『僕が見上げた空は、』 ... ジャンル:リアル・現代 未分類
作者:響                

     あらすじ・作品紹介
きょうはあの坂をのぼりきろう。そうすればあの子にあえる、きっと、

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
 わかたれたもの。 (だれかがよんでる)
 
(たましいが響いてる)
(欠片たちが歌いだす)
 日常が、少しずつ変わっていった。
 知らないことを知りたくなった。

 ゆっくりと、忘れていたことを思い出す。

(だれ?)
(きみはだれ?)
 いちばん大切なことを思い出す。(なにかが崩れてしまっても)
 
(きみのことが知りたい)

1.
「何できのう無視したんだよ」
 そんな感じのことを、最近になって毎日のように言われ始めた。
 ぼくは小学五年生で、家族はお父さん一人だけ。
 お母さんは、ぼくが小さい頃に事故でしんでしまったそうです。顔はよくおぼえてない。
 ぼくの最近のなやみは、 「ひとまちがい」 をされること。――クラスの友達が、ぼくのことを見たっていうんです。
 もちろん、ぼくはその友達を見ていない。ぼくは会ってない。今日も友達はしらないぼくを見ていた。
「なあ、きのう本屋いたろ、」
 教室に入って、机の上にランドセルを下ろすと、すぐに友達は席の方までやってきてこう言うのだ。登校してすぐこれ。こんなのが毎日。いいかげん嫌になってくる。
「いないよ。本屋になんて行ってない」とぼく。
 言っても大体信じてくれないけれど、行ってないものは行ってないし、知らないものは知らないのだから仕方ない。
「うっそだー。俺ぜったい見たもん」
 ほうら。
「知らないってば」
「うそうそうそ。絶対見た! 絶対おまえだった。」
「うそじゃないよ。本屋なんてしらない」
 いっそのこと、 「うん、いたよ」 と言ってしまえば楽なのだけど、そうしたら次は、 「何で無視したんだ」 に話題が変わってしまう。
――何で? そんなの答えられるわけがない。
 ぼくのそっくりさんでもいるんだろうか。なんなのだろうか。
 昨日は公園にいた、一昨日は知らない子と歩いてた、その前は校区外にいた、無視した、だの何だの。
 ぼくは放課後は大体家に帰って一人でいるし、そんなのそんなの誰一人ぼくじゃない。
(だれ?)
(だれなの?)

(ぼくにそっくりなきみはだれ?)

 ぼくのなまえは「 ひゅうがらいか 」お母さんがつけてくれた名前。
 ひまわりが好きなおかあさんが、はるに生まれたぼくにつけてくれた名前。 
(来夏、)
 おかあさんはとてもやさしかった。あいまいで、おぼろげなきおくの中で、ぼくのおかあさんは時間がとまってる。
 たまに夢にでてくる、あいまいでおぼろげなおかあさん。ひまわりにかこまれて、笑ってた。おかあさんの時間がとまったのは、ひまわりが一番きれいな季節。
 夏。
 ぼくのゆめは途中できりかわる。ひまわりと、おかあさんのゆめから、別のゆめへ。
 だれかがひどく泣いているんだ。くるしくて、せつなくて、ぼくはみみをふさいでしまう。
 でもみみの中に入ってくる、聞こえてくる。頭の中に、ちょくせつ。いたい、いたいぐらいに響いてる、だれかの、泣きさけぶ、
『――! ―――― (ミ゛ーンミンミンミン) ――! (ジァジァジァ……) ――!』 
 さけびごえは蝉のこえにかきけされて、ぼくはやっと目をさます。
 寝汗で少し冷たくなったパジャマが、一層、現実味を帯びていて、何もしたくなくなってしまう。
 お母さんの命日が近づくたび、ぼくはこの夢をくりかえす。
 ないているのは誰? 答なんてない問いを、僕はまた、くりかえす。
**
「ドッペルゲンガーじゃないかと思うの」

 お昼休み、給食を食べているときだった。
 今日の献立はコッペパンとグラタンとカレーうどんで、引っ付けあった机に座ってるぼくら三人は、彼女の言葉に興味を持てなかった。
 お腹が空いてたのが一番大きい。
 とりあえずぼくがコッペパンをかじっていると、彼女はもう一度言った。
「ドッペルゲンガーじゃないかと思うの!」
「うるせーな聞こえてるよ」
「聞いてないじゃない」
 まあ、聞いてないというのは最もな意見だけど、そんなことはどうでも良くて。
 ぼくは二人の会話に興味が持てず、ぼんやり給食を食べていた。
「なんだよ、ドッペルゲンガーって」
「知らないのお?」
「名前は知ってるさ、つまりなんなんだよ」
 だからー、と彼女はため息をついて、コッペパンをかじっているぼくを指差した。
「らいかくんのことよ」
 ん? とコッペパンを口から離す。思いがけず話題が飛んできた。
「みんなが見てるのは、らいかくんじゃなくって、らいかくんのドッペルゲンガーだったのよ。そう考えたらつじつまが合うでしょ」
 いや合わないよ。
「そんなもんいるわけないだろ」
「そんなことないよ。だって、らいかくんがうそ言ってるようには思えないだもん」
 ――ぼくがうそをついてない、と言ってくれるのは嬉しいけれど。
 正直なところ、ドッペルゲンガーがいるとは思えなくて。言い争うちっちゃな二人を、ぼんやり見ていた。
 カレーうどんが冷めそうな勢いで討論している二人は無視しつつ、コッペパンを食べ終わった瞬間、
「らいかくん分かってる!?」
「はいっ」
 急にすごい剣幕で話を振られ、何が分かってるのか全然分かってないまま返事をする。
「いーい? ドッペルゲンガーを三回見ると死んじゃうのよ!」
 はあ、と気の抜けた返事しか出来ない。
「ドッペルゲンガーには、ぜったいに会っちゃだめよ、らいかくん」

2009/04/02(Thu)17:42:39 公開 /
■この作品の著作権は響さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも初めまして、響と申します。
この『僕が見上げた空は、』はトッペルゲンガーを題材としたお話なんですが、
実はわたくし、そっち系の話を書いたことがなければ読んだこともございません。
そのうえ、主人公の年齢と、わたくしの実際の年齢が離れているので
感情の表現等が難しく、伝わりずらい所も多々あると思います。
さらに、更新はすごい勢いで進んだり、いきなり止まってはまたすごい書いたりとムラがひどいです(おい
それでも結構!とおっしゃってくださる心優しいお方は、どうか最後までお付き合い頂けると幸いです。

感想・アドバイス等ございましたら、遠慮なくどんどんおっしゃっていってくださいね^^

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。