『この国で。』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:桜世界                

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 〜序章〜
ここはダーキッド・ラキノエンス王国。
この王国はこの世界で最も大きな国で、しかも魔法技術が他の国より発展していて魔法大国と呼ばれていました。
この国の王は御年65を越えるおじーさんで、そろそろ息子に王位を譲ろうと考えていました。
そしてその候補にあがったのは、第二夫人の息子アロヴィン、第三夫人の息子キーノット、第四夫人の息子フェイン、そして王が真に愛した召し使いの息子シェクロスだった。立場的にはアロヴィンが最も王に近いといわれたが、王はシェクロスを自分の後継ぎにさせたかった(ちなみに王妃との間には子供は生まれなかった)。
そんなことをアロヴィン、キーノット、フェインが面白く思うはずもなく、まだ10歳のシェクロスを召し使いの子供だからといって毎日のように意地悪をしていました。


 〜第1話〜
「おい、そこの召し使い」
「・・・・それは僕のことでしょうか?アロヴィン様」
召し使いと呼ばれたシェクロスはぱっとふり返って、ふんぞり返っている王子を見た。
「あたりまえであろう、お前以外に誰がいる?」
「あの、僕召し使いじゃないんですけど」
「ほぅ、ではなんだ?お前は召し使い以外のなんだ?」
シェクロスはちょっと考えた。
(召し使い以外かぁ・・・。なんだろうな、僕は王の子供だけど王子じゃないと思うし・・・・・。あ、)
「・・・・・・・・王位継承者候補・・・・です?」
アロヴィンはシェクロスが一生懸命考えて出した答えを鼻で笑っていった。
「王位継承者候補ぉ?王は私だ、私に決定するに決まっておる。もう決まったも同然なのだ」
シェクロスははっきりいって王位なんて興味なかった。
「はぁ、それはおめどとうございいます」
「そこで、だ。この王から直々にお前に任務をやろう」
アロヴィンはそういって今まで手に持っていた書類をシェクロスに向かってばらまいた。
シェクロスはあまり気にせず拾い集めて、書類に目を通した。
「・・・・・・・・・・・・・・・北の山の・・・魔女、退治ですか?」
「そぉだ。お前にこれがこなせるか?」
「と、いいましても。これはアロヴィン様宛になってますが?」
シェクロスは書類の右上に書かれたアロヴィンという所を指差して見せた。
「こ、この私がお前に譲ってやろうといっておるのだぞ!!」
「はぁ、まぁアロヴィン様が恐いとおっしゃられるのなら僕が代わりに行きますけど」
「無礼なっ!こ、恐くなどはない。お前にもっと活躍の場を作ってやろうという気遣いだ」
「はぁ、・・・・ではありがたくこの任務お受けします」


 〜第2話〜
シェクロスはそのまま自室に戻り、すぐに北の山の魔女についての資料探しを始めた。といっても城内一の資料数を誇るシェクロスの部屋にもほとんどといっていいほど魔女の情報はなかった。
仕方がないので『魔女』というものについての資料を集めて、机の上にどんどん積んでいった。今にも崩れそうだったが、子供というものは何か1つに熱中すると周りが見えなくなる生き物なのだ。まぁ要するに崩れそうなのに全く気づいていないということ。
今ちょっとでも風がふけば・・・
「うぉらぁっ!」
どごっ!
「シェクロスっっっ!!!」
と、風ではなかったけど、いい時にいい登場をしたのはシェクロスの母、マデリーンだった。マデリーンは鍵のかかった高さ3〜4mはある扉を、どうやら蹴破ったらしい。後ろに控えている召し使いが、今にも倒れるか逃げ出しそうな顔をしている。
「・・・・・母様、ノックして下さいといっているではありませんか」
シェクロスは見事に崩れてきた本の中からなんとか顔と手を出していった。
「あらっ、じゃぁいわせてもらいますけどねシェクロス、部屋には鍵をかけないでっていったでしょうっ?」
「母様は鍵がかかっているか、かかっていないかの確認もしていないでしょう?」
「・・・・・まっ、それもそーねっ」
マデリーンはにっと笑ってシェクロスの上に乗っかっている本を片付け始めた。
片付けるといっても、まだ出しただけで何も読んでいないので、小山に積んで部屋の隅に置いただけだが。
それが終わると、シェクロスはお茶の準備を始めた。当然マデリーンは何もしない。さっきまでいた召し使いもマデリーンが追い出してしまった。
「それで」
シェクロスはマデリーンの前に紅茶のカップとお菓子を置きながら聞いた。
「何かお話があるのですか?」
「・・・・・・・・・・・・そうっ!シェクロス!!あんた能無し王子に北の山の魔女退治の任務押し付けられたんですってっ?」
「の、能無し王子・・・・?アロヴィン様のことですか?」
「そうにきまってるっしょ、すぐに察しなさいっ」
「はぁ。でも任務は押し付けられたのではなく、譲っていただいたのですが」
「あー馬鹿!能無しがここにも1人!そーゆーのはね、相手が何と言おうと押し付けられたっていうの!!」
「はぁ。でももう引きうけてしまいましたし。もう変えられませんし」
「そうっ。引き受けたからにはカンペキにこなしなさい。私が聞きたいのはいつ出発するのかってことっ」
「・・・えー・・・多分今夜です」
「そ、やっぱり出発前に会えるのは今が最後になるわね。じゃこれを」
マデリーンは自分のドレスをぐいっと捲し上げてレースとレースの間をわさわさと何かを探しまわった。そして見つけたモノをシェクロスに(無理矢理)渡した。
「・・・・・あの・・・・・・・?」
ソレは不思議な色をした石に鎖を通したネックレスだった。なんというか蒼と緑と黄色を茶色のマーブル?いやでも光にあたるといろんな色に変化する変な石だ。
「それはあなたの父様が戦の時肌身離さず持っていた、いわばお守りです。この石はきっと息子であるあなたも守ってくれるはず。持っていきなさい。そして絶対生きて戻ってきなさい。いいですね?」
「は、はぁ・・・・」
びっくりした。この母様がまともな台詞をいうなんて・・・。信じられない。
「では私はこれで。あ、そうそういい忘れましたが」
マデリーンは扉のすぐ近くまでいって、ぱっとふりかえった。
「ソレ、王の間から勝手に捕ってきたモノだから見つかったら色々と厄介なことになると思うのであまり人にみせないよーにねっ!」
「・・・え、ちょ、母様・・・・・」
もう逃げたあとだった。
「はぁ・・・」
シェクロスはその変な石をじっと眺めた。
色以外は普通の石だ。コレが守ってくれるなんて信じられないけれど、まぁネックレスなんだし首にかけとくかぁ・・・・・。

という適当な理由だったが、この石によってシェクロスの旅は大きく変化していくことになるのでした。


〜第3話〜
「はぁ・・・・・」
シェクロスは大きな溜息を出した。
それもそのはず、この首にかかっているネックレス。誰にも見せずに旅をするなんてことは簡単だけど、その後はどうしたらいい?
これは国宝級のモノだ。絶対に返さなければならない。でもどうやって?
「・・・・・母様に返せばいいか・・・」
なんといっても王の間に侵入してものを盗んできたのだ、また侵入して返すことぐらいできるだろう。
「・・・・あの、王子?」
「・・・・・・・・・・・・ぇえ?あ!なんでしょうか?」
シェクロスはぱっと我に帰った。
そうだ、僕は外で馬に乗っていて、周りには供の者が5人いて、今まさに出発しようとしていたところなのだ!
「そろそろ出発した方が・・・・」
「あ、はい、そーですね。・・・・あれ?皆さん馬は?」
「我らは歩いて行きますので」
「でも北の山はここから遠いですよ。そんな大荷物を背負って歩きでは疲れるでしょう?」
「それは・・・そうなのですが乗る馬はない、とアロヴィン王子が・・・」
供の者は皆そろって暗い顔で無理に笑った。
「・・・・乗る馬がないわけないでしょう。ここは王宮なのですから」
シェクロスはぴょんっと馬から下りていきなり走り出した。
「お、王子?どこへ・・・・」
「ちょっと馬を見てきますーー」
「見てくる」といっていたはずなのに、戻ってきたシェクロスの後ろには馬を5頭連れた馬頭がいた。
「やっぱりいましたよ。この馬頭さんが貸して下さるそうです。さ、皆さん乗ってください。早く行かないと夜が明けてしまいます」
供の者はしばらく唖然としていたが、すぐに暖かい気持ちで一杯になり嬉しそうに馬に乗った。
そして皆心の中でシェクロスに感謝をし、この旅で絶対にシェクロスを守りぬくということを固く誓ったのでした。
「じゃぁ、ちょっと遅くなりましたけど出発しましょうか」
「「は!」」


〜第4話〜
王宮を発ってから10日が過ぎた時シェクロスの旅の一行はちょうど王宮と北の山との間のモートンという町に着いたところでした。
「・・・・なにか降ってきましたよ?」
シェクロスは空から降ってきた白い綿のような物をじっと見ながら不思議そうに供の者に聞いた。
供の者達はこれを聞いたとたん唖然としてしまったが、よく考えれば知らなくても無理もないということに気づいた。
なぜならダーキッド・ラキノエンス王国は本来は南の暖かい国なのだ。冬になれば国境の辺りに雪が降るという事もあるが、ダーキッド・ラキノエンス王国の中心で育ったシェクロスは『雪』というものを知識としてでしか知らなかった。
「シェクロス様、これは雪というものです」
「・・・・雪?ですが雪が降る時期はもう終わったはずです」
そう、確かに今は少し寒いが雪が降るはずがないのだ。なんといっても今は春なのだから。
「そうです。ですがこの辺りは夏の終わりくらいから雪が降りだしたそうなのです」
「・・・・・もしかして魔女の影響ですか?」
「正解です、シェクロス様」
「それで作物が育たず、困った民が魔女退治を依頼してきたという事でしょうか」
「満点です、シェクロス様」
「でも魔女だって雪を降らさなければならない訳があるのかもしれませんよ。いきなり行っていきなり退治するなんてことはしてはいけないことです」
「お言葉ですがシェクロス様、どんな理由があろうと大勢の民を苦しませるのはいけないことです」
「・・・・・・・そうですけど・・・・」
「シェクロス様、我ら5人、断ろうとすれば断れたのになぜこの危険な任務を引き受けたのだと思いますか?」
「・・・・・・わかりません」
「我々の故郷は北の山の麓のココナという町なのです。ココナは北の山の魔女が現れてから雪に埋もれ、しかも王都から遠いので援助物資が十分に届かない。我らの家族や町の民は魔女が現れてからはそれは酷い生活を強いられてきたのです。ですから今回の旅で必ず魔女を退治し、ココナを元の静かな町に戻したいのです」
「・・・・・・・・・・・・・」
シェクロスはこの話しを聞いて言葉を返すことが出来なかったが、それでもいきなり退治するということだけはいけないという考えを曲げるつもりはなかった。
でもこのまま行くと、きっとこの5人は魔女をいきなり襲撃するだろう。
それだけは避けなければいけない。
でもだからといってシェクロスの命令を聞くわけもなく、おそらく勝手に動くだろう。
・・・・・・・・・・・だったら僕だって勝手にさせてもらいます。

2004/04/07(Wed)00:13:12 公開 / 桜世界
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