『Search&defeat. mission1(途中まで)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:蘇芳                

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 『エネルギーライン1段、4段直結。
ジェネレーター稼動、各部への電力供給開始。
メインエンジン点火、続いてサブエンジン点火。
システム、パイロット、同調を開始します』
「っ…」
 体の中、神経の中を電気が流れる。
いかに熟練した搭乗者といえ、この感覚に慣れることは無いだろう。
同調というのは機体各部と搭乗者の神経をシンクロさせる操作だ。
これにより機体の反応速度が格段に上昇し、手足の動かすのと同じ感覚で機体を操 縦できる。
『同調完了、システム同調率78から89。誤差は±5以内。
 同時にIDを取得。搭乗者セフィリオ・バーランドと確認しました。
使用許可武装はクラスターを除く全てですが、今回は上層部からの指示により固定武装とバウンサー、近中間距離用クレイモアのみです。
 申請をすれば他の武装を取得する事も出来ますが、如何致しますか?』
「不要だ、離艦と同時にメインブースター点火。操縦をマニュアルに書き換えろ」
 通常は離艦から目的地までの間はオートしておき、着陸後にマニュアルに切り替える。
だが熟達したパイロットは、離艦と同時にマニュアルに切り替える。
理由は二つ。航行中の速度は時速360kmと非常に高速である。
その機体を安定させて、かつ速度を落とさずに航行するのは至難の業だ。
だがオートでは敵影及び敵攻撃のサインが出てから行動に移るまでに、大体1秒弱の時間を要する。
通常のミサイルや機銃ならば対処できるが、対空高速迎撃ミサイルなどは避けきれない。
ビーム兵器に至っては熱量感知と同時に撃墜される。
索敵と迅速な対処。この二つはマニュアルでなければ上手く動作しない
そして二つ目、これは機体の特性なのだが、オートの際は操作を受け付けないからだ。
未だに二世代以上前のAIを搭載しているのが原因なのだが。
狭いコックピット。いや、民間機に比べれば大分大きいだろう。
まだ仮起動だからくすんだ色をしているが、本格的に起動すれば一瞬で透明になる。
目視による索敵のためと備えられたものだが、新米にとっては恐怖を過剰に与えるだけだ。
 俺も未だに恐怖はある。だが戦闘になれば、恐怖など吹き飛んでしまう。
『カタパルト準備完了、射出に入ります』
 相変わらず突拍子も無いものだ。そう思いながらシートに身を預ける。
唸るような起動音と共にシートが少し倒れて、くすんだ壁面が透明感を増していく。
そこに見えるのは無機質な鉄のレール。電気のスパークが見えている辺り、そろそ ろ射出準備が終了するのだろう。
『射出準備完了、進路オールグリーン。
 機体固定……射出』
ガクンいう振動が機体を伝わり、次の瞬間、シートに体が押し付けられる。
否、機体がカタパルトの上で加速し始めたのだ。
ディスプレイ上にサブエンジン点火という表示が現れ、更に圧迫感が増す。
 無機質なレールは、最早ただの流れる壁と化している。
『メインエンジン点火します』
 先程より大きな振動が機体を伝わり、カタパルト上を疾駆する機体が更に速さを増す。
全身の骨がミシミシと軋む。強化外骨格を装備していなければ、内臓の一つや二つ。骨の一本や二本は軽く折れるだろう。
総重量7トンの機体を打ち上げるためにのみ使われるカタパルト。
全長2キロにも及ぶそれを、ものの十数秒で駆け抜ける。
開発者にしてみたら画期的なのだろうが、搭乗者からすればふざけた発想だ。
強化外骨格が無ければ即死、もしくは重傷必死である。
強化外骨格とはパイロットスーツの下に着る物だ。関節などの部分は動きやすさを優先しているために快適なのだが、その他の部分は銃弾でも貫通できない素材だ。
しかも衝撃吸収に優れており、Gさえも緩和する働きをもつ。
まさに、この機体のパイロットのためにのみ開発された物だ。
そして機体、フレームと呼ばれる物は戦闘、もしくは運搬などに利用される軍用機器。
二足歩行型戦車などと銘打ってはいるが、戦車などという物は遥かに超越している。
背面にはブースターを三門装備。推力のみでいうなら戦闘機の数段上を行く。
武装も多岐に渡り、オプションとの併用で如何なる戦況でも最適なコンディションを供給。
主に軍部で使われているのはK&B社製の『グリスト』だ。
汎用性も高く、機体コストも安い。しかも既存の武装は、ほぼ流用できる。
装甲はチタン合金でハニカム構造体。機銃などでは絶対に損傷しない。
細かいスペックは後々教えるとしよう。
そろそろ射出口が見えてきた。これから約二分半、空の旅をお楽しみください、ってか?


Mission.1 HumptyDumpty


機体全体を駆け抜ける大きな衝撃、シートに押し付けられ悲鳴をあげる強化外骨格。
射出の瞬間が一番肝を冷やす。
射出時の速度をブースターで更に加速させ、慣性飛行と推力飛行の同時進行を行う。
 速度も400を越えて、そろそろ機体内の加圧も始まる。
『ディサイド。離間を確認しました。
 イオまでは約二分半ですが、ブリーフィングを行いますか?』
「ああ、内容を簡略化しろ」
 機体内の加圧も終了したらしい。脈拍や呼吸も、随分と落ち着いてきた。
『了解しました。本作戦のブリーフィングを開始します。
 木星衛星イオに民間の研究施設を確認、かねてより連盟への技術補助などで疑惑を掛けられていましたが、偵察機が連盟軍のフレームを確認。その際に護送されていた『ハンプティ・ダンプティ』を奪取、本部へと護送するのが目的です。
上層部より直々に、なるべく無傷で、との連絡も入っております。余裕があるのならば研究施設を掌握、回収艦の到着を待てとのことです。
尚、トラブルの際は各機の判断に任せると、司令部より命令です。
 何かご質問は?』
「ハンプティ・ダンプティは生物か?」
 ハンプティ・ダンプティ。連合内部での隠語で、意味するところは【不確定要素】である。
そのハンプティ・ダンプティが軍にとって吉と出るか、凶と出るかは上層部の判断だ。
大概は新型の兵器や、破棄された施設内の残留物を示すが、極稀に生物であることもある。
 確認をとっておいても損は無い。
『偵察機のデータによると生物で、人間である可能性が94%です。
 性別は不明、外見年齢なども不明です』
面倒臭い。物言わぬ兵器なら未だしも、自我を持つ生物である可能性が高いのだ。
しかも輸送ではなく護送。乱暴に扱おうものなら、文句を並べられるのがオチだ。
殴り倒して黙らせる事でも出来なくも無いが、なるべく無傷で、と上層部から指示がある。
そもそも【不確定要素】である人間に、どれほどの価値があるというのか。
拮抗状態が続く中で、それを打破することの出来る存在とでも言うのだろうか。
 全く以って馬鹿馬鹿しい。
『脈拍、呼吸が上昇。神経パターンにもノイズが見られます。
如何しましたか?』
 つい熱くなっていたらしい、AIにまで心配されるとは。
「なんでもない、戦域直前で停止。各機にも伝達」
『了解、戦域まで残り12秒です』

ブースターを落とし、バーニアのみで体勢を維持する。
眼下に望むのは、テラフォーミングで固められた土星の地盤。
 そして八機の機体の中に、部隊長からの命令が下されていた。
「下降後は施設へ直行する、連盟の施設であるために戦闘行為も予測される。
各自、警戒態勢を二段引き上げて挑め。なお、捜索はウィリアム、セフィリオ、レディオに私を加えた4名で行う。他の各機は施設の制圧にあたれ。
なにか疑問は?」
「……」
 無言の肯定、作戦は単純に隊長機を補佐しながら、施設にてハンプティ・ダンプティを捜索するだけ。
今回は二小隊での任務なので、自分達以外の隊員は研究施設の制圧を行う。
なにせ勢力はおろか、連盟が駐屯しているかどうかも不明だ。的確な命令といえ ば、確かなのだろう。
「…各員、降下準備!!」
 バーニアの角度が傾き、機体が間逆になる。
バーニアは点火したまま、機体を逆さにした状態を維持。隊長機からの指示を待つ。
テレフォーミング、意味の分からない人もいるだろう。
惑星やその衛星などを人の住める環境にする技術、とでも言うのが妥当だろうか。とりあえず人類の欲の集大成だ。
結局は地球からの移民が住むことになり、それが原因で地球側と戦争になった訳だが。
土星は停戦宙域内に存在する星だが、連合と連盟の施設が入り混じる物と化した。
 火星などよりも、よほどにタチが悪い。
「各員、スラスター展開!」
 突然の入電、コントロールパネルを操作し、スラスターを展開させる。
低い唸りと共に、背面から折りたたまれた翼が姿を現す。
スラスターというのはブースターを発展させた物である。
推進剤をつかい超高速推進を可能とさせる物だ。当然の事だが、機体内部にかかる Gは相当な物がある。
『推進剤、注入を開始します。注入完了後、降下を行います。
 搭乗者は衝撃に備えてください』
AIからの通信が切れると同時に、注入状態を示すグラフがディスプレイ上に表示される。
 残り時間、あと23秒。
「…ふぅー…」
 大きく息を吐き出す。逆さづりのお陰で、頭にも血が上ってきた。
顔もむくんできたようだ、目元が厚く感じる。目頭を親指と人差し指で揉み、ディスプレイを見る。
進行状況を確認しようとすると、【CAALING】の表示がディスプレイ上で明 滅した。
『ウィリアム機より入電、繋ぎますか?』
「繋げ、暗号化はしなくても良い」
 どうせ大した用件では無いだろうし、ジャミングも確認されていない。
 そもそも傍受するほど暇な人間もいないだろう。
「…よ、これが終わったら飲みに行くか?」
 ウィリアム・ティパー。黒人系の男で、主に情報戦を得意とする。
 精悍な顔付きにドレッドヘアが印象的な男で、セフィリオとは同期だ。
「生きて帰れたら、な」
「つれねえ奴だなあ…まあ良いわ。んじゃ切るわ」
 それだけ言うと通信の回路は閉じた。
『ウィリアム機、通信途絶』
 おそらくハッキングでも仕掛けていたのだろう。正規の通信は、隊長が全てトレースしている。
 バレれば大目玉だ。
「はぁ…」
 軽く溜息をつく。溜息というのは心因的なストレスをほぐすために行われる物らしい。
 つまり人並みに緊張しているということだ。
『注入完了、降下の指示を下さい。あと脳波に若干の乱れが生じています、落ち着いて』
「分かっている、スラスターモジュール起動。4秒後にメインブースターと同時点火」
『了解、4…3…2…1。降下』
 逆さにも関わらず、体がシートへと押し付けられる。頭に上っていた血液が、すべて下半身に集中するような、そんな感覚に見舞われる。
強化外骨格がミシミシと軋み、砂と粉塵に包まれた大気へと突っ込む。
 ガタガタと機体が震え、装甲の繋ぎ目がキィキィと悲鳴をあげる。
「スラスター、パージ!」
 スラスターが切り離され、機体が一気に減速する。更に体をシートに押し付けられるも、外骨格のお陰で意識は保っていられた。
 厚い大気の層を抜け、砂と岩の地面が眼前に広がる。
「メインブースター停止、バーニアで体勢を立て直せ。そのまま着陸に移る!」
『了解、メインブースターを停止。バーニア点火します』
 機体を伝わっていた振動が消え、バーニアの逆噴射により緩やかに減速を始める。
 その間に体勢を立て直し、ゆっくりと接地する。
『着陸成功』
「……ふぅー…」
 大きく息を吸い込み、大きく息を吐き出す。
土星は時折だが嵐が起きる。運悪く突っ込めば、先程のように機体が損傷しかけたりする。
 コントロールパネルを操作して、機体の破損状況を調べる。
「……」
 目立った損傷は無いが、湾部の装甲が緩くなっているようだった。だが、別に差 し支えは無いので良いだろう。
「索敵を開始、範囲は最大で、だ」
『了解……』
 索敵を開始する。電波や超音波、熱量などを感知して特定の場所を割り出す。
嵐の中でスラスターをパージしたので、それが原因で偵察が来ているかもしれない。
 他の機体もぞろぞろと降下し、索敵と機体損傷をチェックしている。
『……索敵完了。4時の方向に熱量を感知しました』
 モードをアクティブに変更しシステムと同調、バウンサーを構える。
同じような内容のメッセージが流れたのだろう。降下したフレームが、各々にバウ ンサー等を構えるのが見えた。
『熱量、高速接近中…フレームである可能性98%。目視まで12秒です』
 大した歓迎だ。


つづく






2004/06/17(Thu)22:36:18 公開 / 蘇芳
■この作品の著作権は蘇芳さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ご指摘を受けましたが直し方が分からないので、変だと思ったところは直してみました。如何でしょうか?
ちゃんと話に収拾つけて完結させれば、結構な長さになると思います。一話ではキャラクターの詳細な説明などは無く、二話でキャラクターを紹介していきたいと思っています。
あと、これでも一話の3分の1程度です。
気長に付き合ってってください。 m(_ _)m   

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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