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『Baby Sniper』 ... ジャンル：未分類未分類 作者：涼子: １２３４５６７８９101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142

さくさく、さくさく

海から乾いた風が吹く

月明かりが雪に反射して、夜なのにぼんやりとあかるい

さくさく、さくさく

日付が変わってどれくらい経ったのだろう

１５歳の誕生日は蝋燭の代わりに硝煙の香り。なんて素晴らしい

立ち止まって息を吐いた

吐いた息は一瞬だけ夜空に白く残って、消えた

・・・いいんだけどね。

　　　　　Baby Sniper

黒いジャケット、ワンピース
レースや何やらで割と洒落たデザインの服には不釣合いなウエスト・ポーチ

『・・・派手にやったな』
ポーチから伸びたコードを通ってイヤホン越しにくぐもった声が聞こえた
「上等でしょ？」
唇は動かさずに呟くように答える

カモフラージュはすでに癖になっていた
命がけで演技してるんだもん、当たり前か

『少しやりすぎたな。貴重なサンプルまで無駄にしやがって』
「襲われたのよ。ご主人様の仇！みたいな？」
『あのな、俺らがどんだけ苦労して捕獲したか・・・』
苦労したのはあんたじゃなくてその下のヘイタイだ。
付け加えるならその捕獲でお父様は殉職なされた。あぁ、哀れ

「なんだっけ、オオカミ？と、人？」
『そうだ。人間が狼の身体能力を手に入れる、素晴らしい事だと思わないのか？』
オモイマセン。
それにあたしに言わせりゃ「狼の身体能力を得た人間」じゃなくって「人っぽく見える体力のない野獣」だ。
この国が誇るDNA操作もたいした事ないらしい

「貴重な成功例と天才的なスパイを天秤にかけた結果の行動、よ」
『自分で言うなよ』
「いいじゃない、任務は達成したんだから」
『・・・あいつは裏切り者だった、気にするな』

裏切り者、ね

「フォローするなんてどういう風の吹き回し？」
人を殺すたびにいちいち同情されてちゃキリがない
繊細な年頃のオンナノコが傷ついたかも知れないとでも思ってんの？

馬鹿にすんな

あったかい部屋でシチューつついてるあんたの娘といっしょにされちゃたまんない

「・・・いいんだけどね」

一人きりで死線をくぐりぬけて、裏切りあうオトナ達を間近で見てた結果
いつのまにか口癖になってしまった台詞
いわゆる、諦めってやつだ

『どうかしたのか？』
「うんにゃ、報告書ってあたしが書くの？」
『適当にでっちあげろ。逃亡者処置の際半獣殺害』
「りょーかい、へいちょー」

『通信切るぞ、暇じゃない』
「こんな無駄話して今更」

反論を聞く前にイヤホンを払い落とした
上司じゃなかったらこんなやつと延々と会話する趣味なんざない

腰のポーチを開けてジャックをMDに繋ぎかえる
聞こえてくるのは澄んだ声の女性が歌う、不思議なメロディー。知らない言葉

この国で禁止されている唄

おとーさんとおかーさんの生まれた、海の向こうの国の唄

嗚呼、いつになったら見知らぬ故郷に帰れるのでしょう

街の光が近づいてきた
海の風で髪がパサパサ。何処となく塩っぽい

早く帰って、ケーキでも食べて、シャワー浴びて、それから寝よう

歩きながら思い出す

今日処置したのは裏切り者
そういえば女だった
外国人だったみたいね
故郷の唄を口ずさんで、上層部に睨まれてたらしいね

裏切り者は、殺される
当たり前のコトじゃない

旦那を殺したこの国がそんなに憎かったの？

馬鹿な、母親

立ち止まって息を吐いた
吐いた息は一瞬だけ夜空に白く残って、消えた

「・・・いいんだけどね」

一人きりで死線をくぐりぬけて、裏切りあうオトナ達を間近で見てた結果
いつのまにか口癖になってしまった台詞
いわゆる、諦めってやつだ; 2003/10/18(Sat)01:16:59 公開 / 涼子
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台詞ばっかで淡々と。
長編の一部だから分かりにくくて正直微妙です。; 作品の感想については、登竜門：通常版（横書き）をご利用ください。