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『猟犬はもう、空を飛ばない』 ... ジャンル:サスペンス アクション
作者:無関心ネコ
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あらすじ・作品紹介
「ある人物を救出してくれないか?」もはや敗戦濃厚な戦争末期、敵にとらえられた軍人・ゼクは、敵国の少女救出を依頼される。それは簡単な仕事のはずだった。だが、運命の歯車は狂いはじめ、救出作戦は命がけの逃走劇へと転じ、そして混濁する事態は、思わぬ方向へ動き始める――――!第二次大戦をテーマにした架空の世界で繰り広げらる、スリラーラブロマンスサスペンス!
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「さて――――最後のおしゃべりを始めようか」
殴られ続けてもうろうとした意識の中で、その冷然とした声だけは妙にはっきりと聞こえた。
……あぁ、畜生
もう何日、こうしているのか……日にちを数えるのは、三日目の夜でやめていた。
吐き出す、血の臭いのする呼気が、熱い
割れるような鈍い頭痛がこめかみから目の奥まで響き渡り、だがそれに抵抗する気力もない。
ただ、頭を垂らし、息をする――――それが限界だった。
灰色の床と、飛び散った血がどす黒く乾いてこびりついている木製の机を見つめる。いっそ目をつむってしまいたいが、そんな事をすればまた「目を覚ませ」と水を浴びせられ、殴られるのは目に見えていた。だから気力を振り絞り、ただ目を見開くしかない。
机の上を滑って、何かが眼前に滑り込んできた。
ごろん
なんとか視線だけを上に向けると、力ない銃口が、こちらを見つめている――――黒金の拳銃が一丁、死体のようにデスクの上に転がっていた。
「ゼク少尉……降下猟兵第四部隊小隊長、ブンデス軍所属のポルトランド人か……」
また、冷然とした声が頭に降ってくる。
頭をもたげる気にはならなかったが、髪をひっつかまれて、顔を上げさせられた。
「なるほど、確かにポルトランド人の顔つきだな。山岳民族には血がよく似合う」
声の主が、顔をのぞき込んだ。
――――年は四十代だろうか、壮年の頃に身につけたであろう酷薄な表情と、その中にある、修羅場をくぐった者だけが持つ、底の見えない地の裂け目をのぞき込むような目。その冷然とした、老木の木目のように深い皺の走った青白い顔は、黒衣でも被せたら死に神そのものだ。
机に転がった、黒金の拳銃を思い出す。
「(……死刑執行人には、ぴったりじゃないか)」
と、彼は――――『ゼク・アランベルト』は思った
ゼクは男の顔を見ながら、口の中いっぱいに広がった血を床へと吐きつけた。びちゃ、と、コンクリートの堅い床に、赤色混じりの液体がへばりつく。
男が突き飛ばすように、ゼクの頭を離した。反動でゼクは椅子に背中を強か打ち付ける。そして熱に浮かされたような視線を、辺りに向けた。
部屋は一面、灰色のコンクリートに覆われ、無機質で単調なその様は、一時間でも見続けていたら気が狂ってしまいそうだ。しかしゼクはもうかれこれ二週間もこの殺風景な部屋を見続けている。見るだけではつまらないだろうと気遣ってか、部屋の主達は殴る蹴るの繰り返しでゼクを歓迎してくれていた(……クソッタレが)。明かりなんて気の利いたものはもちろんない。ゼクを怒鳴りつけたりあざ笑ったりする尋問官が持ち込む不躾に明るい電灯が一台、時々デスクに置かれる程度だ。今もゼクの顔をじりじりと焦がすように――――実際焦がして痛めつけようとしているのだろう――――電灯はデスクに置かれている。その光はゼクの目をくらませる。彼の真っ白だった短髪は血に染まり、太いあごや腕も、切り傷や飛び散った血であちこち血に染まっていた。うろんとした彼の目は、強い意志の力で何とか現実世界に結びつけられているが、あとコップいっぱいほどの血が流れるか、一回リンチでも加えられれば、彼の命ごとどこかへ消し飛んでしまうだろう。
真っ黒で、灰色の小さな部屋の中、スポットライトに照らされた一角。椅子に縛り付けられたゼクは、その中でアザと血まみれになりながら、もう四日も寝ていないもうろうとする意識の中、対面に座った男の顔を見つめていた。この初老の男――――シェパードと名乗った――――は、節くれ立った手で書類の束をいじりながら、何事かつぶやいていた。
「下手に拝命した士官の肩書きが災いしたな、少尉。質の悪い補充兵だったら、その場で楽に殺されていたものを。どうせ人員不足で安売りされた少尉の肩書きだろう? 士官学校へ通ったわけではあるまい」
シェパードは書類から目を離すと、ゼクの方へと目を向けた。ゼクの胸元へと手を伸ばし、そこにぶら下がっていた、雷紋に翼が生えた形の金属片を撫ぜる。
「この勲章がなければ、君など今頃爆弾抱えて戦車に突っ込まされていただろう。勲章を授与されたのは……いつだったかな?」
シェパードは反応を確かめるようにゼクの目を見た。ゼクはその目を見つめ返す。だがそれは、ただうろんうろんとした目つきで、荒い呼吸を繰り返すだけのものだった。
シェパードは浅く頷くと椅子に深く座り直した。大仰に胸を反らし、書類の束をめくっていく。
「……あぁ、これだな。『一年前のナイトメルヘの戦い。ダム街だったナイトメルヘを占領・破壊して半島連合軍のエネルギー供給を絶った。その際の目覚ましい活躍を表して、アラン中尉と共に勲章を受章』――――ナイトメルヘの英雄か。知ってるぞ。半島連合の防衛師団を陣地にしていた公営住宅ごと生き埋めにしたやつだな」
ゼクの前に二、三枚の紙を放る。デスクに滑り込んだそれは、切り抜きの白黒写真だった。きついコントラストの中に写るのは……
「初めて見るだろう? 向こうの新聞じゃこんなものは取り上げまい。君が生き埋めにした奴らの末路だよ。血吐き、餓え、憎しみと恐怖の中じわじわと死んでいった者の姿だ」
写真を見つめるゼクの表情に変化はない。その頭をひっつかみ、顔を無理矢理に上げさせると、シェパードは写真を指さした。
「見たまえ。兵士だけじゃない。女や子供、老人もいる。皆ジェド人だよ。お前が胸に自慢げにぶら下げているその勲章は、彼らの血を吸ってできあがったものなんだ。わかるか?」
「…………」
「それとも彼らはジェド人だから容赦する必要はなかったとでもいうかな? 誇り高きブンデス軍は人々を選別する権利がある。だから汚い血統のジェド人は虐殺しても良いと」
「…………殺せ」
あえぐように、ゼクは言った。シェパードはじっとその顔を見つめ、しばらくすると、すっと手を離した。立ち上がる。
「もちろんだ。だがその前に私の話を聞いてもらいたい」
シェパードがゆっくりとデスクの周りを歩み始め、ゼクがそれを目で追う。
「民族浄化を掲げたブンデス軍は、ジェド人を収容所に放り込んだ挙げ句虐殺しているらしいな。ジェド人は下等な血統であり、誇り高きブンデス経済を食い物にして破壊しようとしているから、その防衛策だとか」
「……」
ゼクは答えなかった。頭を垂らし、割れた額からだくだくと流れる血が、鼻先から垂れるのを見つめる。ぽたり、ぽたり、ぽたり、……意外な程粘度を持ったそれは、無機質な灰色の床に赤い血だまりをつくって、
みぞおちに衝撃
かっ――――と押し上げられた空気が吐き気と共に喉元からはき出された。鈍痛が全身に広がり、苦痛にうめき、酸素を求めてくちを開閉させて、目を見開く。
「答えたまえ」
シェパードが足でデスクをゼクのみぞおちにねじ込んでいた。ひゅーひゅーと喉をならしながら、ゼクは息も絶え絶えに吐き出すように叫んだ。
「そんなもの……! そんなものは、お前達が流したデマだろう! 俺は何も知らないッ……さっさと殺せッ!!」
「だがブンデス軍がジェド人排斥を目的としているのはどの新聞にも載っていることだ。それを知らずに軍人をやっていたとは言わせんぞ、少尉」
「……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……」
その時、遠くで何かが爆発するような、くぐもった音がして、部屋が小刻みに揺れた。デスクの上に乗っていた電灯が揺れ、ぱらぱらと天井から脆くなっていた破片が落ちる。
シェパードはそれを見渡すと、最後にゼクに視線を落として言った。
「さて……ようやくブンデス軍がここを嗅ぎつけたようだ。安寧とした時間はあっという間に過ぎていくな、少尉」
シェパードは拳銃を手に取ると、デスクを蹴り飛ばした。派手な音を立ててデスクが転がる。
シェパードは残った椅子に座った。
「……おしゃべりを終える前に一つ話しておきたいことがある。私の簡単なお願い事を、君がきいてくれるかどうか、それを訊きたいんだ」
また、部屋が揺れた。
遠かった爆音は、わずかに近くなっていた。ゼクが視線を上げる。その顔は血だらけで、アザだらけで……ただ敵対的な意志だけが残っていた。
「この戦いにもはや君たちブンデス軍に勝ち目がないのは明白だ。あと三ヶ月もすれば首都は爆撃の嵐にさらされ、丸裸になった街に、我々半島連合軍の地上部隊が群れなして突入する。そうしてこの戦争は終わりだ。だがその前に」
シェパードがわずかに笑った。その笑みは自嘲にも、ゆがんだ愉悦を楽しんでいるかのようにも見えた。
「……君にあるジェド人を救出してもらいたい。瓦礫の下に埋もれさせるには惜しい人材でね、とある交渉に使いたいんだ」
眉根をよせていぶかしむゼクの前で、シェパードは言う。
「もちろん報酬も用意しよう。君の命を保証する。本来なら爆撃の下にさらされて死ぬか、私の部下に問答無用で殺されるのが自明の理である命を、救ってやる。その代わり簡単なおつかいをしてくれればいい。あるジェド人をこちらの指示するポイントに連れてくるだけで良い。簡単だろう?」
ゼクはやはり返事をせず、ただ無言でじっとシェパードを見つめ続けた。彼の真意を測るように、じっと。
だがシェパードは答えるための長い猶予を与えてはくれなかった。拳銃を無造作に、ゼクの胸に向けた。
「返事をしなくてもかまわない。だが、それも含めた今後の選択には慎重になるべきだ。君の返答次第で私は決めなくてはならないのだから。腕を撃つか」
と、指でも指すようにゼクの腕に銃口を向けた。そしてまた軽口を叩くような調子で銃口の向きを上向きに変えた。
撃鉄を上げる。
「頭を撃つか」
そう言った。
また、部屋が揺れた。
遠かった爆発音は、今や壁一枚挟んだすぐ向う側から聞こえるような気さえする。電灯は激しい揺れに点滅を繰り返し、天井は不気味なきしみを立てていた。
ゼクは身じろぎ一つしなかった。ただ霞がかった意識の中で、夢想していた。
もう鼻先にまで迫った、銃口という形の死と、誰ともしれないジェド人を救う白昼夢のような自分の姿を、秤にかける想像を。
■
アルテンの町並みは沈鬱な敗戦ムードでいっぱいだった。
道行く人は身なりだけはよいなりをしているが、その実最近はろくな配給食も食べていないのでやせこけている。腹ばかり大きい妊婦が灰煉瓦造りのやはり見た目ばかりが立派なビルの影に消えていく――――そこではおそらく闇市が開かれているのだろうが、そんなところへ行っても何もないのは明白だった。なにせこの国は負けているのだ。この街が攻略されるのも時間の問題で、その先にあるのは首都だ。そんな状態の国に、妊婦の腹を満たせるような食料があるはずがなかった。
シェパードの言う通りだな――――と、車に揺られるゼクは思った。
真っ白な短髪、それを隠すようにかぶるつば付きのウォッチキャップ。骨格が太く、特にあごの骨がベース型に角張っている。目から喉元まで走るスカーフェイスで、相貌は疲れ果てた茶褐色に染まっていた――――軍服を着込み、胸元には雷紋に羽が生えた形の勲章が光っている。腕には包帯が巻かれ、三角巾で首につっていた。
彼が乗っているのは軍用のジープで、お世辞にもけが人を運ぶのに適しているとはいえないが、それでもガソリンを使って車が走るだけで、このご時世では感謝しなくなくてはいけない。国民の多くはこの冬を乗り切るための燃料を持たず、薪ですら大金で取引されているような状態なのだ。
国民が疲弊しきっているこんな国に勝ち目がないのは明白だった。だがそんな事を口にすればすぐに国民親衛隊が飛んできて、反乱分子として処刑台待ちの列に並べられてしまう。だからゼクは黙っていた。黙って、ただ自分がなぜこの国でこんな惨状を目にしなくてはならなかったのか、それを反芻していた。
すべてが始まったのは確か二年前の夏――
――雨期にあまり雨が降らなかったせいで、酷い水不足が懸念されていた、暑い夏の日。
ゼクはそれまでポルトランドで暮らす、どこにでもいるただの学生だった。少し無口で、大柄で、朴訥な性格をしていて、専攻する鉱業系化学薬品の研究に従事していた。もっとも、金融業を営む裕福な両親のお陰で何不自由なく暮らすことができたゼクは、そんな生活が嫌で嫌でたまらなかった。金融業などと呼び名は良いが、その実やっていることは金貸しだ。人々が大金を掴む夢を持つかたわらに立って、舌なめずりする悪魔の生業――――それがゼクが持つ金融業のイメージだった。だからゼクは、きっと他人の不幸をかすめ取って得たであろう金で養われる自分という身が、酷く汚いもののように感じていた。
そして決定的な出来事が重なったあの日、家を飛び出して軍隊に入ったのだ。
折しも隣国・ブンデスでは外国人排斥運動と共にきな臭い政党が台頭していて、すわ有事か――――とまでも行かないまでも、危険な兆候があるのは確かだった。軍隊は人を欲していて、ゼクはそれに応じた。もともと体の大きかったゼクは頭角を現し、二年も過ぎた頃には精鋭である空挺部隊に配属された(ポルトランドの軍隊が未熟だったというのもある)。
そして戦争が起きる。
ブンデス軍の進軍は世界に激震を与えた。だがその当事者だったゼク達は拍子抜けしていた。何せ進軍してきたブンデス軍と交戦するものと息巻いていたら、ポルトランドとブンデスが協定を結び、協戦することになってしまったのだ。全く何が何だかよくわからない内にゼクは精鋭としてブンデス軍に送り込まれ、外国人部隊としてブンデス軍に編成されてしまった。
それから毎日が目まぐるしく変わっていった。半島連合軍と交戦状態に入り、ちんたら訓練していた日常があっという間に戦場に成り代わった。日常と非日常が交錯する戦場に放り込まれ、降下猟兵工作兵としてゼクもいくつもの戦場を渡り歩くことになる。毎日毎日、意味があるのかないのかわからない任務が与えられ、ゼクは何度も死がかすめるような経験をしながら、なんとかそれらをこなしてきた。愚直にこなせばこなすほど、死は身近になり、日常は遠のいていった。幾人もの戦友の死を見つめる内、いつしか死の恐怖も薄れ、ただただ、思うようになった。
もう疲れた。
あぁ、もう休みたい――――そんな嘆きがふと頭をよぎるようになった。
捕虜になった時もそうだった。任務中、突然ぼんやりと意識がかすみがかり、もう休んでしまいたいという言葉で意識が埋め尽くされ、へたり込んでしまった。気がつくといつの間にか部隊は全滅していて、自分だけが捕虜として敵にとらえられていた。そして――――
『君にあるジェド人を救出してもらいたい』
――――あの銃火の迫る尋問室で行われた、最後の会話を思い出す。
期限は二週間だ、と、シェパードは言っていた。
『二週間が過ぎた時点で、このジェド人が幽閉されている街、アルテンには大規模な空爆作戦が実施される。規模は街一つを瓦礫の山にするには充分すぎる程とだけ言っておこう。それまでにこちらの指示するジェド人を救出してもらいたい』
『君は我々の用意した作戦通りに動けばいい。そしてアルテンから七十キロ程の所にある長い林道に連れて来る。アルテンからはおそらく半日ほどかかるだろう。それまでに後ほど指定する周波数に連絡をくれれば、そこで半島連合軍の――――我々の小型輸送機が待機している。後はパイロットがやってくれる』
『君の命はもちろん保証しよう。亡命扱いとなり、あとは半島連合のどこかの国で後世を過ごせばいい。何をしても自由だ。我々は干渉しない。……だがまぁ、老婆心から言えば、再就職するなら、軍人はやめたまえ』
それは祖国への裏切りだ
そんなような意味の言葉をぶつけてやった気がする。もはや意識など霧に飲まれたようだったので、はっきりとは思い出せない。だがその言葉を聞いた後のシェパードの表情は覚えている。手のひらでもがく虫をあざ笑うかのような、底の知れない笑みを浮かべていた。
『祖国?祖国とはどの国の事を言っているんだ? ポルトランド? ブンデス? ――――冗談はよしてくれ、我々の地図にはもう、そんな国の名は乗っていない。三ヶ月後には、実際そうなる』
そして耳元に口を寄せる。
『君が心配するのは自分の尊厳なんかじゃない……家族を忘れてないか? 敗戦国の人間がまともな扱いをされると思ってはいないよな? 君が心配するのはそう――――父親の頭を吹き飛ばすライフルの弾や、母親の首を絞める絞首刑の縄、それに……あぁ、そう。妹の貞操もだ』
ゼクが思わず目を見開いたのを、シェパードは今度は声を出してあざ笑った。
『……急げよ、ゼク中尉。二週間後までにまた会おう』
さもなくば、絶望。
悟ると同時に、放たれた弾丸
腕を切り裂き、走る激痛、頬に飛び散る、生ぬるい血が――――
「到着しました」
ジープが止まり、運転手が後ろを振り向きざまそう言った。
「……どうかなさいましたか?」
身動き一つしないゼクに、運転手はいぶかしげに声を掛ける。ゼクはその顔を見つめて、表情も変えずに「いや」とだけ返した。どうかなってしまうのは今ではない。三日後だ。 ――――そう、あれからもう一週間と四日も経っていた。
アルテンにあるその地下室は、今や射撃場になっていた。灰色の壁に覆われた空間は銃声と銃火に充ち満ちていて、火薬が上げるうっすらと白い煙と、臭いに覆われている。射撃台に立つのは兵士や警官もさることながら、一般人の姿が多い。今やいつ半島連合軍が街になだれ込んでもおかしくないので、その対策として市民にも戦いの訓練をしようというわけだ。もっとも射撃台でまごつくのは老人や婦人、さらにはまだ国民学校にも入れないような小さな子供ばかりで、いくら訓練したところで戦況を大きく変えるような力も、敗戦を二日三日伸ばすような力もないのは明らかだった。彼らとて、もちろんこの街が戦場になれば家族を連れて逃げる腹づもりであり、ならばなぜこんな所で指をガンオイルにまみれにしているかと言えば、訓練を終えるともらえる、涙ばかりの配給切符のためだった。
だがそんな中で一際熟達した射撃を見せつける女の子が一人。
旧型のスティックリロード式の拳銃を使い、ボルトが後退する甲高い金属音を響かせ、次々と弾丸を発射していく。発射間隔は他の一般人と――――ともすれば警察官や軍人とすら比べても格段に早く、狙いも精確で、ほぼすべてを人形標的の胸に二発、頭に一発当てている。
照準を覗くその顔は、酷く『痛々しい』。
右目につけた医療用の眼帯の端には強く殴られてついたとおぼしきアザが見え隠れしていて、黒髪で隠した額には切り傷が、耳たぶは醜くちぎれた痕を残していて、それをセミロングにまで伸ばした髪で隠している。髪はアップロールしているが、首より上についたアザや細かい傷を巧妙に隠すように結わえられていた。首にはネックウォーマーが巻かれているが、それが実は自ら首をつった時についた縄の痕を隠すためのモノだというのを、知っている者は少ない。対面した人間は彼女の顔についた細かな傷やネックウォーマーなどより、その真っ赤な相貌の方に注視してしまうからだ。真っ赤な相貌――――ジェド人が忌み嫌われる理由の一つでもある。
装填した弾をすべて撃ちきると、彼女は一度銃を射撃台の上に置き、手にかいた汗を、着ていたシックなシルクの黒いドレスの裾で拭いた。価値のわかる者が見れば卒倒してしまいそうな、贅沢な手の拭き方だ。そのドレスの上には軍用の無骨なコートを羽織っていて、アンバランスな組み合わせが、逆に彼女の容貌に似合っていた。
ふと、彼女は視線を横に向けた。話し声が聞こえたのだ。よく知った声と、知らない声の、話し声が。
そして彼の姿をとらえた時、彼女は身震いするほど驚いた。見開いた相貌の中の赤が、一際輝く。
彼女は視線をゆっくりと人形の標的へと向けると、拳銃を手に取った。弾を十分に装填すると、それを構えることなく、コートに隠れた腰の裏へと回し……
「やぁゼクじゃないか……! 心配したぞ、元気になったのか?」
ゼクが地下へ降りるとすぐに、旧友と出会った。飾り気のない丸めがねに、茶色いゼクよりも短い短髪。人なつっこい笑みを浮かべ、まるで戦争などとは少しも関わりのない、田舎の苦学生のような男だ。だが時代がそうさせたのか、彼が着ているのは上級士官が着る軍服だ。
ゼクはきっちりと直立し、敬礼して返した。
「お久しぶりですアラン少佐」
アランは優しげな笑みを浮かべるとかぶりを振り、
「よせよ、救出された時に頭でも打ったのか?」
アランの言葉に、ゼクも笑みを返して、気心の知れた友人同士がそうするように、二人は肩をたたき合った。そう、アランとは旧知の仲だ。同年代で、戦争初期から生き残っていて、その上ゼクは一度彼の窮地を救っており、一方で捕虜となったゼクを救ったのはアランだった。ゼクにとってアランは親友でもあり、戦友でもあり、頼れる上司だった。アランもゼクを信頼している。ゼクが戦場に出てよかったことと言えば、彼と出会ったことぐらいだろう。
だからこそこれからしようとしている事に、胸が痛んだ。
「それで、今日はどうしたんだ? まさか私に会いに来ただけ、とでも言うんじゃないだろうな?」
ゼクはいぶかしげに、
「だめか?」
「まぁだめではないが……君はそんな殊勝なタマではあるまい」
そう言って、アランはにやりと笑って見せた。ゼクもシニカルな笑みを浮かべる。
「お前を手伝いに来たんだ。酷い事言うなよ」
「おや、そうなのか。それは良い心がけだな。なにせこちらへ来てからというもの、事務手続きに追われるばかりでな。頭の固い議会連中のための書類だよ。くだらないよな……その上お守りの仕事も拝命して」
「あぁ、ジェド人を監視してるんだろ」
ゼクがそう言うと、アランは眉根を寄せた。
「どこでそれを?」
朴訥な性格が功を奏した。アランは『東方総司令部付予備将校』などという、ゼクではとうていたどり着けない任についていて、それだけに尋問や拷問の訓練をよく積んでいる。もしゼクがおしゃべりで隙だらけの奴だったら、今の質問に対する反応であっといまに嘘を見抜かれていただろう。だが、ゼクはそうじゃなかった。至極硬い表情で、いつものように不器用そうな口調で言った。
「風の噂で、少し聞いたんだ」
アランはしばらく、ゼクの目を見ていた。何かを伺うように、じっと――――ゼクはその目を、やはり不器用な無表情で返した。
「……根も葉もない噂もあるんだ。真に受けるのは感心しないな」
アランは周囲を伺うように当たりを見渡すと、ゼクに耳打ちする。
「とはいえ今回は当たりだ。その通り、私はジェド人を監視している。大きな声では言えないがね」
「そうか」と、ゼクは浅く、何度か頷いた。
そのジェド人こそ、シェパードが指定してきた『あるジェド人』に違いなかった。
国に帰ってから三日後、撃たれた腕の傷の手当てのために戦傷病院の床に横たわっていた(病院はいっぱいの患者で溢れかえり、ベッドなどどこにも置き場所がなかった)ゼクの下に、ブンデス軍将校が一人現れ、無言で一枚の紙を手渡した。そこには詳細なジェド人誘拐計画が記されていて、最後に「老犬より」とサインがされていた――――差出人は間違いなく、シェパードだろう。どうやってかはわからないが、シェパードはもう充分に配下の人間を送り込み(つまりスパイだ)、ブンデス軍に浸透しているらしい。もしかしたら、ゼクのように元々いた将校を引き込んだのかもしれない。
計画書には具体的な地名や人名は伏せられていて(情報漏洩を恐れたのだろう)、誘拐対象のジェド人のついても同じだった。名前がなかったのだ。
かわりにこうあった――――『アルテンを探せ。ブンデス人に丁重に扱われるジェド人は、この世に一人しかいない』
「……アラン、俺は怪我が治ってきたので、そろそろ前線に復帰するんだ」
回顧をやめたゼクは、できるだけなんでもないように、そう切り出した。そのジェド人に会う必要がある。
「本当か? それはめでたいな! 質実剛健、君の兵士としての気質は賞賛に値する。しかし……まだ腕をつっているようだが大丈夫なのか?」
ゼクは三角巾でつっている腕を軽く振って見せた。
「ほとんど治りかけてるが、医者が念のためと巻いたんだ。――――それで、ちょうど近くを通りがかったんだが、お前はもうこの町を出るんだろう?」
アランはいぶかしげに、
「なぜそれを?」
ゼクは慎重に、何でもなさそうな口調で
「そろそろこの街も危ない。将校は首都の方へ後退する頃だろうと思って」
実際には違う。
件のスパイが再びゼクの下を訪れ、誘拐対象のジェド人の情報を寄越したのだ。その中に『対象は近々前線に近いアルテンから離れ、後方の首都方面へ護送される』との情報があった。
アランは申し訳なさそうな表情をして、
「……あぁ、実はそうなんだ。君にはすまないと思っている。まるで私だけ安全な場所に逃げるようで……だが東方司令部の方針で」
「いいんだ、アラン。それより、司令部が特別にジープを用意してくれたんだ。一緒に乗っていかないか?」
もちろん、始めからそのつもりだった。
以前に上げた功績で、ゼクはそれなりにも名の通った『英雄』として知られている。特に軍内部ではそうだ。戦争初期、歩兵としてはもっとも早くに戦果を上げていたゼクは、戦意高揚を目的としたプロパガンダとしてさんざん利用され、持ち上げられていたのだ。今でもその『貯金』のお陰で、多少融通がきく。たとえば移動のために専用のジープが用意されるとか、戦傷休暇が長く取れるとか、その休暇の間に友人に会いに行くとか……。
軍はまだ、ゼクが戦傷の治療のために病院にいると思っている。二、三日帰ってこなくても、多少羽目を外しすぎている、程度にしか思わないはずだ。その間に誘拐を敢行し、ブンデスを脱出する――――そういうつもりだった。
「それは願ってもない事だが……私はここで仕事がまだ残っているからな」
「だったら例のジェド人だけでもいい。先に送り出して、お前は仕事に専念してさっさと終らせて、この街を出るべきだ」
そこでゼクは、少しためらってから、付け足した。
「これは勘だが……あと二、三日でこの街も空爆を受けるような気がするんだ」
思わずもらした一言だった。もちろん、こんな事を言うつもりはなかった。計画にもない事だ。だが、友人に嘘をついているという引け目が――――いや、もはや純粋な友情から、そう言わずにはいられなかった。命を救いあった仲だ。この戦争でただ一人、心を許せる友人かもしれない。自分がどういう状況にあるかは充分にわかっていたが、彼が死ぬのを、保身のためにただ黙って見過ごす事は、どうしてもできなかった。
アランは顔をしかめ、とがめるように言う。
「なんてことを……憲兵隊にしょっぴかれたいのか? 厭戦的な事を口にするのは――――」
「アラン、これは真剣な話なんだ」
ゼクはアランの肩を掴んだ。
「頼む。早くこの街を出てくれ。友人として、頼む」
アランは困惑した表情を浮かべて黙り込んでしまった。だが、しばらくすると納得しきっていない表情で、「……わかった」と頷いた。
「何か事情があるんだろう。他ならぬ君の頼みだ、聞こう。だが空爆の話はもうするな。私の方からも、友人としての頼みだ」
ゼクはほっとした笑みをわずかに浮かべる。
「あぁ、わかってる。それで、ジェド人はいつ送る?」
「そうだな……まぁ早い内というなら、今日でも構わないさ。向こうへの連絡は後で私から連絡する」
「わかった。それで――――誰だ?」
と、ゼクが視線を向けたのは射撃台の方だ。そこには十人前後の老若男女が思い思いの構えで銃を撃っている。そのうちの誰だ、という意味だ。アランは一番奥の射撃台を指さした。
「あの娘だ」
ナイフみたいな女だな、とゼクは思った。
ふわりと後頭部で広がるアップロールの髪は噂に聞くジェド人の特徴通り、夜半に眺める湖面で染めたような、つややかな漆黒だった。肩に腕を通さずかけているのはブンデス軍のトレンチコート、そのくせ中に着ているのは美しいシルクのドレスだ。田舎育ちで、華やかな物といったら花くらいしか見た事がないゼクにだって、その組み合わせがまともじゃない事ぐらいわかる。もっとも、ジェットの女だってそれは百も承知で、その上でそんな格好をして、銃をぶっ放してるのかもしれない。なにせ仕切り板の影からほんの少し見える彼女の表情には、恥じるような色合いは少しもなく、まるで「だから何?」とでも言わんばかりの、カミソリのような危うい鋭さがあった。
彼女が振り返った。
目が合う。
ゼクは少し口を開き、そして再び閉じた。それは感情を表に出すのが苦手なゼクの、驚きの表情だった。
目が真っ赤だった。それも虹彩だけでなく、瞳の真ん中の黒目も、全部真っ赤だった。中央に寄れば寄る程色濃くなる、赤、紅、緋――――意志の強そうな二重の相貌が、ゼクをじっと見つめていた。彼女の後頭部でアップロールの髪が揺れると、まるで怨念の炎が揺らめいているかのようだった。
「トキノ! こっちへ来てくれ」
アランが手を挙げて声をかけた。どうやら件の彼女はトキノというらしい。その聞き慣れしない名前の印象が、間違いなくジェド人だとゼクは思う。
アランの言葉を聞いているのかいないのか、トキノはきゅっと薄い唇を一文字にして、ゼクを見つめていた――――いや、むしろ睨んでいたというべきか。きっと普通なら愛嬌のある大きな目が、意識的に細められているのが、ゼクにはわかった。なにせ正面から見つめられているのだから。なんだか理由もなく責められているような気分になり、いたたまれなくなったゼクは、そわそわとあちこちに視線を散らした。
トキノがようやく歩き出してから、アランはぼやくように言った。
「すごい目だろ。彼女はジェド人の中でも特別目の色が濃いんだ。言うなればジェド人の純血というべきか……彼女の家系は、ジェド人という民族が生まれて以来、一度として他民族の血が入った事がないんだそうだ……少なくとも記録上は。もっとも、それが事実であると、あの目も物語ってるがね」
それから声のトーンを落とし、
「……本来ならあのような娘こそ、我が政府が率先して排除するべき存在であるはずなのに。族議員共め、『政略的妥協』だかなんだか知らないが、軍上層部を丸め込んで内密に捕虜扱いにしているんだ。これを知ったら、総裁はきっとお怒りになる……なのに奴らときたら、何もわかっていない」
ぶつぶつとつぶやき続ける。ゼクは友人の薄暗い豹変をただ黙って見つめた。外国人であるゼクには完全には理解できない怒りが、アランの呪詛のような言葉に込められている――――。
ゼクはポルトランド人である一方、アランは純粋なブンデス人だ。そしてブンデス人にはジェド人に対する偏執のような憎悪がある。
ブンデスで手にする新聞曰く、『ジェド人は誇り高きブンデスを金の力で支配し、ブンデス人を奴隷のように使役しようとしている。かつて偉大だったブンデスが国土を減らし、今や明日のパンにも苦しんでいるのは、紛れこんだジェド人が卑怯にも中から我が国を浸食しているからだ』――――そんな論旨の社説が紙面を堂々と飾っている。
実際、裕福な資産家の多くにジェド人が名を連ねているのは事実だし、ポルトランドで育ったゼクも、ある時期を境に羽振りの良いジェド人が入植してきて、鉱山を買収したり、商店を開いてポルトランド人を使役する姿を見ている。それに対して嫌悪感があったのもまた、否定はできない。真っ赤な目を持ち、真っ黒な髪をした人間が、街を闊歩しているのを見るのは、気持ちの良い物ではなかった。その上、そんな人間が時を追うごとに多くなっていて、将来は自分の雇い主になるかもしれないという危機感を抱くほどになった。吸血鬼さながらの容貌の連中に、横柄に仕事を言いつけられるなんて――――ここは俺たちの土地、俺たちの国じゃなかったのか? そんな声が大学のあちこちでささやかれ、そのうちの一つはゼクの口から発せられていた。
それは侵害されてから初めて気づいた、ゼクの中にある民族の誇りだった。
だからゼクはブンデス軍に協力する事はやぶさかではなかった(突然の事で困惑はしていたが)。ジェド人を国から追い出す、という大義名分は、ゼクをはじめとしたポルトランド人に往々にして肯定的に受け入れられた。ゼクとてブンデス軍に派遣される時は、お祭り騒ぎで送り出されたのだ。
だが戦争が終ろうとしている今、あの大義名分や、お祭り騒ぎがなんであったのか、ゼクにはわかる気がする。
あれは押さえ込んでいた身近なジェド人への不平や不満をぶちまけていたに過ぎないのだ。皆『ジェド人を追い出せ』と叫びつつも、頭の中にあるのは自分が勤める商店の上司だったり、向かいの店の商売敵だったに違いない。ゼクが戦場で遭遇したような、まだろくな仕事にも就いた事がないような――言うなれば自分そっくりな――若者や、年端もいかない子供に対して、同じ思いを抱いていたりはしないはずだ。
「総裁はおっしゃった。『もっとも憎むべきは赤い目をした連中だ。奴らは礼儀も知らず、金に汚く、いつも人の物をねたみ、寄生する土地を探してさまよっている。危険な連中だ、だからこそ我々誇り高きブンデス人は』……」
アランは『良い奴』だ。ゼク以上に温和で、インテリで、人望に厚く、正義感も強い。だからこそまっすぐにジェド人を軽蔑し、排除しようとしている。外から入ってきたゼクはもうそんな熱を失ってしまったが、アランはそうではない。アランはこの戦争を死ぬまで続ける気だろう……ジェド人を排斥し、誇り高きブンデスを取り戻すため。
「トキノ、頬に煤がついているぞ」
アランが向かいに立ったトキノにハンカチを手渡す。その顔はゼクと対した時とは違い、冷酷ともいえるほど、無表情だった。きっと内心軽蔑しているのだろう。もっともそれはトキノにとっても同じのようで、彼女は目の下についた黒い煤を、ハンカチを受け取ることなく、手の甲でこすり取った。野生の猫のような、粗雑な仕草だった。
アランはそれをとがめるでもなく、ハンカチを胸元にしまうと、突き放すような口調で言った。
「トキノ、彼はゼク。君をこれから後方の街に送り届ける。ゼク、彼女はトキノ。詳細はさっき話した通りだ……色々な意味を含めて、丁重に扱ってくれ」
ゼクは頷いて返し、トキノはやはり、じっとゼクの目を見つめていた。アランは二人の不穏な空気を察してか、ため息混じりに「握手でもしたらどうだ」と言った。
「あぁそうか、握手か……」
愛想というものを知らないゼクには、唐突な提案に思えた。慌てて服の端で手を拭こうとして、アランにハンカチを差し出された。ばつが悪そうにハンカチを受け取ってそれで手を拭くと、トキノに向かって手を差し出した。
「よろ……よろしく」
不器用そうにそう言ったが、トキノは黙っていた。ただ黙って、右手を腰にやったまま、突っ立っていた。
アランが眉根を寄せる。
「トキノ、どうした。彼は多忙を裂いてここに来たんだ。挨拶位したらどうだ」
そうアランがとがめるように言っても、彼女は身動き一つしなかった。ただ黙って――――
「(――――なんだ)」
ゼクは何かに気がついた。何か――――違和感、を。
アランはトキノが不機嫌だから握手もしないと思っているらしく、訥々と語って彼女をさとそうとしていたが、ゼクにはそうは見えなかった。
酷く汗ばんでいた……彼女の額に、細かな汗が浮かび、裸電球の光に輝いている。
「彼の胸を見たまえ、羽根突き黒雷紋の勲章も授与された、立派な兵士だぞ。君に接するには十分な肩書きだろう。それに彼は」
「――――しゃ」
彼女の口が、ささやいた。
ゼクは小首をかしげる。彼女は唐突にうつむいてしまった。そして呪詛のように何かつぶやき続けていたが、あまりに小さく、ほとんど聞き取る事はできなった。なんとなしにゼクはその言葉を聞こうとして、彼女の顔をのぞき込むように、背を曲げ、耳を寄せた。
そこで、はっきりと耳にした。
「ナイトメルヘの、虐殺者……ッ!」
ゼクが目を見開く。
アランが「――――何? なんだって?」とつぶやいて
その刹那、トキノが腰にやっていた手をゼクに突き出した
「今ここで死ねッ! ゼク・アランベルトッ!!」
旧型の拳銃だった。彼女が握ったその銃口は、気づいた時にはもう、ゼクの胸をとらえていた。
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2010/04/04(Sun)09:13:36 公開 / 無関心ネコ
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■作者からのメッセージ
最後までお読みくださり、誠にありがとうございます。そうでない方も、興味を持っていただき、ありがとうございます。
初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。無関心ネコです。
本作は第二次大戦を基にしたフィクションです。
名前や設定から何を元ネタにしてるかはすぐにわかってしまうと思いますが、あまり細かい史実的な突っ込みは考えず、ぜひ頭を空っぽにして読んでいただきたいです。
歴史に通じる方は逆に怒らせてしまうかもしれません……自分の学力ではとうてい歴史を如実に語る事はできないのです。テンポも悪くなってしまいますし_(..)_申し訳ないです
後書きまでお読みいただき、ありがとうございます。
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2010/04/04 指摘を受けて修正
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等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。