『欠片となって降る記憶』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:LOH                

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ココハドコ? ワタシハダレ?
幼い頃に、よくふざけて言ったことがある気がする。
今では、その子供の残酷さを感じる。

「……此処、どこ? ……私は、なに?」
まさにその状態。
目を開いた瞬間目に入ったものは、いっぱいの顔。
そして、鬱陶しいほどのすすり泣き声。
「シラン様……!!」
たくさんの真っ白なレースに、ところどころ金色の糸が目立つ。
雲の上にようなふかふかのベッドに横たわる私。
まるで……私は世界を治める将来が決まっているお姫様?
「シラン……シラン。大丈夫?」
「…………ダレ?」
「……シラン…?」
私のこの言葉が引っかかったのか、三十代後半の女性は全てを察し瞳に涙が浮かべる。
即座にその女性に駆け寄ったのは、まさにメイドを連想させる服を着た別の女。
はっきりしない自分の頭を起こそうと、私はゆっくりと重い上半身を持ち上げる。
ズキッと一瞬頭痛が来た。
反射的に頭を押さえると、自分の柔らかい髪に触れた。
初めて触るような感触で、自分が自分だと思えない。
「シラン…俺がわかるか?」
「……ダレ?」
ついさっき発した言葉をまた口にする。
若い男は予想通りの答えだったのか、一瞬苦笑した顔を見せたが、それはすぐに「ツライ」の表情へと変化し、俯いた。
「此処、どこなの…? 私は……」
首を回しながら呟く私の言葉を遮るように、今まで俯いていた男が私を包み込んだ。
目覚めたばかりで、すばやく回転しない頭がのろのろと今の状況を認識する。
な……なにをやっているの…。
「あぁ…なんでシランが…なぜシランがこんな…」
あんた…ダレ。
「ダレ…? 誰!? 誰なのあなた! 私は!? ここ何処!? 私はいったいなんなの!?」
「申し訳ありません」
そう言って、白い服を羽織った初老の男が私の腕に細い針を刺した。
「ちょ…! なにするのよ! やめて―――…!」
急速に意識が遠のく。
私は再び、一筋の光さえも見えない闇の中へと落ちていった―――。

 瞼を開くと、ベッドの屋根の天井が見えた。
前と違ってすすり泣きも聞こえず、物音一つしない。
聞こえるのは、自分が動くときになる木の軋み音だけである。
窓から差し込むオレンジ色の光を求め、私は足を冷たく光る大理石の床につけた。
突然の冷たさに一瞬足を引いたが、再び恐る恐る触れた。
そのままヒタヒタと、たった一つだけの小さな窓に近づいていく。
その小窓から外を覗いたとき、私は思わず声をあげてしまった。
「……わっ…」
そこから見えた風景…それは間もなく夜の町へと変化するたくさんの家々や、ところどころに見えるたくさんの緑、そしてその向こうにはもう沈みかけている大きな夕日。
あまりの素晴らしさに私は歓喜の声をあげ、夕日が完全に沈むまでずっと見入っていた。

星が数個、空に浮かび上がって私はゆっくり我を取り戻す。
綺麗な景色の余韻に浸っているとき、見るからに重そうなドアが音を立てて開いた。
首を回し、音が聞こえた方へと視線を向けると、そこには先ほど見た若い男。
急に現実に引き戻された気分になった。
考えたくなかった疑問が、溢れるくらいに頭のなかに生じた。
せっかく今までの景色に気をとられて、自分の状況を忘れられていたのに……。
「シラン、目が覚めたのか。気分はどうだ」
馴れ馴れしく話し掛けるこの男に、私は少し腹を立てた。
どうやら私は記憶をなくしているようだ。
だから以前、この男が私のなんだったのかはわからないのは、男だってわかっているはずだ。
それならばすこしは礼儀をわきまえてほしい…今の私にとっては他人なのだから。
「前のことを考えると、頭がガンガンする……」
「俺のことも、本当に覚えてないんだな?」
ひとつ、首を縦に振る。
「………まぁ、しょうがないんだろうな。ゆっくり思い出してくれればいいから」
その男が見せた優しい笑顔に、懐かしさを感じた。
「貴方は…私のなんなのですか?」

2003/11/03(Mon)22:09:27 公開 / LOH
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趣味で書いている駄文ですが、読んでくださると嬉しいです。
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