『日本ぽっちゃり娘強化計画』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:砂糖水                

     あらすじ・作品紹介
世界破滅までの残り時間、後0.15秒。

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 とあるアンケートをとってみた。その結果、一部は「ぽっちゃり系に踏み潰されてみたい」「巨人娘とHしてみたい」だの言われていた。この様な回答を俺は『変態回答』と読んでいる。一般的には「そりゃ、ないだろう」って回答した人を数えてみた。100人中90人という結果になった。つまり、100人中10人足りないことになる。

 『女体ゴジラ襲来? 〜日本ぽっちゃり娘強化計画〜』

 グラビアアイドルといえば、スタイルがいい、かわいい、子顔だけど奴らに聞いたグラビアアイドルといえば、ぽっちゃり、巨乳、巨尻、巨人娘、丸呑み。まったく意味が分からない上に、なんて汚らしいんだ。けしからん。
 とは思ってみたものの、アンケートをとる人材を間違えたんだと俺は思う。ていうか、巨大ってどのくらい? うーん。1メートルとか大体5、6メートルの巨人娘かなあ。ほら、ミクロになっちゃった人間を丸呑みしちゃう感じのね。って、俺の隣に並ぶ同じ係りの男が語る。程度のしれない会話だ。
 それもそのはず。俺が会場に入ってから50分が経過したところで、やっと壊れかけの頭が起動をし始めた――つまり馬鹿な俺にも、ようやく理解が出来る事ができた。
 今、俺が居るこの場所。この周りの熱気。悪臭というより、ハイテンションになった人達の体臭が充満する会場。相撲の試合でもあるかってくらいの蒸し暑さ。ガリガリに痩せている訳でもなく、小枝のように細い身体というわけでもなく、かといって真ん丸く太っているわけでもなく、痩せていると完全にいえるわけでもありません。少しくらいは身体に肉が軽くついてますよ。
 バイトで着ただけの他所者を囲むように周りがあまりにも体系がぽっちゃりしている。というか、デブというか引きこもりというかオタクというか。単に「萌え〜」とか叫んでいそうな、タヌキみたいに出っ張った腹の男性陣が狭い会場に押し競饅頭状態ですよ。オタクって何かと、ぽっこりタヌキみたいに太って、額には捻りハチマキもといバンダナを巻いて……て、やっぱり捻りハチマキか。リュックを背負った集団の中で「萌え」を叫ぶ。極めつけは、奴らから発せられる独特の体臭。はっきり言って、生ごみ以上にキツイ。
 同じようなデブでも、奴らの仲だけの女版の朝青龍みたいな、ぽっこりというか、タヌキ以上というか……あ、でも、そんなこといったらタヌキさんに失礼か。えーと……今も密かに、この集団以外の通常人の中で人気があるタレパンダが縦に横にミョ〜ンと垂れ伸びて、プラス怪力の巨体という。それでも可愛いの域に入る相撲界のグラビアアイドル「るなちゃん」のファンクラブの集まりだとかで、アンケートをとるから手を貸せって。いかにもオタクまっしぐらな悪臭を放ってる先輩方に着いて、俺は今日ここに呼び出された。
 いや、単純に相撲を見るのは好きだ。だけどこれは相撲のようで相撲じゃない。力士のような奴らが集まった相撲の会場の様だ。もしくは家畜とかのブタ小屋か。……だとしたら、俺は飼育委員か? 冗談じゃない。ぼーっと突っ立て居ると、特設ステージの上でなにやら始まった模様。なんとなく目を向けてみる。……なんだ、アレ。相撲?? 怪力巨人るなちゃんと、命知らずのオタク野郎が相撲をとっていたのだ。……入る会場でも間違えたのか? 俺。
 もちろん、るなちゃんは表情を見る限り本気ではなさそうだが、彼女に押されているオタク野郎は表情が必死だ。彼女の中では多分、軽くじゃれあう程度にオタク達の上にのし掛かったり、抱きついたりしているのだろう。だが、男からすれば軽くあばら骨が数本折れるような。限界に近い表情だ。それでも彼女は天使の様に微笑んだまま男を軽々持ち上げて赤子の手を捻る様に、男の腕を軽く曲げる。やはり彼女は冗談交じりで、男達――というより、お人形と遊んでいるような感覚だ。もはや相撲というよりはプロレス並。
 そんな訳で今現在、俺は受付にポツリと立たされてる。いや、他にも先輩方が居るのだが……もう、どれが先輩で、どれかオタクで、どれが命知らずの発情期なのか。俺には見分けがつかねえ。この会場の異様な空気の中に俺はただ一人浮いているような気がする。だって俺と同じアンケート回収係の仲間も、この集まりの同伴そのものが固まっている。もう、ブタなのかデブなのか見分けがつかないくらい一色に染まっていた。
 ていうか、『日本ぽっちゃりナントカ』のどこが良いんだか……。俺にはさっぱりわからん。これがエレベーターだったら、一発で定員オーバーになるだろう。相撲界の朝青龍さんには申し訳ありませんが、こちらの関取たちをなぎ払ってください。んで、俺にさわやかな風をください!
「……あぢー……」
 なーんて、コミックマーケットとかメイド喫茶とか、執事喫茶とかが巷で流行っているといわれる秋葉原住民の俺が今更言うまでもない。この独特の臭いにも慣れてしまった。今はそんな自分が恐ろしく感じる。だけど熱気がここまで来ると会場は天然サウナ状態。さすがに暑い。臭い。生臭い。季節は確か真冬。なのに、ここは残暑見舞い。今の状況をたとえるなら北極と南国がお似合い。

 さすがに50分近くサウナの中に居ると、こっちの体力が少しずつ削られていく様な感覚に襲われて身が持たないので、俺は会場の外に足を運んだ。
 外に出ると、まさに自然の恵み。会場に入る前は寒くて寒くて仕方なく感じた冷たい風も今となれば自然のクーラーが俺の身体に吹き付ける。
「‥はあーっ。気持ちいいー」
 空は真っ青で途切れた雲が悠々と天空を移動するのを眺めながら、俺は一息つく。残念なことに太陽は雲に覆われて隠れているが、心地よい暖かさが俺の身体の温度を上手く調節している様だ。会場の外は日陰になるような屋根はなく、目の前には広々とした人口の芝生がだだっ広くなっている。午後の天気も悪くないと、今日の予報で言っていたから……多分、雨の降る心配はないだろう。
 ぼんやりと虚ろな目で真っ青な空を見上げながら、俺は一服タバコをふかす。吐いた煙は大気中の空気に溶け込み、姿を消していくみたいだ。過ぎ行く時間は穏やかだ。時間は何の狂いもなく、ゆっくりと流れていく。ボーっとしていると身体が火照ってきて、なんだか眠たい。――寝たい……。

 ズズンッッ!!!

「……っあにゃ!?」
 眠りにつこうとした瞬間、激しい地響きが足元から伝わってきた。はっとした俺は焦って周りを見渡す。
 周りの木々はうなりをあげて左右に激しく揺れていた。幸い周りがコンクリートと人工芝生だったから砂嵐は逃れたが、コンクリートだった部分が地割れを起こし大きく轟いていた。といっても、ものの数分の出来事にした過ぎなかった大地震に俺の頭は混乱していて、会場の奴らがどうだとか断崖みたいな光景が出来たとか、云々考えている暇なんてなかった。
 今の状況を一言で言えば……助けてくれ!!! 俺、まだこんなに若いのに死にたくねえよ! もう、この際だ。会場の奴らは死んでても何でも良いから、ノストラダムスの大予言みたいなことはまた後にしてくれ!!! 俺はまだ青春を満喫してないんだよ。だから、助けてくれえッッッ!!! ――…自分勝手な悩みと思考が俺の脳裏で激しく入り乱れ、完全に我を失いかけていた。テンパっていると、俺の目の前に肌色の大きなタイヤのような物と少し先端がくすんだ色をした小山が出現した。

 俺は何がなんだかさっぱりで加えていたタバコがポロリと下に落ちたことにも気づかないまま、目の前の光景を漫然と見上げる他なかった。
 遥か上を見上げると何機かヘリが飛び交っていて、目の前の巨大な何かを取り囲むように無数のパトカーやら百人近くの青い警察官やら、迷彩服の自衛隊やらが一度に集結した。何だ、何が起こってんだよ! 肌色のゴジラ出現か、何かか!? 目の前の現実に目を丸くして言葉を失ったまま、会場の入り口の前で、ぽつりと化石化になっていた。いやっ、いやいやいやッ! これはおかしい。おかしいだろって絶対!!! ありえねえよ! これはあれか? 本気(マジ)の実写版『ごじ裸』なのか!!? ――…再び始まる脳裏暴走。もう、こうなっては取り返しのつかないことになってしまう。
「あのー。朝日テレビですが、少しお時間いただいて宜しいですか?」
「え」
 正気に戻った顔で、ぽかんとしながら朝日テレビと名乗りマイクを俺に向けてきた女性に目を向ける。女性の後ろには大きな鏡を持った男性や黒いネットのようなものを構えた男性が何人かが俺達を取り囲んでいる。……え。ちょっと待って。これって何? テレビ局?? まさか、ドッキリ?? なんにしても、嫌な予感がする。

「俺?」
「はい。突如、現れた巨大な人間を貴方はどう思われますか? 一言よろしくお願いします」
「え‥えとっ」
 何か知らないが、突撃インタビューを受ける流れに巻き込まれた俺。やっぱりあれか? 第一発見者の証言とか言う奴?? てことは、全国ネット?? ……いや、そしたらヤバくない? だってこれ、全国ネットでしょ? 全国ネットで、こんな映画みたいな流れ?? ヤバイって、絶対に。………ん。待てよ。突如、現れた‥『巨大な人間』ッッッ!!???? 待て。いや、マジで時間ください。ていうか、ここ日本なのに何故ハリウッド的な感じ? キングコング?? いや、待てよ。待て。
 落ち着け、落ち着くんだ。俺ーッ! キングコングが芸人の方だったらよかったーっ。なんて考えてる暇はねえ! 世界破滅なんて、ありえねえぜ!! しっかりしろ、俺! 漢(おとこ)を見せろ! 俺ー……彼女居ない暦27年と4回の俺ー……かいのおれー……おれえ……。………。
「‥はッッ!?」
 バッと目が開いた。周りを見回してみると、辺り一面が見慣れた人口芝生と空を覆いつくすような巨大な黒い影。はあ。夢か……。そうだよなー。間違っても、巨人に活かされてるー。なーんて、ことはないよなー。あは、あははは。あは‥あッ!?
「うふふ。おチビちゃん、おはよーっ」
「〜〜〜ッッッ!!?????」
 天空から響く野太い声に起こされた俺は言葉にならない叫びを上げながら、目の前を見上げた。高層ビルのような高さの、大木の様なぶっとい肌色の柱の様ようなものが地面に一本ずつ突きつけられていて、その間からは1メートルから5メートル近い巨大な小山が地面に食い込む様にめり込んでいたのだ。
 通常サイズで考える限りでは、女性だと思う。それが単にうつ伏せになって玩具で遊んでいるだけの、無邪気な心を持つ女性なんだと思う。破壊するなんて残酷な考えはまったくないが身体が大きいために踏み潰してしまうという流れは、ぽっちゃりナントカが求めている要素なんだろうけど……。
 これはスケールがでか過ぎじゃね? 裸の巨体の下敷きになった建物や木々は、まるで小型のプラモデルで作った模型の玩具であるかのように意図も簡単に潰されてしまったのだと俺は思った。いや、そう思うほかなかったのだ。
「ねえ、おチビちゃん。さっきまで、い〜っぱいこの玩具箱にお人形さんが居たのよ」
 そういって野太い声の主は、ぽっちゃりナントカの会場の頭上に三本の太い指と思われる長いものを伸ばし会場を高々と持ち上げて、中は空っぽだとでも言いたいのか特設会場を上下に揺らす。
 揺らし終えた会場を俺の前に見せつけた後に巨大な手のひらと思われるだだっ広い肌色の敷地にチョコンと乗せる。遠近のせいか通常の25階建て高層ビルよりも高かった気がしていた特設会場が、今では豆粒の様に小さく見える。遠近法って不思議! なんて、感心している場合ではなかった。
「でもね、お人形さん達すぐに壊れて消えちゃったの。それでね、おチビちゃんに頼みたいことがあるんだけど」
「………」
 比にもならない大小の違いで、こんなにも無力になるなんて……すげえ泣きたい気分。なんか、この巨大な人間が次に言いたい事がなんとなーく解ってしまった。いや、出来れば解りたくなかった。だけど解ってしまった。今の自分に、すげえ泣きたい気分。哀れに思うのよ。ぽっちゃりナントカの奴らに散々語られて、色々仕込まれて、ここまでくれば嫌でも解っちゃう。そんな自分に泣きたい。
 もちろん、彼女もその気なんだろうと思う。だって既に俺は彼女の大木のような二本の指の先から伸びる鋭いつめの先端で摘み上げられているのだから。身動きできない! 巨人娘から見たら、俺なんてプラモデル並に……いや、米粒か? うーん……比較の対象がない。というか、米粒の気持ちになったことないし。ああ!! 俺の人生もここまでなのかっ!? 生きてるうちに、このスリリングな超ドアップな巨人娘のでかくて、弾力のある唇がゆっくり開かれるところをお前らオタクに見せてやりたかったよ! 巨大娘は、にやりと笑っていた。通常なら可愛いんだろうけど、これは……となりのトトロが大口開けたみたいな。いや、それよりはもっと……なんていうか、喰われる寸前五秒前?
「わたしと遊んで欲しいの」
 遊び。遊びとは何か。女の子供がよくやるお人形さん遊び? それとも大人的な性的遊戯?? ……彼女の場合、両方だろう。というか、危ういだろう。さっき会場の奴らが居なくなったといっていた。彼女はうつ伏せになっている。身体が細ければ、ぽっちゃり何とかの連中が思う巨人娘で済むと思うのだが、……今目の前に居る彼女は確かに巨体だ。多分、うつ伏せになっている上半身がエベレストくらいの大きさだと考えると、全体はその20倍近くの大きさとかありそうだ。にしても、……ぽっちゃりし過ぎだろ? 境域番組の図の様にならなくて済んだ事には、何故だか凄く感謝したい。ありがとう。
 よく2段腹とか5段腹とか訊くが通常の大きさで腹がぽっこりなっているのなら解る。だが、彼女は別だと思う。既に巨大な腹で何千何万という秋葉原の住人を踏み潰しているのだから。そんな中で奇跡的に俺だけが助かっているのも夢のような話だが、巨人娘に生かされているというのもまた奇跡だ。
「さっきからムズムズしてるの。どうしてか分かる? それはねえ、あなたと遊びたいって私の下のお口が言ってるからなの」
 しかもにこやかに言っているところがまた恐ろしい。彼女は巨大な左手で俺を握り締めると右腕を軸にのそっと上半身を地上から離して、2メートル以上はありそうな巨大な尻を地面に叩きつける。……ああ、……予想通りだ。………そういえば、奴らが消えたって……まさか、喰われたのか? まあ、奴らの願いが叶った事には変わりないけど……やっぱり現実って恐ろしい。彼女が完全に起き上がり終えた頃、彼女の巨大な左手に小さく顔だけ覗かせるように握り締められた俺は高層ビルというか東京タワーの展望台からの長めに似た景色を見開いた二つの目に見入れていた。
(……うっわ。スゲエ高え……)
 ぐんっと急に彼女の左手が急降下して、巨大な洞穴のようなピンク色の壁が俺の目の前に現れた。予想通り、俺の予感は当たってしまった。巨大な彼女が高層ビルのような脚を開脚をし始めて大きくMの文字を描いていた。巨大な腹構えに突っ張っているために、よく表情が読み取れないが、もしかしたら助かるかもしれない。巨大な相手のほうからも、砂粒の様に小さい俺の姿なんてはっきりと認識できないだろうし、第一巨大な腹が邪魔をして手前が見えていないだろう。確かに今は彼女の巨大な左手に握られていて、いつかは文字通り握り潰されるだろう。
「さ、おチビちゃん。わたしの中で、たくさん暴れてね」
 …………。………パードゥン? 今、何ていいました?? 暴れる? あんたの中で暴れる?? ……――俺には意味が分からなかった。そこまで俺には学習能力はない。つーか、喰われるって丸呑みって事なんじゃないの? ていうか、これは放送的にもアウトなのでは???
「今度はすぐに消えちゃ駄目よ……」
 唖然としているたら、彼女の囁きと共にいつの間にか俺の身体は濁った何かでずぶ濡れになった状態で、辺りは真っ暗。なんつーか、甘ったるい臭いって言うか……なんていうか。よく分からない臭いが充満していた。……あれ。変だな……足元が何かヌメヌメしてるんですけど? ナメクジ掴んだような感じの。粘り気のある暖かい液体。ところで、あの巨人娘はどこに? ………。――……っ!? 考え込んでたら、急に真っ暗闇が揺れ出した。本日二回目の大地震だ。

 俺は慌てて、横の壁のようなところに手を突いたらまた真っ暗闇が揺れた。今度は軽く跳んだ。足元がぐらついて、バランスを崩して後ろに倒れたんだけど……幸い下がクッションの様に柔らかい所に倒れこんだみたいだ。……本当にここは何処なんだよ。うわー……気持ち悪い。どーすんだよ。これから。……やっぱりあれか? 教育番組でよく見る身体の仕組みみたいな落ち方するのか? うわっ、嫌だな、不吉。でも、ここから脱出するには身体の数箇所に開いた穴から飛び出すって、それしか方法がない訳だし。
 身体の穴って言えば、基本的な6箇所くらい? 駄目だ。前に一度だけ、何らかの原因によって身体が縮小した人間を巨人娘が自分の腹の中で、消えてなくなってしまうまで愛するなんていう映画を見たことがある。出てくる主人公のようだ。てゆーか今の俺って、このまま出れなくなっちゃったら完全に目の前真っ暗じゃん。世界破滅って言うかまあ破滅するけど……てか、世界破滅する前に俺が破滅だよ。世界救う前にヒーロー破滅だよ! というか、俺ってば生還する前に消えちまうよ。くそっ……――山田新太郎。27歳・独身、人生最悪の終わりを迎える。

2008/04/03(Thu)17:38:47 公開 / 砂糖水
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