『脳内ファンクション』 ... ジャンル:ショート*2 未分類
作者:皆倉あずさ                

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 え?
 いや、別に何でもないよ、
 顔赤くなったって……もう、ミキって直ぐそういう方向に話を持って行きたがるよね、そんなんじゃないってば、
 だから、彼氏とかそんなのどうでもいいの、私は手越〜クンに生きてんだから。
 ……まあ、何かあったってのは当たってるんだけど、聞いてくれる? 今朝ちょっと変な奴見かけて。変な奴っていうか、変態? ……アハハ、それはない、そこまではない、ちゃんと服は着てた。
 そんな分かりやすい感じじゃなくて、朝学校来る途中で、電車待ってる時に同じホームで同い年位の男の人が居たんだけど、その人が何かいい感じっていうか、いや、そうじゃなくて、やっぱりって顔しないでよ、もう、そういう話じゃなくて、見た目性格良さそうっていうか、こういう人には嫌われたくないって思わせるような、さ、分からない?
 あーもういいよ、だからそんな顔するなってば!
 ねえ、ちょっと、聞く気ある? それで、不可抗力みたいな感じでちょっとその人の事を気にしてチラ見したりとかしてたわけ。そしたらその人が鞄から文庫本取り出して、カバーかかってたからタイトルは分からなかったんだけど、とにかくそれを読み出したの、音読で。
 ……意味不明じゃない⁈ 駅のホームで小学生みたいに真面目くさった顔して、
 ゆりこは、まさおをおいかけた。まって、おいてかないで、
 とか読んでるの、
 え? 今の、モノマネ。何かね、すごい下手だった、単調だし、でも声はやたらいい声してたんだけどね。福山〜みたいな、
 嘘じゃないよ。まって、おいてかないで、あーでも本人が言ってるとこ想像できないな……
 あ、それでね、しかもなんだけど、その小説がさ、何というか……そっち系っていうの? そういう描写が結構がっつりあったんだけど、それもお構いなしなんだよね、おんなじ調子でべらべら喋って、周りの人の事なんか全然気にしてないっていうか、何か自分だけの世界に入り込んでるっていうか……
 それでまあそれも聞いてたんだけど、
 仕方ないじゃん!
 そしたらメールの着信があったの、その人に。ほら、まさかって思うでしょ、まさか、その人やっぱりメール大声で読み出して、もう笑っちゃった、あのさ、空で言えるってすごくない?
 おべんとう、いえにわすれてますよ、ははより。
 ……おべんとうとか、もう、何それって感じじゃない? ものすごくしっかり読みあげちゃって、はあってため息ついて、帰ってった、やたら姿勢よかった、背筋がぴーんって、もう笑いこらえるの大変で、………
 んー、多分近所の人なんだろうけど、最寄り駅ちっちゃいし、でも初めて見た感じだったと思う、っていうか見てたら嫌でも気づくって……ああ、引越しかあ、そういう可能性もある? 明日も居たら完璧だよね、あ、そうだ、もし居たら写メ撮ってきてあげようか、割とね、カッコいい系の人だったし、黙って座ってる限りイケメン、みたいな、
 え?
 いや別に期待してるわけじゃないって、そんなわけないじゃん、そんな毎日毎日そっち系小説の朗読なんか聞きたくないし、いや、だからさ、朗読を抜きにしたらいい感じの人だったとは言ったけど、ちょっと、何で話最初に戻ってるの? いや笑うトコじゃないって。

2010/11/05(Fri)21:34:56 公開 / 皆倉あずさ
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■作者からのメッセージ
久しぶりに投稿します。
長編の片手間くらいに読んでもらえたら嬉しいです。

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