『拘束されて☆』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:小都翔人                

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(まったくあの女、頭がどうかしてるぜ!)

俺は途方にくれて、体を横たえた。
暗い、四畳半ほどの部屋の中。窓も無く、俺には中からドアを開けることができない。
そう、今の俺はちょっとした監禁状態。この部屋に閉じ込められちまったわけだ。

(まぁ、あいつを怒らせちまった俺も悪いけど。こんな目にあわされるとはな・・・。)

沙織と出合ったのは、かれこれ半年ほど前か。
当時の俺は、来る日も来る日も夜の街をさまよい、遊び歩いていた。
派手な女だと思った。深夜にも関わらず、沙織は俺に声をかけてきた。
都会の一人暮らしで、寂しかったのであろう。その夜から俺は、沙織のマンションに転がり込んだ。
沙織は、なかなか豪勢な暮らしをしていた。
その日その日の食事にも困っていた当時の俺は、しばらく沙織の部屋でやっかいになることに決めた。

沙織は夕方から仕事に出かけ、明け方に帰ってくる。
俺はその間、好き勝手な事をして過ごす。俺にとっての仕事は、帰宅した沙織の相手をしてやるくらいだった。

(そういや最近うざったがって、沙織のこと、まともに相手してやらなかったもんな。)

沙織は少し前から、俺に当たるようになっていた。仕事でストレスがたまっていたのだろう。
俺もそんな沙織に対して、冷たい態度を取るようになってきていた。
以前は沙織の帰宅時間には起きて待っていたのだが、このところ寝てしまっていることが多かった。
今朝も沙織は帰宅すると、俺を起こそうと体を揺り動かした。
しかし俺は起きなかった。実際、目は覚めていたのだが、相手をするのが面倒だったのだ。
ヒステリック女の相手など疲れるだけだ。俺はそのまま、ふたたび眠りについた・・・。

何時間ほど眠ったのだろう。気が付いたらこの部屋にいた。
眠っているあいだに、沙織に運び込まれたのであろう。
沙織のマンションに来て以来、この部屋に入ったことは一度もなかった。
俺はすぐに起き上がると、部屋を出ようとした。
ドアはあかなかった。そして、閉じ込められたことに気が付いた・・・。
この部屋にはなにも無い。食料も水も見当たらないようだ。
やけになって、また眠ろうと思った。しかし、寒さのせいで眠れなかった。
大声を出してみた。何の反響もなかった。どうやら沙織も不在らしい。
俺は横になって、じっと待つしかなかった・・・。

それから何時間たったのだろう。
俺は空腹と寒気に、耐えられなくなってきていた。

(たのむよ。誰かここから出してくれ!)

しかし、俺を解放してくれるのは沙織しかいない。
俺は沙織の帰りを、そして彼女がドアを開けてくれるのを待つしかない。
沙織はあと何時間で帰ってくるのであろう・・・。

しばらく経って、ウトウトしかけた頃、俺は物音を聞いた。
神経を集中する・・・。
玄関のドアを開けて、誰かが入ってくる。沙織の足音だ!!
俺はよろよろと起き上がった。

(どうか沙織が、素直にここを開けてくれますように!)

俺はもう、祈るような気持ちだった。ここから出られさえすれば・・・。
沙織の足音が、この部屋の前で止まる。神様!!
少しためらったあと、静かにドアが開かれた。沙織の顔が覗く・・・。
沙織は、少し怒った表情を見せたあと、にっこり微笑んでこう言った。

「もういい加減に懲りたでしょ?早く出てきてエサを食べなさい!トラちゃん!!」

俺は勢い良く飛び出した。

「ニャァァァーーーオ!!」






2004/02/25(Wed)13:47:26 公開 / 小都翔人
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