『スパイラル』 ... ジャンル:ファンタジー アクション
作者:山本 康平
あらすじ・作品紹介
世界に散らばる“スパイラル”と、その保持者“スパイラルキーパー”を探しているフォルス・クレッガー。又彼自身もスパイラルキーパーである。フォルスの相棒でもあるスパイラルの“レーヴァティン”。彼の身に起こる危険を相棒のスパイラルとともに乗り越える、爽快のアクションファンタジーノベル。
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〜序章〜
荒れ果てた大地に照り付ける陽光。
体力だけが蝕まれていく。
辺りを見渡しても、人が歩く姿は見当たらない。
だが、ここに一人黙々と歩き続ける男がいた。
「…宛はないんだろ?」
私はただ歩き続ける男に痺れを切らし、こちらから問いかけた。
だが、返答はなく、乾いた地面を踏み歩く音だけが小さく聞こえる。
彼の名前は“フォルス・クレッガー”。
彼は世界に散らばる“スパイラル”を求めて旅をしている。
スパイラルとは俗に“神器”と呼ばれ、それらを扱える者は極僅かである。
そして、フォルスもスパイラル保持者の一人。
また、この保持者の間でスパイラルを持つ者のことを“キーパー”と呼んでいる。
そんなキーパーの一人であるフォルスだが、彼は少々異質な存在でもあった…。
「聞こえるか?」
今まで黙りこくっていたフォルスが、突然声を発した。
それは私に発せられたものだった。
私は不意を突かれたため、フォルスの言葉にすぐには反応出来なかったが、意識を音に集中させ、それからすぐに返答する。
「…あぁ、かなりの数だ。…30?いや、50はいるか?」
私に耳というものは存在しないが、表現上で耳を澄ませば、かなりの数の足音が響いてくる。
それを、フォルスは先程から感じ取っていたようだ。
異質という存在とは、フォルスは人間ではあるが、常識では考えられない身体能力を持っている。
今ので分かるように、肉眼では見えない程の距離だが、それだけ離れていても物音が聞こえてくるのだ。
もはや、常識を超越している存在なのだ。
フォルスを知る人物は、彼のことをイレギュラーと呼んでいる。
実は、イレギュラーはフォルスだけではない。
他にも何人か存在しているらしいが、まだフォルス以外のイレギュラーに出会った事がない。
また、フォルス自身も自分以外のイレギュラーに会ったことはない。
「正確には67だ。」
さすが、イレギュラー。
私よりも的確とは、人間も侮れないな。
「どうするんだ。迎撃するのか?
だが、ここで体力を消耗しては次の街まで辿り着けるかどうか…。」
かれこれ、8時間以上はこの果てない荒野を歩き続けている。
その最中で、無駄に体力を使えば、街に辿り着く前に、行き倒れしかねない。
第一、肉眼では確認出来ない程の距離だというのに、わざわざ出迎える必要もないというものだ。
「気になって仕方ないんだよな。最初は放っておくつもりだったが、…気が変わった。殺るぞ。」
いつもこうだ。
必要ない、関係のないような事まで首を突っ込みたがるのは何故なのだろうか?
フォルスとは長い付き合いだが、未だにここが解らないでいる。
しかしまあ、結局便乗する私も私、だな。
「ここで待つ気か?」
私は何の感情も込めずに、そう発した。
「戻るの面倒だしな。気長に待つか。」
頭を掻きむしりながらそう言って、その場で胡座をかいた。
戻るのが面倒で、何故いちいち相手するのが面倒ではないのだろうか?
やはり、解らない。
「…見えた。ワーウルフ御一行か。まあ、8時間も歩かされたんだ、ストレスは解消さしてもらわないとな。」
どう勘違いしたら、歩かされたという表現になるのだろうか。
まあ私も精神的にそろそろ疲れていた頃だ、ここで気分転換も悪くないだろう。
「頼むぜ、相棒さんよ!」
そう言いながら、背中に背負っている私を引き抜き、両手で構えながら、ワーウルフの群れへと走り出した。
「それはこっちのセリフだ。手荒く扱うなよ。」
私は何処か嬉しさを覚えながら、弾んだ口調でそう言い、フォルスの気持ちと同調する。
ここで紹介しておこう。
私はフォルスに握られている剣、つまりスパイラルである。
スパイラルにはそれぞれの意思があり、こうやって喋ることも可能なのだ。
私は“レーヴァティン”と呼ばれるスパイラルで、その形状は長さ1M程の剣である。
スパイラルによって、形は様々であるが、全てこういった武器として使われている。
威力も普通の武器とは比べものにならない程である。
まあ、それを人間離れした人物が扱うとなれば、ワーウルフごときでは太刀打ちできる訳がない。
つまりは、フォルスの独壇場となる訳だ。
ワーウルフとの距離、凡そ100M弱。
そこを見計らって、フォルスは一気に加速する。
手前30M程になると、お得意の身体能力を活かして空高く跳躍した。
上空で私を大きく振り翳し、ワーウルフの群れ目掛けて降下する。
ワーウルフもそれを黙って見ている訳もなく、一斉にフォルス目掛けて飛び掛かった。
だがそれも、虚しくフォルスに触れる事なく次々と地に落とされていく。
上空で鮮血が飛び交い、それを浴びながらフォルスが降下する。
フォルスの表情はまるで狩りを楽しむ、狼そのものだった。
地上ではまだ数多くのワーウルフ達が鋭い爪と牙を剥き出しに待ち構えている。
「行ってこい!!!」
フォルスは私を大きく振りかぶったかと思うと、振り下ろす勢いで私は地上へと振り投げられた。
激しい轟音と共に、砂煙が立ちこめ私を中心に丸い凹みが出来上がった。
時間差でフォルスが地上に降り立ち、私を引き抜く。
「これで、半分は減ったか?」
砂煙のせいで辺りはよく見えないが、かなりの数の手応えはあった。
しかし、手荒く扱うなと言った傍からこの扱い…。
まあ今となってはもう慣れてしまったが、もう少し加減というものをしてもらいたいものだ。
「来るぞ。」
私がそう発したと同時に、砂煙に乗じて数体のワーウルフが勢いよく飛び掛かってきた。
フォルスは腰に私を構え、体ごと私を振り回す。
ワーウルフの鳴き声と共に、鮮血が再び辺りに飛び散った。
そして、攻撃の手を休めまいとワーウルフが再びフォルスの頭上から襲いかかってくる。
しかし、フォルスが先手を打った。
その場で跳躍し、私を突き上げてワーウルフ目掛けて突進する。
切っ先が、ワーウルフの股間から内蔵へと突き抜ける。
そして、それをそのまま地面へと叩き付け、息の根を止める。
「はい!次ぃ!!」
フォルスは狂気しながら、次々とワーウルフを地に沈めていった。
気付けば、立っているのはワーウルフ一体とフォルスだけであった。
「やっぱり、物足りないな。まあ、仕方ないか。」
フォルスは私を下段にゆっくりと構える。
ワーウルフも牙を剥き出しにし、攻撃のチャンスを伺っているようだ。
お互いが睨み合いの攻防に入る。
その時、鳥の羽ばたく音がして、フォルスは一瞬そちらに気を許してしまった。
これを機に、ワーウルフは一気に間合いを詰め、その爪で喉を切り裂こうとする。
だが次に血を吹き出したのは先手を打ったはずのワーウルフだった。
ワーウルフの喉に、真っ直ぐと私が突き貫かれていた。
藻掻いたワーウルフも力尽き、地に沈んだ。
「…さて、行くか。」
血に濡れた私を、空振りして血を拭い、背中に収め踵を返して再び歩き出した。
フォルスが残した爪痕は、何とも無惨な光景となっていた。
まさか一人の人間がやったとは誰も思わないだろう。
〜第一章〜 1
結局、半日以上掛けて辿り着いたのが、気休め程度の小さな村だった。
私は喉が渇いたり、体力的に疲れるといったことはないが、フォルスが問題だ。
いくら並外れた身体能力を持っているからといって、人間には変わりない。
発汗機能、食欲などは当然ある。
半日も動き回っていれば、誰でも腹が空くものだろう。
案の定、フォルスはこの小さな村で食料を探し回っていた。
「酒場すらないのかよ…。ここの村のやつはどうやって生活してるんだ?」
散々歩き回ったが、どうやらこの村には飲食店などはないらしく、どこも自給自足の生活をとっているようだ。
フォルスは恨めしそうな顔で畑に植えてある野菜を見つめた。
…まさか、こいつ。
「ちょっとだけなら…。」
フォルスの手が、ゆっくりとその野菜の方へと伸びていく。
私は呆れて物も言えず、溜め息だけを漏らす。
そして、フォルスの手が野菜に届き、もぎ取ろうと手をひねった。
「泥棒!!!」
その声が聞こえた瞬間、フォルスの手が止まり、顔を少々歪ませる。
「いやぁ、別にそういうつもりは…」
まだ言葉の最中に、フォルスの目の前をものすごい勢いで横切る人物の残像が残った。
「アンタ!!そいつを捕まえてくれ!!」
そう叫んだのは、おそらくここの村人であろう男だった。
フォルスはいまいち状況を理解出来ておらず、目が点になっている。
「今通り過ぎていった奴を捕まえてほしいみたいだな。もしかしたら、飯にありつけるかもしれんぞ。」
私は混乱しているフォルスに丁寧に説明してやり、さらに補足をつけてやった。
それを聞いたフォルスは、表情が一変し、満面の笑みで村人の方へと振り向いた。
「任せろ!おっちゃん!俺がすぐに捕まえてきてやるよ!」
そう言うと、フォルスはその泥棒が走っていった方向へと駆けだした。
全く単純なやつだ…。
2008/02/08(Fri)13:04:13 公開 /
山本 康平
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■作者からのメッセージ
文章力に全然自信がないので、ここはこういう表現にしたほうがいい等の意見が出来たらほしいです。
また、感想も聞いてみたいので、是非お願いします。
あとは、文法的な問題もお願いしますw
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