『爆弾屋のジョニー(読みきり)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:紅い蝶                

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「爆弾屋のジョニー」


 夜の商店街。南北に長いメインストリートを抜けて、ちょこっと裏路地に入ると奇妙な看板がある。
『爆弾について教えます。これで君も爆弾マニア!! (人殺しの道具ではありません)』
 全くもってわけがわからない。爆弾といえば、あれだ。導火線やら火薬やらを使って爆発を起こし、人や物を傷つけるあれ。それが人殺しの道具ではないというと、どういうことなのかさっぱりわからない。いったいどういった店なのか。
私はベテランの新聞記者。主にインタビューなどを行うのだが、その心が疼いてしまって仕方がない。私はその看板が示すとおりに裏路地を歩き、『爆弾屋 ジョニー』という怪しげな店にたどり着いた。そこでやめておけばよかったものを、私は足を踏み入れてしまった。


 「いらっしゃいます」
 初っ端から意味不明だ。いらっしゃいますってどういうことだ?いらっしゃいませならわかるが、その声はいらっいますと言った。そんな日本語、この国には存在しないはずなのだが・・・・・・。
 「お好きな席にお座りしろ」
 いきなり命令形だ。お座りまでは丁寧語だったのが、いきなり「しろ」。しかもその声の主は未だ私の前に姿を現していない。仕方なく私は、暗く狭い店内の中心にひとつだけあるイスに腰を下ろした。
 (お好きな席に・・・・・って、ひとつしかないではないか)
 しばらくすると、店の奥のドアがキィと音を立てて開いた。そこから出てきたのは、身長2メートルを越す大男で、黒いスーツに身を包みサングラスをしている。このくらい店内でサングラスだ。普通掛けないだろ。見えなくなる。にも関わらず、彼はスイスイと障害物を避けて進んでくる。まさか、見えているのか? トイレにあるような白熱球がったった一個だけぶら下がっている程度の明るさで、サングラスなどかけて見えるはずがないのに・・・・・・。
 「こんばんは。僕はジョニーって言います。よろしくお願いする」
 またわけのわからない日本語だ。しかも大柄な体格に反して声は幼く、しかも言葉遣いも幼い。どういうことだ?
 「よいしょっと・・・・・・」
そう言って彼はなにやらもぞもぞ動き出した。そして次の瞬間、私は自分の目を疑った。大柄な体の中から、何か小さなものが出現したのだ。恐らく体長1メートル程度。それは人の形をしていて・・・・・・というより人間だった。
 「あぁ、暑かった。これは僕の登場用の人形なので気にしないでくせぇ」
 “だ”が抜けている。それじゃ“くせぇ”だ。ちゃんと“だ”を入れてくれ。そんなことよりも・・・・・・。
 「なんか意味があるのかい?」
 私がそう質問した。わざわざ暑いのに着てくるほどだ。何か意味があるに違いない。これから始まるであろうパフォーマンスになにか繋がりが・・・・・・。
 「ない」
 ないのかよ。意味ないじゃん。暑いだけですか、あんた。
 失礼、少し私のキャラが変わってしまったようだ。気にせずにいただきたい。
 「早速、爆弾について教えるとしません?」
 「私が教えるわけじゃないだろ。疑問系にされても困る。始めてくれ」
 「チッ」
 確かにそう聞こえた。チッと今こいつは舌打ちした。このチビ・・・・・・!
 「は〜い、そんじゃはじめま〜す」
 やる気のない声で言われた。こいつ本当に商売する気でいるのか?そもそも爆弾について教えるとはどういうことだ? それで金を取るつもりでいるのか?
 「爆弾というのはそもそもですねぇ〜」
 私の疑問などお構いなしに話を始める彼。話の途中で彼は名前を教えてくれた。佐々木・ジョニー・アトミックファンタジージョニーらしい。ジョニーが二つあることからしてまずおかしい。それにアトミックファンタジーってなんだ?   原子的な幻想? わけわからん。もいい、考えるだけで頭が痛くなる。
 「爆弾の説明が終わったところで、早速商売に入らせてもらう」
 さっきまでとは違って、完璧にタメ口だ。どこまでこいつは舐めているのか・・・・・・。
 「まず最初の商品はこちら! 精神的爆弾!」
 そういっているにも関わらず、何も取り出さない。何を売る気だ?
 「何も出てこないじゃないか」
 「この精神的爆弾については僕がその技術を伝授するだけ。例を挙げて説明しようか」

精神的爆弾の場合

「おい、こら。ちょっと金貸せよ。返さねぇけどなぁ」
ガラの悪い金髪モヒカン男が気の弱そうな男の肩に腕を回してそう言った。俗に言うカツアゲというやつだ。そしてこの気の弱そうな男が、今回の精神的爆弾の技術を会得している。
 「いやだね。お前みたいなトサカに誰が金なんてやるか」
 前言撤回。気は弱くない。むしろ強い。まぁそれも精神的爆弾の技術があるかららしいが。
 「んだぁ? コラ! ぶっ殺すぞ!!」
 金髪男は肩にまわした腕を振り解き、拳を作って威嚇して見せた。
 「フン。僕はそんなもの怖くなんてないよ。お前の精神を崩壊させてやろうか?」
 気の弱そう(だった)男はそう言って眼鏡をくいっと上げた。次の瞬間・・・・・・
 「お前の○○○は天然記念物並に短小で、皮被っててしかもイカくせぇんだろ! それが原因で、毎回○○○をする直前になって女に逃げられるためにお前は一生ドーテーだぁぁぁ!!」
――――正解。
全てが正解だった。しかもピンポイントで。金髪男はそうとうショックだったようで、泣きながらその場を後にした。


 「どう? いいでしょ」
よくない。完全によくない。なんだこれ。絶対後から仕返しされるんじゃないのか?しかも、これじゃ完璧に私のキャラが壊れてしまうではないか・・・・・・。
 「今なら36000円!!」
高くね?0一個減らしてもまだ高いだろ。しかも、一体どこが爆弾なんだ?ただの精神的嫌がらせじゃないか。
 「この精神的爆弾は、相手の弱点を即座に見破って相手の精神をズタズタに切り裂くことだ。僕はその相手の弱点を見破る術を教えてやりゅ」
りゅってなんだよ、りゅって・・・・・・。噛むなよ。イカン、私のキャラ自体が崩壊しつつある・・・・・・。
 「いや、いい。私は帰る。そろそろ私自身のキャラの存続の危機だ」
そう言って席を立ち上がる。反転して暗い店の中を出口に向かって歩いていく。
 「帰るのかぁ・・・・・・。精神的爆弾使うぞぉ?」
背中に悪寒が走る。そんなもの使われたら私は立ち直ることが出来ないかもしれない。なぜなら私は、ひとつだけ誰かに知られたら嫌なことが・・・・・・。いや、でも冷静に考えろ。こんなチビにそんなもの本当に見破れるわけがない。ハッタリだ、所詮・・・・・・。


 「今でもオネショしてるんだぁ・・・・・・君」

私は精神的爆弾の“技術”を、36000円という大金を叩いて購入した。いや、させて頂いた。

『爆弾屋 ジョニー』
客に爆弾の知識を植え込んだ上で、様々な爆弾を高値で売る恐ろしい店。
あなたの住む町の、商店街の裏路地にあるのかもしれない・・・・・・・。

2004/05/30(Sun)15:53:40 公開 / 紅い蝶
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■作者からのメッセージ
初挑戦のギャグです。多分つまらないです。(>_<)

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