『わたしとあなたの生きる道(修正)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:村越                

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 世の中って、いちいち正義だとか悪だとかを決めたがるだろう? それってなんかおかしいって思うんだ。性善説だとか性悪説だとか、故人も面白いこと言ったもんだとは思うけれど、なんで断定なんかしなきゃいけなかったってこと考えてみると、時代がきっと何が『正』なのかっていう、“よりどころ”みたいなものが必要だったんじゃないかなって思うんだ。だから概ね故人には共感ってやつこそはできなくても、それでも少なくとも納得くらいはできるんだよ。だけれどもね、それに対する現代人っていったらないって思う。“よりどころ”を欲するほどに弱くもないくせに、正義の旗だとか、悪の化身だとか、勝手気ままなことをしゃべりちらかすわけだけれど……。でもしかしね、いくら自分が弱いって主張しても、所詮はどこかの籠に保護されている状況が目の前にあるわけだから、結局は強者に守られているっていう状況に違いないんだ。それこそ無駄とも思えるくらいに、ね。だからほとんどの人間――いや、日本人は、現状よりもさらに保護される必要もないっていうのに、より一層の装飾によって飾ることを求め、覆うことを求めるわけ。まったく嘆かわしいと思う。何が善か。何が悪かって言うんだ。人間なんて、所詮どこをどういじくったってそれ以上になんてなれないし、それ以下を望むんなら猿にでもなればいいじゃないかって思うんだよね、ほんとに――



 七月下旬。
 夏休みはもう目の前だ。
 時刻は二時を回ったあたりで。西に徐々に傾き始めた太陽が、最低最悪の日光という名のプレゼントを下界に振りまく、そんな今このごろ。
 ただ突っ立って、天空からの恩恵を受けているだけで、薄いワイシャツが濡れ雑巾に化すまではそう時間はかからないっていうのは素敵……って思えたらそれこそ素敵なんだけれど、やっぱり最悪ということを認めざるを得ないのはどうしようもないことで。そのあたり、天空からの“怨恵”って言いたくなってくる。
 せめて風のひとつでも吹き抜けてくれればまだ恨み辛みも湧いてこないかも知れないっていうのに、そのあたりは世の中残酷ってもんで、焼け石のように熱くなったコンクリートがもんもんむんむんとした熱気を、びしびしぶつけてくるのみっていうのは、むしろ風情って言えばいいのだろうか。
 ――ばっかじゃないの。
 吹き出る汗が止まらない。
 せめて蝉でも鳴いてなさいっていうのよ。それとも、暑さにやられて全滅?
 笑えないってば。
 なのに、
 なのになんでわたしは“こんなところ”にいるのか……。
 その理由は、簡単なんだ。
 頭上を……その理由ってやつを見上げる。
「相変わらず何を言いたいか分からない主張どうもありがとう」
 わたしの言葉に、そいつはへら、と笑いながらどういたしまして。
 皮肉だってば。
「――で、言いたいことはそれでおしまい?」
 わたしは視線は下に、それでも意識は上にしながら、唸るように呟いた。
 しかして、わたしの頭上の朴念仁は、
「ん? もう少し話していいの?」
 なんて言うもんだから、上履きを片足の方を、思いっきり投げつけてやった。
 スパーン、といい音がしたのはいいけれども。
 そのまま“それ”は、青空を侵略する白い星となり……いや、流れ星となった。
 ――片足で立ちながら、わたしは、ちょっとだけいじめられっこの気分になる。
 遥か十数メートル下に別れを告げるわたしの“さっきまでの下僕”をただ ただ見つめながら。

 透きとおるような白い肌に、どこか無機質な感じのする雰囲気。イメージは完全に……完膚なきまでに透明。
 対するわたしは、このクソ暑い中で、グラウンドの土と誇りと汗臭い熱血にまみれながらグルグルひたすら周り続けるルーチンな女。おかげでタマのお肌は焦げたパンのようにくすんだ茶色で、自分で言うのもなんだが、引き締まった体には、女らしいふくよかな丸みとか、柔らかさってやつがまったくない。完全に、太陽の申し子ってわけだ。
 本当に、嫌になるくらいに白と黒なわたしたち。
 その、どうしようもなく白い男が屋上の入り口の上から白くて仕方ない顔を覗かせている。
 正直な話、だ。わたしはこういう位置関係は好きじゃない。空が見える場所で、わたしよりも、空に近い位置に彼がいることが。だって、あまりに白すぎる彼が、本当に、空に溶けていってしまいそうだと思えてしまうから……。
 それなのに、こいつと言ったら目を離すとすぐに“そこ”にいる。まったく嫌がらせもいいところだというのだ。
 しかして、そんなわたしの内情など知ってか知らずか、果たして朴念仁は口を開いた。
「まったく、物を大切にしなさいって親に習わなかったのかなあ?」
 やれやれ、といった風の頭上からの声。
 その涼しげな顔に無性に腹が立つ。
「靴を投げたの、君は僕のせいだって言うかもしれないけれど、でも違うよ。みんな君――ユウさんのせいだよ? だって、上履き投げるまではいいけど、僕の額なんか狙っちゃ駄目だってば。角度的に見て後ろに吹っ飛んでいくことくらい明確だろ? 狙うならここ狙わなきゃ、ここ」
 言いながら、鼻の頭を指す。
 ――ため息。
「クリティカルなヒットを指摘する彼氏なんてはじめてよ」
「うん。僕も、上履き投げてくれる彼女なんてはじめて」
「誰のせいだと思ってるのよ誰のっ」
「荒っぽい性格のユウさんのせいだよね」
「〜〜〜〜〜〜〜」
 分かってはいるのよ。分かってる。分かってるってばうるさいなあ。目の前にいるヒサシという男には、理屈云々じゃあかないっこない……っていうか、納得させられっこないってことに。ああ言えばこう言う。こう言えばああ言う。まるで聞き分けのない子どもに言いたくなる台詞だけれども、でもわたしの方が明らかに言いくるめられる立場にあるっていうのが滑稽ってもんで。まあ、これ以上そういうことを実感させてくれる人間もこいつ以外にはいないんじゃないかっていうことに嫌になること自体が嫌で。しかもこれがまた彼氏っていうんだから最悪だ。
 だからわたしは、
「もう……いいわよ」
 ため息しか出てこないわけだ。
「で、何か用?」
 だから、ため息しかでないってば。
「――今何時だと思ってるのよ」
 わたしが問うと、ヒサシは手首を見る。
「一時半?」
「笑顔で適等言うな朴念仁」
「いいじゃんねぇ?」
 へらへらと笑う。
 まったくもって、ため息が止まらない。
「駄目だよ、そうため息ばっかりついてたら、さ。まるで僕がつかせてるみたいじゃないか」
 まったくもってそのとおりなのですってば。
 要するに、何が言いたいのかっていうと、
「何もつけてない手首を見てなんになるのかってことよっ!!」
「ん〜、なんか時計見てるみたいでかっこいいかもね」
 だから意味の分からないこと言ってへらへら笑うな、もう……。
「二時よ二時っ!!」
「あ、もうそんな時間なんだ。じゃあ、愛すべき同級生のみんなは分厚い怪文書と懸命に格闘している真っ最中ってわけだね」
 あんたの思考の方が怪思考だって言いたくなるけれど、今更何言っても無駄だっていうのも分かりきったことなので、わたしは無駄につっこむ気もうせるわけであるけれども。と、
「で、愛するべきクラスメートのユウさんは一体ここに何をしに?」
 やはり、ため息しかでないわけで。
「あんたが昼休みからずっと帰ってこないもんだから、探しに来たんじゃないのよ」
 いい加減にして欲しいものだ。せめて、わたしの考えてることくらいは汲み取って欲しいって思うのだけれども。
 ――こいつのことだ。分かっていてこういう発言をしている可能性の方が捨てきれないっていうのが余計に頭にくる。
「で、目的を果たしたユウさんが次に取る行動は?」
「……行動って」
 分かりきったようなことを聞きながら、
「教室に連れ戻す?」
 などと、へらへらとした笑顔で、思ってもないことを言いながら、自分の隣をぽんぽん叩くこいつに、無性に腹が立つのだ。本当に。
 ――ため息。
 そして、それより何より、そんなヒサシの思惑通りの行動を取ってしまう自分に、余計に腹が立つのは、自分の中に閉まっておこう。
 ミイラ取りがミイラになった瞬間だったのだけれども。多分実際はそうじゃなく、
 ――どうせ、わたしも始めっからミイラだったってことなんだろうな。

 空は、青い。本当に、抜けるくらいに、憎たらしいくらいに。まるで何もかもを吸い込んでしまうくらいに。飲み込んでしまうくらいに。
 実際の話。
 実際、ちっぽけなのだ。
 わたしも、こいつも。世界中の誰もが。
 みんな、みんなちっぽけなんだ。
 それでも……平等なんてこの世にあるはずがないのは、妙に納得がいかなかった。
「別に、僕は納得いってるよ」
 ヒサシはそう言う。
 しかし、
 しかし、だ。
 こいつが認めることができるからといって、なんでわたしまでもが納得しなくちゃならないのか。わたしは他人に意見を言われてはいそうですか、と納得できるほどにいい子でもないし、頭もよくない。仕方がないのだ。そう言う性格なのだから。
 しかして、ヒサシは言うのだ。
「僕の問題なんだから、君がそれに腹を立てるのはおかしいだろ?」
 真っ白な顔して。
 それでも意思のこもった黒い瞳で。
 まったくため息がでる。
 あんたは聖人君子ですか。
 世の中になんの不安も、不満も、欺瞞もないのですか。
 自分を取り巻くすべてを、自分に“運命”なんてふざけたものを与えた神様ってやつを少しくらいは恨んでみてもばちはあたらないんじゃないかと思うのだけれど、彼はへら、と笑いながら、
「今ここにある世界、僕、そして君がいるのに、こんなに素敵なのに、なんでわざわざ世界をつまらないものって決め付けて見つめなくちゃいけないのかなあ。まあ、そんなのは所詮あくまで僕の個人的すぎる意見なわけで、君の主張をまったく無視してしまっているような感じになってしまっているのかもしれないけれど、大丈夫」
 何が大丈夫か。
 私はこんなに不安なのに、不満なのに、欺瞞に満ちた世界が、嫌なのに。それでも、彼は、
「君の言いたいこと、思っていることをすべて分かって、共感して……っていうのは正直ものすごく難しいことだと思う。けど、さ。僕にだって好きな子のために何かしたいって思うのは当然なわけで。努力をしないってわけじゃない。少しでも君の考えを理解しようとは頑張っているつもりだよ。だから――」
 ……分かっている。
 そんなことは分かっているのだ。
 あんたが言いたいことも。
 あんたが思っていることも。
 あんたがしていることも。
 だから、こいつはいいやつなんだ。
 底知れず……いや、この場合は天井知らずって言ったほうがいいかも知れないけれども、それでも、この表現が陳腐って感じれるまでに、完膚なきまでに、いいやつなのだ。
 それこそ、誰もが見て見ぬふりをきめこむような、路上で果てた猫なんかを、わざわざ遅刻してまで埋葬してやってしまうくらいに。
 ……悲しくなるくらいに。……いいやつなんだ。
 だから、好きなんだ。
 だから、嫌いなんだ。
 くどくどと意味の分からないことを並べ立てても、頭が痛くなるような話をされても、最後の柔らかい笑顔を見るだけでなんかどうでもよくなってくるところも。
 同じくらいの身長のくせに。女の子みたいな小さい手のくせに、本当に“そうして”欲しい時に、そっと頭を撫でてくれるところも。
 好きなんだ。
 どうしようもないくらい。
 嫌いなんだ。
 どうしようもない自分を抱えているから。
 こんなに空は青いのに。
 こんなに世界は暑いのに。
 こんなに風は生暖かいのに。
 こんなに、わたしは黒いのに。
 なんであんたは……そんなに白いのよ。
 ――頭を、撫でられた。
 こっぱずかしくて、わたしはその手を払った。
 妙に、冷たい手だった。



 どれくらいそうしていたのだろう。
 正直よく分からないけれど……いや、本当は分かっているんだ。だって、空はこんなに赤く染まっているから。
 会話のない、空間。
 それでも、どこか暖かい感覚。
 昼間の暑い日ざしのせいでも、時折吹く風がいらだつくらいに不快でも、 西の空に沈みそうになっていく太陽が、寝そべっているコンクリートに未だに平穏を許してくれることがなくても。
 それでも、どこか暖かい感覚が、ここにはあった。
 ――いつまでも、このままでいられたらいいのに。
 とりとめもない、夢想に過ぎなかった。思春期の若造が抱く、あり得ない妄想。願う永遠。しかして、そんなものは存在しないことは誰もが知っている。でも、それでも求めずにはいられない程に弱く、小さな心……。所詮、いくら虚勢を張ったところでわたしはよわっちい存在なのだ。
「いつまでも同じではいられない。それでも……それだからこそ、愛しく思えるもの。大切に思えるもの。かけがえのないものほど、弱く、小さく、儚いものなんだって思うんだよね」
 私の心を読んでいるかのような一言。
 いつもそうだ。
 まるで私の言いたいことを……思っていることを代弁、もしくは取りまとめる、言いくるめるかのような発言。助かることもある。すごいと思うこともある。そういう心遣いが好きっていうのもある。……でも。
「何を、偉そうに、さ」
 頭にくることだって、あるのだ。
 ずっと一緒なんてありえないことを知っているから。しかも、その原因が、こともあろうかあんただから。
 つらいこと……きっぱり、さっぱりと言ってくれるなよ。まるで他人事じゃん。
「いっつもそうだ。あんたは何もかも分かっているようで、さ。実はなんにも分かってないんじゃないのさ……。辛いのは私だけだと思ってるのかよ、ほんとにさ。一番辛いのは――」
「――ちょっと、待って」
 いきなりの、静止。
 さすがにこれには私もむっとなりながら――
 それでも、声が出せなかった。
 何故か。
 放課後の屋上。赤く染まった天に近い、固い大地に一人の少女が立っていた。出てくるのに気づかなかったあたり、本当に会話に集中してしまったのだろうな、と思いつつ、それでも私は、少女に見入っていた。
 別に、ただ単に“少女がやってきた”くらいならはっきり言って問題あるはずがなかった。それくいらいなら、私は目の前の大馬鹿野郎に、問題なく毒を一気にぶちまける。しかし、それでも私は少女に見入っていた。
 何故か。
 ――少女の雰囲気が、明らかにおかしかったから。
 思いつめたような顔。
 手には白い封筒。
 きょろきょろと落ち着きなくあたりを見回す姿――屋上のさらに上にいるわたしたちには気づいていないようだ。それほどに周りが見えていない、ということか。
「何しようとしてるんだろ……」
「ははん、そんなことも分からないかなあ、ユウさんは。屋上に来る理由なんて決まってるじゃないか」
「なによ、なんか随分と自身ありげに」
「――さぼりに決まってるじゃないか」
 ため息。
「今はもう四時よ、四時」
 授業なんて今頃ちょうど終わってるってば。自分の視点で物事見すぎだって。
 わたしたちがそんな馬鹿なやりくりをしている間にも、件(くだん)の少女は、屋上の鉄柵まで歩み寄っていた。
 ――ちょっと待ってよ。
 思索する。
 屋上。
 周りもろくに見れない感じの……思いつめた感じの少女。
 手には白い封筒。
 そして、やっぱり屋上。
 少女の立つ位置は、あと少しで鉄の柵。
 どうしようもないくらいに、屋上。
 そして、脳裏に浮かぶ三面記事……っていうかお悔やみ――
「ちょっとまてえええぇぇぇぇっ!!!!」
 怒号と共に、わたしの二人目の下僕が宙を舞った。



「まったく、何考えてるのよもう」
 ため息。
 目の前には見るからにおとなしそうな少女が正座して肩をすぼめている。気が弱そうで、おとなしく、それでいてどこか可憐な感じのするその子は明らかに“お嬢様”タイプで、そしていじめたくなる……というよりも、ほっとけない感じ、いわゆる“守ってやりたいタイプ”のそれだった。
 明らかにわたしとは対照的な子だ。
 しかし、こんな子が何を思い立ったというのか。
 いじめられる心配もなさそうで、それどころか男子からもちやほやされそうなこの少女が、何に追い詰められたというのか。
 視線を真下……足元へと移す。白い靴下のみの足。
 ――まったく、いじめられっこっぽいのはむしろわたしだっていうのに。
 なんかため息が止まらない。
「で、あんた名前は」
「ええと、平田ミクって言います」
「はい、じゃあミクちゃん。あなたに聞きたいことがあります。いいですか?」
「人に名前聞いといて自分が名乗らないのはどうかと思うよ、ユウさん。ええと、僕は日向ヒサシ。よろしくね」
 へら、と朴念仁。
 妙にマイペースな正論に腹が立つわけだけれども、
「はいはい、わたしがわるうございました。わたしは本間ユウ。これでいいんでしょ、これで。で、なんで“あんなこと”しようと思ったのさ」
「……あんなことって、いけないこと……なんでしょうか?」
 きょとんとして、恐ろしいことを言う娘だ。
 それは、本当の本当に……本音?
 “何か”が、わたしの底から湧き上がってくるのを感じた……いや、感じたのは後、
「いけないことじゃないわけないじゃないのさっ!!」
 そう叫んだ直後だった。感じるより先に、口が動いていた。
 ミクはわたしの剣幕に、びくっと体をこわばらせ、
「ご、ごめんなさいっ」
 謝る。
 その態度がわたしをさらに逆上させた。
「即答で……反射的に……何も考えずにそうやって謝って、あんた、それで本当に何がいけないのか分かってるのっ!?」
 わたしの言葉に、今度は顔を俯かせる少女。そして、また小さく、ごめんなさい。
「だから――」
「――はーい、ストップストップ」
 制止する、声。
 わたしは何よ、とそいつを睨むが、いつもとは違う少しまっすぐなまなざしでの、
「怖いよ、ユウさん」
 という一言で、はっとした。
 ――気づく。自分が、ものすごく息を荒立てていることに。目下の少女の肩が、小刻みに震えていることに。
 ――この子は最低かもしれないけれども。
 正直に、ヒサシに感謝した。
 ――わたしはきっと、最悪だ。
 何を、他人を虐げるような態度を取っているのだ、わたしは。
 ――ああもうっ。落ち着けってばさ。
 ため息ひとつ、頭をくしゃくしゃとかき回す。
 それでも、そこで何も感情をあらわにしないヒサシに、やっぱり、ちょっとだけ腹が立った。
「おーけーおーけー、ごめんねミクちゃん。ちょいと言葉がきつかったみたいね、ほら、顔上げなさいな」
「“ちょいと”であれだからユウさんはこわいなぁ」
「そこ、しゃらっぷ」
「はーい」
 まったく、和ませようとしてくれているのか、単にちょっかい出したいのか分からないのが嫌になる。だからさあ、そうやってへらへら笑うのがいらだつ原因だってばさ。
「……で、落ち着いた?」
 なるべく柔らかに言う。
 これくらいじゃあ、第一印象とも言えるさっきの怒声のイメージを拭い去ることは難しいだろうけれども、それでも、少しまだ声を震わせながらもミクは顔を上げ、はい、と頷いた。
 存外、強い子なのかもなあ、と素直に思ったわたしだった。

 しっかし、まいった。
 何故か?
 せめて問題意識くらいは持っていて欲しかったのだが、まさかそれすら持っていないとは思わなかったからなんだけれども。さて、どういう諭し方をすればいいものか。
 ふと、隣に立つ朴念仁に視線を移すと、まるで狙っていたかのように目が合う。
 ――へら
 ため息。
 アイコンタクトって言葉はきっと嘘だ。むしろ哀コンタクトでしょうが。コメカミを軽くぐりぐりやりながら、わたしは変に問うことを放棄した。だから、
「ええとねえ、命ってとっても大切なものなわけ、分かる?」
 わたしの発言にきょとんとした視線を返してくる屋上ダイバー(未遂)。
 なんでそういう態度なのよ……。
「もう……。まあいいわ、はいっ解説」
 ……沈黙。
「――え? 僕?」
 自分を指差しながら、わたしを見やる朴念仁。
「あったりまえじゃないのさ。ことくどくどと意味不明のこと語るのはあんたの仕事でしょ?」
「うう……意味不明とか言わないでよ。いつもちゃんと僕なりに考えていることを言ってるんだからさ。っていうか、意味不明じゃだめでしょうが」
「はいはい、言い訳はいいから、さっさと諭すっ」
「もう、言ってるいことがムチャだよなあ。……で、語るって何を?」
 ――でしっ
「だからさあ、いきなり叩かないでよ。人間の脳細胞って叩かれるだけでも結構信死んじゃうんだよ?」
「うっさいわよ。何を語ればいいか分からない〜? ふざけてんじゃないわよっ。空気ってもんを読みなさい空気ってやつをっ!! ええい、そんな脳細胞なんて壊れてしまえ」
「んな無茶苦茶なこと――って、いたっ、いたたっ、いたいって、死ぬっすよぅ」
 ――くすっ
「はいはいそこも、笑ってんじゃないのっ」
「す、すみません」
「……ホント、ムチャだよねユウさん。いいじゃないか、少しくらい笑ったって」
「ああもう、説得力なすぎだって。あんたはへらへら笑いすぎ!!」
 あまりに頭に来たもんだから、頬を思いっきり引き伸ばしてやった。
「なにす――って、いふぁいいふぁい、いふぁっ」
 ――くすくす
「だから、笑うなあっ」
 ――へら
「あんたもだってばっ」
 ――でしっ



 ――死
 それが意味するのはあくまで“絶対”。曖昧なものなんて何もない。すべてにおいての“無”。何も残らない。意識も、記憶も、魂も。この世界から完全に切り離される……というよりも、隔離される。関係の一切を立たれる。それはある意味で“開放”といえるものかも知れないけれども。現世という“籠”から解き放たれるっていうふうに受け取れるかもしれないけれども。でも、“絶対”っていう事実には変わりはないんだ。
 でも、それってあくまで“本人”だけの話で。
 ――死
 誰が一番辛いのか?
 ――本人?
 違う。そんなわけがないんだ。残される人間が一番辛いんだ。
 死に魅入られた人間に訪れるのは、“絶対の無”。
 けれども、現世に残された人間に残るのは、“絶対の空白”。
 死者を鎮めることはできる。弔うこともできる。想うこともできる。祈ることもできる。
 でも、それはどれも対象者の存在しない自己満足。届くのは、生者への“慰み”という名の自己満足にすぎないんだ。
 それは、とても悲しいこと。辛いこと。苦しいこと。
 だから、命は大切なもの。かけがえのないもの。
 だから、簡単にどうこうしていいものじゃないんだ……。

「これで、満足?」
「…………」
「おーい、ユウさーん?」
「うるさいわね、聞いてるわよ」
「うーん、何か不服でも?」
 ……不服?
 馬鹿なこと言う人よ、ほんとに、あんたは。
 ああ不服よ。それが悪いっての?
 命は大切……当たり前。
 かけがえのないもの……当然。
 それでも……それでも。
 ――共感は、したくない。
「…………」
 ため息。
 まあいっか。目下の問題は、いかに目の前の少女を更正させるか。
 なんでもないわよ、と朴念仁に言いながら。
 更正させるか……なのだが。
「なんか……した?」
 様子がおかしかった。
 なんか輝かしい目でヒサシを見ている。そして、
「詩人なんですねえ」
 ――感嘆。
「…………」
 そして、沈黙。
「感じたのはそれだけ?」
「え? いえ、命っていうのは大事ですよ……ね。そういうことをおっしゃっていたのではないのですか?」
「……なんで、そうなるわけ?」
 あんたがしようとしていたことは……そういうことじゃなかったのか。命を捨てようとした人間の反応はそうじゃないでしょうにっ。もっとこう……ほら、あれ。……むううう、もうっ。あるじゃないのさっ、とるべき反応がっ。
 何かが頭の中を漂っている感じに、気持ちが悪くて頭をガシガシとかきむしる。
 しかし、そんなわたしの内情なんて知ったこっちゃないと言わんばかりの、きょとんとした、少女の瞳。
 ため息。
「もう……あんた本当に屋上ダイバー? なんか信じられなくなってきたわ……」
 コメカミのあたりをぐりぐりやっていると、ふと、あることを思い出した。
 ――白い封筒。
 そう。そうだ。彼女はここに来たときに握っていた封筒があった。アレには、一体どんな内容が書いてあるのか、この少女が、この世界にどんな意思を残そうというのか、なんか無性に気になってきた。
「ミクちゃん」
 名前を呼ぶ。
「確か、封筒持ってたわよね?」
 わたしが言うと、今までのほほんとしていた顔が一気に驚愕色に染まり、そして、続いて赤くなる。
 少し何か違和感を感じつつ、
「見せてくれないかしら?」
 言うと、首をぶんぶんと振る。
 心中、微笑む。
 ……まるで悪役だって? だまらっしゃい。
 ――なんにせよ、しっぽを、掴んだ。
 どうせ中身はうらみ、つらみ、そして、謝罪に違いない。
 はっは。わたしの発想の凄さを、機転の妙技を見れ!!
「おじょうさん〜、何か見られるとまずいものでも書いてあるのかなあ?」
「――ユウさん、なんかしょぼいダフ屋みたいなトーンだね」
「例えがマニアックすぎだっつの」
「女の子のくせにユウさんは雑すぎるんだよ、色々と」
 大きなお世話だ。
「ああもう。今はそんなことでうでもいいのっ。いいから見せなさいって」
「駄目だよユウさん。ミクちゃん怯えちゃってるじゃないか。ぐるぐる唸って、君はまるで寝起きの悪いジャイ○アンですか」
 こらまた、意味の分からない例えありがとう。
「さ、悪いことはしないから、見せてもらっていいかな?」
 ――へら
「は、はいっ。どうぞ」
「ありがとうね」
 ――へら
「はい、ユウさん」
「…………」
「なに? うごめくナマコを見るような、不満に満ちたような目だね」
「……なんか、納得がいかない」
「?」
「いいわよ、もう」
 わたしは、ヒサシの手からひったくるように白い封筒を取った。
 何故か封は切れていたが、まあ問題はないかな? そして、ゆっくりと読み上げる。


『――突然のお手紙、申し訳ありません。
ぼくは、高野ススムって言います。
実は、あなた――平田ミクさんに折り入ってお話がしたいことがありまして、このお手紙を書かせていただいた次第です。
ですので、もしよろしければ、本日の放課後、五時に屋上に来ていただけないでしょうか――』


 手紙は、そこからずらずらとなんか読む気も失せるような内容が書き連ねられていた。
 時折、頬を赤く染めていた彼女。
 どこか、わたしの言っていることが通じていなかったような、言うなれば“ノレンに腕押し”的な違和感。
「あ〜〜〜」
 唸り声しかでないけど、どうしよう。
「もう一度聞くけど、さ。あんた、ここに何しに来たんだっけ?」
 少女の顔が、ほんのりと赤く染まる。あらまあ、わたしには真似できっこないような可愛らしさですこと。
 ――皮肉にすらなりゃしないっての。
 ため息。
 やはりまあ、そういうことなのか。
「もう一度って言ってもさ、ユウさん。その質問は今が始めてだよ」
「しゃらっぷ」
「はい」
 分かっているわよ。分かってるってば。あんたに言われるまでもない……というか、分かってしまったのだ。
 まったくどうしてため息しか出てこないのか。
 ――当然か。
 ああもう。
 わたしの素晴らしき下僕、上履きは彼女の身代わりになって命を落としたのかと思いきや、単なるわたしの虐殺行為だった。そういうことなのか。いや、もう認めましょう。そういうことなのです。
 頭をくしゃくしゃと掻き、コメカミのあたりをぐりぐりし、そしてわたしは、
「――ごめんなさい」
 懺悔した。



 時刻は四時半。
 そろそろわたしたちはお邪魔虫になる時間だ。っていうか、まったくもって、早く来すぎだよミクちゃん。
 ――すみません。悪いのはわたしです。他人のせいにするのはよくないですね。
 しかも、当の本人も時間が早すぎるのに今更気づいて、時間潰してくるとか言ってもうここにはいない。
 根っからの天然娘。まあそういうことなのだろう。
 屋上は、再び二人きりの空間。
「そういえばさあ」
 いきなりの、ヒサシの声。
「なにさ」
「いや、ね。僕らが早々に退散する前に、ユウさん」
「だから、なにさ」
「部活は?」
「は?」
 思わずすっとんきょうな声を上げてしまう。
 BUKATU?
 おーいヒサシさん。それ、どこの言葉ですか〜。日本語話してくださーい。
 ――馬鹿な。
「ヒサシさん。つかぬ事をお聞きしますが」
「はいどうぞ」
「今何時?」
「――三時」
 ――でしっ
「てきとー言うなっ。殴るぞっ」
「いったぁ〜。殴ってから言わないでよもう。そんな態度取るなら聞かなきゃいいだろう」
「ああもうっ。しゃらっぷ」
「……横暴だなあ」
 って、こんな漫才やっている場合じゃない。部活はもう三十分も前に始まっているはず。それはやばいのだ。レベル的には、激烈、猛烈、爆裂に。なんたってうちの部には鬼がいるのだ。練習と遅刻だけには妙にうるさい鬼がいるのだ。自分の部屋とかロッカーとかは汚くたってなんだってどうでもいいのに、部活になると目の色どころか、「クリ○ンのことかー」とか言いながら、髪の色まで変わっちゃうんじゃないか、と思えるくらいの鬼がいるのだ。
「で、どうするの、部活?」
 へらへら笑いながら。
 笑いごっちゃないのよこっちは……。
「行くわよ、行くわよっ。行くに決まってるじゃないのさっ」
 ちなみにサボるなんて選択を選ぶことには、権利はあっても余地はない。行くどころか逝ってしまう。だって相手は鬼だから。まあ、すでに半分逝ってしまいそうな状況であるのも否めないのだけれども。
「ああもう、わたしとしたことがっ」
 屋上の出入り口に走ろうとすると。
 背中があった。
「……ええと、なんの真似ですかヒサシさん。わたしに尻向けてさ」
「駄目だよ、尻なんて乱暴な言い方しちゃ」
「今はそう言う事いってる場合じゃ――」
「おんぶ」
 一言。
 ――そして沈黙。
 わたしはコメカミをぐりぐりする。
「真意が掴みかねるんですけれど……」
「自分の胸……いや、足に聞いてみな?」
 言われるままに、足元に目を落としても、所詮見えるのはコンクリートの地面と、靴下の自分の足しかないわけで。
「そのままで……靴もないまま校舎の中、走ってくの?」
「そりゃ、靴がないんだからそうなるわね」
 ――ため息。
 わたしのじゃない。目の前の男のため息。
「はしたないなあ」
「今更なにさ。今に始まったことじゃないでしょうが」
「だめだなあ。いいかい? 少しくらいの乱暴な言葉遣いは良しとしましょう。ちょっとくらいなやんちゃな乱暴も目を瞑りましょう。でも、でもねユウさん。女の子が裸足同然でぺたぺたリノリウムの床を歩いて……走っていくっていうのはどうなのかなあ? 君は別に気にしないっていうかもしれない。実際の話として大したことないことなのかも知れない。けれど、ね。僕は仮にも本間ユウっていう女性の彼氏なんだ。そういう彼女を放っておくっていうのは、日向ヒサシっていう男には許せない。そういうことなんだよ。だから、さ。ほら――」
 背中を揺らして、アピールする。
「ひとつ、聞いていい? わたしがあんたの背中に乗って玄関まで行くっていうことは。学校内をそのまま当然教室から荷物を取ってくるってことにもなるわけで……」
「それが、どうかした?」
 ――へら。
 ため息。
 今度はわたしの。
「どうかした、じゃないでしょうが……」
 しかし、
 しかし、だ。
 所詮、こいつにとっては“どうってことないこと”。そういうことなのだ。“つかみ所がない”。そういう男だ。そして、一度決めたことは最後まで折ることがない。そういう男なのだ。
 ――ため息。
「一応聞くけれども、折れる気は――」
「ないよ」
 即答。完膚なきまでの、断定。
 やっぱりため息は止まらないのだ。
 どうしてこんな厄介なやつに惚れちゃったんだろうなあ……。
 今更ってやつだった。



『残されることが、一番辛いことなんだよ……』

 あの時、ヒサシはそう言った。
 意外と大きな背中。暖かいぬくもり。ゆったりとした上下の揺れ。認めたくはないけれど、正直な話、心地いいっていうのが本心だった。
 ――まあ、どうせ付け上がるだけだから、教えてなんかやらないのだけれども。
「一番辛いのは、残された人……ねえ」
 呟くように、囁くように。
 ん? などと聞き返してくるけれども、どうせ聞こえていての反応だろう。だから、わたしは続ける。
「本当に辛いのは……あんたでしょうが。残された人間は確かに辛いって思うのは仕方ないけれども、先に逝ってしまうほうが……よっぽど辛いでしょうが」
 一瞬の沈黙。そして、
「……違うかな、それ。先に逝く人は辛くは、そんなにないんだよ。ただ、きっと“怖い”んじゃないのかな」
 息が、つまった。
 こいつは、日向ヒサシは、“怖い”と、そう言ったのだ。
 見えざる恐怖。
 いつかは終わる自分。いつ終わるか分からない自分。けれども、そう遠くはない未来の、自分の姿。ヒサシ本人の言葉を借りるなら、“絶対的な無”になる自分。そして、“絶対的な空白”を抱くであろうわたし。
 ――たまったもんじゃない。
「でも、さ」
 声。柔らかな、声。
「僕は全然辛くなんてないし、怖くなんてないんだ。だってさ、世界はこんなにも無感動に回っていく中で、こうして大好きな人と一緒にいられて、僕は君が大好きだから」
「よくもまあ、公然の場で恥ずかしげもなく言うもんね。こっちが赤面もんじゃないのさ。って、でも……あんたのそういう気遣い、逆に嫌になるときがある」
 辛くないわけがないじゃないのさ。怖くないわけがないじゃないのさ。
 だって、
 わたしはこんなにも、辛くて、怖いのに――
 ため息。
 いや、違うのだろう。
 この男は……この朴念仁は、本当に怖くなんてないのだろう。怖いものがあるとすれば……原因はわたしか。
 重荷になるのは、嫌だ。そういう“重荷”とか考えてしまう自分が、嫌だ。
 だから、わたしは、
「なーに、勝手にあんただけの一方通行だけ、みたいな恋にしてくれちゃってるのさ。ほんっとに自分勝手なんだから……。わたしが何ともないって思ってると思われてるような発言、あったまくる」
「だから――はい、忘れもん」
 そして、わたしは彼の首筋にそっと唇で触れるのだった。
 いつか、本当に辛いときは、今度はわたしの背中に寄りかかって欲しいと願いを込めて。

「ところでさ」
「なに?」
「ミクちゃんが“あの目的”で屋上来たって、いつくらいから気づいてた?」
「うん? ……なんとなく雰囲気でだけれども、はじめから、かな?」
「ええと、それってとどのつまるところ……わたしはピエロだったと?」
「まあ、そういうことになるかな?」
「…………」
「どうしたの、いきなり黙って――ぐえっ。く、くるし……首っ、くびがぁ……」

 その後、そうやって入っていった教室、廊下で冷やかしのマシンガンを体中に受けたのは、言うまでもない。



 ――いつまでか。
 分かるはずもない。
 あとどれだけわたしたちには時間があるかも分からない。
 いや、そんなのはむしろ分かりたくなんてない。
 けれども。
 だけれども。
 せめて、終わるまでは。
 終わりがくるまでは。
 すべてが、絶対になるまでは。
 二人の時間が……物語が、
 ずっと、
 二人でひとつでいられたらいいのに。
 そう願うのだった。
 ぽんぽんと、軽く頭に置かれる暖かい手のぬくもりを感じながら。
 照れくさいからやめてよと言いながら。
 彼の頬に、軽く唇を寄せながら――


2004/09/03(Fri)09:04:30 公開 / 村越
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■作者からのメッセージ
 結構久々に作品を書いてみた村越です。
 今回は珍しく(というか、初?)の学園恋愛物の短編です。まあ、こてこてかと思いつつ、それでも相変わらず『痛い』ところを入れてしまうのはなんていうか、クセってやつなんでしょうなあ。そして、相変わらず肝心のところは言明せず、ほのめかす程度で終わらせるのもクセってやつでして……(大汗。
 主題が見えづらい作品かもしれませんが、自分の中では
『限りある日常』
 ってやつを描きたかったわけです、ハイ。
 上手く表現できているかどうか自身では判断しきれない点も多いので、よろしければ、感想、ご指摘お願いいたします。


 と、改行修正、ごく細部の修正なわけです。挙げてから数日してから自分の作品を読み返すことが結構多いのですが駄目ですね。どうしても修正がでてきてしまう……。精進します。

 感想をいただいた、ドンベさん、卍丸さん、バニラダヌキさん、神夜さんありがとうございましたっ。というか、いつも本当にありがとうございます!!

 というわけで、この辺で。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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