『12.24』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:道化師                

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「ねぇねぇ、ママ。サンタさん来てくれるかなぁ? すっごいゴロゴロいってるよぉ」
「大丈夫よ」
 心配げにそう聞くカナにママは微笑んで言った。外は土砂降りで、雷の音はガタガタと窓を揺らした。突然の光にカナはお気に入りのクマぬいぐるみを抱きしめた。カナは彼に「ショウ」と名付けた。初めてママがその名を聞いたとき、ママは少し驚いた顔をしていた。
「さっ、カナもリカも早く寝なさい。じゃないとサンタさん来ないよ。」
「はぁ〜い」
 カナとその姉のリカは、パパにおやすみと言ってそれぞれの部屋に入った。外はまたピカッと光ったので、カナはちょっと淋しかった。
「ショウ、いっしょにねようね」
 ショウを隣においてカナはベッドに入った。枕元には赤い靴下がおいてある。かたっぽはリカの部屋にある。カナは靴下の中に手紙を入れた。
 “ショウのおともだちをください”
 そう書いておいた。
(どんなおともだちくれるのかな)
 カナはワクワクしていた。なかなか眠れなかった。雷の音はますます大きくなっていく。その時カナは窓を見た。ピカッと目の前が眩しくて、何も見えなかった。その後すぐに音が鳴った。その時、黒い影が見えた。
 「起きてたのか」
 赤いコートを着た男の人が立っていた。何処から来たのかわからない。しかしこんな土砂降りにもかかわらず、彼には水滴一つ付いていない。カナはショウをぎゅうっと抱きしめた。ふと、カナの目に赤い靴下が映った。
「――もしかして、サンタさん?」
 カナは少し身体をおこして言った。
「すごいね、ショウ。サンタさんぬれてないんだぁ」
 彼は少し目を丸くした。
「そいつ、ショウって言うの?」
「うん。おともだち」
 彼は目を細めてショウを撫でた。彼はじっとカナの目を見つめた。カナはその目を見て誰かに似ていると思った。
「……いい子にしてたかい?」
「うん。あっ、でも今日ママのお手伝いしなかった。もしかしてショウのおともだちもらえない?」
 カナは不安げな顔をした。彼はそんなカナを微笑ましそうに見つめていた。そして今度は、ぽんぽんっとカナの頭を撫でた。
「大丈夫だよ」
 その言葉はとてもあったかかった。ママが言うそれと響きが似ていたのでカナは少し嬉しくなった。そしてショウの友達が待ち遠しかった。
「でもね、サンタさんはね。寝てる時にしかプレゼントあげられないんだ。お約束なんだ」
 カナはもう少し彼と話していたかった。だって彼は最も欲しいプレゼントだったから。だけど彼はちょっと困った顔をしていたので、カナはまたベッドにうずくまった。そして少し目を覗かせた。
「ねぇ、サンタさん。カナが寝るまでここにいて」
 カナはいい子じゃないと思った。でも彼に此処にいて欲しかったのだ。繋ぎとめておく最後の手段だったのだ。彼はじっとカナを見ていたのでカナは少し恥ずかしかった。それでも喜びにはかえられなかった。だんだんと雷の音が遠のいていく。カナの瞳はうとうととしていた。彼はもう一度カナの頭を撫でた。
「おやすみ……サンタさん」
「おやすみ」
彼は愛しそうにカナに言った。
「……パパ」
 そう言ってカナは目を閉じた。カナは今までで一番幸せな日だと思った。彼は少し泣いていたような気がした。
「メリークリスマス……」
 彼はそう言ってぽろぽろと雫をこぼした。そして、自分の運命を恨んだ。何度も何度も、彼女の幸せを祈った。
 カナはその夜、夢を見た。カナとママとリカと、それからクマのショウと、ママが一番愛した、今は写真の中のショウと一緒にケーキを食べる夢だった。

 彼は最後にカナを抱きしめた。
 彼の名は死神といった。

2004/01/20(Tue)18:06:28 公開 / 道化師
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