『ファンタジー・サークル VOL.6』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:青井 空加羅                

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 この街の空はいつも青く、ここの人たちは日が沈む事を知らない。
子供は犬を追いかけ、婦人は買い物に出かけ、老人はのんびりと散歩をする。

ミク・モンク(格闘家)Lv50 マサコ・シロマ(回復役)Lv50

二人は街の中を歩いていた。
「・・・政子さん。全然実感無いんですけど、私本当にLV50なんでしょうか?」
美久は自分の手をまじまじと見つめ、心配そうに言った。
「そうよ。いずれ敵と戦えばわかるわ」
政子はぴたりと止まり振り返る。
「そういえば、美久さんパーティー戦わかる?ちょっとヘルメットのボタンを押してみて」
美久は言われたとおりにボタンを押した。
上方から透視グラスが降りてくる。

ミク・HP5000 MP0
マサコ・HP3500 MP500
「おおっ。すごい・・・」
「HPが0になっちゃうとセーブポイントに戻されちゃうから注意してね。それからー」
政子はあごに手を当てて少し考え込んだ。
「服屋に行って装備品も購入しなきゃね」
「・・・ビジュアルに凝ってる場合じゃないんじゃ・・・」
「装備品をつけると防御力が上がるのよ」
政子は少し軽蔑を混ぜた目で美久を見た。
「・・・すっすいません・・・」

店の看板には、「装備屋・ストレート」と標してあった。
二人は入り口の真っ赤なカーテンを潜り抜けた。
『いらっしゃーい。好きな服を選んでくださーい』
頭のてっぺんに乗せるような小さい帽子をかぶり肥満であるこの店の主は外の西洋の町並みとは打って変ってアラビアンな雰囲気を醸し出していた。
「・・・って政子さん。この店服なんて一着も無いんですけど?」
「説明聞かなかったの?って聞いてるわけ無いか・・・。
いいわ。こっちに来て」
美久は政子の隣に並ばされた。
店のカウンターをよく見ると、そこにはモニターのようなものがついていた。
「そこにLv50モンクって入力して」
「・・・はい」
「で、Enterキーを押して」
「はい」
美久がEnterキーを押すと、当然美久の姿が消えてしまった。
「・・・まっ正子さんっ?」
「画像のダウンロード中なのよ」
政子は透明になってそこにいるであろう美久の方ににっこりと微笑みながら言った。
しばらくすると、黒い胴着に紫の帯を身につけ茶色のリボンで髪をポニーテールに縛った美久が姿を現わした。
手には鋼鉄のナックルをはめている。
「似合ってるわよ。さ、行きましょうか」
美久はしばらく自分の姿を見つめていたが
「政子さんは?」
「・・・私は回復専門だからいいのよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・もしかして、はづかしいとか?」
政子の頬が赤く染まった。
「・・・ま、いっか」
「深く追求しないでくれて嬉しいわ」

二人が歩いていると、やがて街の広場にたどり着いた。
すると二人の目に人影が映る。
「・・・あれって・・・たしか・・・モルル?」
噴水の前で倒れているのは以前大魔王と途中で入れ替わったモルルだった。
駆け出そうとした美久を政子が手で制す。
「まって。横に何かいるわ」
「え?」
美久は目を凝らしてモルルを見つめてみた。
噴水の周辺は以前と違って霧が立ち込めていた。
これも大魔王の仕業なのか。
モルルの横にはチキンの2倍はある真っ黒な鳥が羽を伸ばしていた。
「あれは・・・ゆううつなカラス・・・?」
「あの鳥、前ゲームに入ったときも街の空飛んでましたよ」
政子はあごに手を当てて考え込んだ。
「あの鳥が何か?」
「あの鳥はオクト・パースラのペットっていう設定なのよ。それともあの鳥がここにいるってことは彼がこの近くにいるのか、それとも様子を探らせているのか・・・」
意味を汲めずきょとんとする美久を見て政子はふぅっとため息をついた。
「あなたはオクト・パースラをかなりの強さと評価しているみたいだけど、彼だってそこそこレベルを上げたキャラには倒せるようには設定されているわけだから・・・。
最初にこの街で貴方たちを襲ったのもおそらく下手にレベルを上げられたプレイヤーに倒されるのを恐れたためだわ・・・。むしろそこまで考えた思考力の方が私には恐ろしいわね。」
「・・・早くエルクとシルクを見つけた方がいいみたいですね・・・。でも、モルルはこのまま・・・?」
「あの鳥がいなくなってから声をかけましょう。何故彼女が倒れているのか気になるし」
しばらくすると鳥は何処かへ飛び去っていった。
さっそく美久はモルルのそばへ歩み寄った。

「モルル?大丈夫?」
カールの効いたブロンド・ヘアの彼女はうう・・・と呻きながら顔を上げた。
その様子に政子がぴくりと眉をひそめる。
あたりの霧が濃くなっていった。
「・・・モルル、突然で申し訳ないのだけれども、この街に私達がいない間にオクト・パースラが来た?」
モルルはしばらく二人を交互に見ていたが
『ええ・・・きたわ。闇の王・・・貴方たちを捜していたのね、きっと』
しゃべっている間にも霧はどんどん濃くなり、二人の視界はどんどん悪くなっていった。

「嫌な空気ね」
政子が辺りを見回しながら言った。
美久も動揺を隠せない。
「モッモルル・・・。ちょっとここを離れない?空気も悪いし・・・」
がしっ。
モルルは美久の腕をつかみ離さない。
モルルは下をうつむいたまま何も言わなかった。

その顔が微かに微笑んだ。
『逃げられるうちに逃げた方がいいわ・・・。じゃないと・・・じゃないと・・・』
「モッモルル!痛いよ!」
美久は痛さに顔をゆがめ、腕を振り解いた。
その反動でモルルは後方に吹っ飛んだ。
彼女は難なく着地すると軽やかに笑い声を上げた。
もはや霧は二人の視界を完全に断ち切り、モルルの姿をうかがい知る事は出来ない
『勇者の卵ども・・・。もう二度と、この世界に入れないようにしてやるわ・・・』
バサッと言う羽音とともに発せられた強風が霧を吹き飛ばした。

しかしモルルがいた場所にいるのはもはやモルルでもそして大魔王でもなかった。
  

2003/10/04(Sat)00:25:39 公開 / 青井 空加羅
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■作者からのメッセージ
やっと・・・模試が終わりました・・・。でもまだ本番が残ってます。本番前にもまだ沢山模試も残ってます。TVでは高校3年生の学力低下を嘆く番組が・・・。(心の叫び)「うそつけ〜!!(私以外の)高校3年生みんな頭いいじゃんか〜!」・・・今回も呼んでくださった方々どうもありがとうございました。物語りももう折り返し地点です。

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