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『猫人 第0章』 ... ジャンル:ファンタジー リアル・現代
作者:紺
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あらすじ・作品紹介
この小説は、ある学校の教師が猫の死体を見つけて、猫を埋めるとき不思議な光がでてきて、光が教師を包み、翌日になると猫の鳴き声を5回以上聞くと猫になるという、不思議な体質になるお話です。もちろん、普通の人になるときは自分の意思で戻れますが。
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日常。
何が起こるか分からない、1日、1日。
急に命を落としてしまうかもしれない、思いがけないことが起こる。
人々は、いつもより多めに寝るかもしれない。
人々は、いつもの通り仕事に出かけるかもしれない。
人々は、学校へ行き、部活をするかもしれない。
人々はそれぞれの生き方をする。
――それが、日常だ。
金曜日の午後、ある晴れた日。
桜の花びらが、地面に落ちきってピンク色の絨毯を作っていた。
絨毯の近くにあった木には、日に当たると眩しいくらいの緑が木にしがみついていた。
春から夏へ変わろうとしていた、時間(とき)だった。
そこには2人の少女と1人の男が立っていた。
その3人は中学校に居た。…校庭の隅っこに。
台車などを持っているから石拾いをしていたのだろう。
きっと、校庭をきれいにする清掃だろう。
そして、1人の少女が口を開いた。まだ初々しい1年生だった。
「星野先生。」
その男は先生、と呼ばれたのだから教師なのだろう。
「ん? 」
「あそこに、何かありますけど…。」
何かと呼ばれたものは、20m先にあった。
動く気配の何もない、ただの白い物に見えた。ところどころに赤黒い斑点が見えたが。
「なんだあれ?」
「井上さん、見てきてよ。」
「そうだよ、璃央ちゃん見てきてよー。」
「ええ?! ちょっ、なんでウチなんですか? つーかなんで歩美も?! 」
「井上さん」、「璃央(りお)ちゃん」と呼ばれた少女は慌てている。
嘘だという事を知っているかのようにわざとらしく。
「はは。嘘だよ、嘘。」
「えっ…。嘘だったんですか?」
「『えっ』じゃないよ。怒るよー?」
璃央は、歩美と呼んだ少女に向かって、笑顔で言った。
言葉のわりには笑顔だった。…どこはかとなく、殺意が感じられた、が。
「若本さんは何でそんな残念そうなの…。」
教師は苦笑いしながら言った。
「ていうかあの物体は結局誰が見に行くんですか。」
「だから、璃央ちゃんが…。」
「なんでだよっ!」
歩美の一言で璃央の殺意が増えてしまった。
そこで、教師が呆れたように言った。
「俺が見に行くよ、いつまでたっても不明なままだし。」
「ウチも気になる…。」
璃央の一言で教師と歩美は少し驚いた表情(かお)をした。
「璃央ちゃん…。」
「ん? 」
「やっぱ璃央ちゃん見に行けばいいんじゃ…。」
「なっ?! …じゃあ、歩美も行こうよ。」
「ボクは嫌だもん。」
「なっ、即答したよ?! この娘!」
「だって、嫌なものは嫌だもん。ね、せんせ…。」
璃央と歩美が言い争っている時にはもう教師は、謎の離れた物体の近くに行って、
「うわっ。」
と、驚いた声を上げていた。
その様子を見て璃央はどうしたんですか、と大声を出して聞いてみた。
「これ、猫の死体だよ…。」
「ええ?!」
璃央と歩美はもちろん大声をあげた。
そして、璃央は迷うことなく猫の死体がある近くへ小走りで行った。
歩美は気持ち悪いから、という理由で行かなかったが、本当は動物が大の苦手だからだ。
「うわ…マジだ。こりゃ酷いな。綺麗な猫なのになぁ。」
そこには、腹部を切り開かれて血だらけになっていた白い猫が居た。
その血の生臭い臭いによって来たのだろうか。
アリの群れ、ハエなどがたかっていた。
「あれ、若本さんは?」
何かに気づいたように、教師は遠くの方に立っていた歩美を見て言った。
「動物が嫌いだから来ないんですよ。あと気持ち悪いから、とか言ってました。…ったくもー。」
璃央は、歩美を猫の近くへ連れてこようとするように見せかけて、本当に猫の死体だった、ということを報告しに行った。
「いやぁ、グロテスクですねぇ。」
「どんなんだった? 」
「ん? お腹の所が見事に開いてて血が溢れ出てた。アリの大群とハエがたかってた。気持ち悪いから見ない方が正解だよ。あれは。」
「見たくなってきたなぁ…。」
そんな会話を交わしていると、遠くの方で教師が
「とにかくここに放置しておくわけにはいかないから、埋めよう! スコップ持ってきてくれるー?!」
「スコップって、どこにあるんですか?!」
「あそこに倉庫があるだろ!? そこにあるから!」
「倉庫って、鍵開いてるんですか?!」
「おう、開いてるよ! 」
「あと、どれくらい持ってくればいいんですか?!」
「俺とー、井上さんとー、若本さん! 3本!」
「わかりましたー! 」
璃央と歩美は、駆け足で東校舎の近くにある倉庫へ向かった。
そこにはポツン、という音が似合うような小さな倉庫があった。
見た目は、クリーム色の塗装がされていて、所々錆付いていた。
「これ? 倉庫って。」
「…多分。これしかないもん。」
「じゃあ、探してみるか、一応。」
そういって歩美は扉の取っ手に手をかけて、右に引こうとした。
だが、ガタガタ、とうるさい音が響くだけで終わった。
「ねぇ、コレ、開かない…。」
「え?! 本当?」
璃央が扉を右に引こうとした。だが、歩美と同じ音を立てただけで終わった。
璃央は何かを考えながら言った。
「これは、レール?レールっていうのかな…。それがだめになってるね、油点さなきゃ。」
璃央は冷静に扉が開かない原因を探り、歩美に説明した。
「それじゃ、どうすんの?」
「まぁ、ダメなんだけどね、やっちゃ。…でもさ、こうした方がいいかなって思う!! 」
璃央は語尾を強く言って足を思いっきり後ろに振り上げた。
しばらくの間沈黙が続いた。
「――遅いけど、あいつら大丈夫かなぁ…。」
――ドォン
何かが倒れた音が聞こえた。
「大丈夫だよな、アイツらで。うん。」
教師は言った。口から発する言葉は笑っているような声だった。
――表情は青ざめていたが。
「璃央ちゃん、これ自分で直してね。ボクはやってないぞ?」
「そりゃそうだ。歩美は、見てただけだもんねー。…まぁ、倒れるのを100%承知して蹴ったからね、思いっきり。」
中は暗闇なのに、扉が倒れた拍子で埃が舞い上がって、全体的に白く見える入り口で
璃央と、歩美は立っていた。
歩美は、唖然呆然として立っていて、璃央は自分がしたことが分かっているので、当たり前のように立っていた。
「ま、いいや。早くスコップ持って行ってよ、多分先生待ってるから。」
その一言を言う璃央の顔と声は
自分が取り返しのつかないことをしてしまった、と言う反省の色が見えていた。
それを見た歩美は
「いいよ、璃央ちゃんを待ってる。」
と、言いながら倉庫へと…――白い世界へと入って行った。
「え? 」
「だって、後から行くと先生に 何でお前遅れてきたんだよ って言われるの嫌なんでしょ?…理由が出てこなくて、問い詰められるのも。 」
何かがぶつかり合ってガシャン、という音が倉庫の中から聞こえた。
「ケホッ…はい。これ持ってよ。重いんだからさ。」
そして、歩美は咳きこみながら、倉庫から出てきた。錆びついたスコップを3本、渡しながら。
「さすが、歩美。よく知ってんじゃん。とりあえず聞くべきこと。何で3本?」
照れ隠しなのか、歩美を見下したような声で言葉を出す。
ニヤリ、と笑い。
「当たり前じゃん。璃央ちゃんが荷物を持つ係だから?」
「えぇ? 何でウチが。」
クスクス、と笑うように2人は言葉を交わした。
「――よっしゃ!」
「意外に早く直るんだねぇ」
「まぁ、完璧には直ってないけどさ。」
苦笑いをする璃央と驚いてる顔の歩美の周りは、優しさで溢れていた。
「あれ、先生待たせてるんだよね?」
「うん。…おっ先ー!」
言葉をいったん切ったあと、歩美はスコップを1本、璃央から奪うように取った。
そして、勢い良く教師の居るところへと走り出した。
「は?! ちょっ、待ってよ!」
璃央は一瞬呆然としたが、自分が置いて行かれている、と、言うことが分かり。
「ねぇ! 置いてくとか酷くないですか、それ!」
「あはははは!」
「あはは! じゃないって。なんていうか、これ走りずらいな! スコップ邪魔!」
「――はぁ…。わっ?! 」
ポカン。
「たっ、ただいまっす、せんせ…うおっ?!」
ポカン。
真の抜けた音だが、教師がたまたまズボンのポケットに入っていた、クシャクシャの
数学のプリントで丸い筒を作り、璃央と歩美の頭に軽くヒットした。
「遅いっつーの!」
「探すのに手間取ったんですよぉ。」
「何でだよ! すぐそこにあっただろ?!」
「何ていうか…荷物が降って来たんですよ。」
「荷物は降りません! いいや、早く埋めようぜ。」
「はーい。」
そして、土を掘る音と
「うわっ、先生よくスコップで拾えるな…ちょっ!こっち持って来ないで下さいよ!」
「うるせぇよ!井上さんがそこに居るのが悪いんだよ!ね、若本さん。」
「先生早く埋めてください! そこで同意を求めないで下さいよっ!」
と、何気無い(?)会話が続き
そして、ポン、ポンと、土をスコップで叩く音が聞こえ…なかった。
むしろ、3人の前には猫を丁度埋めた辺りからの蒼い光。
「うわぁっ?!」
「眩しっ?!」
「…危ないから近づくなよ! 何が起こるかわからないから!」
「はい!」
…だが、やはり、平和である。
「…というかお前ら。」
「はい?」
「帰りの会。行かなくていいのか?」
「え? あ! 璃央ちゃん! もう時間だよ! ていうか時間すぎてます!」
「マジで? じゃあ、先生あとは頑張ってください! 光に害があって死なないように!」
「おう! 光が何なのか、あとで言うから!」
「はーい!」
しーん…と、静まり返った校庭の隅には謎の蒼い光と教師だけ。
「…掘り返してみようかな。」
――サク。
スコップを光の溢れている位置に差し込んだ瞬間。
「うわっ!?」
光が教師を襲い掛かるようにして、光がさらに溢れ出て、そして教師を包み込んだかのように見えた。
「…? なんだ、今の?」
――ニャオン。
「! 猫?」
猫の鳴き声だと思い教師は辺りを見回したが、
「何も無い? 怖いなぁ…光も消えてるし。…うわっ! 怖ぇ!」
教師はどんどん自分の中で悪い方向へ想像して、顔面が青くなった。
…ので、急いで職員室へ駆け込んだ。
「…疲れた。」
はぁ、とため息をついた時と同時に
――ニャオン。
また、1つ。猫の鳴き声がした。
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2007/11/20(Tue)18:49:29 公開 / 紺
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■作者からのメッセージ
はじめまして。
紺と申します。
以後よろしくお願いします。
このお話は、簡単に言っちゃうと私の夢です。
本当に。
「璃央」という女の子は私そのものです。
ていうか私です。「歩美」っていう女の子は私の友達です、性格が^^;
名前も微妙に似せてみました。
もしかしたら「星野先生」も・・・?(笑
では!
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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