『そして赤い花は全て散った ―序章と第一章―』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:risun                

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=序章=

「くる、こない、くる、こない、くる、こない・・・・・・」

手にしていた赤い花の花びらは全て落ちてしまった。
小さな池の水面で泳ぐ赤い花びらは私に絶望を告げたのだ。
赤い花びらは全て散った。
全ては終わったのだ。



そして赤い花は全て散った――――





=第一章= せめて虹色くらいは



「もう一輪、試してみない?」
ふいに後ろから声がして、振り返ると目の前に一輪の花があった。
正確には花を持った男の子がいた。
いつの間に人がいたのだろうか。
まったく気づかないほどに私は花占いに熱中していたのかな・・・・・・。
一輪の花を差し出しているのは同い年くらいかもしれない、優しい微笑を浮かべた男の子だった。
私が心ここに在らず、といったように沈黙していたからだろうか、彼は続けてこういった。
「あきらめることないよ?」
疑問系でありながらも断定の意味合いを込めた、それでいて優しい声に私ははっとした。
あきらめる以外に道はない、そう言いたかったけど、素直にそういえなかった。
まっすぐな彼の瞳に恐怖したからだ。
吸い込まれてしまいそうなくらいに澄んだ、まっすぐな瞳に。

「・・・・・赤い花は好きじゃないから。」
遠まわしに彼の言葉を、彼の瞳を、花を受け取ることを否定した。
嘘はついていない。
私は昔から赤い花が、赤という色が嫌いであった。
そして彼の差し出した花は紛れもなく赤色で・・・血を連想させるほどの赤色で・・・・・私の嫌悪する色だった。
赤い花を否定することは、あきらめない道を選ぶことを否定することに同じなのだ。
私は赤が好きではない。
だからあきらめない道を選ぶこともない。
それが伝わっているのかいないのか。
彼は困った顔をして、しどろもどろに詫びた。
「あ・・・ごめん・・・・ね?でも、これしかないんだ・・・・。」
そして、こう続けた。
「でも・・・・・真実を告げるのが青い花だとは決まってはないと思うよ。もちろんそれが赤い花だとは言わないけど。だけど、一つに絞るだなんて悲観的だと思うよ。
せっかくたくさんの色があって、そのひとつひとつが可能性を秘めているんだから。ただ一つだなんて、本当に一部の可能性に過ぎないんだよ。・・・・・って、うまく説明できないけど・・・・・。」
彼は言いたいことを説明できないもどかしさを感じているようだった。
「たくさんの可能性があるってことは良くわかったわ。」
だからあきらめるな、っていいたいんでしょう?
あなたは自分の言葉に納得していないようだけど、今の私はどんなに言葉を尽くされても、可能性を信じはしないだろうと思う。
彼は私の返事を聞いて、困った風に微笑んでいった。
「でも・・・・・少し違うんだ。僕の言いたい事は。」
「そうなの・・・・・・?どんな風に?」
私は少し驚いた。
可能性はたくさんあるからあきらめるな、っていいたいんじゃないのか。
彼の言葉はそんなくだらない励ましでしかないのではないのか。
「・・・・・どんな風に?」
私はつい聞き返してしまった。
今度は自分の言葉に驚いてしまった。
その響きが、我ながら優しく響いたからだ。
「えぇと・・・・・それがわからないから困ってるんだけど。」
少年は少し視線を泳がして苦笑した。
その態度がやけに嬉しかった。
こんな風に自然に話しをしたのは何年ぶりだろう。
もう動かないと思っていた口元が、微笑を湛えた。
自然に笑みが零れた。
出会ったばかりであるのに、彼がとても愛しく思えた。
そんなふうに思う自分がなんだか可笑しくなった。
今更そんな感情が浮かんでくるなんて。
なんて滑稽で愚かなことだろう。
もう全ては終わってしまっているのだ。
はじまらないし、もう二度と終わりもしないのだ。
「でも、もういいよ。例えあなたがどんなに素晴らしい説明をしても、何も変わらないから・・・・・。」
私の小さな悲嘆の呟きに、私の最後の否定の言葉に、
彼は微笑んで言ってみせた。

「せめて虹色くらいは、試してみない?」



 



2004/02/07(Sat)22:58:21 公開 / risun
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■作者からのメッセージ
初めて投稿させて頂きました。
初めて作品なので小説として成り立ってないんではないか、という心配が・・・・。
もし読んでくださった方がいましたら、指摘など宜しくお願いします!^^;

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