『今日の良き日は 1』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:茄音                

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朝からつまらない、とにかく暇。
友達に電話しても、塾やらバイトやらなんだで遊んでくれない。
だから、じっと5階の窓から空を見てた。
ここからは初めて見た空だった。
なんとなく、5階だから手が届きそう。

「あんず?お母さん、仕事に行くからね」
「うん。何時頃帰ってくる?」
「えー多分・・・11時かな?夜ご飯、レトルトカレーあるからね」
「そ。じゃあね」
ご飯も一緒に食べてくれない。
でもしょうがないよね。
お父さんとお母さん別れちゃって、お父さん居ないんだし。
お母さんだって、頑張って働いてるんだよね。
「よしっ、久しぶりにどっか行こっと」
あたしの部屋には全身鏡しかない。
だから、全身鏡に顔を近づけてお化粧をした。
ピンクの口紅を塗った。それだけ。

階段を降っていくと、すぐ傍に広い公園がある。
広い公園は、ブランコしかない。あとは砂のグラウンド。
公園の奥にはヤブ林がある。
「久しぶりだな・・・この公園」
ブランコに乗ってみた。ボーっとしてた。
今の時間は陽射しが強い。11月も終わりなのに、暖冬みたい。
ときどき通る車の音が心地良く聞こえた。
「ミャァー」
「きゃ!!・・・猫か」
気がついたらあたしの膝の上に乗ってた。
猫の首には赤い首輪がついてた。
「君、どこンちの猫?」
猫を抱き上げた。首輪にマジックらしき太い字でオオイシと書いてあった。
「・・・オオイシ?ふーん、あたしも前はオオイシだったよ」
お父さんの苗字だった。
「ミャァー」
猫はあたしの膝から飛び降りて走っていった。
「どこいくの?」
猫は止まった、あたしを見てる。呼んでいるのかもしれない。
「待って!」
あたしは猫を追っていった。林の中へ走っていった。

「はぁはぁ・・・どこまでいくの?あっ!」
小さなトンネルが出てきた。
「待ってよ!!」
猫はトンネルに入っていった。あたしもしょうがなくついて行った。
先が見えない。ずっと続いているような感じ。と思ったら
「ゴンっ!!」
壁にあたった。
「イテテ・・・あれ?」
上から光が漏れてる。両端にはしごがついてた。
猫はあたしを待ってる。
「えっ昇るのー!!ちょっと!!」
あたしは肩にかけてたショルダーバックを上に投げて
腕をまくり、昇った。

「よいしょ!!はぁ・・・ついた」
やっと出た。涼しい風がふく丘の上だった。
「あれ、猫がいない」
気づいたら、猫は消えていた。さっきまで居たのに。
「わぁ!!すごーい、こんなところに町あったんだ」
喉かな町だった。電信柱はまだ木で出来ていて
古くさい線路に、電車が走っていた。しかも田んぼだらけ。
あたしは丘を走って降りた。バス停があった。
『絵山寺』だそうだ。バスの時刻表にはひとつしか書いてなかった。
「えぇ、4時50分?今が11時だから、あと6時間ぐらいか」
まあ見てまわればそれぐらい経つだろう。
                                   つづく

2004/01/06(Tue)15:38:24 公開 / 茄音
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■作者からのメッセージ
少女が生まれたばかりの頃、両親は離婚した。
だから少女は父の顔をはっきりとは覚えていない。
そんな少女が主人公の恋愛小説です。
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