『脳の支配者』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:呂路                

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大きな意思には大きな犠牲が伴う
偉大なる挑戦は巨大なるリスクを伴う

 決定は選択を失う瞬間である

古びた酒屋に23人の男衆、大きな町とはいえ結局、
貧富の差が激しいのは、軍事的な国柄の影響だろう

一人の女性がその酒場に来訪したのは実に3ヶ月前のことになるな
今思い出しても、胸がセイセイとする
彼女が来なければワシはもうヤツらに連れて行かれていたかもしれない
しかし・・・

こんな形で再会することになるとは
私の最初にして最後の作品、脳神経特別強化新人類体、通称RTO

人間名   エルサ・F・ティグナ

その日も今日の様に雨が降っていたな・・・・・

酒屋ヴアライ・アモート
大柄な男たちに詰め寄られるマスターの姿があった
1946年のドイツは第二次世界大戦下・・・国民は不況の中苦しい生活を余儀なくされた

酒屋では数人の少ない客達とあと数人の明らかに場違いな人間がいた
「何度言ってこられても金がないモノはどうしようもないだろうが!帰れ!」
そう怒号を発したのはロウ爺、この酒屋のマスター
「オィ、オィ、おっさんよ??借りたものを返さないってのはどういうことだぁ?」
大柄な男らはロウ爺に詰め寄る・・・重なる借金の返済を求めている様だ
「こんな情勢じゃ、金がないのは仕方ないだろぅ!ないモノは返せんのだ!」
頑固にも金がないと言い張り続ける老いぼれた爺の姿には
なにか勇敢なソレすら見られた・・・

 その頃・・・酒場から程遠くない公園に動く人影
短めの髪、整った目鼻立ちに素晴らしい体格
公園を一人で歩く女は明らかに他の注意を引きつけていた
不安な情勢を反映してか、男達はすぐに声を掛けてきた

同時刻、酒屋では、借金取りの脅しが続いていた
「オィ、オィ、爺さん、、ないないってそれで通ると思ってんのか?」
「俺らは優良業者だから随分待ってあげてるんだぞ??」
借金取りの男はロウ爺に向かって口々に言い放つ

そんな風なやり取りが酒屋で交わされている頃・・・
「姉ちゃん、かわいいね〜??一緒に遊ばない?」
公園では男達は一人でいる女に声を掛けた

「悪い、私は人を探している、ココらに年老いた酒場のマスターはいないか?」
女から返って来た言葉は以外に素っ気なく、また機械的な対応でもあった
「ん?そんな感じのヤツなら知ってるけど・・・教えてやんね〜よっ」
そんな女の態度が気に入らなかったのか男の一人は意地の悪そうな笑顔で女に微笑んだ
「オレとこれから遊んでくれるなら教えてやるぜぇ?」
男は女の身体をじっと見ながらいった
「・・・・・っ」
女は軽く舌打ちをして男に向かって言い放った

「・・・教えろ・・」

「・・・どこに隠してあるんだ?」
酒場ではロウ爺が借金取りの脅しにも屈服せず、抵抗を続けていた
だが、もはや限界、そろそろ「例の資金」を借金のカタにしようという考えが脳裏をよぎった

「さっさと言えやぁ!!テメェが悪どいことやって金儲けしたのはみんな知ってんだよ!」
借金取り達の声は次第に、だが確実に凄みを増していた

その時、酒場に近づく一人の影

「さっさと言えやぁ!クソ爺がぁ!」
異常な程の迫力で迫る借金取り達
仕方ない、彼らもこの国はじまって以来の就職難の時代にやっと就けた職業
決して手放せないのだろう、ましてや失敗等、この仕事でも・・・みんな生きたいのである、
そんな事を考えると金を払わない自分がナゼだか犯罪者の様な気もしてきた

「分かった・・・金を払おう・・」
ロウ爺は決心して言った
借金取り達から安堵のため息がもれる・・・やはりこの人達根っから悪い人ではないのだろう

先程の影はゆっくり酒屋のドアを開けた

ロウ爺が借金取りを奥の部屋に導こうとした
「こっちだ・・・」
そうロウ爺が言った瞬間

「ダメよ・・・」
公園にいた女である
だが、その服には大量の血が、それもかなり新しい血がこびり付いていた
「エルサ!?」
ロウ爺は驚いて叫んだ
エルサ・・・その女の名前だろう・・・
「なんだぁ?お前!?」
先程の人間味を全く感じさせないで、借金取りがエルサという女に向かって言った
「・・・貴様に用はない・・・」
エルサはロウ爺に近づきながら、冷徹な瞳で借金取りに言う
「なんだとぉ!?」
借金取りは一気に女に飛び掛った・・・


10秒後、酒屋には借金取り達の死体が横たわっていた
いや・・・酒場だけでなく公園にも死体は転がっているのだが・・・・・

「やめろ・・・何しに来たんだ、ワシを殺しにきたのか!?」
ロウ爺は先の頑固な態度が嘘と思えるほどの怯えようでエルサに対して怯えていた
「・・・いいえ、違います」
エルサという女は機械のような言葉で否定した

機械的・・・それもそのはずだろう、彼女は・・・
脳神経特別強化体・・・私、ロウ・ウラクドの作品である

第二次世界大戦開戦初頭、ドイツその軍事力でフランス、イギリスを破る快進撃を続けた
その快進撃の立役者は他でもない
彼女らのように作られた生物戦闘兵器の活躍である
当然、他国に知られると警戒、対策されるため自国内のトップシークレットであるのだが・・・

遺伝子構成が脳神経強化に適した者を見つける
具体的に言えば遺伝子の紐が12本ある人間・・・
これらの人間は強化剤の適応が良い
非常に人数が少ないのだが発見次第、有無を言わさず生物兵器へと改造される

「・・・・・・・っ」
またエルサは舌打ちをした、きっと人間時代の癖が残っているのだろう
私はエルサに尋ねられて彼女の事を教えた、彼女の以前の事も

彼女は村の農婦であった、だがその人間時代からの高い運動能力と美貌は辺りの注意を集めた
ある日どこで話を聞いたか彼女の元に一団の研究委員達が訪れた
その中にワシもいた

ワシと周りの研究員は試験体として彼女らを使用した
検査結果は見事に適合、私の判断で半生物兵器RTOにした
完全に生物兵器となるCTOを4体
そして以前の記憶を多少残す半生物兵器RTO2体製造した
実験は大成功だった・・・

彼らは他国に単独で侵入、機密情報を持ち帰ったり、将校らを暗殺した

「チョットマテ・・・」
そこまで私がエルサに教えた時、店の扉が開かれた
「オィ、エルサ・・・サッサト作戦ニモドレ」
その男は片言でエルサに向かって言った
「ラーキュル!?」
ワシとエルサは同時に言った
彼も生物兵器、だがエルサと違い、完全生物兵器CTO
・・・研究は成功したが、彼は薬剤投与から2ヵ月後、羅列が回らなくなった
そして・・・

脳が支配されているのだ・・・クスリに・・・いや・・私たち研究員に・・・

「早く私を殺して作戦に戻りなさい、エルサ」
ロウ爺はエルサに言う
「私は君の人生を奪った、君の将来も・・・そして軍部も裏切ったのだ・・・殺されて当然」
「そうね・・・死んでもらうわ」
 貴方達のバカな研究のせいで・・・私たちは・・・」
エルサは先の冷徹な機械的な対応と違い、感情を露にしてロウ爺に向かって言った

エルサは銃を取り出してロウ爺の額に銃口をピタリと合わせた
その様子を黙って見つめるラキュール
彼は小柄で160cm程も身長はない・・・

「消えなさい・・・」
エルサそう言うと、いきなり銃口を翻し、後ろに立っていたラキュールに向かって発射した
バリンと音を立てガラスが割れる
命中はせずにラキュールの頬を銃弾が掠めた・・・
「・・・・・ナニ?」
ラキュールはエルサを睨みつけた
「私は・・・私は・・・」
エルサは言葉に詰まる、だがその瞳は明らかに人間性のないラキュールのソレとは違っていた
「お爺さん・・・私は貴方を恨んでいます、でも・・・今は私は貴方を殺しません
 私と一緒に逃げてください、ココにいては軍部が貴方を引き戻しにきます
 私には記憶の一部がないのです・・・きっと一番大事なナニかを忘れてるような・・・
 ソレを思い出したいのです、貴方ならきっとソレができるでしょう・・・」
エルサは一気に言うと、私に裏口から逃げるよう指示した
「エルサ・・・オレを撃ツ・・・エルサ・・・オレの敵」
ラキュールが言った
「ごめんなさい、ラキュール・・・」
エルサがそう言うよりも早く、ラキュールはナイフを取り出した
「敵・・・コロス、殺す、コロス、ころす、殺す!!」
完全にキレている、クスリの影響だろう
エルサは応戦対戦に入った・・・
酒屋での死闘が幕を開けた・・・いや彼女の挑戦が幕を開けた

エルサは決別したのだ
それまでの自分と・・・
新たな挑戦である・・・死ぬかもしれないという大きなリスクを背負って

彼女は決めた・・・・・戦う事を・・・

2004/08/30(Mon)20:37:20 公開 / 呂路
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最後の方時間なくなってメチャクチャですけど
連載すると思うんでよろしくお願いします

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