『歩く道をてらすから』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:風路そう                

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「義太!義太夫!」
古びた寺院に少年が二人、
一人は義太夫とよばれ修行僧のなりをしているが頭を丸めてはいなかった。
もう一人は慌てて走ってきたのか、息が荒い。

「なんだよ、信太。やかましなぁ。」
「やかましいなぁ…じゃないだろ!なんで…なんで、妖怪退治やめるって…」
義太夫は、ため息をついた。

「そんなことか…」
「そんなことって…だってお前は、」
「お前しか妖怪殺しはできない…だろ?」
「え…」
苦笑いを浮かべながら義太夫は言った。
「親父にも言われたよ。
『お前が生きる意味はそれなんだ。世を守ることにあるんだ。お前しか出来ないことなんだ。』って。延々な…」

くっと笑っている義太夫に、信太は怒鳴りつけた。
「じゃあなんでだよ!妖怪を退治していれば、お前は人からの信頼も名誉ももらえるんだぞ?幸せじゃないのか?!」
突然、義太夫の顔が無表情になった。そして、茜がかった空を見上げた。

「俺はさ…もう見たくないんだよ…」
ぼそっと呟くように言った言葉に、反射的に言葉を返した。
「なにを?」

「最後の眼…をさ。」
「最後の眼?なんだ、それ…」

「…つまり、俺はもう殺したくないんだ。」
「で、でも…」
「妖怪を殺さなきゃ、こっちが殺されるってか?」
「そうだよ…だから、義太。戻ろう。な?」

「いやだ。」
「は?」
「人間が殺そうとするから妖怪だって襲ってくるんだ。生きているものが他の生き物を怖がるのは当たり前だろ?交友を持とうともせず、一方的に殺すなんてこと、したくない。」
「義…」
「それでも!それでも止めようとするなら、俺はお前を友達とは思わない。」

義太夫の目に迷いはなかった。

そして、信太に背を向けて、まっすぐ歩いていった。

義太夫とは長い付き合いだ。こいつは、ひたすらまっすぐな奴だから、止めようとなんて考えた自分が馬鹿だったのだ、そう信太は思った。
すると、自然と口が綻んだ。

「おい!」

義太夫が無表情で振り向いた。

「どこに、なにしにいくんだ?このヒマ人!」
冗談混じりに問いかけると、義太夫は、はっとして、そして、くっと笑った。
「そうだな…とりあえず、俺の能力じゃなくて、俺自信に惚れてくれる奴でも探すかな!」

そう言ってゆっくりと歩いて行った。

 ひとこと、俺があいつに言えなかったことがあった。
「俺は、ずっと、お前がうらやましかった。」
って。
でも、これはあいつが帰ってきた時まで取っておこう。
 いつか、いつか、な。

2004/02/29(Sun)01:19:16 公開 / 風路そう
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■作者からのメッセージ
初めての投稿なので区切りをつけました。
伝えたいことがありすぎて、これだけでは書ききれませんでしたが…
生きること、自身の道、男の友情…をテーマにしてみたのですが…
まだまだの文章ですが、よろしくおねがいします。

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