『私達の関係』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:来夢                

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私達はなんとなく一緒にいた。
きっと同じものを見ていても違うことを考えていて、本当は全然違うものを見ていたりもした。
けれど一人でいても考えてしまうのは彼のことで、彼も私の事を想っていてくれるような気がしていた。

何も話さなくても側にいられる人。
それが私達の関係だった。

友達でも恋人でもある。
けれど友達でも恋人でもない。

確かなようで不確かな、曖昧でけれどとても重要な関係。



「久志、帰ろう」
クラスが別々なので、ショートホームが早く終わったほうがクラスまで迎えに行く。
今日は私のクラスの方が早かった。
「あ、帰り職員室よっていいか?」
「うん」
私達は並んで廊下を歩き出した。

無言。

これがいつもなので全然気にはならない。
少し寂しいけれど、無理やり話題を作る気にはならない。
久志は何を考えているのだろう。
私は今日あったことや、これからすることなんかを考えていた。

そしてふと思った。
そういえば久志は歩く速度が遅くなった。
最初は追いつくのも大変なくらい違ったのに、今は並んで歩ける。

不思議。
中学校も、高校に入ってからのクラスも違うのに、どうして私達は一緒にいられるのだろう。
例えば告白されたとか、したとか、友達に知り合いがいたとかそんなこともなかったのに。

考えてみると、私達の関係は不思議なものかもしれない。
友達みたいに簡単には割り切れない感情はある。
けれど恋人のように、好きだと言ったことも言われたこともない。
それでも二人でいても気まずくはなくて、いつだって笑って側にいられる。

いつから私達はこんな関係になったのだろう。

私はつい考えていたことを口に出してしまった。
「久志は覚えてる?最初に会ったときのこと」
「何?昔話?」
久志だって違うことを考えていたはずで、迷惑だったかなと思ったけれど、すぐに返事が返ってきて嬉しかった。
「ん〜、思い出せないんだよね」
久志は少し笑って言った。
「入学式のとき、俺が杏子のリボンを直したんだよ」
「そうだっけ?」
私の記憶はぼんやりとしていて、全然つかめなかった。
「そう。すっごく曲がってて、俺気になっちゃってさ」
「思い出せない」
「その後何回か駅であって、話すようになったんだろ」
駅で会ったのは少し覚えている。
何回かリボンを直された気もする。
「杏子のリボン、最近はやっと直ったよな」
そういって、久志は私の制服のリボンのあたりを見た。
「・・・変わったよなぁ。いろいろ」
「そうだね」

いろいろ悩んだりもした。
久志が女の子に告白された時は、すごくショックで不安になった。
けれど久志が彼女を作らないのは、私と同じ気持ちだからかな、と思ったりいた。
はっきりと気持ちを伝えようと思ったこともあったし、もう一緒にはいられないと思ったことも何度かあった。


「杏子の髪も伸びたし、最近はお化粧まで覚えちゃって…」
「久志だって背伸びたし、歩くの遅くなったよ」
「それは杏子のせいだろ」
「そんなっ…そうだけど…別に頼んでないもん」
「たしかに」

私達は笑いあった。
久志とこんな風に話すのは初めてかもしれない。
久志も今は同じこと思ってる?


「これからも変わっていくんだろうなぁ…」
久志は眩しそうに窓の外に目を向けた。
これから・・・。
「…うん」

これからもずっとこうして側にいられるのかな。
でもいつかは・・・。

そこで職員室に着いた。

「じゃあ、ちょっと待ってて」
「うん」


不確かで曖昧な関係。
少し崩せば、全部壊れてしまうようなものかもしれない。

気持ちを言葉にしてしまえば、確かなものになるのかな。
お互い何も言わないのは、ずるいわけじゃない。

ただ簡単には言葉にしたくない。
いろんな想いがあって、でも結局伝えたいことは一つだけで、それは言葉にすればたった二文字。
そのなかに詰まった想いに、久志は気づいてくれるのかな。



5分もしないうちに、久志は戻ってきた。
「帰ろうか」
「うん。電車間にあうかな。次の電車は何分だっけ?」
「25分だから間に合うだろ」


そして歩き出した。
今度はぽつぽつと、少しだけ言葉を交わしながら。
それもただのくだらない話だけど。

まだ今はこのままでいい。


2004/03/29(Mon)23:59:16 公開 / 来夢
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■作者からのメッセージ
ここまで読んでくださってありがとうございました。
ただのよくあるような恋愛小説ですが・・・汗
もしよかったらかんそうお願いします☆

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