『勾玉の輝きへ』 ... ジャンル:童話 ファンタジー
作者:カナダ                

     あらすじ・作品紹介
おばあちゃんをなくして悲しい奈緒が勾玉を身に着けると、不思議なことがおこった。

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おばあちゃんが亡くなった。いきなり届いた知らせに、奈緒はおどろいた。
 三日前に会ったばかりだった。その時は元気に見えた。お葬式が終わった今も現実だとは思えないくらい突然の出来事。奈緒は目を閉じて、ゆっくりと思い出した。
 しわしわの手や顔。
 曲がった腰。
 田舎の土地がおばあちゃんにはすごく似合っていたっけ。
 畑仕事を手伝うと、とれた野菜をたっぷりとくれて、もって帰るのに大変だった。
 ひとつひとつの出来事を思い出すに連れて、奈緒は悲しくなる。涙をこらえるのがやっとだった。
 
 家に帰って、自分の部屋に入った。午後八時。いつもなら電気をつける時間だったが、明るいところにいる気分ではなかった。むしろ暗闇のほうが落ち着くのだ。
 暗闇の中で、ベットに仰向けになった。少しずつ目が慣れてきて、周りが見えてくる。
――カタッ……
 何か机のほうで音が聞こえた気がした。奈緒は起き上がって、音の主を探した。
 床を手探りしていると、何かが触れた。それをつかんでデスクライトで見てみる。
――見たことある気がする……社会の教科書に出てた……
 勾玉だった。首にかけられるようになっている。それをみているうちに不思議と奈緒はそれをつけてみたい気持ちになった。
 迷わず、身に着ける。すると、奈緒の体が光を帯び始めた。
――!?
 奈緒はたまらず、目を瞑った。


 光を感じなくなってきた。奈緒は目を開ける。
 そこは、美しい世界だった。
 美しい緑の芝生の中に、色とりどりの花が咲いている。見たことのないような青空に、綺麗な小鳥の囀り。快い風。
 少し歩いてみると、おばあさんやおじいさん、子どもたちなど、さまざまな人たちが楽しそうに笑っている。
――ここは?
 二人の老人が、こっちに向かって笑顔で手を振っている。
「おじいちゃん? おばあちゃんも!」
 奈緒は二人に駆け寄って、思いっきり顔をうずめた。
「どうして? ここは……」
「奈緒ちゃんが悲しんでいるのを見ていられなくなってね。その勾玉が光っている間だけ、ここにいられるんだよ。でも残念ながら、その光は十分間だけしか光らない。その間に向こうのトンネルをくぐらないと奈緒ちゃんまで帰れなくなるから、絶対に守るんだよ」
 十分だけ。しかしそれは、奈緒にとっては一時間にでも一日にでも感じられる。
「おばあちゃん、おじいちゃん、何をして遊ぶ?」
「じゃあうちにおいで。たくさん学校のお話とか、聞かせておくれ」
「うんっ! いこう」
 二人のうちは大きくはなかったが、小奇麗なログハウスだった。
 そこでおばあちゃんはお茶を入れてくれて、三人で向かい合って座った。
「あのね……」

 奈緒は小学校であったことをたくさん話した。たくさん話して、少し疲れた。
 久しぶりに飲んだおばあちゃんのお茶も追いしくて、小さな頃からあっていないおじいちゃんとの話も、とても楽しかった。
「奈緒ちゃん、もう十分になる。悲しいけど、帰らなくてはいけないね……」
「もうそんなになるの? ……私、嫌だ。帰られなくてもいい。帰りたくない!」
「奈緒ちゃん。そんな悲しいこといわないでちょうだい。奈緒ちゃんがいなくなったら、皆悲しいんだよ」
「それでもいいの! いいの……」
「だめだよ。帰らなくちゃ、おばあちゃんも悲しいんだよ。大丈夫。おじいちゃんもおばあちゃんも、いつだって奈緒ちゃんの心の中に生きているからね。……そうだ、いい物をあげよう」
 おばあちゃんは、戸棚から小さな紙袋を取り出し、奈緒の小さな手のひらに乗せた。
「このお花の種を植えて、毎日欠かさずにたっぷりとお水をあげなさい。綺麗なお花が咲くから。その花を見て、いつでもおじいちゃんとおばあちゃんのこと、思い出してね」
「元気で、奈緒ちゃんがワシらくらいの歳になったら、あえるさ」
「……うん」

 三人は、トンネルの入り口まで来た。
「それじゃあ、元気でね」
「またね! きっとだよ。また会うんだよ!」
「信じていれば、きっと会えるさ」
「さよなら」
奈緒は涙をぬぐって、トンネルを駆け抜けた。

2009/04/30(Thu)19:34:21 公開 / カナダ
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■作者からのメッセージ
児童文学のようなものを書いてみました。
読者の皆様にほんの少しでも感動を与えられたらな、と思います。
読んでくれれば光栄です。

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