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『壊れた教室(仮)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:藍逗
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あらすじ・作品紹介
綺麗な教室の中で 汚れていく何か壊れた教室を、直したかった
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一、 物語のはじまりはじまり。
(物事ははじまりがなければはじまらないのです)
零。
きーんこーんかーんこーん
壊れていく綺麗な教室の中で綺麗な予鈴が鳴った。
まだ新しくできたばかりの学校。何もかも使うものすべてが新品、俺たちが一番乗り。
特別クラス、という新しい学校制度。多分この学校にしかない。どうやってつくられたのかとか、別に興味ないけど。
俺たちは特別クラスに居る。たった6人のクラス。俺と、ガリ勉と、ネガティブ、自信家、双子(兄)、双子(妹)、金持ち。
全員がおかしい。どっか違う。俺も含めて。
もしかすると“普通のクラスの奴ら”はここのクラスの存在自体を知らないのかもしれないと思うことがある。誰も除きに来たことはないし――まぁそれを禁止されてるのかもしれないけど――、来ても別学年と思うんだろう。
もし俺が普通に、“向こうのクラス”になっていたとしても別にどうでもいいと思うし。多分、それと一緒。
今日も一日授業が始まる。
嗚呼 下らない。
一。
1
カツカツ。チョークが黒板に当たって煩い。
この教師は熱血と呼ばれる類に値する。全国の熱血教師のなかでも上位を争えるほどだと思っている。もしもし、興奮してチョークの減りがありえないことになってますよ。気付いているけど誰も何も言わない。途中で止めると面倒くさいからね、この人。
「はい! じゃぁこの問題を誰か解けぇ。はい挙手ぅぅ!!」
煩い。
第一印象も、第二印象――そんなものがあるかは知らない――も変わらない。あ、付け足すとすれば汗臭い。体臭どうにかして欲しい。
「誰も居ないのかぁ! 殴るぞお前達ぃ!」
語尾延ばさないで欲しい。文章だけ読むとぶりっ子に聞こえそうでもないけど、気持ち悪くなるから考えないようにした。
「頭がいいからお前達は“特別教室”なんだぁ! 分かってるのかぁ!
はい挙手!」
意味が分からない。誰も反応しない。カリカリカリ。今教室にはシャープペンシルをノートに走らせる音、それと熱血教師が貧乏揺すりをして地面を足で叩く音――それは貧乏揺すりといえるのか分からないほど凄まじいもので、地面が揺れている気がした――しかなかった。誰も何も言わない。誰も何もしない。熱血教師のいらいらが上がっていくのがわかった。
「はーい。先生俺解きます」
「猫崎ぃ? 多分無理だと思うがな! まぁ解いてみろぉ!」
じゃあ何で聞いたんだ。多分、全員思ってると思う。一体何なんだよ熱血教師。お前なんなんだ。
「Y=100です」
「そんな計算あるかぁ! はい間違い! 猫崎座れぇ!」
間違えたときに笑ってくれれば、恥ずかしくてもフォロー。
間違えたときに自分が笑えば、なんか惨め。
間違えたときにクラスがしらけていれば、恥ずかしいだけ。
間違えたときにクラス全員が――
――――全員が、興味がなかったら。
そういう場合はどうすればいいんだろう。猫崎は苦笑しながら座った。可愛そうに。
「はいじゃぁ篤葉ぁ! お前説いてみろ! 解けなかったら殴るぞぉぉ!!」
どんだけ殴りたいんだ。って俺かよ。あれ、猫崎のこと殴ってなくねぇか? 俺だけ? ついてない。
立ったけど椅子はしまわない。机に手を乗せて、体重をかけながら、前なんか見ないで下むいてノートだけ見て、答えを言う。
「Y=42」
答えだけ言って座る。あー詰まらない。
熱血教師がなんか喚いてるけど、どうでもよかった。元々興味なかったし。
あれ、こいつの名前なんだっけ。
授業を受けながら――といっても話しは全然聞かない。黒板に書かれた文字をただ写すだけ――暇つぶしできる方法はないか、考えてみた。
何がいいんだ?よくわかんねー……。
一番後ろの席、窓際。……のはず。特別クラスに窓際なんてない。ただ、廊下側と反対の位置にあるから、自分では窓側だと思ってる。暑くなったらクーラーと扇風機。便利。だけどクーラーも扇風機嫌いなんだよね。理由なんてないけど。プリントが飛ぶから、ってことで。
誰も一言も話さない。さっきからそうだよな――熱血は論外。対象外。非常に残念ではありますがカウントに入りませーん――。
つまんねーよなこの教室。
静か過ぎて気味悪い。なんか出てきそうだよな。もしこれがドラマだったら確実になんか出てくる。うん、あれだ。いきなりトラック突っ込んでくる。あれ、そしたら俺死んじゃう? まあ、それでもいいけどさ。それが展開なら、仕方ない。
…………話さないのがつまらないなら、話すようにすれば楽しいのか?
素朴な疑問。自分に対して。自問自答。
楽しそうな気がする。
そうと分かれば、早速暇つぶしの“道具”がそろったじゃないか。詰まらない教室、壊れてる教室、詰まらないクラスメイト、壊れてるクラスメイト。いいかもしれない。
にやりと。
久しぶりに、笑った気がした。最後に笑ったのはいつだったか。
下校時刻、8時45分。
午後8時45分。
決まっている規則。明らかに普通とは違う時間帯。狂ってる。
退屈で仕方なかった。今までは。でも今日は違う。明日から始めようと考えている作戦を練って練って練りまくっていたから。
楽しくて楽しくて仕方ない。
それが上手くいくとは思わないけど、いい暇つぶしの方法を見つけた。とても嬉しい。
「俺さ、クラスメイトと仲良くしてみようと思うんだ」
「お前頭打ったか」
真顔で言ってくる光太郎ナイス。相変わらず冷たい。でもそう言うと思ってた。幼馴染だしね。なんとなーく、分かる。
「打ってねーよ、ばーか」
「俺は斡元にばかと言われるほど落ちぶれてはいない」
「俺って落ちぶれてる?」
「大分、な」
これだからガリ勉は。自分で言ってて意味わかんないけど、とりあえず酷い嫌味だなとか思いながら――でもそう思わせるからこそ嫌味なんだけど――結構がっくり来た。最近さー篤場君、ちょっと頑張ってるんだけどなー、とアピール。
「っは」
鼻で笑われた。
「斡元、お前本気なのか」
鼻で笑った後は無視か。お前の性格ほんと羨ましいよ。
「ああ、本気だよ。だってさ、つまんないじゃん」
「……俺は教科書と向き合うだけで楽しいが」
「………………なんか、ごめん」
「? 何に対して謝っているのかよく分からない」
「分からなくていいさ」
「意味が分からない」
「ま、なんだっていいじゃん」
教科書と向きあうだけで楽しい…………俺はシャーペンに触れるだけで嫌悪だよ。やっぱり俺たち性格合わないんだよ、光太郎。なんでこんな奴と幼馴染なんだろう。光太郎と話して、毎回思う。幼馴染でよかったくせに。
「光太郎的に答えてくれ。まずは、誰と打ち解けたらいいと思う?」
「普通に考えて猫崎だろ。あいつが一番、まともだ」
「そうか? 俺あいつ一番可愛そうだと思うんだけど」
「人それぞれの感情だな、そこら辺は。でもな、殻に閉じこもっている中埜、双子でゲームが好きな木下、双子でマンガが好きな木下、お金持ちの内山。こいつらよりは多少自信家な猫崎のほうがいいだろう。こうして考えると一番まともだとは思わないか?」
「確かに……」
言われてみれば、そうかもしれない。でもゲーム好きの木下ならなんとななるかも……。
「今、木下のことを考えたか」
「え、あ」
図星をつかれて言葉が詰まる。え、でもそれってそんなに悪いことでもないよな。ない、よね?
「木下筍。こいつはなかなか凄いぞ。ゲームというゲームを集めに集めて、すべてのゲームを完全クリアさせている。最初から最後まですべてを記憶し、すべての登場人物、重要用語、場所、宝の在り処、敵、味方、何がどこにあるか。これ以外にも、すべてを覚えている。瞬間記憶能力というわけではないが、ゲームだけなら、この言葉を使ってもいいだろう」
「……凄いな。俺とは桁違いだ。
てか、光太郎なんでそんなことまで知ってんだ?」
「……趣味だ」
「悪趣味だな」
改めて嫌な奴だと思った。
俺の情報も誰かに晒されてたらどうしよう。
「お前の事なんて誰も気にならないさ」
「…………光太郎、」
「なんだ」
「殴っていいか」
「どこぞやの教師か、お前は」
ほんと、最低だよ。
2
おはようございます。
現在5時20分。
場所は駅です。近くの雷駅。駅の由来は雷が落ちたとかなんとか。確か駅じゃなくて駅から1時間先の稔り坂。それなのになんで雷駅だかは知らない。聞いたことあるけど……。なんだっけ。忘れた。
『ただいま電車が入ります。危ないですから、後に下がってお待ちください』
電車が来るってさ、さぁ乗ろう。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
スピードを緩めることなく突き進んでくる電車。いやー速いですね。
あれ、緩めないの?
ガショー ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンプシュー
なんかいろいろ音を出しながら去っていった。
あれ、え? ちょ、あれれ?
「馬鹿だろお前」
髪の毛は長くて、眼鏡。長いといっても髪の毛が結べるとか、腰まであるとかそういうことじゃなく、前髪が凄く長い。英語で言うとどうなるんだろう。ロングヘアー? 前髪限定にするにはどうすればいいんだ。……じゃなくて、はじめましての相手にいきなりそんなことを言われるのはどうかと思う。確かに馬鹿な行動だとは思うけど。自覚済み。
「あれ。俺は光太郎に言われても別になんとも思わないけど、他人に馬鹿なんて言われると多少はカチンと――」
「他人じゃない。少なくとも、俺は他人じゃないと思っている。俺の名前は筍。木下筍。クラスメイト、まぁ所詮は他人か。どうでもいいんだけど特急列車に突っ込もうとしたお前は、俺とって馬鹿で阿呆だと思う。しかし、駅に止まらない特急列車、つまりは通過していく電車に飛び込もうなんていう勇気は褒め称えるべきかもしれない。しかし俺は反対だ」
「……すいません」
「いや、他人である俺が飄々とこんな言葉を並べても何の意味にもならない。気にしなくていい」
結構根に持つんだな、と思った。他人って言ってすみません。でも実際クラスメイトを仲間とか、友達とか、そんな風に思ったことはない――もちろん、光太郎を除いてだけど――。
「ごめん。クラスメイトって他人じゃないよな、仲間だよな」
心にもないことを言ってみた。さぁ、どんなリアクションが帰ってくるのか。大して面白いものでもないと思うけど。
「仲間? お前、クラスメイトに仲間意識を持っているのか。変わっているな」
お前が一番変わってるんだよ。
扱いにくいな……。
「ごめん嘘。やっぱクラスメイトのことを他人以外のなんとも思ってない。そういう木下さんは、クラスメイトをどう思ってる?」
「クラスメイト? クラスメイトどころか、全国……いや、世界中の人間にも共通の意見だ。すべて同じ。誰かが特別と言うわけでもない」
「どう思ってるんだ? やっぱ、深い絆でつながってる? 友達? 兄弟?」
黙ってこっちを見つめる。木下の眼鏡の奥の瞳が、きらりと光った気がした。
「ゲーム。この世はゲームでできている。俺以外はな。俺は操縦者(プレイヤー)。他の人間は機械(コンピューター)。
俺自身が駒となり動き、存在できるゲーム。このゲームをクリアすれば、現世に出られる。ゲームクリア、しかしゲームオーバーでもある。とりあえず、お前が存在できているのも、すべて俺のおかげであるわけだ。感謝しろ。
そして――」
「……そして?」
「この世界は、俺の世界だ」
「…………」
変わってるとかそういう次元の問題じゃない。
おかしいとかそいう次元の問題じゃない。
人と違うとかそいう次元の問題じゃない。
別次元別次元別次元。
外見と中身は全く違いました。みなさん、外見で人を判断しないように気をつけましょう。とても、とても危険です。
『ただいま電車が参ります。危ないですから、後に下がってお待ち下さい』
「ほら、特急じゃない電車が来たぞ。乗らないのか」
「え、あ、ほんとだ。電車だ」
「馬鹿だろお前」
てめぇに言われたくねぇ。
(続)
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2008/09/18(Thu)19:27:02 公開 / 藍逗
■この作品の著作権は藍逗さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
すごく微妙なところで終わっていてほんとうにすみません。登竜門では初投稿となります藍逗ですよろしくおねがいします
小説はすきなのですが自らが“書く”となりますと非常に大変だと言うことを実感致しました。皆さんとてもお上手でとても感動しました。
さて、わたしの作品ですが。作品と呼ぶには程遠いですね。大変申し訳ございません。誤字・脱字が沢山有り、それ以外でも大変読み辛いものであったと思いますが、ここまでお読みくださってありがとうございます。感謝です。
まだ規則を覚えていなく、別窓で見ながら話を書いています。注意や指摘、いただけることはとても嬉しいのですが、なるべくお優しくお教えいただけたらと思います。傷つきやすい奴なので、元からない自信が更に手の届かないところに行ってしまうと思いますので……。
先程も書きましたが、ここまでお読みくださってありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。