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『星屑の欠片 壱』 ... ジャンル:異世界 ファンタジー
作者:シズナ
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あらすじ・作品紹介
「暇だな……」――魔法学校二年寮の部屋のベットに横たわる、テファとその使い魔リズ。昼寝をしていて、気がつけば夜中だった。窓から顔を出すと、なにかの破片が落ちてくる。何だろう? 拾ってみると、いきなり目の前が光り、自らをルカリー・レアと名乗る女性が現れる。星屑の欠片の所有者として異世界へ向かうテファとリズ。この先何が待っているのだろうか?
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「止めなさい! 止まりなさい! それに触れてはいけない!」
「嫌だね! この世界を私のものにするまでは!」
「だ……」
「ダメエエエェェェェ!!」
「な……!??」
パキイィィィィィィ!!
――……
レミフォルティの町並みは、いつもと変わらなかった。
レミフォルティ魔法学校の寮生活も、いつもとは変わらずに流れていた。……その時までは。
魔法学校二年生の部屋は、寮の二階にある。
その二号室のベットに寝そべるのは、テファとその使い魔・リズである。
「暇ですね……」
「だったら勉強の一つでもすればいいのよ」
「それは嫌です」
「じゃあ何をするのよ」
「散歩にでも行きますよ」
「あ……リズも行くのよ!」
今は秋休み。魔法学校には、春夏秋冬と加えて、様々な休みがある。
秋休みに入ってからというもの、毎日こんな感じなのである。
ピカ!
「な……何?」
ごろごろ
「雷?」
ザァ―――――――――
「雨降ってきちゃいました……」
「散歩は無理なのよ」
「仕方がありませんね。寝ますよ!」
「え……? 寝ちゃうのよ?」
「だって、暇なんですもん。おやすみなさい……」
「ま……待つのよ! リズはどうすればいいのよ? テファ! おきるのよ! テファ!!」
リズがなんと言おうと、こうなったテファは止められない。
「おきるのよ――――――!!」
結局、リズの声はテファに届くことなく、テファは寝息を立て始めた。
リズもあきらめて、その隣に丸まった(リズはもともと丸いのだが)。
次にテファが目を覚ましたのは、夜中だった。
「ふぁ……もう夜中ですか……?」
引き続き眠れるはずもなく、テファは窓の外を眺めた。
「もう、雨はやんだのですね」
窓を開けて、顔を出してみる。
すると上から、何かが落ちてくるのが見えた。
「な……なんです?」
「浮遊」の呪文を唱え、その物体を手に取る。
何かが割れた破片のようなものだった。
キラキラと輝いているのは、雨のせいではないだろう。
「これは……?」
すると、目の前の空間が、強い光に覆われた。
「な……?」
『おめでとうございます』
「へ……!?」
それは、実際に発せられたものではない。直接、頭に入ってくるような、そんな声だった。
目の前には、プラチナブロンドの、見るからに冷静な女性だった。
『貴女のもっているそれは、「星屑の欠片」と呼ばれるものです。それは、もともとは同じようなものと合体し、一つの玉になるのです。あなたはその、所有者に選ばれたのです』
「あのう……さっきから何なんですか? 星屑の欠片とか、所有者とか」
『遥か昔のことです。世界征服をたくらんだ魔女が、その星屑の欠片の元となる玉、「流星の玉」を盗み出しました。「流星の玉」には、何でも願いをかなえる力があるといわれてきたからです。しかし、その魔女はきっと知らなかったのでしょう。その玉は、本当に困っている人しか使用することは出来ないのです。悪い心を持っていたその魔女が触れると、玉は粉々に割れました。その破片が月日を得て、天上界から地上に降りてきたのです』
「それをつかんだのが、私だと」
『はい』
「じゃあこの破片には、そんな力が……」
『いえ。破片にはありません。全てが集まって、そこで初めて力を発揮するのです。しかしそれは。もし、この破片を受け取ったのが悪いものだったら……』
「他の人の破片を狙って、玉を作り出し、願いをかなえようとするかも知れない、そうですね?」
『はい。そして、この破片を受け取った方々を、私たちの世界へと案内する義務が、私にはあるのです』
「あなた方の世界? それは……」
『ここから言うと、「異世界」と呼ばれるところです』
「異世界……」
『私と一緒に、来てくれますか?』
「そこでは、私は何をすればいいのでしょうか?」
『私たちの目的は、流星の玉を復活させることなのです。そのために、破片をもった人を探すのを手伝って欲しいのです』
「でも、所有者になれば、貴女のようにその人の前に現れるのでしょう?」
『あなたの場合は、私が気づいたから、来ることが出来たのです。実際には、いきなりワープして私たちの世界に来る人が多いのです』
「破片の所有者は、何人くらいいるのですか?」
『数え切れないほどです。私たちだけでは、どうにもならないのです』
長い、会話が続いた。
テファは、頭がいいのもあるが、カンも鋭く、魔法も強い。
いわば、優等生というものだ。
自分の頭脳があれば、きっと、どんなことがあろうと大丈夫、そう考えた。
「私の使い魔も一緒でいいですか?」
『かまいませんよ』
リズが一緒なら、心配は要らない。
「リズ! おきてください!」
「な……何なのよ? 今は夜中なのよ?」
「いいですから! きてください!」
テファは、リズを引っ張った。
「そういえば、名前をお聞きしていませんが」
『失礼しました。ルカリー・レアといいます』
「私は、テファといいます。テファ・ルキエス」
『では、行きましょうか。目を、瞑ってください』
「は……はい」
テファは目を瞑った。
思えばそれが長いたびへの始まりとなったのである。
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2008/10/22(Wed)16:36:03 公開 / シズナ
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■作者からのメッセージ
シズナです。
これは、主人公のいる世界も異世界なのですが、その少女がまた違う異世界へと向かう物語です。
「星」という言葉を使いたくて、こんな話になってしまいました。
分かりにくいかもですが、よろしくお願いいたします。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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