-
『獣道』 ... ジャンル:異世界 ファンタジー
作者: 飛燕、
-
あらすじ・作品紹介
二つの国の、どちらにも属すことのできない忌まわれし少女の話。
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
*序章
この世界には二種の人型の獣がいる。
一つは知恵を持つ獣(もの)「知獣(ちじゅう)」
一つは力を持つ獣。「戦獣(せんじゅう)」
知獣は知恵と賢さをもって国を統べた。戦獣は強さと信頼をもって国を統べた。
お互い相手を忌み嫌い、貶(けな)し、子供には忌まわしい存在だと埋めつけた。ところが誰が決めたのか、村で数人ずつ、交代しながら四歳から十二歳まで相手の国へ入り込み、そこで暮らすことが決まっている。
誰も気づかない。気づいても気づかぬフリをする。学びの場で子供にできた友達が少し荒々しかろうと、周りの子に比べて知が長け、力が弱かろうと、珍しい子だで終わるのである。
──細い小道が、深苑の前に広がっていた。
鬱蒼(うっそう)と茂るむっとするような深緑の山中で、頭を茂みに突っ込んだ格好で呆然とする。
急に目の前を走った小さな兎に驚いて、すっころんだらこの茂みに頭を突っ込んだという訳だ。
慌てて身体を起こし、全く見えなくなってしまった茂みに先を見つめて考えた。
(人工的ではないだろうな)
あまり知識のない頭を一生懸命回転させ、これがなにかを考える。
人工的ではない──そう考えたのは、その道があまりにも細く、大人が通れるか通れないかくらいの大きさだったこと、人が絶対通らないような、わずかな木と木の間を縫うようにしてできているせいもあった。それから、と考える。──こんなにでこぼこはしないと思う。知識のあるひとなら、もう少し平らに綺麗に均してある。
(行ってみようかな)
小さな好奇心が、少しだけ胸に残っていた恐怖に勝(まさ)った。
濃い緑の茂みに押し入る。痩せた細身の体は、あっという間に飲み込まれて、さっきまで深苑がいたところからは見えないようだった。振り返って、少しだけ前の道を見てから、口を結んだ。
立ち上がって、先に目を凝らすようにして、ゆっくり進む。
(やっぱりないか)
そう思い少し落胆しつつ、少しだけ安心したのもあった。安心して足が速まる。
(なにもいませんように)
そう願って、ただ只管(ひたすら)に足を動かす。
不意に道が開けて、少しだけの円い草原があった。奥にはまだ道が続いているのが見える。
「ふう」
ここまで歩いてくるのはさほど大変ではなかったのだが、それよりも神経を張り付めすぎて、緊張が解けた瞬間、足もとがふら付く。少し眩暈がして、青々と茂った草原(くさはら)の上に寝転んだ。気持ちの良い風が、周りの草と自分の頬を撫でていく。揺れた草が頬を擽って心地良かった。頭上では、気持ちのいい水色の空に、真っ白な雲が重なって、まぶしい太陽が隙間からのぞいていた。
「いたぞ!」
突然怒号が耳に響いて、目を見開いた。慌てて起き上がり、汗ばんだ手で額から流れる汗を拭い、周りを見渡す。
──さっきと、なんら変わりのない風景だった。
「夢、か」
小さく呟いたのは、それが夢かどうか確認しないと蘇る恐怖に耐えられなかったからである。
もう一度、風景を見渡して、ふうと息を吐いた。
眠ってしまったらしいが、空の色は何も変わっていなかったので転寝(うたたね)していた時間は数分だろう。起き上がって、淡い水色の衣服についた、細かな土と草を手で叩き落とした。
(もう少しだけ)
そう思って、道へ向かって歩き始める。
(どうせ帰るところなんて、ないんだしなあ)
朝方起こした大罪を思い出す。苦いものがこみ上げてきて、慌てて嫌なことを振り払うように、急いで進み始めた。
道に入ると先ほどとなんら変わりはなかったが、地面が少しだけ均されているようだった。地面がでこぼこしていなくて、道も少し広くなっている。これなら大人も通れるくらいだ。
「……ん?」
なにか聞こえたような気がして、立ち止まって耳を澄ませる。あちら側から、話し声のようなものが聞こえた気がした。
(まさか……わたしを追って?)
嫌な想像が頭を一瞬で駆け巡る。握り締めた手に汗が滲んで顔は緊張で強張る。動くこともできずにずっと耳を澄ませ続けた。
(──やっぱり、聞こえる。それに、近づいてきてる──)
深苑はあえて道の横の影に隠れて、木と木の間を伝って歩いた。やはり近づいてくるその音は、獣らしき声。
向こうに薄ぼんやりと、人影が見えた。動かないで……動けないで身を硬くしてその方向を見つめた。
(やっぱり、獣……)
口をきつく結んで、憎しみをこめてぎろっとその方向を睨む。来たのは、男二人。一人二十代前半らしく、若々しくて生き生きした感じである。もう一人は、五十代前半らしい、優しそうな垂れ目の、おっとりしたような感じである。喧嘩をしているのではなくて、ただふざけ合っているだけらしい。男達はひとらしいが、服が奇妙だった。
外套(マント)のような白が汚れてしまったのような色のものを被るようにして羽織、甚平のように結んで着ていて、くっついているらしい頭巾(フード)のようなものを頭に深く被っている。裾は足首まで伸びていて、下駄のような煤けて今にも壊れそうな履物を履いていた。
もう一度耳を澄ます。
(本当にひと?)
また新たな疑問が浮かんだ。近づいてくるにつれて、言葉がはっきり聞こえてきたのだが、どうも、知獣語≠ナはないらしいのだ。
(私が理解、できる──)
思わず目を見開く。全部、全部理解できるのだ。多少訛っていることを無視すれば、全部理解できる言葉だった。それは、言葉として入ってくるというよりは、本能的にだった。知獣語は、使いづらく汚い嘘だらけの言葉で塗れていたけれど。
気づいたら、立ち上がっていた。
「すみません! あなたたちはどこから来たんですか? もしかして戦獣なのですか?」
突然出てきた深苑に、男たちは大げさに驚いた仕草をする。
「なにもんだあ? あんたあ、この辺じゃみねえなあ」
若いほうの男が、大げさに驚いた風に、年取った男を見ている。年取った男は、目を見開いたまま、こちらをじっと見つめていた。深苑は少し恥ずかしくなって、視線を落としてうつむく。
「おまえさん、ずいぶんとユウイに似とるが、もしかしてユウイの娘さんかぁ?」
「夕依? それは母の名前ですが、知っておられるのですか?」
確かに、ユウイは母の名前だった。夕暮れの夕に依と書く。
「知ってるもなにも、わしは夕依の祖父じゃからなあ。」
懐かしそうに目を細めて、微笑むその面影は、どことなく安心させるものがあった。だけど、母の祖父、ということはかなり年をとっているはず。知獣だとすれば、もう生命維持は不可能に近い。戦種は知獣より寿命が長いのだろうか? ぐるぐると心の内で、疑問が渦巻く。
「ということは、私の曾祖父、ですね。はじめまして。深苑と申します。深いに苑(その)と」
地面に指でなぞってみせると、曾祖父はは微笑んで、おおらかに笑った。
「孫なんだ、堅苦しくなろうことはなかろう」
手を、茶色のブロンドのくしゃくしゃの髪にのせて、優しく微笑む。その、温かくごつごつとした手のなれない感触に、心の中に暖かいものが広がった。その隣で、男が所在無げに立っていた。
「おぃ、リソノ爺さんよ、俺を忘れないでくれるかい」
苦笑したように若い男が呟くと、曾祖父はやっと気づいたようにそちらを見ると、深苑に向かって示して見せる。
「こいつがお前の叔父の、ヨウケイっちゅうやつさ」
「よろしくな」
八重歯をみせて笑う男──叔父が言う。曾祖父は地面に小枝で遥桂、と書く。
「あぁ、忘れとった。ワシはリソノという。利口の利に、深苑の苑じゃ」
「利苑お祖父様?」
「ははははっ。あまり堅苦しくなるな。村のものだってもう少しは打解けておる」
大らかに笑った笑顔に、温かいものを覚えて、ぎこちなく微笑み返した。
二、三秒の沈黙の後、思い出したように利苑が口を開いた。
「忘れちょった。深苑、あんた、どこから来たんだ?」
若い男が不思議そうに首を少し傾げた。
「たしかこっちは知獣の住むほうだろ? 夕依はとっくの昔に帰ってきて……──亡くなってるが」
言い辛そうに顔をふせてボソッと呟く。
深苑は死んでいた≠ニいう事実は知らなかったので内心ショックを受けつつも、平然を装って微笑んでみせた。
「母がなくなってからは、亡くなった父の伯母が、育てて下さいました。ですが、あちらの暮らしはこのうえなく辛かったので、たまたま見つけた細い道を通っていたら、こちらにつきました」
「そうか……」
深苑は少し逡巡して、それから目の前にいる親類にむかって頭を下げた。
「詳しい事情は後々話します故、今はなにもお聞き頂かないで欲しいのです」
一瞬だけ利苑と遥桂は顔を見合わせて、それから口を開いた。
「祖父ちゃんに頭下げなくてもいいじゃろ。家へ来たらええ」
「ほっ、本当ですか!?」
深苑は顔を勢いよくあげて、目を見開いたまま硬直する。
「ああ。ほら、決まったらさっさと家へ来るが良い」
行きかけていた道を利苑は引き返して、深苑を促した。
* 一章 失われた過去と裏切り
1
「あらぁ、これがユウイの娘かい? ほんに似とる顔しちょるなあ」
そういって、目の前の老婆は、細い目を皺の中に埋めた。人懐っこそうな笑顔が、老いた顔に浮かぶ。
深苑の曾祖母らしく、何度も嬉しそうにして、ときせつ皺に埋っている細い目に、透明な雫を浮かべていたりした。
「よろしくお願いします」
「そんに堅苦しゅうなるな。腹は減ったかい? 部屋は夕依のを貸してあげるからねえ」
次から次へと、老婆とは思えないほどに動き回っている。それを唖然としたように見つめる深苑に向かって、利苑は苦笑した。
「孫が帰ってきてて嬉しいんじゃ。些かはめを外しすぎじゃが、許してやってくれの」
「深苑や、部屋はここじゃから一応見てきたらどうや? しばらく使ってなかったから、埃っぽいかもしれんが、自分で好きなようにしてええからのう」
曾祖母が広い家の中で手招きしていた。深苑は言われるがままに部屋へ向かう。
こちらの家は、知獣の家とさほど変わらなかったが、それよりも随分と古代的である。
家は太い木を組み合わせて釘を使わず作ってあるようだし、家の中の家具も知獣とは違っていた。
家の中は、家具が基本少ない。ゆったりとした居室は羊の毛をそのまま編んだようなふわふわとしたものがひいてあって、木の板で作られた簡素な長椅子が、窓際に置いてる。日の光がたくさん差し込むように設計されている大きな窓からは、柔らかい日差しが注ぎ込んで、居室を温かくしていた。長椅子の前には大きな暖炉が構えてあって、少し離れたところに知獣のところにあるような小さな箪笥が置いてある。居室はそれしか置いてないようだった。
深苑が言われたとおりに進んだ部屋には、木の大きな箱のような長方形のものがあって、どうやら寝台らしいのだが、そこにも羊のような毛が広がっている。あとは小さな棚と、勉強机のようなのような文机(ふづくえ)が置いてある。あとは、大きな開けた窓がひとつ、置いてあった。全体的に埃っぽく、やはりこちらも簡素だった。
珍しそうに見渡す深苑をみて、曾祖母は不思議そうにいう。
「珍しいかえ? 粗末で悪いけんど、こんな知獣よりの辺境の村じゃこれで精一杯なんじゃ」
申し訳なさそうに語尾をのばした曾祖母に、深苑は慌てて首を振る。
「そんなことはありません。こちらが珍しかったもので……」
「ほんにかえ? なにか不自由なことがあったら言うんじゃぞ」
まだ心配そうに言う曾祖母に、ぎこちなく会釈をして部屋から出て行くようにそれとなく促した。曾祖母は全く気にした様子もなく、部屋を出てく。
もう一度見渡した部屋は、知獣とさほど変わらなかったのだが、それでも人の暖かさがあるこの部屋のほうがいいように思えた。
知獣の深苑の扱いといったら、それは動物以下くらいにひどいものだったのである。
深苑は思い出して胃からせりあがってきた憎悪と吐き気を飲み込む。
ひとまず疲れたからだを癒そうと、深苑は使い方のよくわからない寝床に横たわる。白い羊毛が、からだを擽って心地よかった。
深苑はそのまま意識を眠りの中へ落として、夢も見ずに深い眠りへと落ちていった──。
*
「そんなとこで寝ちょったら風邪ひくぞぉ。ほれ、起きぃ」
骨ばった細い手が、自分の身体を揺さ振った。
むう、と呻き一つあげて、起き上がった深苑は視界に見慣れない老婆の顔を捕らえた。ここが自分のいた場所とは違うことを思い出して、慌てて謝る。
「すみません。つい疲れが出て……」
「ええんじゃ。夕餉ができちょる。はよう来なされ、爺さんがまっとるぞ」
「あ、すみません。今行きます」
慌てて返事をして、深苑は髪を手櫛で透いた。こちらには、櫛というものがありはしないのだろうか、と深苑は思う。
居室へ向かうと、利苑と曾祖母が、朱卓のセットらしい円い椅子に腰かけていた。一つだけ、席が空いていて、そこが深苑のためにあることが一目でわかる。もしかしたら昔は母の場所であったのかもしれない。
「遅かったのう。ほれ、粗末じゃが食べい」
利苑がおおらかに笑う。深苑はそそくさと席に着いた。
目の前にある、お世辞でも豪華とは言えない夕食を眺める。主食は、硬い麺麭(パン)のようなものらしかった。白く表面に粉がまぶしてある。それから、汁物がある。黒い胡椒のような粒が入っていて、色は薄黄色。具は、麺丹のような白いでろんとしたものが入っている。あとは蔬菜(サラダ)と思しきものに、球菜(キャベツ)のような緑の野菜、そこにアーモンドくらいの朱い豆のようなものがのっていた。箸や匙(スプーン)などはないので手で食べるらしい。
「いただきます」
深苑が呟いて顔をあげると、利苑や曾祖母はもう食べ始めている。
深苑も恐る恐る硬い麺を手に取った。そのまま噛み切ろうとしたがなかなか噛み切れず、しかたなく汁物に麺を浸した。麺が汁物を吸って、ぶよぶよとしている。麺はなんだか粉っぽく、噛むと水分を吸っていたからなのか、あっという間に溶けてなくなった。味はこれといってそれ自体の味はしない。汁物のやけに薄い、くせのある味が口に残った。汁物のお椀を口にあてがって、口に流し込んだ。でろんとしたなにかが口の中に入ってくる。噛むと、なにかはわからないが甘い味が口のなかに広がった。
(あまり、おいしいとは言えないなあ)
少しだけ、ばれない様に俯かせて顔を顰めた。
(ここでは、会話はしちゃだめなんだろうか)
不思議に思っていた。あんなに優しい曾祖母たちなのに、今回ばかりは一言も話したりしていない。
なにかはわからないが野菜の上の赤いものを親指と人差し指で摘む。利苑たちはそれを口の中に放り込みながら、何度もかみ締めていた。
思い切って、口の中に放り込む。口の中に苦いものが広がった。
「うぇぇ」
思わず舌の上にのせて口から突き出してしまう。
それを見て、曾祖母は少し心配そうな顔をした。
「口に合わなかったかねえ? けんど栄養があるから食べ。それと、知獣は知らんがこっちでは食事中は声を出しちゃいけん。赤葵(せっき)様の罰を受けるからねぇ」
「赤葵様?」
「ああ、知獣は知らんのか。食後に話しちゃるけん。今は黙って食べ」
少しだけ厳しく言われて、慌てて口の中で転がしていた赤い玉をもう一度噛む。絶対に食べなれることのできなさそうな味だな、と秘かに深苑は思った。
(肉?)
感触は、肉だった。でも、味は、苦い薬でも飲んでるかのようだ。
誰も喋らない、食器の触れ合う音が響くほど静かな夕食を終え、深苑は片づけをしている曾祖母にその赤葵様という人物について尋ねた。
「赤葵様はこの村のお偉いさんの娘様でねえ、こんなとこじゃあ口に出すことも恐れられるほどの人物なんじゃ」
「娘? 何歳なんですか」
「確か今年で十四になる。深苑と近いんじゃないか?」
「ええ……数え年で十五になります」
「赤葵様はね、お父様にあることないこと吹き込んで、人を処刑するのがご趣味なんじゃよ」
「処刑!?」
「そう……軽いもので打ち首。重いものだと車裂きじゃ。あとは……針で身体を裂くのもようやっておられる」
「打ち首……車裂き……車裂きってどんなことをなさるんですか」
「車裂きは両足首を二頭の牛に括り付けて引っ張って、足から裂くやつじゃよ」
言うのも苦しそうに曾祖母は言った。
深苑はその残虐な行為を思わず想像して顔を顰める。
「赤葵様はおひどい方ですね」
深苑は当たり前のように口にする。
「なんてことを!」
慌てたように曾祖母は深苑の口をしわがれた手で塞ぐ。
深苑が驚いて目を見開くと、曾祖母は怖い顔をして手を話した。
「赤葵様を悪く言っちゃいけん。せっかくの孫を車裂きなんかにしたくはないんじゃ」
「す、すみません」
あんまり悲しそうに言うものだから、深苑まで苦しくなってきて、思わす頭を下げた。
「ほんれ、もう遅い。はよう寝れ」
ぽんぽんと骨ばった手で背中を叩いて、曾祖母は朱卓の椅子から立ち上がった。
深苑もつられるようにしてたって、自分の部屋へ向かう。
「おやすみなさい」
2
次の日。まだ日が登らないうちに曾祖母は起きた。
物音一つしないユウイの部屋をちらりと見やって困ったようにため息をついた。
──全く困ったことになった。まさかユウイの娘が来るとは。
まだ薄暗い外に出て、木の桶を井戸へ沈める。並々と溜まった水をよっこらしょ、なんて声を上げながら家まで運んだ。
少しの水を小さい桶にわけて、顔へ勢いよく水をかけ洗う。木綿の黄ばんだ手ぬぐいの荒い網目の感触を顔に感じながら、顔の水滴を布へ吸い込ませた。
手馴れた様子で曾祖母は朝食作りへ取り掛かる。
朝は、赤葵様の定めで火を使ったものは食べてはいけない。そのため家の前にある小さな菜園から、朱豆(しゅとう)や、采(さい)をとってこなければならないのだ。
戸棚から麺麭を取り出し少量の水をかけて千切っていく。それから、事前に作って大量に溜めてある液体調味料を朱豆と采を和えたものに振りかける。
これで完成だ。あとは日が登ったら二人を起こせばいい。
水滴が少しついた手をさきほどの手ぬぐいで拭った曾祖母は、扉の軋む音で後ろを振り返った。後ろに深苑がたっている。
慌てて笑顔を取り繕った曾祖母は、もう目がはっきり覚めているらしい深苑を見やって、声をかけた。
「おはよう、随分と早起きだねえ。まだ利苑祖父さんも起きてないってのに」
ははは、と笑って深苑を招いた。
深苑も近寄りながら笑顔で言う。
「おはようございます。こちらの朝は遅いんですか? もうあっちでは十時を回ると思いますけど……」
「そうなのかい? 多分時差があるんだと思うよ」
「あっちのこと、詳しいんですねえ」
洋盃(コップ)に入れてもらった水に口をつけながら感心したように深苑はいった。曾祖母は苦笑する。
「そりゃあ、誰だって知ってるだろう。ここでは四歳から十二歳までは百姓の子供は何人か交代で、あっちに行くからねえ」
「ええっ、そうなんですか!?」
「ああ、ユウイも行って、莫迦だからなんなんだか、あっちのと恋して、情まで結んできたらしいんだ」
「十、十二歳で……?」
思わず深苑は喉を鳴らした。母がそんなに早くそんなことを……と、考える。
その様子に曾祖母が乾いた笑いをあげた。
「なに、こっちじゃ普通のことさ、こっちに戻ってくれば二日三日でみんな許婚と情を交わすもんさ」
そんな言葉を聞いて、思わず深苑は顔を赤らめる。自分はまだ一度も交わしたこともなく、それどころか男性と付き合うことさえままならなかったのに。自分より二、三歳も小さなまだほんの子供がそんなことをしているなんて。
その表情をみて、曾祖母はまたも笑った。
「そない顔するでない。あんたはあっちで育ったんじゃから、当たり前じゃ」
そうですよね、と自分を慰めるように深く頷く。
急に曾祖母が立ち上がった。
「気づいたらもうこんな時間か……爺さんを起こしてこんと。深苑、朝餉はそこにおいてあるから、適当にお食べ」
そういい去るとさっさと臥室(がしつ)へと入っていった。
深苑は言われたとおり厨(くりや)のある部屋へ入ると、三人分の朝餉と洋盃(コップ)に透明な水が並々と入っていた。適当に自分のものを選び、居室へ運んだ。
昨日とさほどかわらない献立をみて、もしかしてこれが毎日続くのか、と変な不安が過る。でも、腹は有名な知獣の童話に出てくるようにお腹と背中がくっつきそうなくらい減っていたので、迷わず口をつけた。
*
曾祖母と利苑は耕作で暮らしているようだった。
昼餉で帰ってきた利苑は、あまりにも退屈そうにしている深苑を見かねたのか、声をあげた。
「深苑、この辺の人に挨拶してきたらどうじゃ?」
「……ああ、いいかもしれません。じゃあ隣あたりから──って、この辺人、いましたっけ?」
はっきり覚えているわけでもないが、昨日通った家の近辺を思い浮かべて、あたりになかったような気がした。
利苑は穏やかな、でも苦笑いを含んだ笑いをあげた。
「この辺だったら、百メートルは離れてるんじゃ、あっちのように所狭しと建てはせん。まあ、都に行けばあんな感じかもしれんがな」
じゃあもう行くぞ、とばかりに手をふって、利苑はいなくなった。
百メートル。それは別に大変な距離ではない。戦獣の運動会で子供が走るくらいだから。だけど、百メートル先に家がある。そしてまたその先に──。たとえば十軒あったとする。するとここから挨拶行くのに千メートルもかかるわけだ。つまり、一キロ。それはさすがに家からあまり出なかった深苑にはきつい。
でも、このまま家にいるのもなんだかあれなので、結局二軒だけ行ってみることにした。まず、ぼんやりとそれとなく見える一軒目。家の外見は驚くほど利苑の家と酷似していた。あたりまえだがもちろんあっちの世界のような押しボタンもなければ、郵便受けもない。木のざらついた感触を甲に感じながら、少し強めに扉を叩く。
「はぁい」
出てきたのは福与(ふくよ)かな女性だった。三十代前半……といったところだろうか。見覚えのない深苑を不思議そうにみている。
「こんにちは。利苑お祖父さんの家でお世話になっているユウイの娘です」
母を知っているだろうか、と思いながらも深苑は母のことを口にする。
利苑と聞いた途端女性は人当たりのよい笑顔になった。だけど、その笑顔の中に一瞬戸惑いと憎しみが混じったのは気のせいだろうか。
「ユウイちゃんの? 道理で雰囲気が似てると思ったわ」
どうぞ、と家へ招かれて、断る理由もなかったのでそのまま素直に進む。中も外見も、祖母の家とはあまり代わりがない。暖かそうな火が、暖炉の中で勢いよく燃えていた。
後ろから大きな身体を揺らしながら女性が現れる。
女性はにっこり笑って座るよう勧めたので、近くにあった椅子に腰掛ける。
それからしばらく、世間話のような話をしていると、いつのまにか大きな窓から橙色の光が眩しいほど部屋を照らして、深苑の顔を橙色に染めた。
女性──鈴杢(リンモク)さんと言うらしい──にお礼をいって、百メートル先の家路につく。
踏み鳴らして広がったとしか思えない茶色の道を歩きながら、明日は反対側へ行ってみようかな、とぼんやり考える。
重たい扉を開けば、昨日のように祖母は飛び出してくるんだろうか。知獣に大事にされたことのない深苑だから、またそうしてくれたらいいと期待をこめて重たい扉を開く。
ところが──家の中に生き物の気配はなかった。落胆しつつも仕方ないと言い聞かせて居間へ続く短い廊下を通る。
居間へ、そして祖父祖母の臥室へ。どちらにもいなかったが、ふと振り返った朱卓のうえにおいてある白いものに目をとめる。それは、こちらでは高価なものに違いなかった。こちらで一般に使われる紙は、異常なほど質が悪い。茶色く皮膚に引っかかりを感じさせるその紙は、木筆で書くたびに紙にがりがりとひっかかって字を歪めさせる。ところが、その紙は真っ白でおまけに触ってみるとつるつるとしていた。不審に思って書いてあるものを眺める。
『利苑 反李 たいざいにより しょけい よるはちじ より ひろばにて』
利苑は曾祖母の名前、反李(ハンリ)は曾祖母の名前だろう。あとの言葉は平仮名を崩したようなものだった。昔母に教えてもらった平仮名の知識を無理やり引っ張り出して、解読を試みる。
「りその、はんり……たいざい……により……しょ、けい? 処刑!? どういう……」
言いかけて、まだ続きがあるのを思い出した。
「よる……はち……より、ひろば……にて……えっ!?」
気づけば走り出していた。白い貴重な紙を握り締めて。広場の方向もわからずに。利苑たちの耕作は確かさっき言った場所と反対方向だろう。
ゼエゼエと荒い息を抑えながら、かすかに見える赤く燃える炎をみてしまった。途端、激しく走ったにも関わらずさらに強く波打つ心臓。
人垣の中心に真っ赤な炎が燃え上がっていて、火にぎりぎり炙られないところに人が二人、木に縛りつけられている。
深苑はもう、近くにいっても呆然と見ていることしかできなかった。いや──動かしたくても足が動かなかった。そこには、祖父母がいて、炎の熱気と飛び散る火の粉を浴びながら、平然と縛り付けられていたのだから。
中年らしい男性と深苑と同じくらいの娘が平然と──いや、楽しむかのように近くで祖父母を見上げる。
(なぜ──どうして、祖父母が)
ガクンと膝を折るように倒れこんで、深苑は目に涙をためた。
(わたしに初めて温かい愛情と優しさをくれた人だったのに)
助けたい──そう思って、そもそも罪状は? と疑問が浮かんだ。
「利苑、反李の罪状を──」
低い義務的な声があがった。深苑はあわてて立ち上がる。
「種の違う獣を匿い、食物を与え、寝床を与えたこと」
ざわっと人垣が大きく揺れた。あちこちでひそひそ声があがる。
「また、娘は知獣と情を交わし、そのまま行方知れずになっていたにも関わらず、紫様へ報告を行わなかったこと」
今度はもっと大きなざわめきが起こった。
「では、利苑、反李の罪状を確認したうえで、この罪を確定する。刑は、打ち首──え? はい……」
打ち首といいかけたにも関わらず、男は戸惑ったように隣の娘を見返した。聞こえないが何か言っている。
「刑は車裂きに決定した。明日七時、広場にて施行」
(車裂き……)
呆然と呟く。
「お前っ! お前が夕依の娘だろう! この、忌々しいやつめっ」
え? と言って顔を上げた先、腹に激痛が走る。呻いて転がり、けられたのだと気づいた。次々に背中やら足やらに激痛が走り、息をするのも困難だった。周りには罵声とざわめきに包まれている。
仕方ない、当たり前だ。深苑はそう思って痛くて動かぬ顔で自嘲気味に笑ってみる。
(わたしのせいで二つの大切な命が失われるのだ。どこにも居場所のないこの捨て子のようなわたしのせいで)
そう思って意識が遠のく。
3
眩しい光に目を覚ました。呼吸をしようとして口を開けると、裂けるような痛みが口元に走る。昨日のことを思い出してよく生きていたなと深苑は自分に感心する。
手を動かそうにも足を動かそうにも痛くてどうしようもなかった。ここが昨日の広場ではないことは確かだった。深苑の腰ほどまであるだろう草の中に深苑は横たわっている。昨日散々深苑を殴った相手が死んだとでも思ってどこかへ投げ捨てたのだろう。だったらあまり遠くないはず。まだ七時ではないだろうか? 祖父母は──無事だろうか。
痛みで呻きをあげながら深苑は自分の状態を確認する。指と腕は動かしても然程(さほど)痛みにはならないが足がひどかった。指で下に着ているものを寝た状態で少し捲ると、健康的な肌色をしていた深苑の肌は青紫や黄色っぽい色に変色している。痛さと恐怖を堪えてそのほかも動かしてみた。結果、左足首が折れていて、助骨も折れているらしい。その他は足と然程変わらない色だったりしていた。
なんとしても、おきなければならない──深苑は目を固く閉じて呻きを上げながら上半身を起こした。背骨も折れているので自然、前かがみになった。そこらへんに落ちている短いが太い枝を手に取り、地面に突き刺す。なんとか涙目になりながらもしゃがむ状態になってそのまま左足を庇いながら枝を地面にさし、右足を前に出す。残念ながら身体を支えれるような長く丈夫な枝はなく、精精三十センチほどの脆弱な枝しか見つからなかった。なんとかそれを三メートルほど繰り返したところで、民家が一軒見えた。大して遠くに捨てられなかったのだろう。このままいけば広場につくだろうか。痛さのあまり意識が混濁しながらなんとか歩みを進める。口をだらしなく開けて、はあはあと息をしながらなんとか民家についた。どこがどこだかわからない。だけど、行かなければ──そういう思いだけが深苑の身体を動かしていた。目の前がチカチカしてぼんやりとしか見えない。疲労のためか、それとも視力もなくなってしまったのかわからないが、歩きづらい──這いづらいことこのうえない。
「利苑お祖父ちゃん……」
無意識に呟く。
無我夢中で何も考えずに進んでいったら、いつのまにかあの広場へついていた。ところが、そこには昨日曾祖母が縛り付けられていた木が真っ黒く煤けて今にも倒れそうに立っているだけだった。
手遅れだったのか──……。
張り詰めていた意識が途切れたからか、深苑はそこで意識を失ってしまった。
*
額にじっとりとした重たい感触がして、深苑は重たい瞼を気だるげに持ち上げた。
深苑の目がぼんやりと、木目を捕らえる。それがたった二日で見慣れた祖父母の家のものと酷似していることに驚愕して、深苑は身体を起こそうとした──が、身体は激痛が走って到底動きそうにはなかった。痛みに顔を顰めて、深苑は自分の身体があちこち損傷を受けていることを思い出す。どこだろうと、目だけで見渡すと視界の端に文机らしきものが映った。
やっぱり祖父母の家なのだろうか──……。
はあ、と重たい溜息を天井に向かって吐き出して、深苑はとりあえず戦獣を呼ぼうと試みる。
「誰かいませんか?」
久しぶりに出したからか、深苑の声は酷く掠れた小さな声だった。耳を澄ましてみるが、物音なんか一つもしない。駄目だったらしいと目を閉じた。次は息を勢いよく吸い込んで──といっても痛いので口を少し開く程度だが……出来うる限り大きな声を出す。
「誰かいませんか!」
……戦獣は、いないらしい。ならば自分で動くしかない。しかしこの状態で動いたって悪化するか、倒れて動けなくなるかくらいにしかならない。だったらここでじっとしてるのが賢明か。
しばらく逡巡した末、身体を起こすことだけしてみることにした。戦獣の血を引くからか、傷の治りは早いらしい。手をついてなんとか起こすまでは行えた。寝ていたのは祖父母の家で寝ていたような木製の寝台(ベッド)で、外側の壁にくっ付いておいてある。部屋の中は閑散としていて生活観というものがまるでない。あるのは寝床と文机だけだ。丁度文机に光が当たるように窓がついていた。扉はないが寝床の頭側の壁の端に獣が二人、ぎりぎり通れるような正方形の穴が開いていて、梯子が下に伸びていた。
とすればここは屋根裏部屋だろうか。なぜ満身創痍の深苑をわざわざ梯子を使って屋根裏まで運ぶのだろう。いくら子供とはいえ、もうすっかり成長して大人と然程変わらない体型だ。流石に梯子で運ぶのは無理があると思うのだが。
しばらく考えてみたが、だんだん面倒くさくなってきて考えることを中断した。
(そういえば、祖父母は……──)
半ば失いかけた意識の中でみた黒く煤けた一本の木の棒を脳裏に思い浮かべて、祖父母を失った哀しみが一気に胸の内に押し寄せて来る。ぽたり、ぽたりと雫が深苑の手の甲に落ちて、伝っていく。一頻(しき)り泣くと、妙に哀しさが抜け出てしまって、身体を起こした状態でただじっと戦獣がくるのを待つ。
三十分もないくらいの頃、下から物音がした。最初に重たい扉の軋む音、それから人の足音。屋根裏に上がってくるらしい。
ひょこっと正方形の穴から頭を出したのは、十五、六の少女だった。白い肌に生える漆黒の髪が艶やかで、二重で切れ長な目が美しい。深苑を見て、一瞬驚いたように美しい目を見開いたが、すぐにあがってくる。そうして深苑の寝床の傍まで跣(はだし)で歩いてきて形の良い唇から白い歯を除かせて微笑みを浮かべる。
(どこかで見たことあるような気がするな……)
そう思って深苑は頭の中で必死に思い出そうとするが、わからなかった。記憶に靄がかかったようで、思い出せない。
「起きていたんですね。私(わたくし)赤葵(せっき)と申します」
赤葵……これもどこかで聞いた事があるのだが。
「あの……」
「喋らなくていいですよ。確か口許にも怪我がありましたから。痛いでしょう?」
可愛らしく微笑む少女──赤葵が文机に腰掛ける。意外とマナーなんかは気にしないらしい。
「あ……ありがと、ございます」
精一杯笑顔を浮かべたつもりだったが、それは口許を引きつらせるだけの歪(いびつ)なものになった。
赤葵は胸元の大きく開いた白いワンピースを着ていて、文机に座るとふわりと揺れた。なにかはわからない良い香りが深苑の鼻を擽る。
「お名前は……確か深苑さんでしたっけ? 年はお幾つなんですか?」
さっき喋るなと言ったばかりなのに……──そう思いつつ嫌ではなかったので口を開く。
「……十、五になります」
「じゃあ私と同じですね! 嬉しいです」
顔中に笑顔を浮かべて嬉しそうに言う。頬に浮かぶ笑窪が少女らしい邪気(あどけ)なさを残す。
「これから、私の使いのものがお食事や排便、身の回りの世話など見てくれると思います。私も時々来ますから」
そういって深苑を寝かせるのを手伝ってから、下に降りていった。
それから、赤葵の使いらしい女性が何人か、本当に全てのことを面倒みてくれた。もう、食事排便くらいはできるようになっていたのだが、ここは深苑にとって居心地が良すぎた。もう、恐ろしいほどに。だから深苑は任せることにしたのだ。夢が覚めることをわかっているなら、覚めるまではこの幸運に身を委ねたい。
それに、友情なんてものを知らなかった深苑にとって赤葵は初めてできた友達≠セったのだ。
「赤葵さんは、どうして私にこんなに親切にしてくれるんですか?」
時々深苑はそう聞いたが、赤葵はうふふと可愛らしく笑っていうのだ。
「その時が来たら教えます」
4
日がそろそろ真上に来るころ、深苑は赤葵が来るのを楽しみにしていた。これから下に降りてもいいといわれていたのだ。
カタンカタンと梯子を上る音に胸が高鳴る。ところが上がってきた赤葵に、深苑は驚いて一瞬降りることをすら忘れてしまった。
いつもの赤葵とは、全てにおいて違った。白い肌に頬紅をのせて、形の良い唇には真っ赤な口紅をひいている。髪も綺麗に結わえられていて、まるで別人だった。あの少女のような表情はなく、冷たそうな瞳が深苑を射る。服は真っ黒な和服を着ていたがいつのもように文机に腰掛ける。
「……せ、赤葵さん? 今日はお洒落してるんですね」
あははと笑ってみるが、明らかに作り笑いのような引きつったものになった。
「深苑さん、今日は下に降りる日ですね」
笑み一つ見せずに言って、赤葵は正方形の窓を指差した。深苑はわからず首を傾げる。
「きっと体力が鈍ってて降りられないでしょうから、あそこから降りてもらいます」
えっ、と深苑は声を漏らす。
「大丈夫です。突き落とすつもりではないですから」
そういって漸(ようや)く赤葵はうっすらと笑みを浮かべる。
「滑り台を用意したので、そこを滑り降りてください」
なんだか子供っぽい降り方だな、と内心思いつつ、深苑は緊張で強張った顔をやっと安堵で和ませた。
「わかりました。──立つの、手伝ってくれますか?」
「ええ」
赤葵は小さく頷くと、深苑の鈍りきった身体を支えて、窓まで連れて行く。窓を覗くと確かに木で作られたらしい緩い傾斜の滑り台が地面すれすれまで伸びていた。
窓を跨いで滑り台へ足を乗せると赤葵は座るまでを手伝ってくれる。漸く座った深苑をぽんと華奢な手が押すと、そのまま深苑は滑り出した。木がつるつるしているのか滑りが良く、茶色い地面に着くまで滑りは衰えなかった。
外の空気を嗅いで、いよいよ深苑の心は躍る。立ち上がるのに苦戦していると、赤葵が手をかしてくれた。
「どこに行くんですか?」
「私の父の元へ」
そう言う赤葵の声は相変わらず冷たかったが、足並みは合わせてくれた。
ついたのは家は、祖父母や鈴杢さんの家とは全く違った。どっしりとしていて、豪奢だった。もちろん祖父母の家だって貧弱なわけではなくどっしりとしてはいたのだが、思わず数歩下がってしまいそうな威圧感があった。
ぐいぐいと引っ張る赤葵に連れられてよろめきながら大きな開け放った入り口を掻い潜る。
中はそんなに変わらないにしても……家具が多い! 見回していると、赤葵が深苑を長いすへ座らせると、奥から福与かな男が出てきた。いかにも裕福そうな太った男だった。
向かいの長いすに座った男の隣へ赤葵は座る。
「あ……赤葵、これが赤葵のお父様?」
よくわからない緊張で声が震える。いつのまにか握り締めた手が汗ばんでいた。
にしても、なぜこんな醜い豚のような父親から、この容姿端麗な赤葵が生まれるのだろう。
「ええ。お父様、こちらが深苑です」
「初めまして、赤葵の父だ……邑扇(ゆうせん)という」
太った男──否、赤葵の父、邑扇は、にっこりと肉に埋まった顔を歪めて見せた。勿論、笑顔などには到底見えなかったが。
次の瞬間、その歪な笑顔のまま、邑扇は衝撃の言葉を口にした。
「──この村の、村長をやっている。赤葵は私の娘でな」
そういった瞬間、肉に埋まった邑扇の細い目の中に、悪魔が存在するのを深苑ははっきりと捉えてしまった。
ゾゾッと背筋に悪寒が走って、思わず姿勢を正す。
(この男が、私の祖父母を……)
「あ……ゆ、邑扇さん……よろしく、お願いします」
握手を求めているのか、邑扇は手を机の上へ差し出す。
差し出された手の太さといったら!
(ひいっ……)
気持ち悪さを堪えて深苑は自分の細い手を差し出す。濡れた脂汗の感触と、肉の纏わりつく手が気持ち悪くて、深苑は早々と手を抜いた。
「で、本題だが」
歪な笑顔を消し、まじめな顔になる邑扇。深苑もまじめな顔を取り繕う。
「私たちがお前を助けたのは、他でもない。お前が、あの憎き夕依の娘だからだ」
母の名前を出され、ピクリと反応する深苑。構わず邑扇は続けた。チラリと深苑が赤葵を見やると、無表情で、机の上を見つめていた。赤葵の耳には入っていないらしい。
「あいつは、私の娘である赤葵の父母を、亡き者にしたのだ!」
興奮したのか、声が徐々に大きくなる。
一方、深苑は絶望の最中(さなか)にいた。
(母が、赤葵の父母を亡き者にした? そんな話、信じない。なぜ、母が──)
「う、嘘です。母はそのようなことをなさる方ではありません。母が赤葵の父母を亡き者にする理由がありましょうか! そもそも、会う機会なんてなかったはずです」
必死で反論をしてみるが、邑扇は聞いちゃいなかった。
「お前の母と赤葵の母はもとはとても仲が良かったらしい……」
聞いてるのも嫌な話だが、仕方なく深苑は耳を傾けることにした。
邑扇の話しでは、母と赤葵の母、碧(みどり)は村一番の仲良し娘といわれるほど、仲がよかったそうだ。だが、碧の許婚であった男が結婚する半年前に死んでしまった。
仕方なく碧は実家に留まり、次の相手を探し縁談を重ねた。最終的に碧が結婚することになったのが、村長の家だったらしい。そのうち他種ろ結婚してしまった夕依とはまったく仲が良くなくなった。結婚したのは邑扇ではなく、奄祈(えんき)という男性だったが、赤葵が生まれて数年後に母が二人を襲ったというのだ。そして、血縁関係の近い邑扇が赤葵の養父となり、村長となった。
(やっぱりおかしくない?)
深苑は疑問を胸に抱く。母が殺す理由など見つからないでないか。幸せな二人を妬んだ? 違う。母だって幸せだったはずだ。
だんだん黙りこくり口数も少なくなった深苑をよそに、邑扇の興奮は最高潮に達していた。赤葵がどれほど可哀相な境遇であるかを涙ながらに豪語し、また仲のよかった二人を見ることができず辛い……など、わざとではないかと言えるほどだった。
とりあえずとばかりに深苑は目的を聞いた。
「結局なにをしたいのです? 私に仕返しをしたいのですか?」
ひどく冷静な深苑の声に、邑扇は興醒めした顔で、しかしあの歪な嫌らしい笑顔を浮かべて言った。
「それは……勿論。なにしろ可愛い赤葵がそう申すのだからな──な? 赤葵」
聞かれて、赤葵は無表情なまま答える。
「ええ。私の両親を奪った夕依が許せない。だから、血縁関係のあるヤツはみんな潰してやるわ」
「だ……だったらなぜ私を助けたのですか? あの場で止めを刺せばいいものを」
(そうすれば母の過去なんか聞くことはなかった……!)
憤りを静かにぶつけた深苑に、赤葵は変な顔をした。
「あんなところでやったって、面白くないもの。泣き喚いて、許しを請う姿が見たいのよ」
相変わらずの冷たい瞳で言った赤葵に、思わず深苑は立ち上がる。──が、ぐっと堪えて、キッと二人を睨んだ。
「失礼させていただきます。貴方方の思うようにはさせません」
そういうと、深苑は静かに建物を後にした。
5
なぜか、赤葵たちは追いかけてはこなかった。あの場所を出たときは太陽は真上にあったというのに、今はもう沈みかけている。
橙色をした大きな太陽が、無性に深苑を切なくさせる。
(本当にお母さんがそんな惨いことをしたんだろうか。あの優しげなお母さんが)
記憶はおぼろげではあるが深苑の記憶にあるのはいつも優しく微笑んでいた母だった。暗い茶色の真っ直ぐにおりた髪を後ろで縛り、桃色の前掛けをして、深苑を抱き上げてくれた。鼻を擽るいい香りさえ、思い出せば漂ってくるようだ。
(お母さんはそんなことしない)
小さな、けれども確かな確信が深苑の心でできた。
(とりあえず今夜の眠るところは苦労しないはず──。遥桂といったあの叔父が家へ入れてくれるよね)
そう決めて三週間ほど前のあの日の記憶を頼りに深苑は歩き始めた。
すぐに、遥桂の家はみつかった。「ようけい」と草書のような平仮名で書かれた板が扉の横にかけてある。
祖父母の家と然程変わらない家の、分厚い木の板を力をこめて叩くと、奥さんらしきお腹が大きい可愛らしい女性が扉をあけた。二重のまん丸な目が可愛らしい。
(赤ちゃんかな?)
どうでもいいんだけど、と思いつつも気になってしまう。
遥桂の名前を出すと、家へ入れてくれた。やはり家中も物の配置が少し違うことを除けば完璧に似ていた。
長いすに腰掛けてまっていると、程なくして遥桂は現れた。数週間前とは全く違う、着古した部屋着である。
「久しぶりだね深苑ちゃん。あの……その、祖父母のこと……残念に思うよ」
遥桂は開口一番躊躇いがちににそう言った。
(この獣(ひと)も私を責めたいのか──)
そう思って少し睨みつけると、遥桂は慌てたように手をふる。
「あっ、別に、深苑ちゃんのこと責めたいとかそういうわけじゃなくて……本当に、残念だったなって……」
そう聞くと深苑はなんだか暗に責めてしまった自分が申し訳なくなってしまった。この人だって悲しいはずだ。
「いいえ、本当に残念です……」
赤葵への憤りやその他の目まぐるしく起こる出来事に祖父母を忘れた自分を恨めしく思いつつ、深苑は目線を足元へ落として呟くように言う。
「それで、どうしたんだい?」
どうやら祖父母への悔やみは社交辞令のようなものだったらしく、すぐに遥桂は話題を切り替えた。
勿論深苑としてはそのほうが助かるのだが──祖父母がどうとかじゃなく、泊まる方向にもっていけないので。
「今日、泊めていただきたいんです」
何の躊躇いもなくいった深苑に、遥桂は然程驚いたようではなかった。多分、予想してたことなんだろう。
「ちょっと汚いけど使っていない部屋があるからそこでいいならどうぞ」
それじゃ忙しいからと腰をあげた遥桂を慌てて呼び止めて、礼を伝えると遥桂はどういたしましてと疲れた顔で笑った。
(きっと周囲の批判がすごかったんだろうな)
しばらくその長いすに座ったまま無実の罪──とは言い難いが、利不屈なことで殺された祖父母のことや、碧や竜祈を殺したことを擦り付けられた母のことを考える。
(なぜ、私の周りでは大切な獣ばかり死ぬのだろう──……)
母や祖父母だけでなく、父だっている。
それに更にみんな悪いことだといわれて殺されたり死んだりしているのだ。
ボーっとしていたらいつの間にやら遥桂の奥さんらしき人が目の前に座っていた。大きなお腹を庇うように座る。
「私はコウカっていうの。紅の花ってかくのよ。よろしくね、深苑ちゃん」
話してみると可愛らしい見た目に反して紅花さんは快活ではきはきした人だった。
「深苑ちゃん、大分思い悩んでいるでしょう。まだ若いのに、顔が老けて見えるわよ」
そういって屈託なく笑う姿は可愛らしい目も手伝って、どこか犬を連想させる。雑に切りそろえられた真っ黒な髪も、綺麗な歯をみせて明るい笑顔で話すところも、紅花さんは母とはかけ離れていたが、好きになれそうな感じの雰囲気を醸し出している。
「そうですか? 最近疲れてたからかなぁ……」
嘘をつくのは少し辛かったが、こんなところで本当のことを話すほど莫迦ではない。調子を合わせて笑い、さも楽しげにしてれば気づかれないだろう──そう思っていたのに。紅花さんは中々鋭いらしかった。急に心配そうな顔で深苑の顔を覗き込むものだから、こちらが驚いて尋ねると申し訳なさそうな顔でこういった。
「ごめんね、疲れているのに話しにあわせちゃって。楽しくなかったでしょう?」
「いえっそんなことないです」
慌てて取り繕うように笑顔を見せてみたが、効き目は零だった。
「嘘つく必要はないわ。だってものすごく疲れた顔してる。本当ごめんなさい」
そういうと紅花さんは遥桂が言っていた使っていない部屋へ案内してくれた。
部屋もほとんど祖父母の家と似ている。御礼をいってそのまま眠りにつき、夜に目が覚めたところで紅花さんから夕餉をもらった。主食らしいあの硬くて白いパンと、牛の乳を温めた中に砂糖が入っている飲み物をだった。
朝目が覚めると、紅花さんも遥桂も起きていなかった。深苑は静かでしんと冷える居間の長椅子に座り、これからのことを考える。
(きっと赤葵も私が逃げ出すなどとは思っていないのだろう)
なんといったって深苑には母のことがあるのだから尻尾をまいて逃げ出すなどという莫迦げた真似はできないし、たとえ深苑がそうしようとしたところで赤葵たちは追ってくるのだろう。
優しかった赤葵とまるで慈悲の欠片もなくなってしまったような赤葵とを比べて、溜息をつく。
(友達だと、思ってたのに。優しかったのに)
はあと溜息をついて、首をふった。
母を失い、父を失い、祖父母を失い、友達だと思っていた赤葵にまで裏切られてしまった。
ふと、赤葵の言葉を思い出した。
『だから、血縁関係のあるヤツはみんな潰してやるわ』
(血縁の繋がりなら、遥桂叔父さんまで殺されてしまうのかな)
そのことを想像すると悲しすぎて、いっその事このままこの家を出てしまおうと思った。少なくとも、深苑がいなければ殺されるのは遅くなるはずだから──
(そもそも殺されるとは限らないじゃない……)
あまりに莫迦げた考えに、深苑はため息をつく。
ギイ、と扉の軋む音がして、深苑は振り返った。後ろに紅花さんが立っていた。寝巻きのままで、大きな欠伸を一つして深苑に気づく。
「あら、深苑ちゃん起きていたの。随分早起きなのねえ。まだ鶏も鳴いてないわ」
「おはようございます、紅花さん。遥桂叔父さんは?」
「まだ寝てるわ。あの人朝は苦手だから……」
そういってブツブツ文句を言いながら、厨へ向かっていった。
裏玄関から外に出て水を汲んでるらしい紅花さんの後を何気なくついていくと、紅花さんは古ぼけた木の桶に水を並々と汲んだものを足の横に置いて、自分のお腹を愛しげに摩っていた。
深苑に気づいた紅花さんがにっこりと微笑んだ。
「ここに、赤ちゃんがいるの。もうすぐ生まれるの」
「へえ。楽しみですね。──じゃあ、そんな労働しちゃ駄目ですよっ」
深苑は慌てて桶を手にとった。が、紅花さんはそれを手をふって制す。
「いいのよ。大丈夫」
「え……っ、でも……」
言い淀んだ深苑に紅花さんは苦笑した。
「大丈夫、そこまで柔(やわ)じゃないわ。──ほら」
深苑の手にある桶を取ると、さっさと裏玄関を通り過ぎ、厨へと入っていった。
(相変わらず元気な人だなあ)
深苑は頬の筋肉を僅かに動かして苦笑する。母なら子を身篭ったというだけで寝込んでしまいそうな気がする。
肌をなでる風が秋の冷たい風のようで、深苑は身震いをして厨へ入った。
*
遥桂の家に居候して、一ヶ月が経った。相変わらず、赤葵のからはなにもされない。
時々赤葵のことで頭を悩ませるが、あれは夢だったのではないかと思ってしまう。勿論、夢でないことはわかりきっているのだけれど。祖父母がもうこの世に存在しないことがその確たる証拠になっていた。
肘を机について、紅花さんがくれたカットされた林檎を口に放り込みながら、今日もまた考える。
(本当にあれは現(うつつ)の出来事だったのかな)
白いワンピースを着た、可愛らしい赤葵。髪を結い上げ、頬紅をのせ、冷たく射るような瞳で睨みつける赤葵。朧げながらも見た、焼けて煤けた一本の木。微笑んでいた祖父母──色々なことが深苑の頭の中でぐるぐると回っていく。
(なにをされるんだろう。遥桂や紅花さんは無事でいてくれるんだろうか)
二つ目の林檎を口に放り込んで、深苑は立ち上がった。さすがに居候しておいてなにもしないのは深苑としては気が引けるので、お腹の大きい紅花さんのためにも、重労働は深苑が引き受けている。知獣の叔母に散々扱き使われたからか、とりあえず家事全般はそれなりにできる。
水を汲みに行って、桶を持ち上げたとき眩暈がした。足元がふらついて水が少量、土を濃い色に染める。気を取り直して深苑は足を踏ん張って桶を厨(くりや)まで運んだ。
「お疲れ、深苑ちゃん。悪いんだけど、外から薪、運んできてくれない? さすがにこのお腹じゃ薪を持ってくるのは重労働でね」
「わかりましたっ」
頼ってもらえることが嬉しくて、深苑は家を飛び出した。
もう夏も終わりを告げていて、風はすっかり秋のものとなった。
家の横に短い薪が積んであるのを、深苑は何本か腕に抱えて家へ入る。当たり前だが足りないので、それを数回往復した。
一〇本を暖炉の横に積み重ね、それ以外は暖炉の中へ突っ込んだ。あの質の良くない紙を一緒にいれ、燐寸(マッチ)を擦る。赤い炎が勢いよくついて、紙に点火した。紙はあっという間に黒こげになり、見えなくなったが、薪にはちゃんと火がついた。
「ありがとう。大分手馴れたわね。深苑ちゃん」
「はい。最初のころは……」
そういってどちらともなく苦笑いを浮かべた。
深苑は一番最初、火を何度やっても点けられなくて、燐寸箱を二箱も無駄にしてしまったのだ。そんなことは、知獣の場所ではしなかった。油があって、それに釦(ぼたん)を押せば火がつく機械を使えば火なんて一瞬で激しく燃えた。そのおかげでその日一日中、遥桂とも紅花さんともとても気まずい状況になってしまった。
「ありがとね。ええっと、じゃあ部屋に行ってて良いわよ。なにかあったら呼ぶわ」
「はい」
相変わらずの簡素な部屋。その寝台にごろんと横になる。
*
周りに、みんながいた。
真っ白な空間に、優しく微笑む父と母と、祖母と祖父が。なぜか嫌いだった知獣の叔母もいて、紅花さんや遥桂に赤葵もいた。みんながみんな、とても優しげで、暖かった。
嬉しくて嬉しくて一歩踏み出した途端、父が消えた。それとともにみんなが少し遠のく。もう一歩踏み出すと母が、もう一歩踏み出すと叔母が、更にもう一歩踏み出すと祖父母が──近づこうと思えば近づこうと思うほど、消えて遠のいた。みんなが消えた瞬間、振り返ると後ろは暗闇になっていた。
「お母さん? みんな、どこに行ったの……」
いつのまにか、暗闇に一人でポツンと佇んでいた。下を見ても上を見ても、前も後ろも右も左も全てが漆黒の闇だった。手を伸ばせば手の先が消える。小さく呟いた声は少し響いて、闇に呑み込まれるようにして消えた。足は宙に浮いているようで、動かしても動かしても空を掻くだけだ。体中に闇が纏わり付く。
急に目の前に紅蓮の炎のようなものがパッと飛び散って、真ん中にはあの怖くて身が竦むような赤葵がいた。こちらを勝ち誇った顔で、だけど冷たい瞳でみていたのだ。無意識のうちに後ずさろうとして足が闇を蹴る。
「ひっ……」
「──罪人(つみびと)のくせに」
一歩近づいた赤葵が深苑の肩をがしりとつかむ。そのまま押されて深苑は闇に吸い込まれるようにして落下していった。
後頭部に強い衝撃を感じて、深苑は目をはっと開けた。ぼんやりと暈しがかかった視界が徐々に鮮明になって、それが夢だったのだとわかる。寝台から落ちて、床に頭をぶつけたらしい。じんじんと痛む頭を手で擦って、身体を起こしたとき、今更のようにあの赤葵を思い出した。
自分を忘れ、平和に染まるなという赤葵の警告だったようにも感じる。まさかない、と深苑は考えもせずに苦笑する。
しかし本当にそうだったのかもしれない。赤葵はすぐそこにいるのだから。
-
2010/03/23(Tue)19:41:30 公開 / 飛燕、
■この作品の著作権は 飛燕、さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
初投稿です! まだまだ未熟な文章ですが、コメントしてくださると嬉しいです。
アドバイスとから全然厳しくていいのでお願いします。
更新かなり遅くなりました。卒業式練習で毎日くたくたで←
漸く明日卒業なんで、春休み中に頑張ろうと思いますw
ああ、まさかの母の過去w 私も予想しませんでした(
過去……何にしよう……と思い悩んで書いていったらこうなってしまいました……。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。