人」
人類の人口は減少していた。
50年後には人類が絶滅するというような勢いで。

クローン人間開発という増加策は実行されたが
実行された人は出産の時に死んでしまう人が全員だった。
食糧不足、アフリカの天候悪化。
中国での伝染病流行、ヨーロッパでの内乱。
アメリカの大地震や人間の精力の低下。
だんだん人類は減っていった。

「そして2130年、女性全滅」

世界はどん底に落とされた。
もう世界に人類は産まれないのか。

これは女性が全滅してからの2年後のストーリー。



第一章=


ここはアメリカの人口増加研究所。
世界一の研究所だ。
今、男性だけで人口は6億人だった。
「所長、これをみてください」
ある職員が試験管を持って所長室に来た。
「これは人口卵子です」
職員は実験台の上のシャーレにスポイトで人口卵子を落とした。
「これに精子をくわえると」
それに精子もスポイトで落とした。
「ふむ、受精しておるな」
そう、これで人口受精卵が完成したのであった。
しかし、これを男性に投与すればいいというわけではない。
男性には子宮が無い。それに妊娠できるようなわけが無い。
「これは危険ではないか?クローン人間を作る時も失敗し死んだ人が大勢でた。
 もうひとりでも死なせるわけにはいけない」
そういうと所長は人口受精卵を捨てた。
研究上のデスク、ある男がいた。
男の名前はマット。さっきの職員だ。
「だめだったな、マット」職場の友人ジェイムスが声をかけた。
「人口増加には男性妊娠が必要だと思うんだ」
「そうだな、男が妊娠しなけりゃ人口は減っていくばかりだ」
「昔聞いた話だけど、男性も妊娠できるってわかるか?
 腹腔ってところがあって、そこに受精卵を投与すると妊娠できるんだ。
 出産の時は帝王切開」
ランチルームに行き、マットたちは昼食を頼んだ。
「なあ、研究室にいってこようぜ」ジェイムスが言った。
「なんで?」
「腹腔がどこだか探してみようぜ」
マットは頷くと研究室に行った。
マットが寝台に横たわると、ジェイムスが機械を持ってきた。
服をあげるとジェイムスは腹にジェルクリームを塗った。
「こんなこと久しぶりにしたな」
「妊婦用ジェルクリームだからな」
そして機械で腹をスキャンした。ジェイムスは下腹あたりをスキャンする。
「妊婦だとここらへんだったんだけどな」
次に腸のあたりをスキャンした。マットは釘付けになって見る。
「おいみろよジェイムス。ここに空間があるぞ」
いったん機械を置き、ジェイムスは空間があった場所を指で押す。
「本当だ、ここだ」
ジェイムスも自分の腹で確認した。
そのとき誰かが入ってきた。
「お!マット。何やってんだ腹出して」
アレックスとクリスだった。
「男が妊娠できるかもしれないぜ」
このことを所長に報告をした。
「腹腔か」
深刻な表情で彼らを見つめた。
「実験は君達がするのかね」
「はい」
「妊娠したいのか?」
「そうしないと人類は絶滅してしまうんじゃないのですか?」
「痛むのはお前達だぞ。それでもいいなら、覚悟は決めているんだな」
「ええ」
「じゃあ明日政府と会議があるから、これを伝えておく。まだ正式な承認はしておらんぞ。
 明日の会議が終わったら連絡する」

次の日、所長からの連絡が来た。
「そんなことは誠に歓迎だ。人口を増加する為ならあなた方は何をしても良い、
 と厚生大臣は言っていらっしゃった。
 この実験をしたい職員は自由だ。やりたいものがすればいい」
と、所内放送で流れた。
その結果、60人の職員のうち、35人もの参加があった。
その35人の職員がネームシールの張られた自分の精子が入った試験管を持ってマットの部屋へ押し込んできた。
精子はマットが預かって、次の日に受精卵にして腹腔にいれてあげるということにした。
「マット君、妊娠したい職員は何人いたのかね」
「はい所長。35人です」
「まあ成功を祈るよ」
ジェイムスとマットは受精卵にする作業をしていた。
「なあ、ジェイムス。俺たちのを受精卵を先に投与しないか?」
「もちろん」
マットは上半身裸になり寝台に横たわった。
ジェイムスはマットのネームシールが張られた受精卵を持ってきた。
そして注射管にいれた。
「腹腔はここだな」
「ああ」
「気は確かか?」
「ああ」
ジェイムスはマットの腹腔あたりに注射針をさした。
「次はお前だ」
今度はジェイムスが寝台に横たわった。
そしてマットはジェイムスの受精卵をジェイムスの腹にさした。
「・・・なんか腹がうずうずするな」
「気持ち的にな」
そして作業に戻った時だった。
「おい君達!実験は中止だ!やはり大臣から連絡が来て中止ということになった」
所長が来た時にはもう、彼らの腹腔には命が宿っていたのだから。



―――つづく

2004/11/22(Mon)18:52:13 公開 / 筑紫 唯
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■作者からのメッセージ
こんばんは、筑紫といいます。
SFを書こうとしたのですがいつのまにかこんな展開へ。
どうでしょうか。
是非感想お願いします。

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