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『DarkForce−闇の勢力−』 ... ジャンル:アクション 未分類
作者:上条京介
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あらすじ・作品紹介
平和な日常だったのにある日突然と、そんな日常は、簡単に壊されてしまう。どんな日々を送っていても、簡単に壊せてしまうのだ――
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――王なくして、汝は生きるのか
――ああ、生きる。王がいなくても、俺はやれる。
――そうか、貴様には失望したぞ
――安心しろ、俺もお前に失望している。
――我を、殺せ
――確かに俺はお前に失望しているが、殺すまでは無理だ。
――これだから貴様の甘さにはいつもいつも――
――そんなに死にたきゃ自分で死ねばいい。俺はそんなことはできない。
――ふん。残念だがそうさせてもらう。
昔、死ぬ間際の俺と戦友とのやり取りだ。
俺はなぜあの時、彼を止めなかったのだろう。止めていれば、今もこうして、一緒に野原に寝そべって話したりしていたかもしれないというのに。俺は、なぜまじかで見ていて一人の自殺を見過ごしてしまったのだろう。そんなことを考えていた。あの当時の俺はなぜかそんなことを感じられなかった。
後悔とは、後にするものだから後悔という。前に後悔するのは、後悔ではない。「あの時こうしていればよかった」などという感情は、誰もが実感するであろう感情。
――王は、どうした
――死んだ。殺された。
――ならなぜお前は生きている?
――お前も、あいつと同じことを言うんだな。
――あいつ?
――リュバのことだ。
――あいつも生きているのか?
――死んだ、王が死んだから自殺した。
――そうか、あいつはいい戦士だ
俺が国に戻っても、戦友のリュバだけが高く評価され、俺は臆病者扱いされる。王に身をささげているものは、王のためなら何でもする、だが王が死ねば自らも滅ぼす。俺は、身をささげてはいた、王に信頼も受けていた。だが、自ら身を滅ぼすことはできないのだ。どんな理由があろうと、俺が殺した人間は多い。だから俺はその人間たちの分まで生きている。だからたとえ王が死んでも俺が死ぬことはできないのだ。
第一章
数年前、国から追い出された俺は、遠く離れた街にやってきた。
この街はのどかで、昔住んでいた国とは違って子どもたちがよく見られている。住みやすい街だ。
「ねーねーニノお兄ちゃん!」
六月二十四日の夏なり立ての日。河原の草原で寝そべっていた俺に声をかけてきた無邪気な子供たち。その中心に立つ少年、レンタは現在十二歳少し青っぽいツンツン頭が特徴で、子供たちのリーダー的存在、俺が初めてこの街にやってきた時に助けてもらった恩人だ。そしてニノというのは俺の事で、二十五歳だ。レンタは血だらけの俺を見るや、自分の家族や知人などを呼んできて、俺をレンタの家に運んでくれた。そこで応急処置までしてもらい、今はレンタの家に居候させてもらっているのだ。
「どうした?」
俺はレンタのその無垢な笑顔を見ながら応答に答えた。
「明日アユミの誕生日なんだってさ!」
そう言って照れはじめるレンタの右隣に立っている一人の少女。長く茶色い髪は結ばす、腰のほうまで伸ばしていて、男子にモテモテだそうだ。
「へえ、おめでとう。十二歳か」
俺は微笑んでアユミの頭を撫でる。この子たちにはなつかれているので、こういうのを報告する無邪気な子供たちだ。さて、誕生日か、何かプレゼントをやらないとな。女の子が好きそうなものはなんだろう……お人形か? サプライズプレゼントにしたいのでアユミには言えないが何が喜ぶだろうか。
「それでさ! 明日誕生日会開こうと思うんだよ! 家で」
アユミは男子にモテる。無論レンタもアユミのことが好きなわけで……なるほどそういう事かと俺は内心で理解し、成長したなレンタと、心から励ましを送った。さて、ということはここにいる三人のメンバーも参加するのかな? レンタ、隣にアユミでその後ろには右からリョウ、ゼン、ミカと、男三人女二人のメンバーがいる。子の面子で遊ぶのはよくあることで、このメンバーであとの男はアユミが好きなのかは知らないが、誕生日プレゼントが被るのは嫌だな。
「わかった。俺も参加しよう」
「ホントですか!? やったー!」
俺が参加をすると宣言した途端、アユミが喜んだ。それも盛大に。
「やっぱニノのお兄ちゃん参加しないでいいよ」
そんなこと言うなよレンタ。いくら好きな女の子が自分以外のことで喜ばれてるからって。俺を睨むなよ……。別に俺はお前の好きな子横取りしないんだから。
五人のメンバーと別れた俺は、市街地に来ていた。当然アユミのプレゼントを買うからで、ほかのメンバーとは絶対かぶらないものを買うためである。この市街地には子供だけで来ることはあまりない。来たとしても通るだけで買い物はしないのだ。なんせここは食材のほかに、あまり子供にお手頃な店がない。玩具屋はある、あるにはあるが、それは子供だけで買えるほどの物ではないのだ。だから俺はここで買うことにした。
そしてやってきたのが玩具屋。
「おっ! 珍しいなニノ」
ここの店長とも知り合いで、だいたいこの街の人たちはまるで村人のようにみんながみんな、温かいのだ。そしてここは玩具屋で、店長は若くはないが仮にも店長だ。
「明日アユミの誕生日でね、プレゼントを買ってやろうと思ってるんだが何がいいと思う?」
当然、このような質問もできる。
「明日がアユミちゃんの誕生日!?」
「ああ、明日レンタの家で誕生日会するそうだ」
「わかった。ちょいまってな」
店長は、なぜか店の奥に行ってしまう。そして数分後戻ってきたかと思えば何やら大きな人形を手に持ってきた。大きなクマの人形だ、俺から見れば可愛いとしか思えないのだが。
「これはな、以前アユミちゃんがお母さんと買い物した時に買おうとしてた品なんだ。そん時は運悪く売切れちまってな。だからおまえに売ってやる、誕生日プレゼントとしてアユミちゃんを喜ばせな」
このとき俺は店長がカッコ良く見えた。
確かに、この値段では子供だけでどうこうできるものじゃないし、被らないかもしれない。さらにはアユミが喜びそうなものまでもがはっきりしている。
「でもこの人形を持ってたとしたらどうするんだ?」
「はっはっは! それはない。自慢じゃないがうちの店は地元で一番なんだぜ? この人形もこの街じゃここにしかねーよ」
買っておいてなんだが俺は店長に聞いたが、これはいい。
流石だな。市街地に建てただけのことはある。こんなでかい玩具屋……これから誕生日があればここで買うか。
「何か大きなものに詰めるかい?」
「ああ、頼む」
俺はポケットから財布を取り出し、店長が人形を大きな包みにいれているときにお金を出した。さてと、プレゼントは無事確保だな。ああ、明日の誕生会が楽しみだ、今日やってもいいんじゃないか? いや、それでは前夜祭か。ケーキはおそらくレンタの母親、ミチルさんが手作りを作ることだろう。あの人の作るものは何でもおいしい。俺も居候していてそう感じられる。レンタは幸せ者だな。しかも若い。二人の子供を産んだとは思えない若さだ。
「あれ? ニノ、何その荷物」
帰宅後、大きな人形を持って帰ってきた俺に、玄関を通って階段を上がろうとしていたレンタの姉のミハルが俺に声をかけてきた。ミハルは、現在十五歳で、あまり外に出た光景を見たことがない不思議な人。かといって閉じこもりというわけでもない。
「明日のプレゼント」
「プレゼント? ……あー、明日か」
今まで知らなかったのかよ! というツッコミは伏せておくことにする。
「しっかしずいぶん張り切ってんねその大きさ。元王国の将軍ってのが嘘みたいだ」
ミハルは余計な言葉が多い。だからいくら言っても意味がないのだ。俺は「そうか」と受け流して、居候の俺のために用意されている自室に戻った。六畳くらいの一般的な部屋で机、ベットのほかには小さめのテレビがある。
「さて、これは明日渡すとして、レンタに見られるのはまずいよな」
俺はクマの大きい人形を押し入れの中にしまった。別に見られたくないってわけではないのだがどうせやるなら内緒でプレゼントを渡したい。レンタはよくこの部屋に来るので俺は押入れの中にしまったのだ。さて、プレゼントはもうしまっておいたから暇になってしまったな。
俺は自室を出て、階段を下りリビングへと足を赴いた。この家のリビングとダイニングはつながっていてかなり広く感じ、ダイニングの方はキッチンと食卓用のテーブルがある。キッチンではミチルさんが何やら楽しそうに何か料理を作っていた。リビングはごく普通で横に長いちゃぶ台、三人用のソファ、テレビ台の上には大きなテレビ、その横には時計があり、時刻は午後三時十五分を指していた。
「何作ってるんですか? ミチルさん」
「ん〜? 明日アユミちゃんの誕生日だからケーキを作っておこうと思ってね〜」
楽しげに作っているミチルさんに話しかけるとミチルさんは微笑みの笑顔を俺に向け言ってくれた。
「ったく、母さんのニノも張り切りすぎだよね」
そんな中、ソファに寝転がってテレビを見てるニートが1人。俺は哀れみの目で見た。
「な、なにさ」
俺の視線に気づいたであろうミハルが俺の視線を向けて話しかけてきた。
「お前はのんびりしすぎなんじゃないか?」
「え〜? そうかなあ。そんな他人の誕生日なんて興味ないもん」
「そうか、もういい。お前はお前だな、うん」
ミハルは「なんだよ〜」と言ってくるが、無視。もう一度自室にこもることにした。明日は楽しめるといいな。
次の日の朝に、悲劇が起こった。
朝起きた俺は日課である剣の鍛錬を行った後自室に戻り、プレゼントを確認してからリビングに行き、食事をする。
「今日は何時からやるんだ?」
「一時からだよ。皆にはご飯食べないで来てもらうんだ」
食事中に俺はレンタに日程を聞いた。その時間帯までプレゼントを出すのはやめておくか、と俺は心の中でつぶやき、食事を終え、俺が次に向かったのが河原。いつも俺はここで寝そべって川の流れを見ているので、今日も川の流れを見に来たのだ。まだ時間はあるし、何も問題はないからいいが、何か、今日は嫌な予感がする。
それから数時間、その河原で眠ってしまった。目覚めたときにはもう昼が過ぎていて、ヤバいと思い俺は急いで家に戻った。なんとか誕生日には間に合ったからよかったものの、遅れてたら大変なことになるな。
「おめでとう。これは俺からだ」
「あ、そのお人形!?」
「ああ、店長から聞いたんだ」
アユミは、俺のプレゼントをかなり喜んでくれていた。プレゼント選びは問題なかったようだな。
そして、誕生日会が終盤を迎えたところで、家のインターホンが鳴り響いた。
「あら、お客さん?」
ミチルさんがインターホンに応じる。そしてしばらくすると、悲鳴のような声が聞こえてきた。
「久しぶりだな。ニノ」
「お前は!?」
俺の目の前に合わられた、懐かしき人物。それは、かつて俺がいた国の、将軍だった。名はエルキオル。過去に残酷な剣士とまで称され、国から追い出された最悪で最強の将軍だった。そして、彼は今ここにいる。俺を求めて、ここにいるのだ。そ、そういえばミチルさんは!? ミチルさんは無事なのか!?
「お母さん!!」
そして、廊下で倒れていた、ミチルさんの姿を見た。すぐ近くに駆け寄ったレンタは、泣きそうに涙目で、ミハルも涙目でいる。アユミも、リョウも、ゼンも、ミカも覚えて何もできない状態で、俺の裾を引っ張っている。そうだ、それが正解だ。こんな無垢な子たちが平常心を保てるわけがないんだ。
「何しにきやがった……」
俺は、恐る恐る聞いた。
「貴様を連れ戻しに来た。お前の力を必要としてるそうだ」
エルキオルは、不敵に笑みを浮かべて言う。デカい鎧をまとい、かなり太い体。そして何より、殺人の目をしているこいつが――俺を連れ戻しに来た。
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2011/11/14(Mon)00:44:49 公開 / 上条京介
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■作者からのメッセージ
初投稿です
これは自分が小学生の時に書いてたやつで、大幅に改良しています。
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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。