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『別の存在』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:鶴少尉
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序。
皆はドッペルゲンガーというものを聞いたことがあるだろうか。
ドッペルゲンガーは他人とは話さないとされている。
この作にはドッペルゲンガーと、似たようなものが出る。
だが、それはドッペルゲンガーとは、特性が違う。 つまりドッペルゲンガーではない。
こいつは他人とも話す。こいつと話した人間は、本物の人の存在がなかったものだと思う。
つまり、AさんのドッペルゲンガーのようなものBが、Aさんの親友のCさんと話したら、CさんはAさんのことを忘れ、BがAさんだと思ってしまう。
Cさんは本物のAさんに会っても、「こいつ誰?」と、いう反応になる。
そんなことを起こす、ドッペルゲンガーと似た特性と違う特性を持つ者、通称『別の存在』と、中学2年の雄大(ゆうだい)との、争いの話である。
一。
20XX年、冬。 雄大はインフルエンザにかかり、学校を休んでいた。
ほんの1週間。その休みが、雄大の未来を大いに変えた。
インフルエンザが治り学校に復帰したその日、雄大は普段道理に教室に入っていった。
「うい〜す。」
そう言って入ったとき、友人たちの話し声が聞こえた。
「雄大さ、昨日めちゃくチャテンション高くてハッチャケてたよな」
雄大には何をいっているのか、訳わからなかった。
昨日まで休んでいたのだ。わかるはずがない。
そこに、自分が聴いたことない人が答えた。
「いやいや、あんなのぜんぜんハッチャケてねえよ」
雄大は思っていた。(誰の声だ?)
「あれでハッチャケてないって、どんだけだよ雄大」
雄大は教室のドアのところにいる。友人は窓の近くで話している。
ぜんぜん違う場所で話している話。しかも身に覚えがない話題。
雄大は同じ名前の転校生でも来たのかと思った。
すぐに友人。次郎のもとへ向かった。
そして次郎に話しかけた。
「お〜い次郎。お久。雄大って、転校生でもきたのか?」
次郎は変な目でこっちを見ていた。
雄大は首をかしげた。
そして、“雄大”と呼ばれる者の方を見た。
「え!?」
そこにいた“雄大”は、雄大と瓜二つの者だった。
雄大が驚いていると、次郎は喋りだした。
「お前誰だ?“雄大”と、似てるけど、双子かなんか?」
“雄大”は喋った。
「は?次郎。こんなやつしらねえよ」
「じゃあ部外者?勝手に学校入って来ちゃだめだろ。それに、なれなれしく次郎なんて呼ぶな」
雄大は驚いた。なぜ次郎が言ってる事がわからなかった。
その時、視線に気づき雄大は周りを見回した。
クラス中の皆とちょうど来た先生に、ずっと見られていた。
「う……」
雄大は、驚いて戸惑っていた。状況もよくわからなかった。
その時に、“雄大”が、雄大に耳打ちをした。
「お前は用なしなんだよ偽者」
雄大は何がなんだか訳が分からず、その場から飛び出した。
それから、雄大はみんなの視線が痛くてものすごいスピードで学校の外へ出た。
二。
雄大は、学校近くの公園にいた。
状況を把握していなかった。
順にたどっていって、大体把握してきた頃、激しい憎しみと、悔しさと悲しみが雄大を襲ってきた。
次郎は、雄大にとっての、唯一無二の大親友だった。その次郎にも忘れられていたのだ。
(俺が偽者って何だよ。そんな訳ねえだろ。何であそこで言い返さなかったんだよ俺。つうか次郎も俺のことを忘れたのかよ。
そういえば“雄大”って呼ばれるあいつ、俺とそっくりだったよな、って事はあれがドッペルゲンガーってやつか?
けど、ドッペルゲンガーって他人と話せないんじゃなかったっけ?)
そう、雄大の言うとうり。ドッペルゲンガーは他人とは話さない。
つまり、あの“雄大”と呼ばれる者は、最初に話した、似た特性と違う特性を持つもの、通称『別の存在』ってやつだ。
雄大は、その後に家に帰った。
家に帰ったら、なんとそこに“雄大”がいた。
「な、何でここに?」
「そりゃあもちろん。“俺の家”だからに決まってるからだろ。なあ母さん」
「ええ、“雄大”当たり前じゃない。それより、このひとだれ?」
「母さん……」
なんと、雄大の母までも、“雄大”と、話してしまっていた。
雄大は、怒りをぶつけた。
「おい!“雄大”偽者はお前だろ! 学校はどうした?俺を偽者呼ばわりしやがって。母さんも、俺が本物だよ、偽者があいつなんだよ」
雄大の母は言った。
「だれよあんた。そんな事言っちゃって。警察呼ぶわよ」
雄大は自分の親に追い出された。
親に、自分を生んだ、自分が信じきっていた親にまで忘れられた。
雄大はこの世の全てを敵に回した感じがした。
誰も味方はいない。
(こんなことになるなら、インフルエンザなんか罹らなきゃよかった。なんで俺だけこんな目に……)
雄大はただただ落胆するしかなかった。
その後、雄大は心の色を失ったかのように、ボーっとただ歩いていた。
何も目に入らなかった。全てが俺のことを知らない人間たち。
何もしたいとは思わない。
ほかの人間の言うことなんて、何も耳には入らない。
だが、しばらく歩いた所にあった公園にいた爺さんの言葉が耳にはいってきた。
「お主、『別の存在』に、であったな」
いきなりの爺さんからの言葉。この言葉で、雄大の人生が大きく変わった。
この世の全てのことを知った瞬間だった。
三。
雄大は、爺さんの言葉で立ち止まった。
爺さんは続けた。
「お主に『別の存在』について、わしの知ってることを教える」
雄大はこの爺さんが誰か知らなかったが、話を聞いた。
「知ってること。とは?」
爺さんは一呼吸置いて話し出した。
「お主は、『別の存在』に出会い、みんなに存在を忘れ去られて、絶望して漂っておるのじゃろう?」
「は、はい」
爺さんには、雄大のことがお見通しのようだった。
雄大は、“雄大”と会う前のことと、会った後のことを、詳しく話した。
見知らぬ爺さんにこんなことを話すのは、おかしいことだが、自分のことをお見通しの爺さんだから、何かやってくれる気がしていた。
爺さんは雄大の話を聞いてこういった。
「雄大とやら、お主、今からわしの言うことを、驚かないで聞いてくれ」
「は、はい。わかりました」
爺さんは、いつになく真剣な顔で話し出した。その顔には、少し後悔の色があった。
「実は、お主が、そんな目にあったのは、『別の存在』と言うもののせいだ」
雄大は分からなかった。
「えっと、さっきも言ってましたが、『別の存在』って何なんですか?
爺さんは、ちょっと顔を下げて少し暗い雰囲気で話し出した。
「そもそも、『別の存在』というのは、昔わしが…いや、わしのオリジナルが、[ドッペルゲンガー製造装置]というものを造ったのじゃ。
それによって、人とも話せるドッペルゲンガー。『別の存在』というものが生まれた。それが出来たのが50年前」
雄大はたずねた。
「何でそんなものを作る必要があったんですか?」
「わしが遊びたかったからじゃ。…仕事は『別の存在』にまかせて、自分は遊びほうける。それが夢だったんじゃ」
「そんなことで造ったのか……」
爺さんは、そこまで言って少し休んでからまた話し出した。
「すまないとは思っておる。……それが、罰なのか、『別の存在』と話すと、本物のことを忘れるという欠点が出たんじゃ。
それで、わしはその装置を放棄した。30年間は、何もなかったが、20年前の大地震でその装置が暴走をした」
20年前。中2の雄大は知らない地震だ。だが、話には聞いたことがある。世界中でおきた地震で、沈んだ島もあったらしい。
「その、暴走した装置が、わしのオリジナルの『別の存在』を作り、わしのオリジナル存在を忘れさせた。
そして、わしの知名度を使い、皆を呼びつけて『別の存在』を大量に作った」
「待ってください、つまり僕のほかにも、その…『別の存在』がいるってことよね。それで、あなたも『別の存在』で、あると…」
「そうじゃ。……そして、装置も何個も作られた。その繰り返しで、『別の存在』が増え続けた。
今は世界中が『別の存在』であろう。おそらくオリジナルの人間は、絶望のふちに死んでいった。『別の存在』も、新しいのが増え、死んでいった」
雄大は、驚愕した。
「ってことは、俺も、『別の存在』ってことですか?それなら、今までの記憶は何なんですかっ! 」
「記憶も一緒にコピーされるのじゃ。 ほかの、『別の存在』は、こんなことを知らずに死んでいくのじゃ。知るだけありがたいと思え」
雄大は混乱していた。
「そんなっ、そんなそんな。おれは、俺は『別の存在』だってのかよ。信じられぇ」
「しょうがないことじゃ。わしのオリジナルがあんな装置を作ったから、こんなの事になったんだ、もう、とめられないのじゃ」
「う、うるさい! うるさい! 俺は本物なんだぁ〜」
雄大は、爺さんを突き飛ばし、狂ったように走り出した。
永遠と、永遠と走り去っていった。
終。
狂ったように走り出した雄大。結局その他の『別の存在』と同じように死んでいった。
最後には、「俺が本物なんだぁ〜」と言って、車にはねられて死んだ……。
結局この世界は『別の存在』で構成された偽者の世界。
この星は、すでに本物というものは存在していなかった……。
これからも、『別の存在』は、どんどん増え続け、ずーっと、ずーっと偽者の世界は続いた。
本人は、自分が『別の存在』とは、知らずに暮らしている。
〜END〜
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2007/12/22(Sat)00:29:15 公開 / 鶴少尉
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■作者からのメッセージ
これは、偽者の世界についてのお話です
雄大と、“雄大”を“ ”←これで、分けました。
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