『Friends 完全版』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:流浪人                

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第一話 「出会い」

再会を誓ったあの日から四年、俺達は再会した。
話は二年前にさかのぼる―――

俺の名は、大久保達也。北海道の宮園中の中学二年だ。
宮園中はとても頭の良い学校。いわゆるお坊ちゃま学校。
俺はお坊ちゃまとはかけ離れているけれど、お坊ちゃまの気持ちはわかる。
なぜなら俺の親友の中村良太は、超金持ちでお坊ちゃまの代名詞みたいなヤツだから。
俺は良太に勉強を教えてもらってなんとかこの中学に来れたってカンジ。
普通の中学だったら受験も無く、何の苦労もせずに入学できたんだけどね。
そうまでしてこの中学に来た理由は簡単な事。
良太と同じ中学に行きたかったから。それだけ。
ただの思い付きみたいに感じるかもしれないけど、考えた末の結論だった。
必死に考えて、家族とも相談して、そして出した結論。
俺が悩んでた時、オヤジが突然部屋に入ってきてこう言ったんだ。
「一回だけの人生だ。最後まで残るのは友達だぞ。」
オフクロは三年前、事故で死んでしまった。
だけどオヤジの親友はまだ生きている。しょっちゅう家に遊びに来る。
そんな環境で育ってきた俺にとって、『友達』って存在は大きかった。
誰よりも信頼できて、何でも相談できて、死ぬ時まで一緒に居てくれる存在。
そんな存在は俺にとって家族でもなく、親戚でもなく、友達だった。

小学校四年の時、良太と友達になった。
良太は見た感じスポーツ少年で、実際スポーツ少年だった。
俺達はどんどん仲良くなって、俺の家にもよく来るようになった。
俺は、やっぱ『友達』っていいなって思った。
だけど、本当に相手の事を理解しなきゃ本当の友達じゃないと思った。
俺は良太の家に行ったことがなかった。
良太と本当の友達になりたいのなら、行くしかないと思った。
嫌がる良太を半ば無理やり説得して、良太の家に行った。
目の前には、俺の家なんか比べ物にならないくらい大きい家があった。
なんとなく良太が嫌がっていた理由がわかった気がした。
けど、本当はわかってなんかいなかったんだ。
良太の家に入るとすぐ、良太の母親に追い返された。
「もうあんな子と遊ぶんじゃないよ。」
そう言われている良太は、どこか寂しげだった。
俺が見てきた良太は、スポーツ大好きで明るい少年。
けど本当の良太は、金持ちのお坊ちゃまだった。
けど、俺は嬉しかった。やっとわかった気がした。
これで本当の友達になれると思った。
しかし現実は俺の想像とかけ離れていた。
良太は俺と口をきかなくなってしまった。
「お前の母さん今いないから大丈夫だってば!」
そうやって何度も繰り返す自分が、なんだかむなしかった。
良太と話さなくなってから、俺は一人ぼっちだった。
自分がどれだけ良太に頼っていたか、その時わかった。
良太が居る時はわからなかったけど、居なくなって初めてわかる。
そんな感情を抱きつつも、俺は疑問を感じていた。
親の一言で話さなくなるなんて……悔しくてたまらなかった。
良太にとって俺はそんな存在でしかなかったのか?
終わりの無い自問自答を俺は繰り返した。
これが、これが俺の憧れていた『友達』なのか?

次の日、学校に良太の姿は無かった。


第二話 「現実」

次の日も、また次の日も、良太は学校に来なかった。

良太が学校に来なくなってから、早くも一ヶ月が過ぎた。
早くも、と言っても俺にとってはとても長い時間だった。
俺はとうとう決意をして、良太の家に向かった。
インターホンを鳴らすと、玄関まで母親が出てきた。
「あの時はごめんね……」
そう言いながら、母親はずっと泣いていた。
その時すでに、俺の脳裏にはある不安がよぎっていた。
「良太、身体の具合でも悪いんですか?」
「…………あの子、家を出て行ったの。」
「……え?」
「あなたを追い返してから、あの子は家では部屋にこもりっきりになっちゃってね…」
「それから一週間くらいして、私が仕事から帰ったら、置き手紙があったの…」


「我が両親へ」

あなたがたが、どれほど僕のことをわかっていたでしょう。
僕を産み、育ててくれたのは確かに感謝します。
だけど、あなたがたは知っていますか?
僕が、学校ではスポーツばかりやっていることを。
友達を作るために、金持ちだと言うことを隠していることを。
良太と友達になって、本当に楽しかったことを!
母さんが良太を追い返した後、部屋で泣いていたことを!!
僕は、今日この家を出ます。今までお世話になりました。 良太


「お前がそんなふうに思っててくれたなんて…俺……くっそ!!」
「あ、ちょっと待ちなさい!!」
俺は走った。良太がどこにいるかなんてわからない。
だけど、必ずしも結果は大事じゃないと思った。
俺が良太を探すことに、意義があると思った。
そうは言っても、見つけなければならないと思っていた。
まだ小学四年の良太が、家出して大丈夫なはずはないと思ったから。

一週間が経ったが、未だに良太は見つからなかった。
俺は、その現状を信じることができなかった。
良太の母親は警察に捜索届けを出し、警察も捜索を開始した。
しかし、それでも良太は見つからなかった。
それから六ヶ月後、俺は親父に呼ばれた。

「なんだよ、話って。」
「警察が、良太君の捜索を正式に打ち切った。」
「警察が!?そんな!嘘だろ!?」
「誘拐事件でも無い今回のような件には、労力をかけても無駄ってことだ。」
「なんだよ無駄って……警察は平和を守るんだろ!?」
「警察にとっての平和とは、大事件を防ぐことなんだろう…」
「なんだよそれ…わかんねえよ!!納得いかねえ!!」
「そりゃそうだろう…だけど納得するしかないんだ!!」
「捜索を打ち切った警察署長の名は中村哲雄。良太君の父親だ…」
「嘘だろ…?父親が息子を…そんなはずない!!嘘だって言ってくれよ!!」
「これが現実だ!!変えようの無い、日本の社会の現実なんだ!!」
いつもは怒らない親父が、その日は珍しく激怒していた。
本当は親父も不満があるんだろう。そう思った。

太陽が眩しかったその日、俺は良太が遠い存在になった気がした。


第三話 「二年間」

良太がいなくなってから、早くも二年が過ぎた。
二年という月日はあまりにも長く、周囲の人々は変わっていった。
良太の母親は、何も無かったかのように暮らしている。
きっと父親に説得されたのだろう、そう思った。
それから、学校では良太は転校扱いになった。
良太がまるでいなかったかのように、皆過ごしている。
俺は、とてもむなしかった。
まるで良太と過ごした日々が失われたように!
まるで良太はいなかったかのように!
そうやって皆が過ごしていることが、なんだか悔しかった。
けど、心のどこかで変わらなきゃって思っていた。
いつまでも良太の事を考えてると、先に進めない。

やがて俺にも友達ができ、彼女も出来た。
心の片隅にあった良太の記憶も薄れ始めていた。
今は幸せで、こうゆう日々がずっと続くと思ってた。

ある時、彼女の美紀と街にデートに行った。
一通り店を回り、そろそろ帰ろうかという時だった。

「おい、達也!」
「……りょ、良太!?」
突然の再会だった。俺は何がなんだかわからなかった。
「なんだよその女。お前の彼女か?」
「…ああ、そうだよ。」
良太は変わっていた。外見はヤンキーのような格好をしていた。
「…なんだよ。俺とお前の友情には誰も踏み入れないんじゃねえのかよ…」
「あ…いや、お前いなかったろ?なんつーか…」
「そんなの関係ねえよ!俺とその女どっちが大切なんだよ?」
「……えーと…」
俺が悩むそぶりを見せると、良太の周りからヤンキー達が出てきた。
「ギャハハハ!なに悩んでんだよお前!!バカじゃねえの?」
「……え?」
「良太、言ってやれよ!!」
「俺はよ…もうお前のことなんざ友達と思ってねえんだよ!!」
「はは……良太、嘘だろ?冗談はよせよ…」
「冗談なんかじゃねえよ!!二年も経ったら、人の心なんか変わるんだよ!」
「待ってくれ良太!俺たち…あんなに仲良くやってたじゃないか!!」
「うざってえんだよ!!おい、行こうぜ!」
美紀が、大丈夫?と声をかけてくれるまで俺はしばらく放心状態だった。

その日、俺は二年間の重さを知り、良太と決別した。


第四話 「素直」

「二年も経ったら、人の心なんか変わるんだよ!!」

あれから、どうしてもあの言葉が耳から離れない。
たぶん、俺はどこかで期待していたのだろう。
『また良太と会えたら、もう一度仲良くできる』
そんなのは甘い考えだった。
正直、俺は良太の言葉に納得していたのかもしれない。
現に、俺は良太がいなくても幸せだった。
良太のことも、半ば忘れかけていた。
二年間という月日は、本当に人間の心を変えた。
そんな俺に、良太にだけ心変わりを許さない権利なんか無いんだ。
また、いつもの暮らしに戻っただけだ。
今までは良太のことなんか忘れていたんだ。
なのに……なのになんで良太のことばっか思い出すんだ?
俺には彼女だっているじゃないか。
彼女と良太、どっちの方が大事なんだ?

彼女に決まってる!

「美紀!」
俺は気がついたら、家を飛び出していた。
「どったの?顔色悪いよ?」
俺には、こんなに優しい彼女がいるんだ。
「…ちょっと、美紀に会いたくなってさ。」
「そっか!あ、そうそう明日街に行かない?」
「あぁ…そうすっか!」
美紀と一緒に居たら、良太のことを忘れられると思った。

翌日、俺は美紀と街に向かった。
俺たちは、ゆっくりと店をまわっていた。
良太のことを忘れようとして来たはずの街。
けれど、店を巡るほど良太との思い出がよみがえってくる。
「この店でさ…アイツ、店主(マスター)と友達になっちゃったんだよ!ハハハ!」
「信じられる?小四でだよ?バカみてーだろ?」
「二人でサッカーの話題で意気投合しちゃっててさ!」
「それからさ……」
「いいよ、もう。」
「……え?」
「もう、無理しなくていいよ。」
「良太君のこと話してる時の達也、一番良い笑顔してるもん…」
「はは、そんなはずねーだろ?俺は美紀が一番大切だよ。」
「どうして…どうして自分に正直にならないの!?」
「言いたいこと隠して、いっつも人のこと心配して!!」
「そこが良太の良いトコだよ?だけど!だけど……」
「…………美紀……。」
「ここで…ここで素直にならなきゃ、達也、一生後悔すると思うんだ。」
「そんなこと言ったってあいつはもう……」
「良太君は私たちの関係が壊れるのを心配して、無理してあんなこと言ったんだよ!?」
「そうだよ、達也君。良太は君と同じで、常に人の心配ばかりする男だよ。」
「マスター、美紀……。俺、ぜんぜんあいつのことわかってなかった…」
「やっと思い出したよ…あいつと俺の仲は…こんなもんじゃ壊れない!!」
俺、あれからずっと考えてた。良太のこと、ずっと考えてた。
あいつは変わってなんかいやしない。変わったのは…俺だ…!
「マスター、俺……まだ間に合うかな?」
「もちろん!!」

俺はひたすら走った。外はどしゃ降りの雨だった。
良太はどこにいるのだろうか。前にもこんなことがあった気がする。
そうだ、良太が家出した時だ。当ての無いまま探し続けて、結局…
もうあんなのは嫌だ。変えてみせる!未来を、変えてみせる。
無我夢中で走ってる俺に、突然巨体がぶつかった。

「よう、達也君。」
「良太の…オヤジさん……!」


第五話 「犯罪者」

俺の目の前にいる男は、紛れも無く良太のオヤジだった。
「今さら、俺に何の用ですか?」
俺は、皮肉さを込めて怒りをあらわにした。
「…すごい雨だな。」
どしゃ降りの雨は止む気配も無く、降り続いている。
「用件はなんですか!」
俺は、いらだつ気持ちを抑えられなかった。
この男によって良太は消え、今に至っているからだ。
「決まってるだろ…良太の事だ。」
「今さら心配ですか?あんな事しといて!」
「一応、俺の息子だからな。」
「じゃあなんで…じゃあなんであんな事したんですか!!」
「何か勘違いしていないか?」
「……え?」
「なぜ捜査を終了したか、それはお前の親父から聞いたはずだ。」
「……あぁ。」
「警察として終了せざるを得なかった、しかし俺は納得しなかった。」
「だから、捜査終了後も俺は探し続け、一年後、あいつを見つけた。」
「しかしあいつは不良になり、変わっていた。俺は声をかけなかった。」
「それからは、何人か部下を尾行させるようにした。」
「尾行?」
「あぁ、どうもあの不良グループを見たことがある気がしてな。」
「予感は的中、その不良グループが相当やばいってことがわかったんだ。」
「……やばい、って?」
「万引き・恐喝は当たり前、さらにはクスリまでやっているらしい。」
「ってことはもしかして……」
「そうだ。中村良太は犯罪者の可能性が非常に高いんだ。」
「マジかよ……」
「君はこれから良太に会いに行くんだろ?」
「そうだけど、どこにいるかわからない。」
「良太はこの先の工場跡にいる。君が良太に聞いてみてくれ。」
「もし……もし良太が犯罪者だったら?」
「俺の部下達は家に帰らせた。俺が親としてあいつを逮捕する。」
「それでも親かよ!!」
「親だからこそ……!」
「親だからこそ教えなきゃならないんだ!善悪の区別を!!」
「………………」
「……さあ、わかったら早く行け。時間が無いんだ。」

雨が一層激しさを増してきた。俺は駆け足で向かった。
工場跡に着いた時、もう俺はズブ濡れだった。
俺は暗闇の中をゆっくりと進み、電気をつけた。
パチッ!工場の中が明るい光に包まれた。
すると、俺の視界に良太の姿が現れた。
「良太!!」
工場全体に俺の声が響いた。しかしすぐに雨の音にかき消された。
「うるせぇなあ……またてめーかよ!!」
「大事な、話があるんだ。」


第六話 「ルール」

「てめえとはもう友達じゃねえって言っただろ!!」
良太の怒声が工場内に響き渡る。
「友達じゃなくたって、話すことくらいできるだろ。」
「ちっ……さっさと用件を言え!」
「……犯罪を……犯罪をしたのか?」
「いきなり何だよ。」
「お前は外見は変わった。けど本当に心まで変わっちまったのか?」
「だからなんだってんだよ!」
「お前の不良グループが、ヤバイって聞いてさ。」
「お前は……お前はしてないよな?」
「良太は良太のままだよな!?」
長い沈黙の後、良太が言った。

「したよ。」
「……え?」
「俺は犯罪者だよ。」
俺は何も言わず、その場にうずくまった。
今まで信じてきた事を全て否定された、そんな気がした。
「友達って何だよ……」
俺の頬には自然と涙がつたっていた。
「俺が望んでいた友達は、こんなに辛いものなのか……?」
「なんで俺だけが……くそおおおお!!!!!」
俺は立ち上がって良太に問い詰めた。
「おい良太!!なんだよ!!友達ってなんなんだよ!!」
「友達っつーのは契約みたいなモンがいるのかよ!!ちげえだろ!?」
「仲良くなったら友達なんだよ!!友達は終わんねえんだよ!!」
「大人になったって!!病気になったって!!最後まで一緒にいる!!」
「それが……それが友達じゃねえのかよ!!」

「落ち着け、達也君。」
良太のオヤジがいた。俺の肩をたたき、こう言った。
「良太……お前を逮捕する。」
良太はさっきから何もしゃべらない。
自分で立ち上がり、オヤジに連れられて行こうとした。
「逃げんのかよ良太!!」
「達也君、こいつは犯罪者だ。」
「関係ねえよ!!良太は良太だ!!バキッ」
無我夢中だった。俺は良太のオヤジを殴った。
「君は何をしてるかわかってるのか!?君も犯罪者だぞ!!」
「良太は良太……そして俺は俺だ!!!」
「犯罪?くそくらえだよ!ルール?知ったこっちゃねえよ!」
「あんたら大人が都合良いように作ってるだけじゃねえか!!」
「そんな腐った社会で生きてる腐った連中と一緒になりたくねえんだよ!」
「一人の国民である前に……俺は俺なんだよ!!」

「はぁはぁ……」
「効いたよ達也君……」
「良太の罪は、家出しただけ、だろ?」
「オヤジさん……」
「見逃すよ……警察官としてではなく、一人の人間としてね。」
オヤジさんは、笑顔でそう言った。
「良かったな良太!!……良太?」
そこには良太の姿が無かった。
「良太ーーーーー!!!!」


最終話 「また逢う日まで」

「良太ーーーー!!どこだーーー!?」
俺の声だけが、工場内に大きく響いていた。
俺は必死で良太を探したが、見つからなかった。
「結局、あいつには俺の言葉が通じなかったのか……」
「俺は何もできなかった……あいつに何もしてやれなかった!!」
「……そんなに自分を責めたら駄目だ。君はよくやったよ。」
「俺が何をしたってんだよ!!」
「良太が家出した時、あいつがどんなに寂しかったか!!」
「俺は……俺はあいつの支えにもなってやれなかった!!」
「君は一番大切な事をやったじゃないか!!」
「……え?」
「友達に、なったろ。」
「……オヤジさん……。」
パチッ!突然、工場内が暗闇に包まれた。
「達也ぁ!!!!!!!!」
「……良、太?」
「俺は、宮園中に行く!!俺はそこでまってる!!」
「それまで会えねーけど、元気でな!」
「お前と過ごした日々、絶対忘れないから!!」
「お前は俺の友達で!!俺はお前の友達で!!」
「そうやってずっと生きて行こう!!」
「バカ野郎……泣かせること言いやがって……」
「じゃあな良太!!必死で勉強して、俺も行くからよ!」
「約束だぞ!!破ったら絶交だかんな!!」
「たりめーだろ……約束は破んねーから約束なんだ!!」
「また逢う日まで!!!」

こうして二人は再会を約束し、再び別の道を歩んだ。
俺はそれから必死で勉強し、見事合格した。
良太から解説プリントが送られてきたのが、結構効いた。
何度か挫折しそうになり、家族とも相談したりした。
しかし、良太との約束を守るため、必死にやってきたのだった。

そして運命の入学式。俺は会場に着いた途端、良太を探した。
しかし良太は見つからなかった。新入生名簿にも良太の名前は無かった。
最初は、休んでるだけだとか、色々と理由を考えて自分に言い聞かせた。
しかし理由が無くなるにつれ、俺の絶望感は日に日に増していった。

数ヶ月が過ぎ、風の噂で良太は落ちたと聞いた。
何で俺だけが?もう何がなんだかわからなかった。
良太の家も引っ越しており、良太の所在は全くつかめなかった。
俺は、きっといつか……という希望を捨てず、学校に通った。

結果から言うと、三年間、良太に会うことはできなかった。
俺は、地元の高校に進学することにした。
もしかしたら良太が……という希望も虚しく、良太には会えなかった。

高校一年の夏、俺にとって待ちに待ったことが起きた。
良太から、手紙が届いたのである。差出場所は不明だが。
「マジかよ……」
俺は家を飛び出し、ある場所に向かった。
息切れするほど走り、ようやく着いた。


我が親友の達也へ

約束、守れなくてすまなかった。本当に、悪かった。
この手紙がお前の元に届く頃、もう俺はこの世にはいないだろう。
宮園中に落ちてから、家族同士の揉め事とかが絶えなくてな。
色々あって、俺はもう生きる事に疲れちまったんだ。
唯一の心残りは、お前との約束を果たせなかったことだ。
こんな形になってしまって本当にすまない。
最後に、お前があの世に来たら、またゆっくり話そうぜ。
じゃあな、達也。また逢う日まで!


「バカ野郎……なんで俺に相談しなかったんだよ……」
「まぁもういい、疲れたろ?ゆっくり休め、良太……」
「約束なら果たせたじゃねえか。四年越しの、約束がさ……」
達也は良太の墓の前で、再会を果たした。
そして、涙を流しながら、良太に語りかけ続けた。
友達という大切な存在を、今一度確かめるように……




2003/10/14(Tue)22:52:49 公開 / 流浪人
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■作者からのメッセージ
つじつまの合わない所を訂正し、完全版として完成させました!!感想まってます!!

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