『私の妻 (読みきり』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ねこふみ                

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 病室から聞こえるセミの声が妙に懐かしい。気がつけば私はまだこの世に生き残っていた。昨夜、ビルの屋上から飛び降りた私は奇跡にも足を骨折した程度で生きていた。
「あなた、りんごでも食べますか?」
 そして病院で入院して改めて妻の咲子の優しさに触れる。あぁ〜私はなんて幸せなのだろうかと思う瞬間だった。けれど私は脳を打っていたらしく、あの飛び降りた時のことをあまり思い出せないでいた。

 思い起こせば結婚して早、四十年。最初は当事には珍しい”出来ちゃった結婚”で周囲を驚かしたものだった。私は驚かすのが好きで、それ以上に欲深い男でもあった。当事の咲子は十九歳と私よりも五つも年下だった。今なら出会い系とかいうもので、出会えるだろうが、当事の私は、会社に出勤する時にちょうど電車に乗った咲子に会うしか出来なかった。しかしちょっとしたこと……まぁ〜私が咲子に席を譲られたことから始まり、いつのまにか食事へ行くようになった。
 食事へ行くようになってから私はなんとかして咲子を自宅かホテルに連れて行こうと必死になった。それは今で言う”出来ちゃった結婚”を行うべくだ。
「どうやったら咲子を……ん〜、そうだ! やれば良いんだ」
 欲深い私は無理やりにでも咲子をホテルに連れて行った。そして精力増強剤を飲み、勝負に出た。咲子はまだ未経験で初々しい声をあげるが徐々に慣れていく。そして知識が乏しいのか、中を拒否することはなかった。
 それから三ヵ月が過ぎる。咲子はあれ以来会ってくれなかったが、その日私の部屋に咲子が電話してきたのだ。
「もしもし……」
「咲子? どうした?」
「できたみたいなの……」
 アレ以来咲子は誰ともしていなく、思い当たるのは私だけだったらしい。電話を受けた私は――
「そ、そっか……咲子。一生大切にする。だから俺と結婚しよう」
「……うん」
 ガッツポーズをする。まさに”やればできる”という言葉がぴったりだった。というか咲子には悪いことをしたのだとは思うが、そのおかげで私には温かい家庭が生まれたのだ。
 
 数年後、三人の子供に恵まれた私は今働いている会社を辞め、自営業をはじめることにした。小さいときからの夢であるパン屋を始めることにしたのだ。咲子は私の夢を聞くと頷き、協力をしてくれたのだ。子供達も上はすでに中学二年生で、お小遣いも値上がりしたい時期だったし、従業員は家族だけにした。
 それから一年が経つと、パン屋は見事に黒字経営になった。お店もいつのまにか二号店を出せるようになった。私の人生は波に乗っていた。しかし欲深い私は利益だけを求めるようにいつしかなっていった。そのために家族は何回も崩壊しそうになった。
「親父! ふざけんなよ!」
「ならばどうしろというんだ!」
 子供とも対立をしていた。けれど全ての原因は私の欲深い性格のせいでもあった。パンが売れれば利益が出る。その利益つまりはお金があればなんでもできることを知った私は、いつしかお金に溺れていった。
「ねぇー、抱いて〜?」
「社長さ〜ん、私にもお小遣い〜ちょぉ〜だぁ〜い」
 いつしか妻以外の女に何度も手を出すようになった。当時の私には考えられないような人数と関係を持っていた。
「親父……あの女はなんだよ!」
「母さんがかわいそう!」
 子供達からは縁を切られた。けれど……けれどいつも妻が私のそばにいた。私を信じていたのだ。

 数年もせず私の会社は破産し消えた。当然である。女に金をつかい、いつのまにかギャンブルにまで手を染め始めたのだから……。

 そして、先日私は自殺を決意した。妻と一緒にビルの屋上から……。

 妻は私の横で看護をしてくれている。それは普段と変わらない元気な姿だった――。


終わり

2004/08/05(Thu)19:17:29 公開 / ねこふみ
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■作者からのメッセージ
久しぶりの読みきりです♪
実は卍丸さんの『わたしのパパ』を読んで久々に書きたくなり書いたものです♪
そして最後にタイトルつけるときになんだか似てるな〜とか自分でも思いながら『私の妻』というタイトルにしちゃいました(汗 

内容は……どうなんでしょうか(笑
妻しか名前も出てないし……(ぇ
もうすぐ、異次元〜も終わり今度の新連載を考えている最中でもあります。
それの参考にもなれば良いなと思うので、感想や指摘のほうよろしくおねがいします(ペコリ

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