『だって恋をしているから』 ... ジャンル:恋愛小説 ショート*2
作者:しろねこ                

     あらすじ・作品紹介
毎朝見かけるあの人に話しかけたい。そんな事を考えている女の子の話。そんな片思い中の彼女ですが、少し変な趣味を持っていて…

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 だって恋をしてるから。


 大好きです。ふと、呟く。吐き捨てるように呟く。その声は誰にも届かず消える。私はすこし寂しくなる。
 私は片思い中だった。絶賛片思い中だった。ストレート・トゥ・片思いだった。
 相手はいつも登校途中の電車で見かける、一つ上の他校の人。
 大好きです。吐き捨てる。私は携帯をぐるぐると指でもてあそぶ。せめてメアドを知っていたら、何か進展があるのに。
 私はいても経ってもいられなくなって、親友にこの思いをメールで送る。「助けて、わかんない」
 送信。
 しばらく待つ。
 それは、一目惚れだった。
 遅刻するといつもより一本遅い電車に乗ったあの日、そこにその人はいました。
 扉の閉まる音がいつもよりゆっくり聞こえ、スポットライトがあなただけに射し、世界は二人だけになりました。
 ずーっと見ていました。私はあなたを。
 あなたの学校は私よりも先に駅があるのです。でも、その日は遅刻とかどうでもよくなって、あなたの後をつけました。
 その日はあなたが学校へ入る所まで付けていました。ずっと心臓がばくばくと音をたてていました。初めての感情でした。
 その日以来、私は途中で電車を降り、あなたを見送ってから学校へ行くようになりました。
 そのせいか、遅刻の常習犯になってしまい、初めて親が学校に呼び出されました。「このこはぁ!!いいこなんですうぅうう!!」と泣き叫んでいた姿をみてさすがに悪い事をしたという気持ちになりました。でもしかたありません。私は生まれて初めての感情にとりつかれていたからです。
 あなたをもっと知りたい。もっと。もっと。もっと。
 ぶーっと低く布を震わす音を枕の上に置いていた携帯がたてました。
 親友からです。彼とは小さな頃からの友達です。
 「いつものこと?」と来ました。
 「うん。」と返します。
 送信完了。
 話を戻します。私はどうしたら彼の事をしれるのか、わかりませんでした。と言うのも、どうしたらいいのかわからなかったからです。ずっと、私は狭い世界で生きていました。
 高校へ通っていますが、友達は少ないです。もうすぐで一年生も終わるのに、人見知りがぬけず、同じクラスの人から話しかけられるだけでも「ぁぁ…うぅ」とどもってしまい、喋れなくなってしまいます。
 私は極度の人見知りなのです。人の目見て喋る事なんてできません。
 どうしたらいいのですか。
 私は、とりあえずこの高ぶる感情を抑えるために趣味の爆弾作りを続行する事にしました。
 今回の爆弾はいつもと違ってダミー装置に手を加えているので、多分処理するのにてまどうはず。私はあたふたする、人たちの姿を思い浮かべると少しだけ幸せな気持ちになりました。
 この気持ちは、あの人を考えてる時に似ています。
 私はとりあえず、作業をやめ、テーブルの上にあったコッペパンを食べる事にしました。
 ぱくぱくと食べながらテレビをつけました。チャンネルをニュースをやっている所にあわせると最近賑わせている連続通り魔殺人の続報が入ったとニュースレポーターが叫んでいました。また一人殺されたらしいのです。この事件は最近この辺の地域で続発していて、小学校は集団下校になるし、私の学校でも早くに終わって強制下校。今回の事件は私もよく行くデパートのトイレで起こったらしく、トイレの便座に生首が置かれているのを清掃員が発見したそうです。被害者は32歳のサラリーマン。ふと、悲しい気持ちになります。こういうニュースを見ると悲しい気持ちになります。でも、あんまりくよくよしてもいけないので、作業の続きをする事にしました。
 今度はどこに置こう。サッカーボールの形をした爆弾を見ながらそう思いました。
 
 ぶーっと着信。
 「そろそろ、話しかけてみたら笑」
 「話しかけられないからこまってるのに」
 メールを返しました。
 でも、その通りです。そろそろ行動を起こさないと。たぶんなのですが、あの人は一つ上だと思うのです。だから、もうそろそろ受験です。受験になると私の事なんて見向きもしなくなると思うのです。私は急にさびしい気持ちになり、衝動的に爆弾の起動スウィッチを押そうとしました。
 はっとなり、起動スイッチから手を離しました。
 そして、その手を、ポケットに入ってあった魚肉ソーセージにのばし、ぴりぴりと外袋を破り、中身をだし、それを窓から放り捨てました。
 ぶーっ。着信。
 「でも、すすまへんよ?」

 その通りだと思いました。
 もう、迷ってる暇はない。ふと急にそう思いました。
 

 「明日、伝える」
 そう返信しました。
 
 私はそれから、急に睡魔に襲われ寝ました。
 
 

 朝。
 日差しが眩しいです。
 私は、朝ご飯を食べます。
 トーストに苺ジャムを塗ったものです。
 「ごちそうさまです。美味しかったです」
 私は、リビングで撲殺された両親に言います。
 それから制服に着替え、すこしファブリーズを部屋に撒いて、サッカーボール型の爆弾を持って学校へ行きます。
 
 
 いつものように、一本遅めの電車に乗りました。
 私はどきどきしています。いつもよりも。
 ホームに電車が到着します。
 私は意を決して電車に乗りました。
 彼がいました。
 私は途端に心臓の鼓動が速くなった事に気が付きました。
 彼はいつものようにぼーっと外ばかり見ています。
 車内は通勤途中のサラリーマン、OL、通学途中の高校生、大学生、その他いろんな人が沢山ひしめき合っていました。
 私は人に押されたと偶然を装って彼の近くまで行きました。
 彼はずっと外ばかり見ています。今日は春が近くまで来ているせいか、久しぶりの青空でした。ああいい天気。
 高速で流れる景色を見ている彼は何を考えてるんでしょうか。
 私は緊張を押さえるためにポケットに手を突っこみました。ポケットの中には起爆スウィッチがあります。私はそれを指でもてあそんで緊張をほぐしました。
 私は彼の顔を見ました。
 やっぱりかっこいい。
 ふと、そんな目線に気が付いたのか目が合ってしまいました。
 私は倒れそうになりますが、必死に立とうとします。
 どうしたらいいかわからなくなっていました。
 どうしたら。
 どうしたら。
 すると急に「…どこの学校ですか」とぼそぼそと声がしました。
 彼です。
 ああぅあああ。
 頭の中でどう返したらいいかわからない、感情がぐるぐる。ぐるぐる。
 私はこのまま、起爆スウィッチに手をかけて自爆してしまいたいとさえ思い出してきました。
 このまま死ねたらいいかなー、
 なんて考えてると「僕はあなたに伝えたい事があります」と彼がぼそぼそと言いました。
 私はいよいよわけがわからなくなって。私も言いたい事がって言おうとした時に彼はぼそって言いました。
 「君にこれを見て欲しかった」
 と言って彼は大きなナイフを学生服のポケットから出しました。
 そしてそれを自分の首元に持って行き、しゅっと横に引き裂きました。
 あっ、と気が付いた時には彼の首からは大量の血が噴き出していました。
 その血は私にかかり、隣のサラリーマンにかかり、OLにかかり、中学生にかかり、大学生にかかりました。車内は阿鼻叫喚の地獄絵図を見せていました。
 私はその場にペタンを座り込みました。
 誰かが吐きました。
 中学生は泣いています。
 私も気が付いたら涙が流れ出していました。その涙は止まりませんでした。
 私はポケットの中の起爆スウィッチに手をかけ、スウィッチを押しました。
 かちり。
 でも、
 なにも。
 なにもおこりませんでした。
 何も。
 そのかわり、止めどなく涙が流れました。
 車内は血で染まっていきます。

 
 次の駅に到着するやいなや、車内にいた人は一斉に外に出ました。体中に返り血をあびた人々が歩く、その様子はすこし狂っていて綺麗だなと何故か冷静にそう思いました。
 その後、電車からは全員出されました。残ったのは彼だけでした。今やただの肉かもしれません。
 「急に首をかっきったの!自分で!」と隣にいたOLさんが泣きながら人に説明しています。
 誰も、電車に乗れない状況になっていました。
 少し離れた所へ全員が移動したその時でした。
 ずどんと爆発音がし、駅がゆれ、人々が騒ぎ始めました。私も驚いて何がおこったかまったくわかりませんでした。
 電車を見ると先程まで乗っていた車両―彼の死体が乗っている―が爆発したようで黒い煙をすごい勢いで吐き出していました。
 そして、その少し手前を駅職員さんが倒れていました、すこし吹き飛ばされたようです。
 車両は見る影もありません。
 彼の死体は粉々になったのかもしれません。
 すべては私のサッカーボール型爆弾でした。
 私は単純なミスをしていました。それは、タイマー式にしていたことでした。時間は7分。
 私はそれがくやしくてくやしくてしかたなかったのです。
 

 「じゃあ、目の前で死んだの?」
 親友さんからの電話。
 「うん。なんか君に見て欲しかったとかどうとか言って」
 「ふーん。なんか異常者だったんだね。」
 「うん」
 「そういえば。」
 「なに?」
 「好きな人が死んだのに結構けろってしてるっていうか」
 「うーん」
 この事は何とも言えないのです。
 一つ言えるのは爆弾が爆発したあのとき、全部終わってしまったのです。
 全部。
 何もかも。
 「あのな」と私は言います。
 私は窓の外を見ました。何台も何台も警察の車。
 「なに?」
 「親友でいてくれてありがとう」
 「なによー。こちらこそありがとう」
 「じゃあ」
 「じゃあ」
 そう言って電話を切りました。
 それから、私ははあとため息をついたあと、机の中からピストルを出しました。
 鏡に映った自分を見ました。
 「普通にしてたらわるくないのになー」
 と普段言わない事を最後に言いました。
 それから、こめかみに銃口を当て、引き金を引きました。


 それは異常な世界でした。
 それは異常な世界でした。
 

2009/03/01(Sun)04:08:58 公開 / しろねこ
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■作者からのメッセージ
すいません。変なの書いちゃいました。恋愛小説を書こうとしたらおかしな方向へ。何があかんかったんやろね。うーん。わかんない。
とりあえずカオスな展開すぎてすいません。こんな後半になるはずじゃなかったんやけどなー
こんな話ですが読んで下さった人本当にありがとうございました!!
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