『俺はロンリーウルフ。孤独な一匹狼さ。』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ベル                

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俺は暗殺者。いつだってクールに忍び込み、クールに殺る。
俺はいつだって仕事をしくじった事は無かった。完璧に、かつクールに。
それが俺の信条。だけど、そんな俺にも弱点はある。女に酒。
典型的なダメ男の弱点と一緒。これが俺の弱点でもあり、最大の汚点。
さあ、今夜もクールに完璧に決めるぜ。俺の名前はロンリーウルフ。孤独な一匹狼さ。


今夜もスナイパーライフルでクールに狙うぜ。標的は何処だ? いた。アレだな? さあ、今夜も血祭りだ。今夜も家に帰ったらトマトとブラッディーマリーでカンパイだ。さあ。今そこを動くなよ? ターゲット。今すぐ楽にしてやるからよ。恨むなら、俺じゃなく、依頼主と、依頼されるほど嫌われた自分を恨め。


俺の完璧な狙いはターゲットの頭をいつでも離さない。動きを止め、確実にガードマンのスキを狙うのさ。獲物は一撃で。でないと、騒ぎになるからな。都合よくイスに座ってくれやがって。今回も楽勝だな。


パスン


俺は引き金を引いた。長い筒から一つの銃弾が螺旋を描きながら800メートルもの距離を埋めていく。近頃のスナイパーライフルは便利なもんだ。最高で3キロ先まで見えやがる。でも俺は800もありゃ大丈夫。逃げ切れる自信はあるし、遠すぎると着弾までの時間がありすぎて、ロクにあたりやしない。


銃弾は、冷たい夜の空気を引き裂き、貫き、一直線に男へと接近していく。そして窓ガラスを突き破り、銃弾が男の頭をマリのように――


――ように――
どういうことだ? 何故あの男は生きている? 違う! 俺が狙ったのはアレじゃない。どうして黒いタキシードを着たガードマンが変わりに倒れてるんだ。違う。違うぞ。俺が望んだたのはあの男で。ガードマンじゃないんだ。いや、それより早く逃げないと。場所が割り出されちまう。俺はクールに素早くスナイパーライフルをビルの屋上から投げ捨てる。持ち帰ってる暇があれば今頃捕まってるだろう。手際よく証拠隠滅の為に俺はドンドン捨てていく。


不意に、俺の後ろから、まぶしい光が俺を照らし出した。振り返り、あまりの眩しさに俺は顔を伏せる。そっ、と眼を開くと、そこには証明を俺にむけ、銃を構える警察官たちが俺をビルの屋上の端に追い詰めるような形になっていた。なんだ? どういうことだ? 何故俺の場所が? まだしくじってから2分と経ってないぞ。まさか……待ち伏せ? いや、そんなはずは無い。この情報は誰にも割り出されるはずが無い。盗聴を恐れ、実際に依頼人と会って、付けられないように細心の注意を張った。会話の聞かれないところでちゃんと依頼を聞いたはずだ。なんでだ。なんで俺は今囲まれている。


警察官の群れの中から、一人のコートを羽織い、タバコをくわえた刑事みたいなオッサンが出てきて、こう言った。「全てをお前を見つけるための罠だったんだよ」……どういうことだ? 罠? いつの間に情報を得られていた……。……依頼人? ふと俺の頭を不安がよぎる。いや、ありえる話だ。全ては仕組まれていて。常に証拠も何も残さなかった俺をここにおびき出すための? つまりなんだ? 俺はコイツらに踊らされていたってか? ハハッ、笑っちまうぜ。


今の服装は黒いタイツ。機動性と見つかりにくさ。この暗い夜なら一度闇の中に隠れてさえしまえば、俺の姿は見つからないはず。だが、証明が俺だけじゃなく、屋上全体を照らし出しているため、隠れるのは困難。いや、まだ俺には策がある。目先のものにしかとらわれない警察官なんか簡単に振り切れる。いくぞ。


俺は腰の辺りに常に常備してある煙幕弾を掴み、刑事が「大人しく捕まるなら――」と口を開いた瞬間。ソレを地面に向けて投げつけた。激しい煙があたりを包み込む。ゆっくりと広がっていく煙に光は反射し、それは余計に俺の姿を隠すための道具となってくれる。やっぱりバカな奴らだ。向こうで「撃て!」とか言ってるが。それも俺には通用しない。俺はビルの屋上から一瞬飛び降り、すぐに屋上の床へとぶら下がった。足に吸盤を貼り付けて、ヤモリのようにクールに隠れるぜ。


後はここから適当に誰もつけていないおとりのパラシュートを飛ばすだけだ。案の定。黒いパラシュートめがけて沢山の銃弾が発砲された。瞬く間にパラシュートは穴が開き、空気が抜けてしぼんで。力なく地面へと落ちていった。警察官の一人が「追え!」と言い、その掛け声と共に、足音が遠ざかっていった。ホントにバカな奴らだ。目先にだけとらわれる。さて、ここからはいつもどおり俺は壁に張り付いたまま待って、暫くしてから逃げるだけだ。


30分たった。こうなれば警察官たちもあたりへ逃げ込んだと考え、他の場所を探すはずだろう、張り付いているのにも気付かずに。頭だけを出し、屋上の様子を伺うが、やはり誰もいない。フッ、今日も俺の勝ちだな。警察よ。俺の名前はロンリーウルフ。クールに完璧に決めるぜ。でも殺れなかったのが気がかりだが。今度は依頼人を、俺が俺に依頼を出して殺してやる。それでその後にあの男も殺せばいいんだ。俺は吸盤を脱ぎ捨て、屋上へと這い上がった。念のためにほふく前進で階段のドアまでを移動するが、誰もいない。心配してそんしたな。俺は立ち上がって、ドアノブに手をかけ、引こうとし――


スドン


不吉な音とが耳を、焦げた匂いが鼻を、そして猛烈な痛みが俺の胸を貫いた。ウソだろ。はってやがったのか……。俺はその場にうつむけに倒れ付した。振動がドクドクいってるのが分かり、俺自身の呼吸も荒かった。ああ、いつもは撃つ立場だから分からなかったが、撃たれると熱いんだな。それに凄く痛えし。しまいにはなんか体が冷たくなってきやがった。出血しすぎると体が冷たくなるって言うのは本当だったんだな。テレビだけだと思ってた。


地面にへばりついて、何とか生きようとしている俺を、刑事は携帯電話をきり、見下ろした。何も言わずにニタニタとむかつく顔でニヤついてた。くそっ、腹立つなコイツ。けど、もう動けねえや。ダリイな、なんか。それに寒い。けどダッセーなおい。クールで、完璧に決めるはずの俺が、逆に決められてる、ダッセー。ダッセーよ。でも、何より――


――助けを待っていることが一番ダッセー


俺はロンリーウルフ。誰の助けも要らない。俺がここで捕まれば、必然的に組織の居場所もばれる。っつーことはここで捕まっちゃいけねーんだ。そうだ。ここで死ぬな俺。死ぬなら、もっとクールに、完璧にだ。でも、この刑事がむかつくな。俺は刑事に見えるように、わざとその場にはいつくばったままつばを吐き捨てた。それに気を激しく悪くしたのか。刑事は俺の腹にけりをくれやがった。いってーな。ったく。アバラ折れたらどうするんだ。でも、関係ねーか。どうせ、今から俺は死ぬんだ。


俺は気力を振り絞り、膝を曲げてブーツの裏に仕込んであったピストルを手に取ると、その刑事の足に向って発砲した。いつもなら片手で軽く打ってるはずのピストルが弱っていた俺の体にはとても負担が大きかった。体全体が痛い。肩が抜けそうだ。必死に足を押さえ、片足で飛び跳ねながら叫んでいる刑事にもう一発。銃弾は見事もう片方の足を貫き、そいつを地面に倒した。けっ、これで同じ立場だ。俺は必死で腕だけで地面を移動し、ビルの端まで行った。


同時に、さっきの刑事が読んだのか、ドアからさっきの警察官たちが入ってきて、血だらけで倒れている刑事を見て、次々に拳銃を構えた。俺は死にそうになりながらも立ち上がり。笑ってやった。そして警察官達に向って舌を出しながら中指を立ててやった。瞬間、俺は足場の無い後ろへバックステップ。足場をなくした俺に向って、刑事たちは発砲しまくった。銃弾は俺の体をかすめるだけで、一つもあたりはしない。アバヨ、警察。あの世で待ってるぜ。


俺の体は風を受けながらものすごいスピードで地面へと向かって落ちてゆく。内臓が浮かぶ感覚がとても気持ち悪い。冷たい体に押し付けられる風が、凄く寒い。走馬灯。という物か。俺の頭の中にガキの頃からの思い出から今に到るまでが、フィルムを次々に映し出すように、鮮明に現れた。コンマ単位で現れ、消えて、現われを繰り返すその映像は、懐かしむ暇も無く、今に到った。落ちながら、下を見る。すると、大きなマットがはってあった。なるほど、全ての行動はお見通しってか。そんなに生け捕りにしたいか。でもよ――


俺は握ったピストルを自分の頭に押し付けた。


――ケジメは――つけねえとよ――?


――ズドン――


――不吉な音が――夜空を駆け抜ける。


――俺はロンリーウルフ。孤独な一匹狼さ。



2004/09/12(Sun)18:36:02 公開 / ベル
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■作者からのメッセージ
またもや読みきり。なんでしょうか。掲示板ではネタないとかほざいてたくせに書いてしまいましたよ。はっはーだ(ウザ)
まあ今回はセリフ無しに挑戦してみました。
セリフを使わないというのは非常にめんd(切 難しく、狼さんの心理描写だけでの説明は複雑でした。ではでは、次回作に(以下略


(……ていうかよ、最近書きすぎじゃね?)
(……そんな事は無い、大丈夫)
(絶対書きすぎなんだよ)

ていうか誤字発見。ただちに補足します(何)
ではでは〜。

(……誤字はするなよ)
(誰だって間違いはあるさ)
(そーいう問題じゃないだろ)

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