『Ocean Love Story 2』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:Cano                

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寝不足3日目。アキトの夜鳴きのせいだ。
だけどそんなに苦痛にも思わなかった
泣き顔を見るのはつらいけど笑顔を見るのが嬉しくて仕方ない
3400g、健康体で生まれたアキトはすくすくと育っていた
会話ができなくても 彼の成長はあたしにたくさんの愛情をくれた
幸せだった。
コウノといた日々よりも、充実していたと思えた
あたしは産婦人科の定期健診に向かっていた
長い道のり、
コウノと手を繋いだ日もこんなふうに肌寒くてよく晴れていた日だった
「コウノ、今度映画行こうよ」
「いいよ。何見る?」
「何でもいい」
「何だよそれ。」
あたしが寒そうに手をポケットに入れていると
コウノは黙ってあたしの手を握った
大きくてゴツゴツした手。
「あったかい。」
マフラーに顔を埋めながら顔を赤くした顔が思い浮かぶ
今のあたしは アキトをベビーカーに乗せてのんびり感動もなく歩いている
本当にこれでよかったのかと思う時もあったりする

「ヨシカワさんーヨシカワミズキさん」
あたしは名前を呼ばれて診察室に向かう
アキトの成長は良好。
「ヨシカワさん、どう?ストレスとか感じたりしてない?」
以前と変わらない担当医
「はい。ありません。夜鳴きもそんなに苦痛に感じないし」
「そう。よかった。私に聞きたい事とかあれば何でもいってね」
「ありがとうございます。」
「やっぱりアキト君のお陰かなぁ。表情がだいぶ豊かになったわね」
そんな風な話をしながら 先生はあたしにたくさんのアドバイスをくれた
彼女がいなければ あたしとアキトは此処にいなかったかもしれない

あたしは家に帰ると寝不足が重なっていたせいかすやすや寝入ってしまった
「ごめん、ミズキ、待った?」
「遅いよ、コウノ」
「普通 ぜんぜんまってないよ。とか言うだろ」
「だって本当に待ったんだもん」
「ひねくれ物!」
そういって彼はあたしの頭を軽く触れた
二人でセンター街を歩いているとコウノの携帯がなる
「もしもし、あっ」
相手が誰か確認したかと思うと彼は道を外れて深刻な表情で話している
あたしはショーウィンドウの服を眺める
「欲しいの?」
「ううん。」
「じゃぁ いこっか。」
電話を切った彼があたしの手を引き歩き始める
「早いよ」
「ごめんごめん」
「どこ行くの?」
「クラブ・・かな」
「今からー??」
「ああ」
あたしたちがクラブに入ると、いつものように騒がしい音楽が流れているが
客は誰一人いない。
「・・・?」
「ごめん、ミズキ」
そう言うと彼はあたしを羽交い絞めにした
「何すんのよ」
気がついたら4人の男たちがあたしの身体を舐めるように見いる
「結構いい女だな。お前の命は見逃してやるよ。二度となめた真似すんな。俺達だって人間だ、条件は飲んでやろう」
コウノは黙って頷いていた

目が覚めるとアキトが隣で大泣きしていた

------------------
最近になってコウノの事を思い出すようになってきた
抹消したはずのレイプされた日の記憶も。
アキトの隣で横になり柔らかい髪を撫でる
寝顔を見ているとつい笑顔になってしまう
ひとときでも幸せな気分になってしまう
ふわふわな頬に触れると 眠ったままにっこり笑う
部屋に溢れたオモチャ。
積み上げられた育児本。
あたしは母親になったんだと実感した

アキトはどんどん元気に成長して行く
それが少し怖かった
父親がいない家庭に不安を抱くかもしれない
真実を話す覚悟はできてる
だけど、聞いてほしくない。それが一番の願い
逃避するのは駄目だとわかっている
だけど立ち向かう事が何より恐ろしい

「ママ、今日幼稚園でね、お絵かきしたの。」
「そう。何かいたの?」
「えっとねぇ、ママと僕だよ」
「嬉しいー、見せてよ」
「絵は幼稚園にあるから見せれないよ」
コウノのように少し理屈にあたしをおちょくるような口調。
それに時々、胸が痛む事がある。
そんなことは知らずに、アキトは必死になって絵本のページをめくっている。
「読んであげよっか?」
「ううん。いいよ。ママはごろんしてて」
「ごろんって?」
「お昼ね!してていいよ」
「うそー!いいの?」
「いいってゆってるでしょ!」
「ありがとう」

翌日、幼稚園の先生があたしに重々しく言う
「アキト君、大丈夫でしたか?」
「え?」
「ゆり子ちゃんたちにお父さんがいないってからかわれてて・・・
気になったものですから。」

アキトは何も言わなかった
寂しい表情も見せずにいつもみたいに元気にしてた
気がついてあげる事ができなかった
あたしはアキトの絵を眺める
周りの子は皆、りんごとか、いぬとか、キャンディーとかを書いているのに
一人だけ、あたしと自分を書いてる
クレヨンで小さく、
「ママ」「アキト」と書いてある
あたしは涙をこらえながらアキトと家路についた

「ママ、どうして泣いてるの?」
「何でもない」
「何でもあるくせにー!」
「いいの、アキトは知らなくても」
「じゃぁ 泣かないでね。」
そういうと極上の笑みをあたしに送った


------------

翌日、幼稚園の先生があたしに重々しく言う
「アキト君、大丈夫でしたか?」
「え?」
「ゆり子ちゃんたちにお父さんがいないってからかわれてて・・・
気になったものですから。」

アキトは何も言わなかった
寂しい表情も見せずにいつもみたいに元気にしてた
気がついてあげる事ができなかった
あたしはアキトの絵を眺める
周りの子は皆、りんごとか、いぬとか、キャンディーとかを書いているのに
一人だけ、あたしと自分を書いてる
クレヨンで小さく、
「ママ」「アキト」と書いてある
あたしは涙をこらえながらアキトと家路についた

「ママ、どうして泣いてるの?」
「何でもない」
「何でもあるくせにー!」
「いいの、アキトは知らなくても」
「じゃぁ 泣かないでね。」
そういうと極上の笑みをあたしに送った

アキトはコウノの事を何も知らないまま小学校に入った
アキトは近所に住むショウ君と一番の仲良しになった
あたしはそれが嬉しかった
何でも言い合える友達、のようなものがあたしには一人も居なかったから
アキトとショウ君は毎日のようにお互いの家を行き来して
何とも微笑ましかった
アキトは本当にショウ君のことが大好きみたいで
話をしたと思えば、彼の事だった
ショウ君が怪我をして可哀想だとか
犬を飼って喜んでいるとか
あたしは少し、嫉妬さえ覚えた
今までアキトの事を独り占めしてきたから
彼にとっての一番はあたしでいてほしかった

ある日、アキトは泣きながら帰ってきた
「どうしたの?」
「ショウ君が・・」
「喧嘩でもしたの?」
「ううん、ショウ君が、お引越ししちゃうんだって。」
「ほんとに?どこに行っちゃうの?」
「がいこくだって。」
「そう・・寂しくなるね。」
ずっと泣きじゃくっているアキトをあたしはぎゅうっと抱きしめた
「ママがいるよ。ショウ君のことお見送り行こうね」
「うん。」
ショウ君はお父さんの都合で、アメリカへ引っ越すことになった
毎日悲しそうなアキトを見ているとあたしまで胸が痛んだ
引越しの日、アキトと二人でショウ君の家まで手を繋いで向かっていた
「アキトーお歌、うたおっか?」
「ううん、いい」
「それじゃー何かお話する?」
「ううん。」
あたしは一人で鼻歌を歌いながら道を進む
するとアキトもゆっくりと歩調をあわせながら歌いだす
そんなアキトを見るとなんだか微笑ましかった
「ねーアキト、ショウ君にお花あげよっか」
「うん!」
「お花やさんあるかなぁー」
「ここに咲いてるのでいい」
彼が指差したのは河原一面に咲いているシロツメグサだった
「それでいいの?」
「うん。」
そういうとアキトは河原を駆けて行って、シロツメグサを両手いっぱいに積んできた
「きれいだねー」
「うん。」
ショウ君の家についたとき、アキトはショウ君にお花を渡した
ショウ君は嬉しそうにありがとう、と言うと
にっこり笑った
最後のお別れの時、ショウ君がアキトに
「元気でな!」と片手をあげた
「おう!」そういうとアキトも手をあげて、またな!と軽い挨拶をした
何だか、ちょっと男らしいアキトの姿を見たのは初めてだった。
前は、あんなに泣いてたのに笑顔で手を振る
だけど、車が行ってしまったあとアキトの眼に今にも溢れ出しそうな涙が浮かんでいた
「アキト・・かえろっか」
「うん。」
そういうとアキトは涙を拭いて笑顔を作った

ショウ君がアメリカに行ってしまってから1ヶ月、アキトはしばらく寂しそうだったけど
序所に元気を取り戻してきた
だけど、それも束の間 アキトはひどい高熱を出して苦しんでいた
あたしは懸命に看病をしたが
いっこうに熱は下がらなかった
ある日、病院に行く準備をしていると
アキトの息が急に激しくなった
あたしは急いで救急車を呼んで、病院へ向かった
原因は、風邪をこじらせて重度の肺炎をおこしていた
あたしは自分を殺してしまいたいくらいの自己嫌悪に襲われた
どうしてあたしはアキトをすぐに病院につれていかなかったの?
どうしてあたしは様子がおかしい事に気がつかなかったの?
あたしが思っていた以上に事態は深刻で、
医者があたしに、病室に入っていいと言った
あたしはそれで命が危ない事を察知した
「アキト・・ごめんね」
「ママ・・」
「アキト・・お願い、ママを許して」
「ママは・・いつも・僕に謝って・・ばっかりだよ。
ママ、何も悪い事してないのに・・」
「え・・?」
「僕ね、覚えてるの・・・ちょっとだけ、
夢の中でずーっとママは僕に謝ってた。」
思い返せば、この子がおなかにいる時、あたしは何十回も謝った
彼の言う夢の中とはそのことなのだろうか
あたしは涙を止められなかった
「アキト、ママ、泣いてばっかりでごめんね、弱くてごめんね。」
「だからママは・・悪くないんだよ・・・悪いこと・・した子があやまるんだよ・・
ママ、ママが僕のママで良かった、パパがいるショウ君よりも、ゆり子ちゃんよりも、嬉しいこととか楽しい事、いっぱいあったよ」
「ほんとに・・・?」
「うん・・。ご本もたくさんよんでもらったし、いっぱい・・ごろんできたしね・・
ママは・・あまいくらいだよ」
「そんな言葉どこで覚えたのよ・・」
あたしは泣きながら少し笑った
「僕・・ママが泣いてるのが・・・一番嫌だよ・・パパがいないことよりも
お仕事で遊んでもらえないときよりも・・ママが泣いてるのがいちばん嫌だよ、」
「アキト・・」
「ママ、ありがとう。」
そう言ってアキトは息を引き取った
蘇生措置をしてももうアキトは生きかえらなかった

自分よりも大人で、しっかりしてた。アキト
大好きだよ、アキト
あたしはいつか、あなたに言った
コウノ以上に愛する事はできないって
だけど、あたしはあなたを愛するなんて言葉以上に
大切で、必要で、あたしの一部だった

ありがとう、アキト。

アキトを失ったあたしは、何も希望がなかった
コウノを失った時から、ずっとあたしの傍にいてくれていた
間違った答えを出そうとしているあたしに
正しい答えを教えてくれた
あたしは アキトの大切にしていたぬいぐるみを抱きしめた
まだアキトの匂いがする
涙が止まらない
このままあたしの体中の水分が全て枯れてしまう
それでもいい


思い返せば、あの日から一度も会ってない
アキトがこの世からいなくなった
あたしの時間を巻き戻したい
コウノとの幸せだった日々に。
アキトと生きた日々に。
欲張りかもしれない。
だけどあたしは一日でも一時間でも一分でもいいから
3人で過ごしてみたかった
アキトが居た頃は、それが怖くて実行できなかったのに
今になって、後悔してる
またコウノに拒否されるのに恐れていた
たったそれだけの理由で。

あたしはコウノと出会った高校の校門に行ってみる
もう誰もいない校内。
あたしは思いっきり深呼吸をして
あの日のように校門を飛び越える
足に攣るような感覚が走る
「コウノ・・・」
あたしは無意識に涙を流して名前を読んでいた
ふと我にかえると、急に暗い学校が怖く思えてきて
急いでその場所を離れる
湘南につれていって
レイプのあと、コウノに告げた
もう一度そこからやり直せると思った
あたしはやっぱり、今でもコウノに会いたい
そんな気持ちを確信した。

--------------

あたしは、アキトの遺影に向かう。
「アキト、あなたのパパは今どこにいるんだろう。
何にも話し手あげられなかったね・・・。ごめんね。」
もちろん遺影は何も喋らない。
コウノは今、何をして何を思って生きているんだろう。
あたしはふと、携帯を手にして
あの時電話を掛けた時のままのコウノのメモリを呼び出してみる
番号なんてきっと変わってる
あれから随分月日も流れてる
それに、彼はきっとあたしの電話には出ない。
そんな風に思いながらも、もう既にコウノを呼び出していた
「はい・・・」
予想もしなかった返事。あの頃と変わらないコウノの声
「もしもし?」
「あ・・あたし・・ヨシカワ・・ミズキ」
「ミズキ!?」
「うん・・。ごめんね。電話なんてかけちゃって」
「久しぶりだな」
「うん。元気?」
「相変わらず。そっちは?」
「何とか生きてる。」
アキトを産んだ事は言えなかった
言えば、前みたいに電話を切られてしまうかもしれない。そんな卑怯な事を考えていた
「結婚・・とかしたの?」
「いや、してないよ。そっちは?」
彼はそう言うと少し戸惑って ごめん。と言った
「どうして?」
「いや、別に。」
「なぁ、湘南・・行かないか?」
「え・・?行って・・くれるの?」
「ああ・・。」
突然のデートの誘い。びっくりした。だけど嬉しかった
もう一度あたしたちは再会できる。


日曜日、あたしの家の前に一台の車が止まる
あたしは鍵をかけて急いで車に向かう
髪は前より少し短くなっていて、黒に近い茶色に染めてある
だけど、少し鋭い眼と尖った顎、優しい笑顔。何も変わってない。
「よお。」
「久しぶり。髪・・切ったんだね」
「ああ。似合うか?」
「うん。」
「猿みたいとか言うかと思った。」
「そんなに短くないよ」
コウノは少し笑うと、そのまま車を走らせた
彼はきっと、あたしが子供をおろしたと思ってる
それならそれでいい。アキトとの思い出は、あたしの胸の中で大切に閉まってあるから。
それを横取りされたくもない。
「なぁ・・。」
「何?」
「お前、俺の事殺したくならないのか?」
「何で・・?」
「俺、お前を死ぬほど傷つけた。
お前が俺を殺しても俺のしたことはそれ以上に最低な行為だ・・」
「もう・・いいんだよ。あたしは、コウノが思っているほど弱くない。
こんなに強くなければ、あたしは今頃灰になってるよ。電話もかけたりしない。」
「本当にすまないことしたと思ってる。」
「いいの。あたしは。」
「子供・・産んだのか?」
「どっちでもいいじゃん。コウノには関係ないよ。」
「そうだよな。ごめん・・・。」
「ねぇ、あと何分くらい?」
「もう着くよ。」
「湘南、久しぶりだなぁ。」
相変わらず、湘南の海はサーファー達であふれていた
あたしは風を感じながら砂浜を歩く
「ねぇ、コウノ。気持ちいいね」
「ああ。」
「最近、何かいいことあった?」
「何にもない。俺には。いい事があっても気がつかないくらいに」
「そ。あたしはコウノが変わってなくてよかった。と思った」
あたしは笑いながらコウノの顔を覗き込む。
「ばーか。」と言いながらあたしの頭をポンと、叩くと思った
それなのに彼は、泣いていた
「どうして泣くの?」
「俺も・・お前が変わってなくて・・ほんとよかった・・。まだ・・お前の事・・忘れられないでいた。会いたかった・・けど、お前に会わせる顔もなかった・・。電話があったとき、本当に嬉しくて、子供の事もずっと気になってて、あのとき、この場所に、もう一度行けばよかったと何度も後悔した」
思いがけない言葉。”お前の事、忘れられないでいた”
その言葉だけがあたしの耳にのこる
「あたしもだよ・・コウノ・・。」
とんでもない事態の変化にあたしは感動で涙が流れた
あたしたちはその場で抱き合いお互い泣いた
湘南の浜辺で、元カップルが一緒に泣いている
おかしな光景。たぶん、人が見たら頭の足りないバカップル、だと思われるだろう
あたしたちはその後、熱くて、深いキスをしてお互いの愛を確認した。

--------------

あたしは彼の腕に身を任せながらの体勢でうとうとと眠りかけていた
「なぁ、ミズキ。」
「何?」
「お前・・。痩せた?」
「そうかな。あれからかなり立つから体型も変わるよ。気にしないで」
「ああ。」
「ねぇ、コウノききたい事がある。」
「何?」
「気を悪くしないで聞いて。あの日、あたしをレイプした日に
あなたは何かあいつらに条件を出してなかった?」
「何だよ・・・急に・・」
「あたし、ちょっと前、夢で思い出したの。あの日の事を。」
「もうその話は終わりにするって言ってなかったか」
「言ったよ・・。だけど気になって」
「あの日、俺はただ命の引き換えにお前を犠牲した。悪いと思ってる」
「そんなことを聞いてるんじゃないの・・。たとえば・・例えば、
あたしの中に精液を放出しない。そんな事約束してなかった?」
「お前・・やっぱり子供産んだのか?」
「答えて・・・お願いだから」
「あの日・・。俺はお前を裏切る為だけに誘った。
日にちも時間も、場所も全部決まってた。
奴らは、俺に女をまわす事と、薬で稼いだお金を渡すように言った。
俺、あいつらが思っていた以上に稼いでたから、倍の料金を支払った。
親からパクったって言って。その代わり、ミズキに妊娠させるような事だけはするなって
条件を出した。」
「どうして・・・?どうしてコウノはあたしを選んだの?」
自分でも声が震えているのがわかる。
「お前なら・・わかってくれると思った」
あたしは今にも泣きそうだった
思い出せば思い出すほど、記憶が細かく蘇ってくる
あの日あびせられた、言葉。
屈辱的な行為。
あたしは一体どうしてコウノ何か好きでいるんだろう。
今頃になって考えてしまう
アキトを一番苦しめたのはこの男かもしれない
あたしの中ではアキトの存在が既に膨れ上がっていた
あたしを愛してくれていたけど、あたしを裏切ったコウノ。
あたしを愛してくれていたけど、もう死んでしまったアキト。


「コウノ。ごめん。あたしやっぱり、あんたを許せない。
未だ、愛してる。だけど、アキトを苦しめたコウノと、レイプした奴らを許すなんてできない。」
「ミズキ・・・」
「あたし、あなたを本当は殺したいほど憎んでる。
だけど、もうあなた無しでは生きられないんだよ・・・」
「お前、やっぱり子供を産んだのか・・?」
「コウノ、さっきからそればっかりだよ。
そんなに邪魔なの?自分の過ちで作った子供が。
アキトはあなたに何にも迷惑かけてない。
それに、アキトのお陰であたしはあなたとこうして会えることができた
それで、やっぱりあたしに正しい答えを教えてくれた」
「答えって何だよ・・・」
「やっぱり、あなたとは一緒にいれないってこと」
「何だよ、さっきお互いの気持ちを確かめたところだろ」
「あたしはずっと前から、あなたと気持ちを確かめていたと思ってた。
コウノはあたしを裏切ったりしない。ずっと愛してくれる。そう思ってたよ」
「いい加減にしろよ。お前、さっきと言ってる事がぜんぜん違う。
自分は強いからあんな事気にしてない。そう言っただろ?」
あたしは何も言い返せなかった
あたしは、あの事件を理由にすれば
コウノがあたしの勝手な気持ちを全て包んでくれると思って甘えていた。
だけどそうはいかないみたいだ。
コウノはあたしよりずっと利口で、
あの事件の事なんて、そんなに重くは考えていない。
どうしてあたしは彼を問い詰めたりしてしまったんだろう
何も言わなければ、あたしたちはあの頃のように戻れたかもしれない
「ごめん。やっぱりもう修復不可能だよ。」
「つらいのは お前だけじゃねえんだよ。俺だって苦しんだんだよ」
その一言で、あたしの心は吹っ切れた
彼もあたしも、お互い自分勝手すぎた
自分をかばったり、哀れに思ったり、
そんな風に思ってばかりいて、お互いを思うなんて事ができなくなってた
やっぱり2人の間にぽっかり空いた穴をもう埋める事はできない
もうあたしは後悔しない。
「あたしと別れてください。」
思い返せば、あたしたちはお別れの言葉なんて交わさなかった
お互い、自分を大切にしすぎた。傷つくのが怖くて言い出せなかった。
だから、中途半端にしか終われなかった
新しい一歩が踏み出せなかった
唖然としているコウノをおいてあたしはその場を去った
もう絶対、会ったりしないんだ。
滴り落ちる涙。
あたしはもう、コウノを思って泣いたりしない。
最後の涙。


ときどき、ふと虚しくなる
あたしの周りにはもう誰もない
全部失ってしまった
だけどあたしは後悔してない
コウノを愛したことも、アキトを産んだことも。



Ocean Love Story....end

2004/07/29(Thu)02:33:36 公開 / Cano
■この作品の著作権はCanoさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
読んで頂きありがとうございます。
やっと完結することができました。
何だか、話の展開がぐちゃぐちゃなので
読みづらいかとは思いますが
ご了承ください

よろしければ感想・批評・ご指摘などお願い致します

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作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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