『春から夏へ向けて狂気となるでしょう』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:タカちゃん                

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「ガラガラガラガラ、ペッ。・・・・カーーーッ、ペッ。」
また今日も不快な音で不快な目覚めを強いられた。時計を見るとまだ4時28分。また寝るのは怖いから少し布団の温もりの余興を楽しみ、オシッコをしに起きる。
外は雨が降っている。段々と夏の匂いがしてくる。
「ドジャー!」
朝トイレを流す音は耳に障るから嫌いだ。出来ればそのままにして僕が居ない間にそっと流しておいてもらいたい。
昨日の晩飯の残りをを食べながら今日は何して過ごすか考える。できれば疲れることは嫌だな。長時間寝なくちゃいけなくなる。それはとても怖い。とりあえず汗びっしょりになったパジャマを着替えて長老の部屋へ行くことにした。
低い天井の廊下を進み、突き当りの階段を下り、長老の部屋に着いた。
「コンコン!」
なかなか出てこない。最近また耳が遠くなったらしい。テレビの音が大きいせいかもしれないが。
「吉田さーん!」
「はいはい?」
やっと返事が来た。
「貴洋です。」
「貴洋ってどこ?」
「202の」
「202って誰?」
「二階に住んでる」
「二階っていつ?」
そろそろ面倒くさくなりノブを回すと鍵はかかっていなかった。長老は僕の顔を見るなり、
「あーあー、タカちゃんか。上がれ上がれ。」
いつもの様にお茶を入れてもらい、いつも点けっぱなしになっているテレビの部屋に山のように置いてある本の中から適当に一冊選び読み出すと、すぐに長老は話しかけてきた。
「また人殺ししたのかい?」
この人はこう言う事ばかり覚えている。
「だから・・・・・。」
説明するだけ無駄なので、
「うん。」
と答えておいた。長老は満足そうに笑った。
僕の夢は異常に長く、痛みまで感じる。僕は普段は泣かないが夢なら泣ける。僕は普段は感性が鈍いが、夢なら自分の感情が抑えられないほど浮き沈みする。そして僕の夢の中の最大の原則。僕はいつも人殺しなのだ。現実では人を殺したことなど無い。夢でも無い。だが夢の中では確かに人を殺した感覚、匂い、色、記憶がハッキリとあり、いつも怯えているのだ。目が覚め、少しは安心するが、人の目が怖くて見れない。僕をそんな風に見ないでくれ!するとあの感覚が肉迫して、現実まで浸食してくる!恐怖が興奮へと変化してゆく!僕はその高揚に身を任せる!すごい楽だ!景色がすごい速さで動いていく!開放感!快感!現実感!飲まれて行く!


目が覚めると僕は吉田さんを殺していた。
雨が強まっていく。
夏の匂いがする。

(点けっぱなしになっているテレビの音)「世の中には2種類の人間がいると思うんだ。開いてる奴と、閉じてる奴。今日の俺は、・・・・・・・まぁ閉じてんのかな。」





2004/04/03(Sat)21:18:41 公開 / タカちゃん
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