『ひとりかくれんぼ』 ... ジャンル:ショート*2 ホラー
作者:土砂降り                

     あらすじ・作品紹介
かくれんぼが大好きな女の子の心の闇を書いたお話。

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もういいかい
まあだだよ



いつかのお話、私の記憶の中でいつも揺れて曖昧に残っている思い出の話。
私が小学生の頃、いつも放課後十人ぐらいで残って学校でかくれんぼをして遊んでいた。正直な話を言うとこの放課後の時間が楽しみで学校に行っていたようなものだった。
鬼は三人であとは隠れる、人数が増えると鬼も増やすというような形でやっていた。

いつものように放課後、みんなで集まって鬼を決めるじゃんけんをしながら騒いでいるとどこからか「いーち、にい…さあん」と数を数える声がする。
私は不思議に思って友達に「ねえ、誰かが数を数えてる声がするよ」と言うと友達は「気のせいだよ、まだ鬼決まってないし。じゃんけんの続きしよう。暗くなっちゃう」

「最初はグー、じゃんけん…」

と声をそろえて手を出す。私はじゃんけんに負けてしまった。

「あきちゃんとゆきちゃんとたくみ君が鬼ね」

私はその声に違和感を感じたけれど気にせいだと自分に言い聞かせゆきちゃんに声をかける。

「ゆきちゃん、たくみ君呼んで」
「誰、たくみ君って」
「ほらさっき」
「あ、あの子ね。クラス違う子だから一瞬驚いたよ」

そんなことを話しながらゆきちゃんがたくみ君を呼ぶとたくみ君は何も言わずにっこり笑って近づいてきた。

「たくみ君って何組」
「……三組」
「へえ、そうなんだ。私とゆきちゃんは一組だよ、よろしくね」
「…うん」

たくみ君は視線を下に落として小さな声でもごもごと返事を返す。さっきの優しいそうな明るい笑顔と正反対の雰囲気を目の前で話すたくみ君は出していた。

「たくみ君、どこか痛いの、大丈夫」
ゆきちゃんがたくみ君の肩に手を置く、そして少し驚いたような顔をして私に目で何かを訴えるように何度も瞬きをする。
ゆきちゃんの混乱した様子に驚いて私もたくみ君の肩に手をかけようとした時


「まあだだよ」と声がする。
私はびくっとした。たくみ君が小さな声で「数数えないと」と言う

「たくみ君、本当に大丈夫。ねえ」
「…っ」

たくみ君の体は冷たくて硬かった。
私はその冷たさに言葉を失った。

「もういいかい」
「まあだだよ」

私とゆきちゃんが怯えているとたくみ君はさっきの様子とは対照的にはっきりとした通る声で言うと皆の返事が返ってくる。

何度かやり取りが終わってやっと「もういいよ」という声が返ってくるとたくみ君が私とゆきちゃんの手を掴んで言う

「ゆきちゃんとあきちゃんみいつけた」と言う
私とゆきちゃんが唖然としているとたくみ君がくすくす笑う
そして言葉を続ける

「次はゆきちゃんとあきちゃんが鬼」
「でも、私とゆきちゃんもたくみ君と同じ鬼だよ」

「違うよ、だって…」


とそこで私の記憶は途切れていた。
いつも思い出そうとしてもここまでしかはっきり思い出せない。
私はかくれんぼの途中で倒れたらしい。
そして何日か熱でうなされて学校を休んでいた。
その間に何度か友達や先生やいろんな人がお見舞いに来てくれた。
私はゆきちゃんやそのほかの人のことが心配で聞いてみると皆何も教えてくれなかった。


それから何年後かにもう一度この時のことを聞いてみるとその日は誰も放課後、私とかくれんぼをしていなかったという。小学校の頃のアルバムを開いてみるとゆきちゃんもたくみ君も居なかった。
時々、私はうなされる、あの頃のように。私が鬼で皆を探して見つかった人を殺すのだ、笑いながら楽しそうに。



「次の鬼も私ね、だって皆動かないんだもん」って呟きながら。



ふとテレビをつけると「速報、○○公園で子供のバラバラ死体が発見されました。現在、身元を調査しています。」とアナウンサーが少し早口で言う。
私はそれを見ながらため息をついて昼食の用意をしようと冷蔵庫から肉の切れ端を出して調理を始めた。






2011/02/25(Fri)10:51:02 公開 / 土砂降り
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■作者からのメッセージ
あまりホラーは書かないのですが久しぶりに書いたお話。
一度、他のサイトで投稿したものですが読んで貰えると嬉しいです
誤字や脱字ありましたらすいません。

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