『俺はだれ?  読みきり』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:アブライド                

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142

 思い出を捨てる覚悟はありますか?

 それがあなたにとっての――。




 朝日がさす。この場所はどこであろうか?ブラインドからさす朝日は俺の目を覚まさせた。体を起こしあたりを見渡すが誰もいない。それに俺の服装は上はタンクトップに下はパンツ姿だった。そして体の下には白いベットが存在していた。
 記憶がない。というよりはなんで俺はこんなとこにいるのだろうか?混乱する頭で考えるが、過去のことがこれぽっちも思い浮かばない。
「俺は――。」
 時が流れる。外からは小鳥のさえずりまで聞こえる。なんだ?なんなんだ?ここは!俺はいったいどうなったんだ……。知らない部屋で寝ていて、しかも過去の記憶が何一つない……。おかしいぞ、俺はだれでなんでこんな場所に!
 そんな混乱する俺の部屋にひとつだけ存在する木のドアをコンコンと叩く音が聞こえる。誰かがきている?だれが?いったいだれがこんな場所に来るって言うんだ?
「入るわよ」
 開いたドアには一人の若い女の姿があった。けれど記憶が本当にない。俺は慌てふためき、自分の格好を思い出し、あせりながらも布団に包まった。女は苦笑いをしこっちをなおも見ている感じだ。だれなんだこいつは……。
「正人?どうしたのよ?」
「ま、まさ、正人?」
 正人とは俺の名前なのか?本当に記憶というものがない。しかし、正人といわれれば正人だった気がする……って、なんて曖昧な。
「ねぇー?どうしたの?なんか顔色悪くない?」
「あ、いや、別に。疲れてるだけだよ。スマン」
 言葉は勝手にでてきた。なんで俺はうそをつく必要があるのだろうか?いや、ここで俺は本当のことを言うべきだと……そう思い、咳払いをし本題をかたることにした。
「あのさ、俺さ」
「そうそう、正人?約束覚えてる?」
「え?約束?」
 約束?というより、こいつと俺は同居しているのか?恋人……ってことか?わからない。記憶がなさ過ぎる。あいまいな記憶だけしかない。でも「正人」と呼ばれて俺は自分が正人であることがわかった。でも本当に正人なのか……?
「もぉー!昨日『明美と明日はハイキング行ってあげる!』って言ったじゃな〜い!」
「わ、悪い。明美」
 明美……それがこいつの名前?でも記憶がない。それでも言葉は勝手に出てくる。なにが起こっているのだ?俺は正人でこいつは明美。そしてハイキング?何のために?今日は日曜日だって言うのか?
 ブラインドから見える空は限りなく青かった。それを見ていると、なんでかうなずけた。それでも矛盾している。俺には記憶がない。それでもこいつ、いや?明美の言葉によって記憶が戻ってくる。徐々にだが俺は俺に戻っているのだろう。
「明美……ちょっとこっちに来てくれないか?」
「なぁに?」
 明美は俺の近くにやってきた。そしてベットの上にこしかけた。そして懐かしい気分が俺の中に生まれた。そして俺は――
「明美……」
「きゃ!や、やだ、どうしたのよ、いきなり!」
 俺は明美を力いっぱい抱きしめた。なんでかそれが今一番したかった。
 思い出した。抱きしめて俺はやっと思い出した。俺は正人で明美と都会から逃げてきたんだ。家族から結婚を反対されて、二人で夜中にあの町を逃げ出し、こんな家にやってきたのだ。ブラインドはあるが、あとは全部木でできている。そうだ。俺は――
「明美、ずっと一緒だ」
「正人……うん。」
 軽くキスをする。俺はそのままベットに明美を寝かせ――。

 あれから数ヶ月。やっと明美は赤ちゃんを産むことになった。近くの産婦人科で俺は生命誕生の奇跡をまのあたりにしている。
 俺たちはこれから三人で仲良く暮らしていくのだろう。これからはずっと――。

 ――朝日がさす。この場所はどこであろうか?ブラインドからさす朝日は俺の目を覚まさせた。体を起こしあたりを見渡すが誰もいない。それに俺の服装は上はタンクトップに下はパンツ姿だった。そして体の下には白いベットが存在していた。
 記憶がない。というよりはなんで俺はこんなとこにいるのだろうか?混乱する頭で考えるが、過去のことがこれぽっちも思い浮かばない。
「俺は――。」
 時が流れる――

 何人かの研究員が画面を見ている。画面には女と男が映っていた。
「博士?どうです?調子は?」
「やぁー、総理。順調ですよ。こないだ元気な男の子を産んだよ。もちろん生まれた瞬間記憶を消し去りましたがね」
「でも、こうでもしなければ日本は少子化により、子供が減ってしまう。でも、まさか犯罪者がこんな形で役に立つとは。記憶をいじって、男女を使って子供を作らせる。」
「そして男は、正しい人。女は明るく美しい。彼らは第一級犯罪者。別に死刑台に送りよりましだろう。」
「ハハハハ、まったくですね」
 そう、俺たちは昔犯罪を犯した人間だった。そして日本は少子化に困っていた。そのおかげで俺たちは隔離された場所で記憶をいじられ、子供を作らされていたのだ。そして生まれたらすぐ記憶を操作され、また――。

 日常のテレビでは犯罪のCMが流れる。

「 思い出を捨てる覚悟はありますか?

 それがあなたにとっての生き地獄になっても。

 それでも、犯罪を犯しますか?」

 俺たちに明日は存在しないのだった。







fin

2004/06/03(Thu)15:23:32 公開 / アブライド
■この作品の著作権はアブライドさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 二回目の投稿になります!自分は学校でしかPCないので、読み直しとかできず…できれば感想とかほしいです!

 

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。