『兄弟』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:雪の華芽                

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痛いな…
朝起きたらお腹が痛かった…これは心の病気。
母さんと父さんが事故でなくなってからもう1ヶ月。
いつまでも辛い気持ちをズルズル引きずってるんだ…
「ふぁぁぁぁ〜!おはよう翔。ん?どした?」
「龍兄ちゃん…」
「あー、オハヨ、翔、龍。」
「ん?みんなお目覚めかー?」
どんどんみんな目を覚まし下の階に下りてくる。
俺には兄が4人いる。
俺は5人兄弟の末っ子だ。
「なんかさー、翔元気ないんだよー」
「どれどれ?」
亮兄がおでこに手をあてる。
「熱はないな…」
「さっきから腹に手当ててるけど…腹痛いのか?」
「…うん…」
「やっぱりな。大丈夫か?トイレ?今なら誰も行ってないぞ。」
「…ちがう…」
「精神的なものかなぁ。翔、少し薬飲んで寝てごらん。」
「うん…」
さすが一番年上の兄だ。
誠兄はあの事故の後でも悲しいそぶりなど見せず、父母の代わりをしてくれている。

「ええっと…15歳以上は3錠ね。」
誠兄はコップに入れたお湯と正露丸を持ってきた。
「精神的な腹痛に効くかどうかわからないけど…。」
「苦い…」
「我慢しなさい。」
臭い!!正露丸臭い!!!
ちょっと時間が経つと布団に入ってお腹が温まったこともあって
少し痛みが引いた。
「翔?起きてるか?」
「うん。」
「入るぞ。」
龍兄、亮兄、そして先程まで寝ていた1つ上の兄、奏が部屋に入ってきた。
「大丈夫か?まだお腹痛いか?」
みんな心配そうにこっちを見ている。
「誠兄は?」
「誠兄…疲れて寝たよ。あいつも精神不安定なんだと思う。」
「なぁ翔。誠兄が一番苦労していること、分かってるよな?」
「うん…」
兄3人は1つの話を代わる代わる話した。
「誠兄な、さっきお前の部屋から出たときうっすら涙浮かべてたんだぜ?
 何でだと思う?」
「え…?」
俺は誠兄の泣いた顔を見たことがない。
「翔が腹痛いのはあの日のことが関係あるんだろ…?」
「うん…母さんたちのこと思い出すたびに痛くなる」
「誠兄はな、それを分かってるんだ。」
「え…」
「自分が一番上だからしっかりしないといけないだろ?
 なのにお前はまだ立ち直れない…兄としてして何をしてやればいいんだろうって…。」
「そう…なんだ…」
「翔、誠兄の気持ち、分かってやってな。
 お腹痛いのはしょうがないけど、せめて元気なときは誠兄の前では
 笑っていてやってくれ。」
「うん…わかった。」
コンコン…
「誠兄?」
「あれ?みんなそろってどうしたんだ?」
「い、いや、みんな翔が心配でさ。」
「やっぱり?俺も翔が心配でどうも寝られなくて…」
「ごめん…ありがと誠兄。」
「???そうそう、翔」
そういって誠兄は布団の中に手を入れた。
「こうやって自分以外の人に手を当ててもらうと痛いのが少し和らぐって
 本に書いてあった。どう」
誠兄の手…暖かい。まるで母さんみたいだ…
「誠兄…もう大丈夫」
「本当に?無理するなよ?」
「誠兄こそね」

こうして羽角家の少年たちは父母がいなくても立派に大きく育ったのでした。

2004/03/10(Wed)00:47:12 公開 / 雪の華芽
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