『魔法の文学的表現』 ... ジャンル:恋愛小説 ファンタジー
作者:立名とおる                

     あらすじ・作品紹介
文学研究部は私、川元洋乃を除いた三人全員が魔法学科の生徒である。ゴスロリ好きの前田(男)、恋する読書イケメン藤美、スーパー優等生智絵ちゃん。ゆるゆると流れていた日常は、智絵ちゃんが記憶喪失のゴーストを連れ込んだことから大騒ぎになる。そしてそのゴーストの過去を三人で調べていくうちに、それは学校のアイドル美作先輩の自殺騒動と私の初恋につながっていく。そんな中、前田と私の関係に微妙な変化が現れ始めて…。

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1.文学研究部
「私、不思議なものが大好きなの」
 そう言う彼女の目はきらきらと星くずを詰め込んだように輝いていて、当時の私には彼女こそがこの世の不思議そのものであるように見えていた。
 夏の直前、生徒の数が三桁に満たない田舎の学校に転校してきた彼女は、土と水の匂いしかしない私達に馴染むことは全くと言っていいほど無かった。
 ひらひらの白いワンピースや少し茶色い真っ直ぐの髪や、絵本の中に出てくる人達みたいなしゃべり方をする女の子は、憧れ、そして嫉妬の対象になった。綺麗に結ばれた三つ編みは泥だらけの手でくしゃくしゃにされ、二十七色もある色鉛筆は、転校してきて一週間で盗まれた。
そして、そんなことをされてもなお彼女は毅然としており、まっすぐな美しさを持って私達の好奇の視線に立ち向かっていた。ますます彼女は孤立していった。
 私は彼女が好きになった。
 最初は、自分が生まれたときは都会にいたからという小さなプライドを周りに対して持っていたからかもしれない。都会からやってきたせいでいじめられる転校生に対して優しくしたのは、自分を彼女と同じ所に位置づけたかったからだ。自分を田舎者だとは思いたくなかった。
 でも、彼女が私に心を許してくれたその日、彼女の宝箱だというガラスのケースを見せてもらった夕方、私は確かに彼女のことを好きだと思ったのだ。
「洋乃さん、洋乃さん」
 すべすべした手が私を手招く。私は導かれるまま彼女についていく。
 クローゼットの中のお姫様みたいな洋服。花飾りの付いた大きな帽子。それから、一つの傷も汚れもない本、本、本……。
 少しサイズの大きいドレスを着せてもらって、私と大きなベッドで本を読み、髪を結い合った。今まで全くしたことのない遊びに私は夢中になった。
「××ちゃんの髪の毛は真っ直ぐで綺麗やねぇ」
 私が長くてさらさらした髪を三つ編みにしながら言うと、彼女は白い頬をうっすら染めて笑う。そして、「私、洋乃さんのふわふわの髪の毛も好きよ」と、私の巻き毛に指を滑らせた。
なにもかもが素敵に輝いていて、私はうっとりとするばかりだった。
 私は今も昔も決して同性愛の趣味など持っていなかったのだけれど、しかしこのとき私が彼女に対して抱いていた感情というのは、限りなく恋に近いものだったように思う。
 私はなによりも彼女を大事にしたし、彼女は私に手をさしのべてくれた。
 それはほんの短い間の幻みたいなことだったけれど、世界中に散らばっている恋のひとつには違いなかった。

「じゃぁ、先輩の初恋は女の子が相手だったってことですか?」
「そうだよ」
 わーお、と後輩は少々大げさなそぶりで丸く目を開いてみせた。
 でもたぶん、本当はちっとも驚いてなんかいないと思う。そういう奴なのだ。
 私はいい感じに焼けてきたホルモンをひっくり返す。幼い頃の夢みたいな思い出も、現実に帰ってきた途端、煙と肉の焼ける匂いと騒がしい声でかき消されてしまう。
 前田がうきうきしたようにこっちを見つめているので、「君はどうなのさ」と、反対に訊ねてみた。
「え、僕ですか?」
「そうだよ。いくら君でも、恋くらいしたことあるでしょ」
「うーん……どうでしょうねぇ」
 真っ直ぐに切りそろえられた黒い前髪が揺れる。
 この前までは金髪の縦ロールだったのに、もう飽きてしまったのだろうか。どっちかがウィッグなんだろう。どちらにせよ嘘みたいに似合っているのだから、えらいものだ。
「どうもこうもありません。今好きな人とかいないの? 君、結構もてるじゃない」
「いや、もてるって感じじゃないと思いますけど」
 後輩は珍しく困ったように眉をさげた。どうやら自分の恋愛の話は苦手なようだった。ぱしぱしと長いまつげが瞬くと、急に肉を運ぶ箸の動きが早くなる。
 少し腹が立ったので、焼けたホルモンを口に放りこむと、私は別の話題を振ることにした。
「そういえばさ、三年の美作先輩って知ってる?」
「聞いたことありますね」
「有名だからね。魔導部の部長だったかな……。で、なんかこの間、自殺しかけたらしいよ」
「まじですか」
 まじである。まだほとんど誰も知らない、とっておきの情報だ。
 どうやら前田も知らなかったらしく、興味が湧いたのか、塩タンを並べる手を止めて私の方を見た。
 前田は、普段はゴシック&ロリータでばっちりきめてる超絶美少女(自称)のくせに、こういうえげつない話が大好きだ。
しかし本人はそんなこと微塵も気にしていない。基本的に自分の欲望に忠実な性格なのだ。どれだけ非人道的で反道徳的であろうとも、別に良いと思っている節がある。
そういう所には昔から振り回されてばかりだけれど、少しうらやましくもある。
「で、その自殺の理由はなんなんですか?」
「未遂だから。死んでないよ」
「どっちでもいいから、早く教えてくださいよう」
 前田はふくれっ面で私を睨んだ。黒いアイシャドウがきらきらしている。
 そういえば今この子が着ているワンピースって確か三万近くするはずだけど、焼き肉なんかに着て来て匂いとかは大丈夫なんだろうか……。
「先輩? 聞いてます?」
「ああ、ごめんごめん、ちょっと考え事」
「で、その美作先輩がどうしたんですか?」
「うん……それがね、美作先輩、意識が戻ってからもなんにも話さないんだって。ご両親が泣きながらなんでこんなことしたんだって訊いても、ずーっと黙ったまんまらしくって」
 親を泣かせても言えない事情とはいったい何なのだろうか、というのがこの話題の見所である。
 聞いた話ではあるが、美作先輩は成績も良く友人にも恵まれており、春にはガールフレンドと同じ大学に進学することが決まっていたそうだ。少なくとも彼に自殺するような要素は見あたらないらしい。
「わけありですねー」
 前田はにやにやしながら、箸を置いて腕を組んだ。興味津々とはこんな様子を言うのだと思う。
「意外と普通の理由かもしんないよ? 人間どこで何があるかなんて他人にはわかんないもんだしさ。本当は彼女と別れそうになってた、とか」
「えー、そんなことで自殺なんかします? だいたいその彼女が駄目になっても次作ればいいじゃないですか。美作先輩ってかなり格好いいでしょう?」
「あれ、見たことあるの?」
「美作って名前が格好いいです」
 前田はない胸を張った。
 毎度毎度思うのだが、こいつの根拠のない想像はいったいどこから湧いてくるのだろうか。どこかに蛇口があるなら是非教えてもらいたいものだ。
「まぁ、見目はそれなりにね。でもそんな簡単に女とっかえひっかえするタイプじゃ無いと思うよ。人望厚いみたいだし」
「女の子にだらしないのが人望に関係あるんですか?」
「関係ある人もいるね」
 だんだん宇宙人と話してるみたいになってきた。いや、魔法使いか。
 自分でも知らないうちにため息をついていた。腕の時計を見ると、もう店に入ってから一時間経っていた。なのにまだ先輩の自殺と私の初恋の話しかしてない。
 今日は普通の女の子モードで来たんだけど、やっぱり前田とそういうのは無理みたいだ。
 いい加減、私も諦めるべきかもしれない。
「あ、先輩、そのカルビ食べて良いですか?」
「うん、もういくらでも食べなさい」

 放課後、前田は靴底の裏を見つめながら、ぼんやりしていた。
 靴底と言っても自分のローファーではない。同じ部活の同級生である藤美のものである。幅の狭い長机を挟んで彼と向かい合っているので、机の上に乗せられた安物の革靴が目の前にあるのだ。
 別に前田に他人の靴の裏を眺める趣味はない。できれば革靴を突きつけられない場所に移動したかったのだか、残念ながら文学研究部の部室は絶望的に狭いのだ。長机を一つと四つのパイプ椅子を置いたら、それだけでほとんど部屋は埋まってしまっている。もし災害が起きた時、部員が全員集まっていたら、この部屋から脱出することは極めて困難だろう。
 しかし前田はこの部屋の雰囲気は決して嫌いでは無かった。真っ白のタイルが延々と続いているみたいに平坦でつまらない学校の中で、この部屋だけは特別異質だからだ。
 きっとこの部室は一枚だけタイルが欠けた場所なのである。
「あ、今のはなかなか文学的な表現」
「え?」
 向かいで本を読んでいた藤美が顔をあげた。不思議そうに前田の顔を見ている。
 前田はにっこり笑って見せた。
「ただの独り言だから気にしないで」
「あ、そう。司って変な癖多いよな」
 司というのは前田の名前である。自分では結構気に入っている名前なのだが、何故か、家族とこの同級生以外に名前で呼んでくれる人間はいない。
「そうかな。そもそも変じゃない癖ってあんまりみたことないけど」
 藤美はあまり興味がないようだった。読んでいる小説の続きが気になっているようで、それ以上会話を続けることはせず、首を大きく回すと、手元の文庫に目を戻した。
 前田も何年か前に読んだことのあるエンターテイメント小説だったが、あまり内容は覚えていなかった。基本的にミステリと古典以外は読まないのである。
 反対に藤美は本の虫で、あらゆるジャンルの小説を読み、それらすべてを平等に愛しているので、前田の偏食ならぬ偏読にはことあるごとに文句をつけられていた。前田はそのことについて議論を交わすのが好きで、時々彼の気分を逆なでするようなことを言って暇を潰しているのだが、恐らく今は本に熱中しているので話しかけてもまともに答えてくれなさそうだった。本を読んでいる最中の彼は、きっと目の前で札束を振られたって大した反応を見せない気がする。
 やっぱり、先輩について行けば良かったかも知れない……。
 一時間ほど前に、敬愛する川元から映画に誘われたのだが、川元の友人も一緒だ聞いてつい断ってしまったのだ。どうせあとでまた会えるのだから別に良いと思っていたのだが、何も無いところで何も考えることがないというのは、なかなかに苦痛なことだった。
 なんだか急に退屈になってきて、前田は後悔した。

 映画ははっきり言って最低だった。
 どうみても小学生の書いた作文の方が面白いとしか思えないような内容なのである。イジメ、自殺、セックス、妊娠……。だらだらと陰湿で、リアルなようで中身のない、炭酸の抜けたコーラみたいだった。まさか、単に私が恋愛物を見慣れていないからそう感じるというわけではないだろう。
 あまりのくだらなさに途中で飽きてしまい不審者の如くキョロキョロしていたら、隣の友人に肘でこづかれてしまった。しかし、彼女の泣き顔が写真に撮っておきたいくらい傑作だったくらいにしか私は思っていない。あんな映画を見せられては、そうそう反省など出来ない。
 割り勘で買ったポップコーンをひとりでたらふく食べた頃に映画はようやく終わり、私は友人と別れて学校に戻った。
「ただいまー」
 部室のドアを開くと、藤美が一人で本を読んでいた。
「あ、先輩。どーもです」
 藤美は読んでいた文庫本から顔をあげて、片手をあげた。
「あれ、前田は?」
「さっきコンビニに行きましたよ。たぶんもうちょっとで帰ってくるんじゃないですか」
「そう」
 パイプ椅子をひいて一番奥の席に腰掛ける。この部室は悪魔的に狭いので、先に入った人間が奥の椅子に座るというのが暗黙の了解なのである。
 私が鞄を机の上に置くと、藤美は机に載っけていた足を降ろした。文庫本に栞を挟んで自分の鞄に仕舞う。部室の本箱に置かないところを見ると、どうやら読み終わったようだった。
「司、先輩に着いていけば良かったって嘆いてましたよ」
 藤美は大きくのびをすると、私の方を向いて言った。
「いや、こなくて正解だったよ」
「そんなにつまらなかったんですか?」
「うん、セレブ芸能人のお宅拝見くらいつまらなかった」
「嫌いなんですか、お宅拝見……」
「好きなの?」
 ううんと藤美は唸って首を傾げた。
「そういわれるとそうでもないですね」
「そもそも私、テレビなんて滅多に見ないからね……」
 精々、朝の天気予報を時々見るくらいである。ニュースは毎日パソコンでチェックしているから特にテレビで見る必要はない。
 娯楽としてならば、本や漫画を読んでる方がよっぽど好きだ。うちの兄はアニメ好きなのでよく録画予約をしているが、私はビデオデッキの使い方もよくわからないくらい、テレビとは距離を置いた生活をしている。
 映画館の自販機で買ったペットボトルのお茶を飲む。私は薄いお茶が好きなので、日本茶に限ってはこういう既製品のものを良く飲む。今日はこの間発売されたという新製品を買ってみたのだが、妙にしっかりした味が付いていてあまり好きではなかった。
 がちゃりと部室の扉が開いた。前田だ。
 何故か馬鹿みたいに暗い顔をしている
「おかえり」
「あ、先輩、映画終わったんですか?」
 前田は私の方を向くと、ぱっと花が咲いたみたいに笑顔を浮かべた。現金な奴である。
「良かった! 結構寂しかったんですよ、一人でコンビニ行くの」
「おい、俺を無視するなよ」
 藤美が苦笑いを浮かべている。
「ああなんだ、藤美いたの?」
「こら」
 前田は笑いながら私の隣に来てトレードマークのリュックを方から降ろした。
 前田はシャツもスカートも靴下も靴もほとんどすべてを黒で統一しているので、この朱色のリュックだけが常に浮いている。本人曰くランドセルのようなものらしい。全く変態な発想だと思う。
「そういえば、智絵ちゃんまた来てないんですか?」
 前田はコンビニのビニール袋から大量のお菓子を出しながら言った。
 智絵ちゃんというのは文研の幽霊部員、古槍智絵さんである。
 本人の名誉のために言っておくが、決してやる気がないから幽霊部員なのではない。むしろ真面目の上に超とか激が付きそうなくらいの優等生である。彼女は生徒会書記と女子魔導部の部長と茶道部副部長の掛け持ちなので、自然とほとんど活動らしい活動をしていない文研が後回しになるのだ。
「今日は来て欲しいですね」
 藤美がポッキーの箱を開けながら言う。藤美と智絵ちゃんは中学の同級生である。
「藤美は智絵ちゃんのこと大好きだね」
「うるさい、お前が言うな」
「でも事実だよ」
 前田が意地悪く口元をつり上げた。藤美はむっとしたように眉を寄せたが、相手にしない方がいいとわかっているようでそれ以上何も言わなかった。
 ちなみに智絵ちゃんは立派な彼氏持ちである。智絵ちゃん本人からはあまり聞いたことはないが、噂によるとなかなかの男前で、しかもT大生のなのだそうだ。正直言ってそんな人と争って藤美に勝ち目があるとは到底思えないのだけれど、そんなことがお節介なのは初恋以来ろくな恋愛経験がない私でも知っている。
 ふと前田を見ると、またこの部屋に入ってきた時のような暗い表情になっていた。普段は天真爛漫と残酷礼賛の具現化みたいなやつなので、こんな顔をしているのはかなり珍しいことだ。
 何か落ち込むようなことでもあったのだろうか。前田を落ち込ませるようなことなんて、ちょっと想像できないけれど。
 私が声をかけるかかけまいか悩んでいると、控えめなノックが部屋に響いた。
 先生だろうか。
「あ、僕でます」
 扉に一番近い前田が立ち上がる。
 ドアの向こうに立っていたのはセーラー服女の子だった。背の高い、すらりとした綺麗な子である。
「えっ」
 声を上げたのは藤美である。がたんと音を立てて椅子から立ち上がった。
 前田が不思議そうに振り返ったが、藤美は部屋の外を凝視している。どうやら美人に反応したわけではないらしい。
「智絵?」
「えっ?」
 私は廊下の方を向いた。
 よく見ると、女の子の足下に見覚えのあるポニーテールが倒れていた。
「智絵ちゃん!?」
 前田がびっくりしたように声をあげ、廊下に出た。私と藤美も慌てて部屋から出る。女の子は不安そうに立っているだけだ。
 倒れていたのは確かに智絵ちゃんだった。ぱっと見た感じは眠っているようだが、彼女は決して学校の床で寝るような子ではない。
「助けてください」
 突然後ろから声をかけられた。私達は声の主を振り返る。
 女の子は胸の前で手を握りしめ、なにか必死な表情で私達に言った。
「その人、私をつかせてくれたんです」
「つか、せて?」
 そこで私はようやく気が付いた。前田と藤美も同じだったようで、驚いたように目を丸くしている。
「お願いします、助けてください!」
 彼女は、ゴーストだった。



2.契約魔法
 これからの人生で、ここまで時計の秒針の音を気にすることはないだろうというくらい、この狭い部屋の中では刻一刻と時がすぎていくことが深刻に受け止められていた。
智絵ちゃんが目を覚ます気配はまだない。
 部屋の空気はいつになく暗かった。普段はヘリウムガスくらいノリの軽い人間が沈んでいるので、そのギャップはとても激しい。
 なかでも特に酷いのは藤美だった。普段はアイドルのように燦々とした笑顔を浮かべているというのに、今はまるで親の葬式帰りのような表情である。時々つかれるため息は、奈落の底から聞こえてくるみたいに深く、澱んでいる。
 並べられたパイプ椅子に横たえられている智絵ちゃんはさっきからぴくりともしない。事情を知らなければ、ただ眠っているだけのように見えるだろう。
 彼女のすぐ横には、例のゴーストが立っている。ゴーストの彼女はその名の通り幽霊だったので、基本四人しか入らないはずの部室に入っても場所を取らないのがありがたかった。
 時計を見る振りをしてゴーストの彼女の方に軽く目をやると、向こうも私を見ていたらしく真っ直ぐに目があった。
「あ、あの」
 彼女は慌てたように言った。
「その人、保健室とか連れて行った方がいいんじゃないですか」
「駄目だよ」
 前田が言う。さっきからパイプ椅子の上で三角座りをしているのだが、どういうわけかスカートの中が見えることはない。
「ゴーストを学校に連れ込んだなんてわかったら、僕達みんな逮捕されてしまう……。もちろん君は処分だね」
 前田に睨むように見つめられ、ゴーストの彼女はひゅっと息をのんだ。処分の意味することくらいは、彼女にもわかったのだろう。この世に心残りがあるからゴーストになどに成り下がってしまったのだ。恐ろしいに決まっている。
 本当に危険なのは、彼女自身なのだけど。
 それにしても、たいへんなことになったと思う。
 魔術刑法の第千二十四条。死霊罪。
 私は魔法を専門に学んでいるわけではないが、この学校の特性ゆえにある程度、少なくとも一般人以上には魔法に関することやその法律について知っている。
 文学研究部は現在進行形でA級犯罪者集団となっているのだ。
 煙草や万引きで停学どころの話ではない。死霊罪の場合、最高で無期懲役である。いくら私達が未成年とはいえ、捕まったら間違いなく懲役は免れない。
 藤美や前田が落ち込んでいるのは、単に智絵ちゃんのことだけではなく、自分たちの立場のことも併せてなのだろう。
「うう……」
 なんだか頭が痛くなってきた。
 とにかく、一刻も早く智絵ちゃんに目を覚まして欲しい。彼女が起きないことには、なにも始まらないのだ。
 彼女は自分にゴーストを憑かせていた。正確に言えば、契約したのである。
 普通契約魔法と言えば、天使や悪魔や精霊といったあちら側から召還したものを、管理局の監視の元でしか執行することは出来ない。しかも、契約魔法はかなり高度な技術を必要とし、こちらとあちらを繋ぐので執行者自身が引き込まれる可能性のある危険なものだ。
 それを、智絵ちゃんは知識と自分の魔力だけでやってのけたのである。一級を取得したベテランの魔法使いでも難しい契約魔法を、あくまで高校生でしかない彼女が。普通は考えられないことだ。
 きっと体内で生成した魔法陣はほころびだらけだろうし、そもそも彼女の体力がついていっていない。一歩間違えば、死に至る可能性だってある。
 少なくとも今は、ゴーストの方が安定しているので母体の智絵ちゃんに死の危険性はないといえる。しかし、ひとまず彼女の命が無事だとはいえ、問題は山積みだ。
 契約によって、ゴーストの彼女は智絵ちゃん以外と簡単な会話以上のことができないように制御されているのである。
 智絵ちゃんは、いったいどんな理由があって、こんなことをしたのだろうか。
 浮遊霊というのは大概が悪霊である。知性は残っているとはいえ、人間の気持ちというあやふやな、精神の残り滓のようなものを顕在化して存在しているのだから、最初は比較的大人しくても、その心残り故に、いずれほとんどが凶暴化して人を襲う。
 過去、まだ魔術刑法が制定される前はゴーストと契約をした魔法使いも居たらしいが、その全員が霊を完全に操りきることが出来ず、霊の力に喰われてしまったそうだ。
 考えただけでも身震いがした。
 教科書に載っている事を読んだだけではわからない。目の前して初めて理解した。
 喰われるということ。
 その時だった。
 智絵ちゃんが、眠っている椅子の上で軽く身じろいだ。
「あっ」
 隣に居た藤美が立ち上がる。
「智絵!?」
「智絵ちゃん」
 名前に反応するように、智絵ちゃんの口からうめきのようなものが聞こえた。苦しそうな息が漏れる。
「……つっ、う」
 閉じられていた目が微かに開く。瞼が小さく瞬いた。黒い瞳が左右に動く。
「あ……私……」
「あっ、動いちゃ駄目だよ」
 椅子から起きあがろうとした智絵ちゃんを、前田が制止した。
「たぶん魔法陣が安定してないから……。落ち着くまで横になってたほうがいいよ」
 彼女は素直に従った。
「詳しいね」
 前田は疲れたような笑顔を浮かべた。
「僕、医療科なんですよ」
 初耳だった。もしかしたらどこかで聞いたことがあったかもしれないけれど、少なくとも記憶はない。
 藤美が前田の方をつつく。
「なぁ……大丈夫なのか?」
「たぶん」
 前田は自信がなさそうに答えた。
 どこか焦点の合わない目で智絵ちゃんは天井を眺めている。契約魔法は精神的力が大きなウェイトを占めるので、まだもう少しぼんやりしているだろう。
 彼女の傍らに浮いているゴーストはほっとしたような表情を浮かべていた。どう見たって善良そうな少女だ。しかし、早かれ遅かれ彼女も凶暴化するのである。
 いや、それはとりあえず後回しだ。
「ねぇ、智絵ちゃん」
「先輩」
 智絵ちゃんは首を回して私の方を向いた。
「この子のことなんだけど」
 ゴーストの方を指さす。智絵ちゃんがゆっくりとそっちの方を見る。
「ああ……」
智絵ちゃんの目がぱっと大きく開かれたかと思うと、みるみるうちにその中に涙がたまっていった。
「先輩、すみません、私……」
 彼女は弾かれたように身を起こした。目から一筋涙がこぼれ落ちる。智絵ちゃんは顔を手で覆った。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「いいから、落ち着いて。今は謝らなくて良いから」
 いけない。動揺させてしまったみたいだ。
 私はなんとか智絵ちゃんを落ち着かせようと、泣きじゃくる彼女の背中をさすった。小刻みに震える体は小さく何とも頼りなさげで、いくら学年主席とはいえ彼女が契約魔法を成功させたとは、とても考えられない。
 必死に宥めたおかげで、しばらくして智絵ちゃんは普段の落ち着きを取り戻した。
「すみません……取り乱してしまって」
 智絵ちゃんは赤い目のまま、ぺこりと頭を下げた。本来、この子はどちらかといえば冷静な方なのである。さすがに恥ずかしかったのだろうと思う。
 私がペットボトルのお茶を渡すと、智絵ちゃんはそれを一気に半分ほど飲んで、一息ついた。
「本当にすみません。全部、お話します」
 すっとゴーストの彼女が智絵ちゃんの横に降りてきた。少しうつむき気味の顔は、酷く暗い。
 智絵ちゃんは少し躊躇いがちに沈黙していたが、意を決したように顔を上げた。
「このゴースト……いえ、この人は、私の姉なんです。……二年前に死んだ」



3.各世界観
 夢を見た。
 私は一人だった。
 私は何かから逃げている。それが何かはわからない。逃げないといけないということだけはわかっていて、私は必死に足を動かしている。靴を履いていなかったせいで、舗装されていない道を走ると足の裏が痛い。道は炎の明かりに照らされて、真夜中でも昼間のように明るかった。
 遠くで大声がする。何人もの大人の声だ。ごうごうという炎が燃えさかる音に紛れて、何を言っているのかよく聞こえない。悲鳴なのか怒りの咆吼なのかさえも判断できず、走っているうちにその声はそのまま聞こえなくなった。私は涙目になりながら、必死に土の道を走った。
 村の入り口にある橋まで来て、とうとう足が動かなくなった。鉛のように体が重い。
 ちりちりと焼けた匂いが鼻をついて気分が悪かった。ぐらぐらと吐き気がこみ上げてくる。とっさに口を手で覆ったが、我慢できずに私はその場で吐いた。胃液で喉が焼け痛かった。呼吸がしづらい。
 肩で息をしながら、そこで初めて私は振り返った。
 村が燃えている。私の住んでいた村が燃えている。濃紺の空がゆらゆらと地獄のような色に染められている。真っ赤な炎が天にまで届きそうだ。もっともっと小さい頃、絵本で読んだ夕焼けを思い出す。熱風が頬を掠めていった。
 自分の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じた。
 私は再び駆けだした。走らなければいけない。巨大で恐ろしいなにかはきっと私を追いかけてくる。
 さっき見た光景が網膜に焼き付いてしまったようで、朦朧としてくる意識の中、まるで炎の中に逃げ込んで行くような錯覚を覚えた。熱い痛い、と全身が叫んでいる。なのに喉からは荒い息づかいが聞こえてくるばかりだ。
 かまわず私は逃げ続けた。
 平らな道を抜ければ、その向こうに魔法の街があることを知っていたから。
 夢はまだ覚めない。

 魔法が一種の科学技術として確立されたのは約百年前のことである。
 第三次大戦が始まった一九九九年の七月、突如として空間に亀裂が入り、西日本上空に時空の裂け目ができた。原因は連邦軍が誤爆させた核兵器によるものと考えられている。裂け目からは、向こう側のありとあらゆるものや事象がこちら側に流れ込んだ。この出来事により、有史上初めて魔法が想像上のものではなく異世界の科学として確認されたのである。
 戦争中のことなので詳細な記録は残っていないが、その時空に亀裂が生じた衝撃で、K戸市を中心とした都市部に相当な被害が出たそうだ。
 全く違う定義と法則で存在するのものが流れてきたのだから当たり前である。魑魅魍魎に襲われる市民、障気に汚染された土地、上空では敵対しあう種族の戦いが勝手に始まる。残された資料の写真を見る限りでも、相当に酷い状況だっただろう。
 そして、この地獄絵図とも言える状況を救ったのが。当時K大学物理学助教授であった大神勝である。
 この大神氏についてだが、教科書にも載っていて世間一般にもかなりの知名度を誇る人物であるにも関わらず、ほとんど全くと言っていいほど個人に関わる資料が残っていない。戦火によりデータというデータが吹き飛んでしまっていたこともあるが、彼自身が自らの記録を残さないよう働きかけていたらしい。今わかっていることは、物理学者であったこと、今の魔術管理局の元となる機関である魔術研究クラブを設立し、魔法学についての基礎を作り上げたことである。
 大戦が終結した二〇二六年、日本政府は魔術研究クラブを正式な政府機関とし、魔術管理局と改めた。この時すでに大神氏は他界しており、その後は勝氏の一人息子である大神岬氏が局長として任命された。以後、魔法管理局の局長は大神一族の人間が務めるのが通例となっている。
 日本は大神一族によって発展した魔法学の力により大戦で疲弊した世界の中でいち早く復興し、今では魔法学の最先進国である。しかし、歴史ある科学に比べ未発達である魔法でできることは決して多くはない。
 そこで日本政府は、魔法学のさらなる発展のため、魔法の発祥の地であるK戸を中心とした全国四カ所に魔法専門の研究、教育機関を設立した。そして、その一つが私達の通っているこの学校、K戸国立魔術大学付属高等学校である。
 その高等学校のとある生徒三人が、マクドナルドの片隅にいる。
「もう、おしまいだ」
 まるで「これからダイエットするんだ」と言う女子のような気軽さで、前田が言った。
 私と藤美の視線が前田に向けられた。見つめられている本人は、ぼんやりと宙を見つめて、手に持ったコーラを飲んでいる。
「司?」
「いや、だってどう考えても駄目じゃないですか。僕たち指名手配並の犯罪者じゃないですか。そりゃまだ誰にもばれてないですけど、それだって時間の問題ですよ、秒読みですよ」
 違います?と前田が私の方を向いた。あんまりじっと見るので、私は思わず目をそらした。
「そうだけど……」
「考えてたんですけど、僕たちってごく一方的に巻き込まれただけなんですよね。……あの『お姉さん』を憑かせたのはあくまで智絵ちゃんであって、僕らではないですし。むしろゴーストなんて危険なものを連れてこられて、こっちは被害者じゃないですか。いい迷惑ですよ」
「おい」
 藤美が前田の言葉を遮った。何というか、こういうのをドスの利いた声と言うのだろう。端正な顔が歪んでいる。
「お前、まさか」
「落ち着きなよ、別に智絵ちゃんをどうにかしようなんて思ってないから」
「でも」
 前田がこんと音を立てて、紙コップをテーブルに置いた。さっき私を見つめたのと同じ瞳で、藤美を睨んでいる。
「ここで僕が怒るのは、逆恨みなんかじゃないよね」
 藤美は言葉に詰まったようだった。
 前田が腹を立てるのも無理はない。当の本人である智絵ちゃんは体力を消耗できないからと言って、藤美がさっさと家に帰らせてしまったのだから。私だって怒るのが苦手なだけで、何とも思っていないわけじゃない。藤美も、こんなことをした人が智絵ちゃんだったからこそ惚れた弱みで受け入れているけれど、本来なら真っ先に前田と同じ事を言っていただろう。
 前田は不機嫌そうな顔のまま、残りのポテトの欠片を口のなかに詰め込んだ。こういう状態の前田は、なかなか珍しい。たぶん、どうしようもないこの状況と、それを友人にあたった自分が許せないのだと思う。
 しかし、藤美まで黙り込んでしまったので、仕方なく私は膝を叩いた。辛気くさい二人の顔を見回す。
「とりあえず、図書館に行こう。当時の新聞に何かしら書いてあると思うから」
 ゴーストの彼女を成仏させるには、それしかない。
 智絵ちゃんの話によると、お姉さんは生前の記憶がほとんどないらしい。自分の名前から、どうして死んだのかその理由さえ全て忘れてしまっているそうだ。事実、智絵ちゃんが自分とゴーストが姉妹だったことを私達に告白したとき、私達以上にゴーストは驚いていた。幽霊なんて不安定な存在なのだし、十分ありえることだ。
「私、二年間ずっと学校にいたんです。自分が何なのか、どうしてこんな風なのかもわからなくて、ただずっと『居る』だけでしたけど……。ずっと自分の死んだ理由のことばかり考えていました」
 掠れた声で智絵ちゃんのお姉さんが言ったのを思い出す。
 恐らく、彼女がゴーストとなった理由はそこにあるのだと思われる。ならば話は単純で、その死んだ理由とやらを教えてあげれば彼女は俗に言う「成仏」をするはずだ。この世に対する異常なまでの執着が死霊をゴーストたらしめているのだから。
 しかし、そう簡単にことは運ばなかったのである。
「理由不明の自殺……そんな話、どこかで聞きましたね」
 ポテトを飲み込んだ前田が軽い調子で言った。この間の焼き肉の時に話した、美作先輩自殺未遂のことを言っているのだろう。いや、美作先輩は生き残って、まだちゃんと立派に人間をしているけれど。
 前田が私に視線を寄越す。
「何か関係あると思いますか?」
「確かに、智絵ちゃんのお姉さんも学校で飛び降りてるけどね……。でもお姉さんのことは二年も前の話だし、そのころはまだ先輩中学生だよ。あんまり関係なさそう」
 藤美が一人不思議そうに私達の顔を見ているので、前田がこの間私達が話したことをそのまま伝えた。一字一句、間の入れ方も違わず、前田は会話を再現してみせる。とにかくこいつは変な特技を持っている。
 前田が話し終えると、藤美の顔がみるみるうちに青くなっていった。
「ちょっと、どうしたの?」
「いや、その、ちょっと……」
 まるでスプラッタ映画でも見ているみたいに気分が悪そうにしている。この話でなにか思い出すことがあったのだろうか。私と前田が顔をのぞき込むと、藤美は今にも泣きそうな表情でうつむいてしまった。
「ちゃんと言ってよ。もしかしたら、何か掴めるかもしれないし」
 前田が優しいけれど強い口調で言った。警察の取り調べみたいに有無を言わさぬ雰囲気がある。私達の未来に関わることかもしれないのだから当然だ。不確定だとしても、情報は多いにこしたことはない。
 藤美は青い顔で私の方を向いた。じっと見つめられたが、何を求められているのかわからないので、私はひたすら見つめ返すだけである。十秒ほど、そのままの状態だった。
「いや」
 藤美は首を左右に振った。
「すみません、この話はちょっと」
 歯切れの悪い返事だった。申し訳なさそうに唇を噛んで、がっくりとうなだれている。普段溌剌としている彼からは、とても想像も出来ないほど萎縮していた。なんだかこっちまで気分が暗くなってくる。
 私と前田は顔を見合わせた。前田は小さく息を付き、仕方がないという風に肩をすくめて見せた。確かにこれ以上追求するのは酷だ。
 とりあえず今はここまでである。
「これ以上話しててもしょうがないからさ、とりあえずここを出よう」
「そうですね」
 私と前田が立ち上がる。藤美は腕時計を見て、「もう五時半ですけど」と私を見上げた。
「ここから歩いてすぐだよ。閉館は七時だし」
 藤美は頷いて立ち上がった。私達のトレーをまとめてゴミを捨てに行く。
 私が店の外に出ようとしたら、突然後ろに引っ張られた。振り返ると前田が私のジャケットの裾を掴んでいる。
「何?」
「どう思います?」
 前田は妙に小声だ。
「どうって、何が」
 眉根を寄せて、前田は私を見上げた。こういう風にしていると、ちゃんと男の子に見えるのだから不思議なものだ。
「藤美ですよ。何を隠してるんだろう……」
「さぁね」
「さぁって、先輩……」
 不満そうに見つめられる。私は肩をすくめた。
「話したくないならそれでいいと思うよ。私だって全部を正直に話してる訳じゃないしね。前田は違うの?」
 前田は目を丸くした。掴んでいた手がぱっと放れていく。
「僕は……」
「疑ったり探ったりするのは、良くないよ」
 ぽんぽんと肩を叩いて笑顔を見せると、前田は困ったように首を傾げた。
 これで、多少はなにか感じてくれればいいのだけど。
 我ながらお節介だと思うが、前田の普段から人を人だと思っていないようなこの態度は改めた方がいい。それに、私は怒ったり疑ったりということが嫌いなのだ。だから、わざわざ戸惑いそうなことを言ったのである。私の言葉なら、多少なりとも心に留めてくれそうだし。
 それが効いたのか、前田は図書館まで歩いている間、変に元気がなかった。少し効き過ぎかもしれなかったけれど、まぁこいつのことだからすぐに立ち直ってくれるだろう。
「あの、先輩」
 今度は藤美が小声で話しかけて来た。私は前を向いたまま、何?と返事をした。
「なんか司、様子が変ですけど……どうしたんですか?」
 言いながら、ちらちらと私達二人の後ろを付いてくる前田を見やる。前田がどんな顔をしているか想像も付かない。
「ちょっと、薬をね」
 藤美は心配そうにしていたけれど、私は振り返らなかった。

2009/03/04(Wed)14:08:38 公開 / 立名とおる
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